「にしても、ホントにギリギリだこと。」
鎖姫ちゃんを抱え直しながら思わずそうつぶやく。
「全くだ、まさかホントにこうなるとはなぁ。俺もまだまだ読みが甘かった。」
「いや正直俺も予想外だった。というか割とアソコは勢いというか口に出しちゃったから引っ込みつかなくなっただけと言うか。」
「………まぁ、結果オーライってやつだ。」
ランサーが呆れ果てたようにこちらを見ながらこぼす。
いやだってね、仕方ないじゃん。半ば暴走してたとはいえセイバーに加えてあのヤロウの力まで引き出したのに互角に近いって相手が守ってるんだもの、普通に考えたら危険なんて無いしデマカセでもハッタリでもいいから何か言わないとまた気絶させられそうだったし。
「ちょ、ちょっと待って。ランサー……貴方、セイバーのマスターとグルだったって言うの?」
ランサーとの関係にようやく気づいたのか、鎖姫ちゃんが声を荒らげる。
「あー、悪ぃ。それに関しては確かに勝手に一時的な協力関係を結ばせてもらったぜ、サキ。あー……まさかこんな事になるとは思ってもなかったんだがなぁ。」
「そう………いいわ。貴方まで私を信頼しないなんて……言い訳は結構、誰が貴方のマスターか骨の髄まで叩き込んであげ……!!」
と、そこまで言ったところで突然クタリとなってしまう。
「さ、鎖姫ちゃん!?大丈夫!?どうしたの急に!!」
『安心……せい、ますたぁ。ただの疲労による気絶じゃ。それより、こうしてる間にもお主には負担が掛かっとるんじゃ。とっととそやつをランサーに渡して片をつけるぞ………ますたぁ。』
息を軽く切らしながらセイバーが心中より呟く。
「ランサー、鎖姫ちゃんを頼む。」
「言われるまでもねぇ、マスターを護るのはサーヴァントの本業だぜ?」
そう言うとランサーは鎖姫ちゃんを抱えてアサシン達の少ない方へと下がっていく。
にしても、よく間に合ったもんだよ、ホントにな……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
揺れる振動と鈍い鈍痛で、目を覚ます。
意識が消える前に、何があったのか。レアの奴の毒に犯された左手以外の全てがズキズキ、ビクビクと脈打つように俺の肉体を痛みとして斬り刻む。
ここ……は………
「お、目が覚めたか。」
小声で横から声が掛かる。確認すると、ランサーの顔がそこにあった。
「うわッ……モガモガ……」
驚愕の叫喚をあげようとするもランサーの華奢だが力強い手のひらで口を塞がれる。よく見ると、今のこの身体はランサーに丸太のように抱えあげられている状態だ。反対側を見るとセイバーも同様に抱えあげられている。
「しーーーっ!静かにしろ、バカ。サキに気づかれちまうだろうが。」
そう、ランサーが小声でこちらに話しかけてくる。
にしても、鎖姫ちゃんに……?そうして後ろの方にこっそりと意識を向けると鎖姫ちゃんがランサーを追走しているのが見える。
「どういう、ことだ?」
小声でランサーに言葉を返す。何を考えている……仮にも敵陣営の俺に、しかも自身のマスターに気づかれないようになんて。まさか、裏切るつもりなのか……?
「そう警戒するな、ただの話だ。もうすぐ、奴らの本拠地に着くだろう。そしてその前でお前らを放置して解放する代わりに俺らの邪魔をするなってことだ。」
「なんで、そんなことを?」
「簡単だ、うちのマスターはどうにも気性が激しいからな。折角落ち着いただろうにお前が目覚めたのに気づいたら前哨戦とかなんとか言って喧嘩売りかねん。そうじゃなくともお前がナチュラルに地雷踏んで冷静さを欠かせかねないからな。」
「つまり、俺の存在が邪魔だと。」
そう言うとランサーはコクリと頷いて肯定の意を示す。
「端的に言えば、そういうことだな。」
「だが、俺にだって……」
「あぁ、お前が助けたい人間か?安心しろ、ことここに至ってお前らがアサシン達とグルとは思ってねぇし、生きてる人間は全部救出してくるさ。それなら問題ないだろ?」
「つまり、任せて引けってことかよ。」
「そうだ、サキは最高のマスターだからな。冷静ささえ保てればなんの支障も無くアサシンどもなんざ倒せるに決まってる。」
ランサーはそう言って言葉を切る。まるでこれ以上の会話は不要とすら言うかのごとく。
「百歩譲って……助けに来た俺の友人をお前らが助けてくれるってならそれでもいいさ。一個人としての俺は敵味方はともかく、邪な者じゃないと信頼してるしな。」
「……だがな、ロリコンとしての俺は鎖姫ちゃんをそんな危険性があるところにお前がいるとはいえ、1人で行かせるのには賛同できない。」
「……じゃあ何か?付いてくるって?それが余計に危険を呼び込む可能性があるとしても、か?」
「あぁ。」
その瞬間、ランサーは声に凄みを効かせて俺を問い詰める。
