Fate/erosion   作:ロリトラ

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あと1話とか次の更新で終わるって?こんだけガッツリした設定の開示して1発で終わるわけねぇだろよく考えてものを話せ前回の俺!

という訳ですいません、今回2話更新ですが終わりきりませんでした。
あと、少し前の更新で載せたルーラーのステータス、自分のメモの作りかけの時のデータで載せちゃったので変更しました、すいません。


幕間/鎖山の魔森

「なんなんだよ…こりゃあ……!」

 

地に着いた鷲獅子の合成獣(キメラ)の背からルトガルディスと共に降り立ったルキアは鎖山森を見るなり思わずそう、言い放った。

 

それもそのはず、アタシ自身の知るこの森とは完全に雰囲気が変化していた。

嘗て、と言っても一週間前頃までは霊脈沿いに位置するが故に多少の魔力を感じるスポットではあっても、ここまでじゃなかった。

 

ーーーそれが今は。皮膚に伝わる刺すような感覚はこの森自身がアタシ達を排斥しようとするかの如くに意思を持つ魔力の波が漏れ出ている。

 

「……こっちよ。」

 

そう声をかけるキャスターの先導で森の中に入ると、さらに分かる。この森は、いや、森自体に被せられた結界だろうか。それの本質は排斥ではない。入れた者を逃がさず喰らい尽くす、バケモノの森、異界迷宮(ダンジョン)だ。

肌に感じるその怖気は以前教会の資料で読んだことがある俯海林(アインナッシュ)を連想させる。アレと同じような存在なのだろうか。

 

「ふぅ……監督役さん。考えるのに夢中なのはいいけど、そっち行くと死ぬわよ……ふぅ。」

「へ?」

 

完全に意識の外から掛けられた忠告に思わず思考は断絶し、道を曲がった前の2人とは違う方向にそのまま進もうとしていたことに気づく。どうやら、また考え込み過ぎて周りが見えなくなっていたらしい。

 

「ーーっと。すまな……うわああああ!!」

 

そう、引き返そうとした瞬間足下の絡み合った木の根が一瞬にして解け、奈落へと通じる。ここも罠だったのかーー!!

 

「ルトガルディスーー!」

 

サーヴァントの名を呼びながら必死に手を伸ばすも届かない。

 

ーーその時、ルキアは耳にした。熟練した魔術師の高速詠唱に匹敵する速度の彼女の詠唱を。

 

「罪の荊よ、私が育み私が許す。我が手から取り零す者は1人もいない。我が目の届かぬ者は1人もいない。」

 

何をする気なのか。だが既にアタシが墜落した孔は伸ばした手の指のスキマから覗けるほどに小さくて。

 

「生涯の罪は、死の中でこそ償われる。

ーー許しはここに。仮初(かりそめ)の私が誓う。

"この魂に荊罰を(キリエ・ティモリア)"ーーー!!」

 

詠唱と共に蔦のようなモノが伸びてきて伸ばした腕に絡みついた。

 

ーーッッ!!絡みついた腕に鋭い痛みが走る。これは蔦じゃない、茨だ。アタシの体重を支えたが故に引っ張られてより強く食いこんだんだろう。

そして、そのまま身体に感じるのは浮遊感。サーヴァントととしての膂力で引き上げられる。

 

そうして。地上に引き上げられたアタシが見たのは。腹部から流れる血を手で抑えながら、アタシを引き摺りだしたルトガルディス。そして、キャスターを携えながらそれを横から眺める初老の男の姿だった。

 

その状況に、頭に血が登り、思考が集約する。

すなわち、目の前のコイツらが敵だと。

 

「る…ルトガルディス!!その傷は!おいテメェら、アタシのサーヴァントに何しやがった……!!」

 

そう、怒りのままに問いかけると。男は何も悪いことはしてないといった体でいけしゃあしゃあと言葉を返す。

 

「何か……と問われたならば。私は何も、としか返す言葉を持たないな。」

「てめぇ……!!蹴っ飛ばす!!」

 

しかし男はアタシの怒りなど柳に風といったふうに受け流し飄々とした笑みを崩さない。

 

