ヒルシュクラッセはいいぞ……(金鹿担任並感)
「よしーーと。」
家に帰ってきた俺は、少しでもレアの視覚を遮られるかどうか試すためにまず左腕の先の部分にグルグルと包帯を巻き付けた。
『いや、何がよしか。そんな左腕にグルグル包帯巻いたくらいで誤魔化せるものなのか、ますたぁ。』
『いや、Tシャツに左手引っ込めてスマホ見せる分には誤魔化し聞いたから、包帯巻いてスマホでやり取りすればバレないかと……』
『それで出来たら苦労せんと思うのじゃが……』
『ま、まぁ、やらないよりはマシだから、多少はね?』
『……まぁ、それもそうかのう。』
「そうそう……さて、そろそろ起こすか。」
「ん、なんだ。準備終わったか。」
「うおおっ、お前起きてたのかよ。」
「そりゃそうだろ、寝てる時に誰かが近くを歩いてきたら普通目が覚めるぞお前。」
「いや、普通の一般市民はそうはならねぇよ。」
「そうかぁ?まぁいいけどよ。で、キャスターとはどうだったんだ?」
「大当たり、無事に同盟を組めたぜ。けど、鎖姫ちゃんに黙ってここまで進めちゃってて話拗れたりしないか?」
「…………するな!しちゃうね!」
「おいこらお前なんで寝る前に話通しとかねぇんだ阿呆。」
「ふははは過ぎ去った事を文句つけても仕方がないぞ、ここは1つ建設的に行こうじゃないか戈咒くん。」
「おうなんだ何か弁明があるなら聞いてやるぞ、錬土。」
「バレなければなんの問題も無い、という事だ。」
「………その通りだな。よし、奴らからのサポートはこっそりとで頼むことにしよう。」
そう言いながら早速DMで連絡を入れておく。
「そうそう、任せたぜ。」
「大丈夫だ、それにそもそも幼女を陰ながらこっそりサポートするのは得意技だからな。」
「いや何気持ち悪い犯罪をカミングアウトしてんだ、つーか今回こっそりサポートするのはキャスター陣営でお前は寧ろ目を引きつけるミスディレクションポジだろ。」
「ふっ、細かいことは気にしたら負けさ。というか犯罪じゃねーよ犯罪じゃ。バレなきゃセーフなんだよ。」
「うーんこの。お前いつか豚箱行きになるぞ。」
「安心しろ、俺が豚箱行きになるより先にお前がヤバい女に手を出してコンクリ詰めで東京湾だ。」
「「ははははははははは」」
「言ったなコノヤロウ。」
「てめぇも犯罪者呼ばわりとか大概だろうが。」
「よーし見とけよ見とけよ、ヤバい女は躱していい女だけを捕まえてやるからよ。」
「はっ、期待せずに待ってるぜ。東京湾に沈んだら5秒くらいは祈ってやるよーーで、話を戻すが。」
「おう。」
「鎖姫ちゃんの方との折衝ってか連絡は任せるぞ、錬土。結構日時やら細かい作戦を詰めなきゃならねぇからな。」
「そうだなー、その辺は俺がアイツにもう少し口添えしねぇとな。だいたいスイッチ作戦とか自分の手の内を見せたくないって事だけで考えたんだろうが、そんなものなんの打ち合わせもなしに出来ると思ってんのかアイツ……」
「なーに、幼女に不可能はない。」
「もうダメだこのロリコン」
「それに、
「………あー………うん。俺を信頼して鎖姫の事まで信頼してくれるのは有難いがな、それ絶対に鎖姫の前で言うんじゃねぇぞ。」
「ん?……あ、そういう事か、あー了解。何となくお前らの距離感というかそのチグハグさの理由も掴めたわ。」
「察しがいいロリコンで助かるぜ。」
「感情の起伏の激しい幼女を相手にするのにニブチン野郎じゃロリコンは務まらねぇよ。」
「何偉そうに言ってんのこいつ……まぁアイツ、はっきり言ってバカだからな。頑固というか猪突猛進というか。」
「知ってた。」
「知っておったのう。」
「まだ面識の浅いお前らから見ても分かるレベルだったかー……」
「……まぁ、そうじゃのう。じゃからこそ、お主が間に入って折衝役になってくれるのじゃろう?」
「ん、あぁまぁそうだな……よし。善は急げとも言うし、俺は鎖姫と話を詰めてくることにするわ。」
「了解、なんかあったら連絡しろよ。」
「わーってるっての。」
そう言い放ち、錬土は去っていった。
『さて……これでどこまで行けるかだな。』
『うむ……正直賭けじゃからのう。』
『とはいえ、このまま俺たち2人であれこれ相手するのは流石に無理が来る。何とか誤魔化せそうな方策が分かった以上、賭けだろうと進むしかないさ。それに、ま、バレたらその時だ。なんとか方策を考えるさ。』
