Fate/erosion   作:ロリトラ

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1年ぶりの投稿となりました。
ここ半年ほどはガチでリアルの方が忙しかったのですがその前の半年ほどは完全にサボっていただけなので怠慢でした。
次はもう少し早く書けるようにしたいと思います……


6日目/戦術会議

「と言うわけで鎖姫、対ライダーの情報共有タイムだ。」

「いや何がそうなったらいきなりお兄ちゃんと対サーヴァントの情報共有をする流れになるのよ。」

「いや何、お前絶対あのロリコンにぶつけたら喧嘩しそうだし。折衝役として、俺が手を挙げた訳だ。ほれ、スイカバー。ランサーもどうぞ。」

「かたじけない。」

「あ、スイカバーだ、ありがと……じゃない。過保護すぎない、お兄ちゃん。」

「過保護じゃない、ふつーだふつー。世間の兄貴は皆やる。」

「いやないでしょそんなことは……」

「それに何よりもの理由はだ。」

「理由は?」

「お前をあのロリコンに近づけたくない。」

「……はぁ?」

「俺はな、鎖姫。アイツとの付き合いもそこそこあるから知っているんだ。奴がどんなにヤバいロリコンかをな。女子小学生をお茶に誘って防犯ブザーを鳴らされた数は7回。」

「…………・え。」

「更に授業をサボって近くの小学校のグラウンドの木から女子小学生ウォッチングをしている。」

「………・…え…………………え。」

「極めつきは市内の女子小学生の氏名とクラスを把握しているらしい。」

「ええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」

「どうだ、心配の理由が分かったろう。」

「嫌なんでそんなのが平然と生活してんのよ!!!ある意味猟理人以上の危険人物だし犯罪者で不審人物じゃないの!!!!!!」

「そんなもの決まってる。証拠不十分だ。」

「警察は無能なの!!!??」

「仕方ない、奴は幼女が絡んだときのみ異様なスペックを発動するからな……件の名簿だって手元にあれば証拠かもしれないが、実物はなく全て奴のココの中だ。」

 

錬土はそう言いながら頭を指で小突く。

 

「なんていう頭脳の無駄遣いなの……」

「あぁ、俺もそう思う。」

「というかお兄ちゃんはなんでそんなのと友人やってるの。いや寧ろ100歩譲って友人なのはいいとしてもなんで見逃してるのよ。とっとと通報して現行犯逮捕させてよ。」

「……ん、いやまぁ、そこはな?脛に傷を持つもの同士というか、人間は助け合いでしょ、というか。」

「いや、助け合いも何も小学校の多くの乙女の尊厳は全く助けられてないんだけれど。というかまさかお兄ちゃんも……」

「いやいやいやいやしてないから。俺はただたまたまぐいぐいとナンパした女の子がたまたま警察官で、たまたま怒られたとか、なんか女の子が追いかけられてたから口説くために追っ手をのしたら追われてた方が詐欺グループの受け子だったとか、ほらその程度よ。大したことない。」

「……………・なんでこんなのがお兄ちゃんなのよ………」

「ちなみにその女の子には振られて逃げられました。」

「聞いてないっ!!」

「あー……なんというか。相当個性的な人間なんだな、君もセイバーのマスターも。」

 

そ、横から聞いていたランサーが苦笑しつつスイカバーを囓る。

 

「笑い事じゃないよ、もー……」

 

そうぼやきながら鎖姫もスイカバーを囓る。

そうして、火照った身体に冷えたスイカバーの冷たさがしみ込むかのように落ち着いた声音で会話を続ける。

 

「で、ここまでが前置きってこと?」

「なんだ、ばれてたのか。」

「何年妹やってると思ってるの。そりゃ最近は聖杯戦争がらみでピリピリしてたし、忙しかったしで連絡取ってなかったけど少し前までは普通に電話したりしてたんだし。」

「……なんか鎖姫、大人になったな。」

「え?」

「少し前まではすぐ熱くなって周りが見えなくなってたからさ。正直戈咒の名前出すだけでキレるかと思ってた。」

「……私だって、覚悟決めて、自分を見つめ直して、成長するのよ。子供みたいに駄々こねてるだけじゃ、戦い抜けないわ、聖杯戦争は。」

「………そうか、そうだよな。」

「さて、じゃあ情報共有にしよう、お兄ちゃん。」

「あぁ、そうしよう。どうせお前のことだ、セイバー達と交互に戦うと言ったってまだ全然どんな流れで戦うかとか考えてないんだろ?」

「う……いや、それは今から決めるからいいの!」

「そうだな、じゃあ情報共有兼戦術会議といきますか。」

 

