いやー、夏って忙しい
シンフォギア二週目見始めると時間がありませんねぇ
ところでお気に入り50件いきました、ありがとうございます
地下下水道、その奥に据え付けられた一室で猟理人は地下の様子を映し出す監視カメラを見ながら一人呟く。
「ふぅ……なんともはや。最優の名はやはり伊達ではないということか。」
その部屋は壁をくり抜いて厚い壁の向こうにあり、外部とは完全に臭いから何からを遮断された調理場と食事所として相応しい清潔な空間になっており、同じ下水道内部とは思えない。
その部屋にガチャリと扉開く音がしてアサシンのサーヴァントが入ってくる。宝具で召喚された紛い物の家族ではなく、正真正銘聖杯に招かれたアサシンのサーヴァント。彼は普段の現代衣装ではなくボロボロの布キレを纏った姿で現れていた。
「猟理人よ、悪い知らせだ。私の子供たちが、長男のジャンクも含めてやられた。まさか、ここまでだとはな。」
「あぁ、監視カメラで私も見ていたよ。もう一度、作戦を練り直すべきかもしれないな。だが、その前に献立を考えなくてはな。」
「おぉ、それは頼もしい。君の料理は活力がとても湧いてくるからな、我々が生前していたのはただ餌を喰らっていただけだと恥ずかしながら思い知らされたよ。」
「まさか、礼を言うのは私の方さ。私ももう一度料理を振る舞うことが出来るとは思っていなかった。」
そう言うと数週間ほど猟理人は前を懐かしむように思い返す。
「そう、あの時。君が私の独房に現れるまでは。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日は、独房の中でもハッキリと分かるほど強い雨の降る日だった。
警察からは猟理人の名で呼ばれていたその男は1人、残り少ない夜を噛み締めていた。
その横顔には、かつて10代前半でフランスでの修行を始め、そこで10年の修行を積んだ後各地で数年ずつ修行を繰り返し料理の天才の名を欲しいままにした男の姿はどこにもない。あるのはただ一つ、人非人の姿である。
彼が、長い修行の果てにある時見つけた。いや、気づいた食の真理。美味の禁忌。同族喰い。
即ちーーー
以来、彼は煌びやかな料理の表舞台から姿を消した。獣を獲る為に嘗て学んだ罠や、テレビ出演の経験を生かした話術で人を捕らえ、殺し、調理し、喰らう。
一流料理人、六道 尊の姿はそこに無く。猟奇殺人犯、六道 尊の姿がそこにあった。
彼は頭の回る人間だったが故に、巧みに警察の手を逃れ続けたが、所詮は料理人。1人目の被害者殺害から実に10ヶ月。その時点で遂に警察に囚われることとなった。
が、しかし。彼の逮捕によって新たに発覚した被害者を含めると10ヶ月で実に25人。個人の殺害規模としてはトップクラスの事件となり、本人の知名度もありお茶の間でも盛大に取り上げられた。
そしてそれから10年後、死刑執行の期日がいよいよ決まった今日。過去に思いを振り返りながら、彼はあることだけを考えていた。
ーーもっと、もっと美味な料理を作りたい
彼の未練とも言えるその願いは天に、いや煉獄の悪魔に届いたのか。
1人きりの独房に音がする。
次いで、彼の嗅覚は臭いを嗅ぎつける。人の血の、肉の臭いを。
そして、目の前に現れるは成人男性らしき肉塊を片手に抱え、黒いボロ布を纏った人間。
どこから現れたのか気にはなるが、彼にとってはそれはそこまで気にならない。
何故なら、
そして、その男はこっちにようやく気づいたのか意識を向け、小声で尊に声をかけてくる。
「………チッ。雨を凌ごうとしたら人がいたか。おい、騒ぐないでもらおうか。私は静かに食事がしたいんだ。」
そう、ドスの効いた声で凄んでくるが彼にとってはそれすらも気にならない。
彼の頭の中は、人肉を抱えて食事と言ったその男の言葉を聞いた瞬間有頂天になっていたからだ。
「………すばらしい。」
「あん、なんだって?」