「勘違いするなよバカ野郎。俺はお前に提案してるんじゃねぇんだ。マスターを、サキを危険な目にあわせかねないから消えろっつってんだよ。本当ならこのまま気絶させて再度放置させてもいいんだが、敢えてお前に話をしたのは戦闘中に目覚めてのこのことやってこられたりするのが迷惑だからだ。いい加減に…」
「それだよ。」
「あん?」
「だから、戦闘中にのこのこやって来るってとこさ。俺は邪魔をする気はたしかにない。だが、助ける気はあるんだ。」
「……何が言いたい。」
「簡単な話だ、俺達は気絶したフリをしてお前に放置される。そして、もし鎖姫ちゃんがピンチになれば助けに入る……ってことだ。」
だがその提案をランサーは一笑に付す。
「はん、それこそ有り得ねぇな。邪魔さえなければサキがあんな奴らに遅れなんぞ取らねぇよ。」
……確かに、そうだ。ランサーの強さは実際に手合わせした俺がよく知っている。アサシン如きでは足止めすら厳しいだろう。だが、このままでは気絶させられて終わりだ。何とかしてここで食らいついて鎖姫ちゃんの手助けをして、そして出来ればアサシンをも倒してセイバーの力になりたい。
何かないか、可能性でいい。保険としてでも、コイツに俺をそのまま置いていかせる理由を探すんだーーーそうだ。
「………冷静さを欠いたとしても?」
「……何?」
「そっちの言葉を返すようだが、俺達も今となってはそっちがアサシンとグルとは疑ってない。ならば、何故ここにいるか?そして必死になって俺らと戦ったか。それは勿論とらわれた誰かを助ける為だろう。友人、家族、それはわからないがもしそれらを人質に取られたら?或いは既に殺したと宣告されたら?冷静さを欠かないと言えるのか?」
「ぐっ……」
よし、これなら行けるぞ。このまま押し切ってロリ2人の手助けをして、あわよくばついでに好感度を押し上げてやる……!
「いざという時の為の保険として、役立つんじゃないかな?」
「………ったく。仕方ねぇ。その代わり、冷静さ欠くような自体になるまで絶対に手出しするんじゃねぇぞ。もしそれでサキに危害が及ぶようなことになったらお前だけは道連れにしてやるからな。」
「安心しなよ、俺は一人前のロリコンだ。幼女に危害なんて加えるはずもない。」
その時、後ろの鎖姫ちゃんから声がとぶ。
「ランサー?何をボソボソ言ってるのよ。まさかそいつ起きたの?」
「い、いや。まだ気絶してやがる。それより、そろそろだ。気を引き締めろよ、サキ。」
「ええ、もちろんよ。お兄ちゃんは私が必ず助け出してみせる。」
なるほど……鎖姫ちゃんはお兄ちゃんを助け出そうってことか。健気だなぁ、可愛いなぁ。
「……おい。」
「ん?」
「仕方ねぇから、気絶はさせずに放置しといてやる。その代わり……邪魔だけはするなよ。」
「あぁ、分かってるって。」
ピンチにならないのがベストだし、その間にこっそり錬土を探しに行ければベストだな……けど。その前に未だ眠ったままのセイバーが目を覚まさないと話にもならないか。
そうこうしていると、目の前が開けて歪な建築物が目の前に現れる。
「どう………いうことかしら、ランサー。というか、本当にここにアサシン共がいるの?」
「俺としても信じ難いが……確かに気配は感じる。」
鎖姫ちゃんとついでにランサーも驚愕に包まれているのが分かる。これが、アサシンのアジトか?
「そう……でも、いくらなんでも怪しすぎるでしょう、これは!アサシンが魔術に長けているとも思えなかったし、宝具か何かかしら……?」
「いや、これは見たところ普通に建てた感じだぜ、サキ。」
「どういう事なの……?アジトにしては看板まで出てるし明らかに違うわよね、これ。てか何よ、『肉料理・カーニバル』ってレストランなのここ!?」
「みたいだな……明らかに罠だろうが、どうする?」
「決まってるじゃない、正面から叩き潰すだけよ。」
「よく言った、さて思いっきりぶちかますとするか。」
「あ、ランサー。ここがアジトなら逆にあしでまといになるからそいつらはその辺に放置しときなさい。」
「おう、了解した。」
そうしてランサーは離れたところまで来ると俺とセイバー放り投げ立ち去る。
ちくしょう、思ったより尻も痛ぇしさっきのショックでおさまりかけてた痛みがまたぶり返しやがった……覚えとけよ……
「万が一目覚めて来られても面倒だし、一応捕縛しておこうかしら。」
鎖姫ちゃんはそう言うとボソボソと呪文を唱え、それと同時に俺を縛り付けるように周りのコンクリートが紐状に縛り上げた。
え……ちょっと待って……緊縛プレイされてたらこれ動けなくない?俺。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そうして、ランサー達がアジトらしき建物に入った直後、コンクリートの戒めに力を込めるが思った以上に硬い。おいおい、これのせいで間に合わないとかなったら情けないどころじゃねぇぞ……!