そうして、兄妹の夜は更けていく。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

一方その頃。

 

「さて……んじゃ、セイバー。飯も食ったし、俺達も戦術を詰めるとするか。」

「うむ……と言っても、今回の場合の勝利条件は単純じゃな。」

「あぁ、ランサーと入れ代わり立ち代わりしながらとにかく時間を稼ぎながら鎖山森へと誘き寄せて、あとは魔力切れまで粘ればいいだけだから。」

「そうじゃな、かの森の中の結界まで追い込んでおけば魔力切れが近くなっても逃す可能性は減るじゃろうて。ーーじゃが。」

「あぁ……その魔力切れまで粘るのが多分一番大変なんだよなぁ……セイバー、お前が俺の肉体をフルに使った状態で何分持たせられる?」

「……ますたぁ。」

「そう拗ねた顔したってしょうがないだろ、そもそもそこまで無茶しなきゃ今回はそれより先に死んじまうし。」

「………はぁ。そうなんじゃよなぁ……じゃが、逃げながらの交戦ということを考慮に入れた上でも一刻に足りるかどうか……入れ替わり立ち替わりということならランサーが儂らと同等の実力だと仮定して、恐らくランサーも一刻が限度じゃろう。」

「合わせて二刻……1時間か。ある様でないな。けどまぁ、そこがタイムリミットってんなら、そこでやるしかないか。」

「そうじゃな……そしていざトドメを指すタイミングに関してじゃが……」

「ランサーか鎖姫ちゃんにやらせるべきってか?それは飲めないぞ、幼女(ロリ)を命のやり取りに巻き込むだけでもそもそも気が進まないんだ、せめて最後の一線くらいは俺の手でやらなきゃ、何の為にいるのか分からねぇよ。」

「ますたぁはやはりそう言うか……」

「安心しろって、すこーしばかりリスクはあるが、俺にいいアイディアがある。」

「……一応聞くだけは聞いてやるかのう。」

 

そうして俺は考えたアイディアをセイバーに話すことにした。

……なんかどうせロクなアイディアじゃないって目で見られてるけれども。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

そうして、そうしてアイディアを伝えるとセイバーはプルプル震えながら声を絞り出した。

「…………あ。」

「あ?」

「……あ。」

「あ?」

「阿呆かお主はーーーーッッ!?なんでそうやって軽々しく自分の命を賭けたがるのじゃッ!?」

「いや、そこまで言われるほどかな、これ。どうせ負けたら多分死ぬんだしギリギリまでレイズして勝ちの目を増やす方が……」

「勝ちの目を増やす為にその多分死ぬを絶対死ぬに変えようとしてるから阿呆なんじゃッ!お主は一か八かの賭けしかせん破滅型の博打狂いか何かか!?」

「そこまで言うかなぁ……でもさ。」

「なんじゃッ!何か弁明でもあるのかッ!撤回なら受け付けるぞッ!」

 

……やっぱり怒ってるなぁ。でも、ここで撤回しても、正直リスクはそこまで変わらない以上。

 

「いや、撤回はしない。」

「なんじゃと……」

「だから、俺にはただ、頼むしかない。これが一番勝率が高いんだ。」

「勝率じゃと……?」

「ああ、これが一番不意を付ける。俺たちがやろうとしているマスター殺しは、様は暗殺だ。つまり、如何に不意をつくかこそが勝機になるんだ。」

「じゃが、じゃが、それなら他に幾らでも手はあろう!それこそ、ランサーに気を引かせて儂らで……」

「それも考えた。けど、それじゃあやっぱり先に気づかれる可能性が高い。きっとライダーのマスターは後ろから戦場全体を俯瞰してるだろうから。だからこそ、それまで戦場にいなかったものが奇襲をかければ不意を付ける。仕留める前に冷静な判断力を取り戻されたら、令呪でライダーを呼び戻される。そうなったら終わりなんだ。だからこそ、少しでも混乱させて不意をつく為にはこの手が1番なんだ。」