ーーいいさ、そのニヤついた顔面を蹴り砕いてやるよ。

 

そうして、左脚を踏み込み軸とする。そのまま勢いを右足の甲に乗せて、側頭部へと回し蹴りを叩きこーー「point(座標運動・固定)」ーー瞬間。肉体が突如停止する。急激な停止命令は筋肉に負荷を与え、ダメージとなってアタシの身に返ってくる。

 

「ガ……ッ!?」

「……ふぅ。流石の私もチョッピリ焦っちゃったよ。短期はイケナイなぁ、レディ?」

「……て……めェ……なに……を!?」

 

呂律が回らない、いやそれどころか呼吸すら上手く動かない。まるで。そう、まるで。肉体がその()()()()()()()()()()()()ようなーーー

 

「ふむゥ。なるほど……僅かながら呼吸と撥音は成っている…か。やはり、まだ()()()()()()()()()()()()()……ということか。それとも、度重なる転写の悪影響か……?」

 

男はアタシの呼吸や眼球運動を睨め回す観察しながら、そのように呟く。くそ……一体なんなんだよ、これ。

 

「ーー思考はいいのですけれど、彼女を自由にしてくれませんこと。確かに貴方に非が無いのは分かっていますし、手伝っていただけた事には感謝しておりますわ。けれどもマスター、いえ。友人をこんなにされて黙ってられる程私人間が出来ておりませんのーー!」

 

ルトガルディス!どうやら、無事だったようだ。よかった。ホントよかった。奴の首に掌を突きつけてアタシを解放させようとしてくれてるみたいだが、何か……これを破る手は……あるのか……?

 

「マスターに何してんのよ、おたく。……()()()ぞ。」

 

どうやら……キャスターが激昴して…………いるようだ。だめだ……もう……息が………

 

「待ち給え、キャスター。ーーrelease(固定・解除)

 

 

「ぷっはァ!……ハァ、ハァハァ、ハァ。」

 

視界が開ける。振り上げた脚はそのままバランスを崩し一気に尻からへたりこむ。呼吸が、整っていく度に身体が楽になるのが分かる。ああーー空気が美味い。アタシは助かったのか……

 

「それで、説明してもらえますこと?今のような蛮行に及んだ理由を。」

「ルトガルディス!無事だったか!?」

 

そう叫んで、ついとびかかってしまう。傷は、平気なのか?

 

「る、ルルルキア!?傷なんて、だだ大丈夫でしてよ!私なんかより、貴女のほうこそ!」

「アタシこそ大したことねぇよ、溺れかけたのと変わらねぇさ。」

「なら……よかったですわ。」

 

そうしてると、さっきの男とキャスターが言葉を交わしながら近づいてくる。

 

「いやぁ……美女同士のくんずほぐれつってのはなかなかに目の保養になるねぇ。そう思わないかい、キャスターも。」

「……超どうでもいいわ………ふぅ。」

「テメェ……さっきはよくも……」

「ちょ、ちょっと待ってくださいですの!先程のアレは私もカッチン来てしまいましたがその前は一応助けてくださったのですわ。」

「……え?」

 

そうしてそちらを見ると如何にも、といった顔で男がドヤついてる。めっちゃ殴りてぇ。

 

「うむ、ではまずその辺りからの説明をしようか。私はラバック・アルカト。アトラスの錬金術師だ。」

 

やはり……か。示す証拠は数多くあった。キャスターの態度といい、この森の状況といい。

 

「まず、この件に関してだが、全ての原因は君の不注意だよ、レディ・ザビーヌ。君が思考に明け暮れた果てにキャスターの先導を無視して外敵用の罠に掛かったのが原因だ。」

 

ぐむむっ……。確かに、それに関しては言い訳のしょうもない。完全にアタシの落ち度だ。

 

「そして、君が落ちた時に、そこのルーラーは君を助けるための魔術行使をした。いやぁはじめて見る魔術基盤でねぇ、つい年柄にもなく興奮してしまったよ。いや、見覚えはあった気がするんだが、どうにも珍しくてね。おっと、話が逸れてしまったな。ともかく、君を救うために魔術を行使していたのだ。」

 

なるほど……それがあの茨か。腕に絡みつき、アタシを持ち上げた。ふと、腕を見ると傷一つない。さっきのは幻痛だったのか……?