「いや、お主何やっとるんじゃ。」
呆れたようにこちらに声をかけてるくる和服ロリ、即ちセイバーが完全にコンクリートをぶち壊して俺の横にいた。
「セイバー、目が覚めたのか。」
「阿呆、ずっと意識はあったわい……ちょっと、クラクラはするがの。じゃが、その程度じゃ。それより、お主こそ平気なのか?」
痛みが顔に出ていたのか、セイバーが俺を気にかけてくれる。だが、これ以上心配をかけるわけにはいかない。表情を必死に取り繕って誤魔化す。
「え?俺?俺はなんともないけど……どうしたんだ……?」
「そうか……なら、いいわい。それより!」
セイバーが語気を強めて話題を変える。
「ますたぁよ。お主、本当にランサーのマスターを助けに行くつもりか?」
「当たり前だろ、とはいえ邪魔すると悪いからぴんちになったら、な。」
「はぁ……やはり、か。お主と来たら幼子と見れば見境なく全く………!!」
「悪いな、セイバー。でもそれがロリコンって生き様なんだよ。」
「分かっておる、儂も本気で止められるとは思っとらんわ。」
「にしても、どうして儂は此奴を斬り捨てて別の相手に乗り換えんのかのう……」
「ん、何か言ったか、セイバー。」
「何でもないわい!それより、そのお主を縛っとるコンクリート……斬りとばさんとな。」
「いや、俺1人でこれくらいなら斬れる。見てろよ……フッ!」
右腕に刀身をイメージし、全てを断ち斬る刃のように自らの身を縛り上げるコンクリートと斬り裂く。
「どうだ?俺もある程度なら……」
「や、やっぱし……お主、その力。儂の
セイバーは凄い気迫で掴みかかってくる。
「お主……何故そんなものを……!!益々人から遠ざかるだけではないかッッーー!!」
理由を言うのは簡単だ。彼女の笑顔を守るため。けれど、その真実を言って傷つくのもまた、彼女だ。
ならば、ここはーーー
「力が、欲しかった。レアに勝てる様な、聖杯を掴めるような。」
「聖杯……?お主、願いなど無かったのではないのか?」
「何でも叶う万能の願望器だぜ、願いなんていくらでも生まれてくるし考えつく。だから、勝つために。負ける可能性を低くする為に寿命を売った、それだけだよ。」
「………そうか、ならば。勝手にするがいいじゃろう。儂には預かり知らぬことじゃ………じゃが、聖杯戦争中に倒れられても儂としては困る。じゃから、指を出せ。」
そう言われて思わず左の指を出すと首を横に振ってセイバーは言う。
「違う、そっちの気味の悪い毒に犯されたほうじゃないわい。右の人差し指を、ほれ。」
言われて人差し指を差し出すとその指をーー一閃。
居合抜きの要領で浅く斬り抜いた。
「ッッッーー!?」
「阿呆、落ち着かんか。舐め取りにくいわ。」
そう言うとセイバーは俺の右手の人差し指をそのまま掴みとり、
「ーーーーーーーーッッッ!?!?」
「
指を舐め回すセイバー自身がそう言う以上、逆らうことも出来ずに全身ごと右指を硬直させる。
れろ……ちゅぷ、ちゅぽ、といった血液を舐め取る音が静寂たる地下下水道中に広がって響いてるように感じ、その響きは耳を刺激する。
それこそ、果てしない時間に思えてーーー実際は1分程だったその時間が過ぎると、セイバーはこちらを向く。
「……どうじゃ?随分楽になったとは思うがのう?」
確かに、痛みは完全に消え、逆に絶好調と言っていい程だ。
「妖刀の
「そ、そうなの……か?って、ちょっと待て。俺の分の呪いを肩代わりした……?大丈夫なのかよそれ!!」
「阿呆、大丈夫に決まっておるじゃろう。河豚が自分の毒で死ぬか?それと同じじゃよ。」
「そ、そうなのか……なら、良かった。」
「ふん、お主は心配し過ぎなんじゃ。儂はサーヴァントなんじゃぞ、大人しく自分の心配でもしておけ。」
「そういう訳にはいかないよ。大切なパートナーなんだし………でも。さっきの指チュパは心臓に悪いからもう勘弁して欲しい………」
「………え、お、お主。まさか、アレで欲情しておったのか……!?さ、流石の儂もドン引きじゃぞ………!!」
「し、仕方ないだろ。だいたいなぁ、お前が……」
ーーその、瞬間。
爆音が鳴り響き渡った。
「……セイバー。」
「あぁ、ますたぁよ。いくぞ。」
セイバーの意識が再び俺の中に入り込み、俯瞰するように俺の意識が外に出る。
そして爆発音に釣られて戻ってきたのか、それとも単純にこの時を待っていたのか。アサシン達が複数で取り囲む。
「やるか、セイバー。」
「うむ。先程までの、1人で戦っていた儂らとは違うということを此奴らに思い知らせてやろうぞ……!!」
指チュパは天啓を受けたのでノリで追加されたシーン
ロリの指チュパって興奮しません?え、それで興奮するのは変態だけ?あ……そう。