「すばらしい!!君は、人肉食を解するのだね!?この腐ったような現代にもやはり同士は存在したのだ!!」
「おい、だから騒ぐなと……何?お前、肉の味がわかるのか。」
「ーーもちろん。猟理人ことこの私は現代における人肉食の第一人者と自負しているさ。だが、それだけに惜しい……ここが私のキッチンなら!その肉をより素晴らしく調理出来るというのに!!ようやく現れた同士との出逢いがこのようなところだとは!!」
「なに……調理、だと?」
「あぁ、まさか君は今まで生のまま食べていたのか?」
「そうだが……お前は、そうではないのか?」
「勿論、素材の味を活かして様々な調理を施す。そうして出来上がった美味なる料理で客を喜ばせる、それが猟理人である私の存在意義にして生き甲斐だッッ!!」
「ほう……美味、か。気が変わった。お前をキッチンとやらに連れていこう、その代わりに私に人肉料理を食べさせてもらおう。」
そう言うと男は鉄筋コンクリートの壁を素手でブチ抜き外への道を開く。
「ーーー喜んで。至高の料理を振る舞わせて頂こう。」
これが、猟理人と食人鬼の出会いだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どうした、猟理人よ。」
アサシンの声で、過去へと追想していた意識が引き戻される。
「あぁ、なに。君との出会いを思い返していてね。まさにあれは運命的だった。」
「あぁ、その通りだ。あの時の私はまだ何も人肉食というものを理解していなかった。君の料理を食べるまではな。」
「なに、人肉食を行っていたと言うだけで私からすれば充分な程に同士さ。さて……献立も思いついたが、色々仕掛けたから奴らが来るにはまだ少し時間があるだろう。本格的な調理に入る前に、軽くどうだい?」
グラスを傾ける仕草共にアサシンに言う。
「なるほど、悪くないな。君と2人で食事をしながら語り合う機会も少なかったし、丁度いいとも言えるか。」
「なら、少し待っていてくれ。三日前に君のところのフランクが殺してきてくれた肉がそろそろ食べ頃のはずだ。」
「三日前?いくらなんでも、それはさすがに古いのではないか?」
「肉には熟成期間というものがあるのだよ、アサシン。まぁ論より証拠、今調理してくるとしよう。」
そうして私は厨房に入る。コックコートに着替え、手を洗い、気を引き締める。
そして冷蔵室から取り出すのは三日前にフランクが持ってきてくれた小学生くらいの牡の肉。
この年代ならまだ第二次性徴に入っていないので肉が柔らかく熟成もそれほど長くする必要は無い。
皮を剥いで部位ごとに切り分けて冷やしておいたそれのムネ肉の部分を取り出し、二つに切り分ける。そして塩、胡椒、小麦粉を丁寧にムネ肉にまぶす。
そうしてフライパンを加熱しながら皮の裏からから削り取った皮下脂肪をしき、馴染ませる。
やはりサラダオイルなんかよりは人の油が一番だ、特に子供の脂は臭みが少なくて使いやすい。
パチパチとしかれた脂が熱され弾けてきたタイミングで、小麦粉をまぶしたムネ肉を投入して強火で一気に焼き始める。
数分間しっかりと焼き、こんがりと焦げ目がついたタイミングでひっくり返して裏からも火を通す。
うーむ、香ばしい匂いが食欲をそそる。
そして裏面もこんがりと焼けたタイミングで火を止め、冷めないように温めておいた陶器の皿に盛り付ける。
そして、仕上げにレモンを軽く絞ると、ワインと共に皿をトレーに載せてアサシンの待つ私室へと向かう。
「出来たぞ、アサシン。」
「おぉ、待っていたよ。さて…一体なんの料理かな……これは。」
アサシンが目を見開く。
「そう、子供のムネ肉を使ったヒューマンソテーだ。私たちの出会いの料理さ。」
今回のソテーの調理法はクックパッドのポークソテーの調理法を元にしました
あと色々熟成やらなんやかや書いてますが作者は人肉なんて食べたことはないのですべて想像で書いてます
ちなみに参考資料というか肉の熟成やらの知識の元は美味しんぼ()