 

「それで、私としても同盟相手をこんな事で失う訳にはいかないのでね。君を救うのに微力ながら、力を貸させてもらったよ。」

「いえ、私1人じゃあそこまでスムーズに救出が出来たかは分かりませんでしたわ。本当に、礼を申し上げましてよ。」

「いやいや、苦しんでいるレディを救うのは紳士としての務めですとも。ふふふふふはははは!」

「ふぅ……うちのマスターってのは……全く。ふぅ……それにそもそも……紳士はあんな事しないわよね……ふぅ。」

 

なるほど……あの時感じた不思議な浮遊感はラバックの魔術によるものだったのか。

 

「それで、君を救いあげたと思ったら君が私を敵と勘違いして襲ってきたからね、仕方なく迎撃したまでさ。」

「それでも……あそこまでする必要は無かったはずですわ。」

「いやぁ、お恥ずかしいことだが、この身体で結界に接続(アクセス)するの初めてでね、少し試運転も兼ねてたものでつい、感覚を確かめてしまってたんだ。」

「……最低ですわね。」

 

ルトガルディスがそう、吐き捨てるように言う。彼女も魔術自体は使うようだが、その在り方は魔術使いに近い。この様な自身の探究心を優先する魔術師らしい魔術師に嫌悪を覚えるのは必然か。

 

「なるほどな……確かに、ここまでの経緯は分かったよ。それに、ルトガルディスの所見同様アンタが『魔術師』だってこともな。とはいえ、一つ腑に落ちないことがある。そこを明かしてもらえないことには同盟どころか、今ここで聖杯戦争が勃発するぞ?」

「ああ、分かっている。今は話の流れをスムーズにする為に私としても意図的に省かせてもらったのだ。なにしろ、私としてもよく理解ができていないのでね。」

 

ラバック自身も理解出来ていない……?どういう事だ。いや、ここはこれ以上思考を重ねても仕方がない、まずは話を聞かなくては。

 

「……ルトガルディスは、どうしてダメージを負っているんだ?キャスターかテメェと交戦したとでもない限り考えつかねぇ。仮にもコイツは聖杯戦争最高特権を持つ裁定者だ。そこらにいる程度の合成獣(キメラ)如きにはビクともしねぇだろうよ。」

「言っとくけども……ワタシにも無理よ。そんな運動神経良くないし……ふぅ。」

「キャスター、君これでも私のサーヴァントなんだからそんな不安になるような事言わないでくれよ。」

「……話を逸らすなよ。アタシのルトガルディスに手を出したのは誰だって聞いてんのさ。」

「だから、それなのだがね。私にも分からない。」

「んだと?」

「……いや、予想なら出来るが、真実を知るのはそこのルーラーだけだろう。」

「ルトガルディスだけ……?」

 

そうしてラバックはルトガルディスに向き直ると襟を正して問いただした。

 

「レディ・ルトガルディス。君の魔術には、何らかの反動があるのではないかね?」

 

なん……だって……!?

 

「私は君の前に出て魔術を使っていたし、視界も孔の中に飛ばして中途半端に落ちた人間が引き上げられる場合森がどう反応するのか観察するのに夢中だったから意識が一切向いていなかった。キャスターにも茨を引かせていたから君を見てはいないだろう。そしてレディ・ザビーヌが引き上げられた後に君の方を見ると腹部を抑えてうずくまっていた。これはそう考えるしかないだろう。」

「案外……すぐバレてしまうものなのですわね。これを見てくださいまし。」

 

ルトガルディスは、そう言うとシスター服を捲りあげて腹部を顕にする。

 

「なんともはや……」

「へぇ……」

「な……!」

 

彼女の左脇腹。そこには、魔力として霧散しているものの今なお血が流れ続けている、深い刺傷が存在した。

 