「じゃが、それではもし……」

「それに、セイバー。どのみちこれでもダメだったら、生き残ったところで負けなんだよ。」

「……なんじゃと?」

「俺の勝利条件は、セイバーと勝って最期まで生き延びることなんだよ。その為にはレアを倒さないといけない。ここで倒せず逃げ延びたらもうライダーを不意打ちで殺せるチャンスはほぼ無いだろう。そうしたら、ランサーやキャスターとの同盟は瓦解するか、切られる。そうなったらレア達と戦う為に味方に付けられる奴らはいない。だから、ここは勝つのが最優先なんだ。その勝率を上げるためなら、例え俺のやることが乾坤一擲の大博打と言われようともやる以外に選択肢は無いんだ。」

「ぐぬ……ぬぬ…………はァ。もう、負けじゃ負けじゃ、そう言われたら儂には返す言葉も止める術もないわい。じゃが、そうと決まったらアレじゃ。お主には一切のミスすら許されんぞ、確実にライダーのマスターを仕留めよ。こうなったら儂も腹を括ったのじゃ、お主には作戦決行までの間に確実にライダーのマスターの命を奪う、それだけの致命の刃をお主に身につけてもらうぞ。」

「あぁ、望むところだ!……それと、ありがとう、セイバー。」

「ん?何がじゃ?」

「だって、セイバーが本気で反対したら俺の肉体を完全に支配して、俺に一切の自由を与えないままにだって出来ちゃうんだから。適当に流して土壇場で無視することだって出来たんだから。ちゃんと俺の話を聞いてくれて、俺の為に折れてくれた。だから、ありがとう。」

「〜〜〜〜〜!!!お主の口は!どうしてそう!余計な事ばかり吐くのじゃ!!」

 

セイバーは照れくさかったのか、顔を背けながら悪態をつく。こういう所も可愛いんだよなぁ。

 

「ふっ、ふふ、ふふふ……じゃが、いい度胸じゃ……こうなったら少しでも気を抜いたら死ぬ地獄の特訓といこうかのう……ふふふふふ……」

 

と、思っていたらセイバーに腰を掴まれてそのまま身体を浮かされ抱えあげられる。

 

「あ、あれ?ちょっと?セイバーさん?あの、地獄の、特訓とは、何ぞや?」

「……ふん。お主の方から望むところと言ったのじゃろう。盤面をひっくり返す致命の切札を一朝一夕で身につけて貰うのじゃ、多少の地獄くらいはみてもらわねばのう?」

「あ、あの、多少は手心をね?あれ、ちょ?聞いてらっしゃる?というか俺を抱えあげてどこに連れていかれるつもりでございます?あれ?、あれ?あーーれーーー!?!?」

 

そして窓枠からセイバーはとびだしていった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そして、時は経ち。

決戦の時は目前となった。

 

「もうね、あれだよね。セイバーのしごきがキツすぎてライダーと戦うより前に死ぬと思ってたよ俺は。」

「ふん、あの程度で死ぬようならそれはお主が軟弱なだけじゃ、ますたぁよ。じゃが実際問題、お主は生きてここにおるのじゃから問題はなかろう。」

「いや、今生きてるからおっけーとかそういう問題なのかなこれ……」

「そういう問題じゃろ、おそらく。」

「適当だぁ……」

 

そうしているところに、スマホでメッセージが届く。

 

『こちらの準備は完了している。あとは君たちが如何に上手く森へと誘導するかだ。健闘を祈る。』

 

そう、一言だけ書かれたメッセージを読み、スマホの電源を落とす。

そして、目の前から現れた鎖姫ちゃん達を見据える。

 

「あら、女性を待たせない程度の甲斐性はあったらしいわね。ロリコンさん。」

「それはそれは、有難うございます麗しきリトルレディ。」

「……流石にキモいわね、一時的とは言え同盟相手に失礼かもしれないけれどごめんなさい、我慢の限界よ。」

「ひどくない!?」

「いや、当然じゃろ。むしろ儂とてランサーのマスターに同情するわい。」

「……セイバーのマスター、君は一度自分を客観的に見ると言うことをするべきだろう。」

 