そう、セイバーと念話で話しながら食事の準備を始める。
さて、まずは腹ごしらえといこうか……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「………さて、と。どうしたもんかね……」
錬土は戈咒の家を出て、鎖姫の下へ向かいながらも先程の会話を振り返り、ひとりごこちる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そりゃそうだろ、寝てる時に誰かが近くを歩いてきたら普通目が覚めるぞお前。」
錬土はそう言い放つと同時に、戈咒の包帯を見て怪訝な表情を浮かべる。
「いや、普通の一般市民はそうはならねぇよ。」
が、そのそれを見越したかのようにその瞬間、戈咒からのメッセージアプリによる連絡が錬土へと届く。
そしてそれを開くと……
『今からお前に俺の現状の全てを伝える。だが全ての音は魔術的に盗聴されている可能性が高い、怪しまれないよう会話を続けながらこっちでも話すぞ』
「そうかぁ?まぁいいけどよ。で、キャスターとはどうだったんだ?」
錬土はそう口頭で返しながら、メッセージアプリを片手で操作し、ただ一言。
『了解』と返す。
「大当たり、無事に同盟を組めたぜ。けど、鎖姫ちゃんに黙ってここまで進めちゃってて話拗れたりしないか?」
そしてその返事を見た戈咒は、コクリと軽く首肯して、更に言葉を綴りだす。
『先ず謝っておく。お前と委員長はとあるマスターにより、常に狙われている。俺への人質としてだ。』
『そして、そのマスターは転校してきたレアで、奴は死徒だ。』
「…………するな!しちゃうね!」
そして、錬土は次々と明かされるそれらの事実に驚きつつもその動揺を腹の中へと収め、静かに続きを促すリプライを送る。
『……続けてくれ。』
『全ては俺が聖杯戦争に巻き込まれた当日の日付が変わる少し前、鎖姫ちゃんと出会った少し後にやつは現れた。』
『奴は俺の何を気に入ったのか、《子》にしようとか言い出して、付け狙ってる。』
『そして挙句の果てには転校までしてきて、学校ではこっちが手を出さないようにお前らを常に自動操縦の使い魔経由で狙っているみたいだ。』
『状況は理解した。』
『だが、それならそれで伝えようはあったろう。置き手紙やらそれこそメッセージ送るやら。何故黙っていた。』
『………俺の左腕。お前がアサシンたちに囚われていた時、その居場所を知る為に取引材料として、やつに差し出したんだ。だからこの腕は既に奴に浸食されている。やつはこの左腕から俺の周りを見聞き出来るんだ。』
『お前………いや、あれはそもそも俺の不覚だ。礼は言っておく』
『けどな』
『全部終わったら1発ぶん殴らせろよ』
『……甘んじて受けさせてもらうよ。』
『まあ、こんな感じだ。今までお前に伝えてなかった現状に関してはね。』
『今になって伝えたのは包帯とかで目隠ししたら普通に見えてないってことがわかったからメッセージで連絡取ればいいって気づいただけ。』
『………なるほどな。もっと早く気づけ。』
『いや流石に無茶じゃない!?』
『うるさい、バカが。』
『ひどくない!?』
『ひどくない。ところで質問だが。レアが鎖姫に同じような手口を使ってくる可能性はありそうか?』
『うーん……どうだろう。鎖姫ちゃんは幸いというか、俺みたく目をつけられてはいないみたいだし。でも聖杯戦争の参加者同士である以上狙われる可能性は十分あるだろうね。とはいえバーサーカーはそもそも強力なサーヴァントだ、、正面から倒される可能性も高いとは思う。』
『なるほど……前に言っていた人狼になるバーサーカーか。警戒するよう伝えておくか。』
『それがいいだろうな。』
そうして、そのやり取りを最後に、今度はカモフラージュの為の会話でなく、口を開く。
「……よし。善は急げとも言うし、俺は鎖姫と話を詰めてくることにするわ。」
「了解、なんかあったら連絡しろよ。」
「わーってるっての。」
そうして、錬土は戈咒の家を出て、鎖姫の下へと歩き出した。
とりあえずニブチン野郎じゃないとか言ってるロリコンはセイバーに殴られてもいいと思う