団長からテイワズの本拠地へと向かうと教えられてから早5日。
(あー暇だ、モビルワーカーの整備も終わったしですること無ぇ)
三日月さんと昭弘はタービンズの船でシミュレーターを使って練習しているので俺は手持ち無沙汰だった。アトラの洗濯の手伝いもとうに終え艦内の掃除も昨日やったので本当にやる事が無い。
(俺もあっち行ってもいいのかな……?)
百錬達を格納するのを手伝った時の警戒する目からして行っても歓迎はされないだろう。それ故に、
(暇だ~)
俺はイサリビの艦内を泳いで回っているのであった。
そんな事を思ってた次の日。
「今日も俺達あっちの船に行くけど、シンも行く?」
三日月さんからお誘いがあった。
(え!行っていいんですか俺!?)
びっくりしている俺に昭弘も声を掛けて来る。
「あぁ、ラフタ……あの速い機体のパイロットが会ってみたいって言っててな、それと整備班の奴で一人会いたいって言ってる奴がいたぞ」
(マジで?行っていいの?)
「おやっさんに聞いたんだけど昨日から暇だったんでしょ?」
(そりゃあもう!)
結局あの後、年少組を相手に電車ごっこを延々とした位には暇だった。
「じゃあ俺達についてきて」
(は~~~い!)
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イサリビからハンマーヘッドへと移り、タービンズのモビルスーツ格納庫へと向かう道中、通りすがる女の子達にびっくりされながら俺は目的地へと向かっていた。
(何かどうも俺の姿見てのリアクションが大体2つに分かれてるなぁ……?片方は少し引いてて拒絶気味の反応、でもう片方は……好奇心?とはちょっと違うな、懐かしさ?親戚に会ったみたいな……何だろう?)
鉄華団の皆は後者なのだがタービンズの人達は二通りの反応をしているのが気になった。
(まぁいいか、そろそろ到着だ)
俺達は扉をくぐり抜けてモビルスーツ格納庫へ入っていった。
「へぇ~!あんなにデカかったのにこんなに縮んじゃったんだ!」
(うぉう、ラフタさんか)
急に声を掛けられてビックリした。声のした方を見れば他にアジーさんとアミダさんがいる。
……どうやら別に恨みを持たれている訳では無いようだったので一安心だ。
「……あ、ダーリン?エーコそっちにいる?……うんうん、そう!あのトカゲ君こっちに来てるんだ!エーコも来なよ!」
直ぐにラフタさんは格納庫の無線に向かって話始めた。
話しているラフタさんを置いてアジーさんとアミダさんが此方へとやって来る。
(ドーモ。アジー=サン。アミダ=サン。シンです)
意味は伝わらないだろうが鳴き掛けてからお辞儀する。
「へぇ厳つい顔つきの割に可愛いらしいじゃないか」
「三日月から聞いてるけど言葉が分かるんだって?」
(分かりますよー!)
「紹介する。こいつが俺達の仲間のシンだ」
(お、昭弘ありがと)
タービンズの格納庫を見渡して色々観察していると、三日月さんが声を掛けてきた。
「俺達はこれから訓練するけどシンはどうしたい?」
三日月さんに聞かれていざ着いてみたのはいいものの、何をしようというのを全く考えていなかった事に気付いた。
(えー……何しよう?)
固まった俺を見たアジーさんから提案された。
「もし特に無いなら今から来るエーコって娘と話し相手になってくれないかな?あの戦いの後、シンに随分興味持ったみたいだからね」
(あ、じゃあそうします)
鳴いて返事をしたがアジーさんは「?」となっている。どうやって伝えようか?と思案していると、昭弘からフォローが入った。
「それ、する。だとさ。なら三日月が訓練してる間俺が通訳してやるよ」
(おぉ!昭弘サンキュー!)
エーコも参加しワイワイと騒いでいる一同。それを名瀬は物陰から見ていた。
(確かに、親父から聞いた特徴と一致しているな……)
マクマードの親父に歳星へ戻ると伝えた時についでとばかりに伝えたシンの情報だったが、
(……こりゃ思ったよりヤバイ物拾っちまったかもな)
アミダ、アジー、エーコと鉄華団のパイロットで談笑し合っている、その中心にいるシンを見ながら名瀬は一人胸の中で呟いた。
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数日後。
今日は団長達が名瀬さんと火星の運用資金の為のギャラルホルンの鹵獲パーツの売却の話をしてくるとの事なので団長とビスケットがいない。
なので今日も暇な俺は、今昭弘の筋トレの手伝いをしている最中であった。
(俺が重力制御出来るからってまさか筋トレに応用しようと考えるとは……)
確かに、俺はエイハブリアクターのお陰で自分からある程度近くの距離は重力制御の効果が使えるのである。
(いつもはモビルスーツの部品を運ぶのに使ってるけど……流石昭弘。大した奴だ)
目の前では何時もの二倍の重力を受けながら全身に汗を光らせ筋トレに勤しんでいる昭弘がいる。
筋肉が隆起しバーベルが持ち上がる。腹筋に力が込められ上体が持ち上がる。ダンベルが持ち上がり力こぶが出来る。背筋が締まり……
その光景を延々と見ていると次第に、
(……筋肉いぇいいぇーい!筋肉いぇいいぇーい!)
俺には心なしか筋肉が輝いて見える様な気がしてきた。
「ありがとな、シン。いいトレーニングになった」
(昭弘……いい筋肉だったよ)
「……!ありがとう。またトレーニングに付き合って貰えるか?」
(もちのロンさ!)
昭弘の右手とシンの尻尾がコツンとぶつかる。
筋肉を通じて人類とゴジラが通じ合った瞬間であった。
昭弘と別れてイサリビのブリッジへと向かうと途中で団長達と合流した。
(あ、団長!名瀬さんとの交渉どうでした?)
「交渉の事かな?それなら成功したよ、ただオルガが……」
ビスケットの言葉が止まったので疑問に思い目線の先を見ると、「言うな~!」とでも言わんばかりの顔をしてビスケットを見ている団長がいた。
(あ~、詳しくは聞かないでおきますね)
「うん、まぁ色々あったって事で」
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「なんとでも言ってください。俺らは…鉄華団は離れちゃいけない」
「だから何でだよ?」
「それは……繋がっちまってるんです、俺らは」
「はぁ?」
「死んじまった仲間が流した血と、これから俺らが流す血が混ざって鉄みたいに固まってる。だから……だから離れらんねぇ」
「それはシンもか?」
「そうです」
「正体について何も知らないのにか?」
「アイツがたとえ何であろうと関係ありません。俺達鉄華団の仲間の一人です」
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「まぁつまり、僕達は家族って事だね」
(家族?)
俺も?も団長の顔を覗き込む。すると、
「あぁ、勿論シン。お前もだ」
団長が少し照れた風に言って誤魔化す様に頭を撫でてきた。
(お~、何だろうこれ、めっちゃ嬉しい!)
感情に反応してパタパタ揺れる尻尾を抑えつつ、俺達は三人でイサリビのブリッジへと向かって行った。
この鉄血世界は原作とは色々違っています。
次回歳星。