「ます…たぁ……?」
言ってる意味が分からず咄嗟に彼女の言葉を反芻する。
けれど。本当は意味が分からず反芻していたのでなく。何も考えられなかったのだろう。それほどに目の前の彼女は美しく。
命の危機だというのに。
それ以外は全て褪せて気にならないほどに、夢中で。
とどのつまり。
伍道戈咒は、一目で心を奪われたのだ。
その一秒にも満たない、けれど何よりも長く感じた瞬間から目を覚ますように左手の甲に鋭い痛みが走る。
左手を見やると、赤く光る刻印のようなものが輝いている。
そして同時に目の前の彼女もそれを見つめ、続けて口を開く。
「令呪の導きにより、ここに契約を完了した。。儂は剣士のクラスをもって現界したサーヴァント、セイバー。故に儂はお主の刀となり、お主は儂の身体となる」
彼女は続けて口上を述べる。
そして彼女の出てきた刀と俺を小脇に抱えると、自らが弾き飛ばした少年を追って
「え、ええ、えええええええぇぇぇぇーーーーー!!!!」
「ええい、うるさいぞますたぁ!
「だ、だってここ、2階、というか俺を抱えて!?」
「ふん、そんな事か。儂も表の
慌てふためく俺を抱えたまま飛びだしたその先には、先程吹っ飛ばした少年がいた。
「……っ痛ぅ。何してくれてんの、アンタ。俺も怒ったよ。肉の無いアンタなんて食べる気もしないけどさぁ。親父達の言いつけもあるし、ムカついてるし。殺してもいいよねぇぇーーー!!」
油断が抜けたのか。少年は今まで使ってこなかった肉切り包丁を腰から抜いて逆手に構える。そして、先程よりもさらに素早く、獣の如き獰猛な突進が彼女を襲うーーー!
「止まーーー!」
俺の咄嗟の静止の声は意味をなさなかった。
しかし、俺の予想とは違う形で。
彼女がその身に持つのは丈に見合わない2振りの長刀。1本は俺が昨日購入した、無銘の日本刀。もう1本は彼女の腰から抜かれたものだった。
そしてその両方を使い、少年の振るった肉切り包丁を封じていた。
「なーーーー」
驚きのあまり声も出ない。
少年は不敵に笑い、素早く下がると次の攻撃を繰り出す。
それを再び、少女は2刀を巧みに使って弾き間合いを取る。
素早い動きで撹乱し、死角から肉切り包丁や鋭く尖った爪を振るう少年。
それを全て2刀のみでさばききり、それどころかカウンター気味に攻撃を加えていく少女。
数分間の打ち合いの後、天秤は火を見るよりも明らかな傾きを示していた。
少年はその身に纏った赤いTシャツと濃紺こジーンズは裂傷によりダメージ加工のようになり、その下から覗く青白い皮膚は致命傷こそ避けているものの幾つもの刀傷で血を滲ませている。
一方彼女は少年の攻撃を全て紙一重で躱し、避けきれないものは2刀でさばくことで身に纏う夜空如き着物には傷一つ、それどころか汚れ一つない。
少女はその差を見せつけるかのように少年に向かい言い放つ。
「さぁ、これで技量差も見えただろう。貴様ではどうあっても儂に傷一つ負わせることは出来ぬ。だからーー潔く死ね、アサシン。」
アサシンと呼ばれた少年は冷徹なるまでの実力差と処刑宣告を受けて気がふれたのか。
急に頭を掻き毟り喚き散らす。
「ああぁあああぁぁぁああぁぁぁぁぁああああ!!」
「喚こうが叫ぼうが何も変わらぬ。これ以上見ても見苦しいだけじゃ。介錯をしてやろう。」
「なんだよ……なんだよなんだよなんだよぉ。どうしてこうなるんだよ。ホントは今頃そこのお兄ちゃんの肉をたらふく食べて、家でゆっくり寝れたはずなのに!!どうして、どうして!」
アサシンは錯乱したまま意味の通らないことを叫び続ける。
「聞くに耐えん。故にーーー死ね。」
犯罪の匂いがするとかいう不本意な噂を聞いたけど真のロリコン紳士は最低でも同意の上でないと行動は起こさないんですよ!(同意の上だからといって犯罪でないとは言ってない)