そして双方のサーヴァントからもため息をつかれた。

現実の世界は,どうしてロリコンに対してつらくきびしいのだろう。

 

「……まぁ、いいわ。この程度でライダーを倒せれば安いものよ。それより、決行前の最終確認といきましょう。」

「まず、ライダーはその見た目と使用した魔術、そして本人の発言から魔術に秀でた神、それもおそらく死後にまつりあげられたタイプか半神であることは間違いないだろう。」

「ええ、最低でも神を自称するだけの存在ではある……ということに違いはないでしょうね。それにアノ強大な魔力にアホみたいな魔術行使。A級のサーヴァントであることからしても間違いないでしょう。」

「くわえて、奴はポリネシア系っぽい見た目をしていた。」

「見た目をしていた、って言われてもねぇ。それは私も見たけれど、貴方のサーヴァントの日本のサーヴァントですってのがバレバレなその和服みたいなのならともかく、私たち日本人にポリネシア系かどうかなんてホントに区別できるのかしら。」

「う……」

「確かに、お主のいうとおりかもしれんの。じゃが、逆にそれならどうするのじゃ。何か真名に関して気がついたことでも?」

「ええ、その通りよ。なんでも、ライダーはそこのロリコンの豚野郎って煽りに反応したらしいじゃない。そこで、私たちは豚に絞って調べだしたのよ。」

「……豚?」

「ええ、豚、或いは猪。それらは神話においてカリュドーンの猪やセーフリームニルなど、さまざまな形で現れる。けれど、人の姿を持てるであろう猪や豚となると数は限られるわ。例えば、北欧神話のオッタル。アーサー王伝説のトゥルッフ・トゥルウィス。でも、これらは人間。同時に神でもあるとすれば更に絞られるわ。ヴィシュヌのアヴァターラであるヴァラ-ハ。そして、ハワイ神話の半神の海神、カマプアア。」

「……半神にして海神!」

「なるほど、ではライダーの正体は、カマプアアの可能性が高いということか。あの強大な水の魔術は本人の海神としての権能に由来するものとすれば納得がいく。」

「ええ、ヴァラ-ハもヒラニヤークシャによって沈められた大地を浮き上がらせたことや、本人が洪水からの蘇生の象徴であることなど強大な水との関わりがないわけではないけれど、その本質はどちらかと言えば水からの再生でしょう。」

「じゃからこそ、ライダーの真名に最も近いのはカマプアアというわけかのう。じゃが、カマプアアに弱点はあるのかのう?」

「うーん、弱点……と言えばなくはないのだけれど。」

「と言うと?」

「カマプアアは神話の中で、地底の神々を味方に付けたペレによって起こされた大量の溶岩流によってやられている。よって、弱点ではあるのだろうが……」

「……そもそも溶岩が得意な英霊の方が少ない、と言うわけかの。」

「更に言えばこの守掌は海浜地帯よ、どこに溶岩があるのかしら。」

「だいたいそんなことになったら聖杯戦争どころじゃぁない、か。」

「まぁ……そうね。」

 

真名に当たりがつけられても結局とくに直接ライダーに対するなすすべが見つからなかったやるせなさからなのか、鎖姫ちゃんはため息をつきながら次の言葉を紡ぐ。

 

「まぁ、だからこそ。予定通り、マスター殺し一点狙いで行くのが一番の得策でしょうね。」

「だな、さてそうとなったらいっちょ一踏ん張りしますか。行くぞ、セイバー。」

「うむ、ますたぁよ。」

 

そうして俺は|妖刀〈〈セイバー〉〉を抜き、その|妖〈〈どく〉〉を、|呪〈〈どく〉〉を、|魔〈〈どく〉〉を自分の身体に、精神に、魔術回路に、流し、満たしていく。

彼女の|意識〈〈ほんのう〉〉が溶け合い、一つになる感覚。

 

「―――さぁ、斬りにいくとしようか。」

 

そう、言うが早いか俺は話していた公園のベンチを蹴り、幽霊屋敷へと向かう。

さて、まずは一番の勘所だ……気合い入れていくか。

 


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