「なるほど……そういえば、聖ルトガルディスという名をかつて聞いたことがあるな。聖人であり、左脇腹の傷。とくれば答えは一つ、か。」

「ああ、そうだ。アタシも忘れていた。ルトガルディスの逸話にはもう一つ有名な話がある。二十歳前後の頃に『あの方』を見たというのの他に、左脇腹に聖痕を受けたというものが……!」

 

その答えにルトガルディスは頷きながら聖痕をなぞり、応える。

 

「ええ、その通りですわ。これは『あの人』と同じ傷痕。私の信仰の証。この聖痕は常に痛みを発し、血を流す。そしてそれは私の使う魔術に反応して大きくなるのです。」

「ふむ…なるほどな。実に興味深い……が、今はそれ以上話を進めるべきではないか。レディ・ザビーヌ、誤解が解けた以上、改めて同盟締結、と致したいのだが、返事は如何かね?」

「あぁ……依存はないさ。そして、済まなかった。勘違いとはいえいきなり攻撃しちまった。」

「いやいや、私こそ。君を苦しめる意図は無かったのだが……すまないね。」

「ハッ……そんなんはなんとも思ってねぇさ、魔術師なんて所詮そんなもんだろ。」

「おやおや手厳しい。まぁ否定出来ないのが辛いところなんだがね。」

「別に……魔術師じゃなくてもね……ふぅ。人は自分のことしか……考えないわよ……1人で死ぬのだから……ね……ふぅ。」

「あら、その言葉は聞き捨てなりませんわね。」

「ふぅ……経験談……よ。」

「お、おいルトガルディス落ち着けよ。」

「る、ルキア……」

「キャスターもだ。不要な諍いの種を撒くんじゃない。」

「ふぅ……つい……すまないね。」

「いえ、私も大人げなかったですわ。」

 

キャスターの言葉が気に触ったのかルトガルディスの語調が荒くなり、いきなり諍いを止めるハメになってしまった。

折角同盟締結だってのに初っ端からこれじゃ、先が思いやられるな……

 




ルトガルディスさんの色々も出したのでここで宝具を除くステータス欄を公開します

ルーラー
真名:ルトガルディス
属性:秩序・善
性別:女性
身長:156cm
体重:54kg

基本ステータス
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具B

クラススキル
対魔力:A
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。ただしルーラーの場合、教会の秘蹟には対応しない。

真名看破:C-
ルーラーのクラス特性。直接遭遇したサーヴァントの真名・スキルなどの一部の情報を即座に把握する。
あくまで把握できるのはサーヴァントとしての情報のみで、対象となったサーヴァントの思想信条や個人的な事情は対象外。
また、真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなど隠蔽能力を持つ場合は見ることが出来ない。
不完全な召喚の影響でランクが低下している。

神明裁決:C-
ルーラーの最高特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、1回まで令呪を行使できる。他のサーヴァント用の令呪を転用することは出来ない。
不完全な召喚の影響でランクが低下している。


固有スキル

啓示:B
"神の子や聖人からの声"を聞き、最適な行動をとる。魂が持つスキル。
『直感』は戦闘における第六感だが、啓示は目標の達成に関する事象全て(例えば旅の途中で最適の道を選ぶ)に適応する。
だが根拠がない(と本人には思える)ため、他者にうまく説明できない。

奇跡:C-
時に不可能を可能とする奇跡。
星の開拓者に似た部分があるものの、本質的に異なるものである。適用される物事についても異なっている。
ルーラーの場合は逸話より治癒能力及び直近の未来を視認する未来視としてのみ発動する。

聖痕:B
ルーラーの脇腹に残る槍で突かれた聖痕。常に血を流しており毎ターン幸運の判定に失敗するとダメージ。常に痛みを感じているが、ルーラーの意志力により全くそれを感じさせない動きをする。このスキルにより聖人スキルのランクが上昇している。

聖人:B(C)
聖人として認定された者であることを表す。
サーヴァントとして召喚された時に“秘蹟の効果上昇”、“HP自動回復”、“聖骸布の作成が可能”から、ひとつ選択される。
ルーラーはカリスマスキルを持たないことから“カリスマを1ランクアップ”の選択肢が消滅している。
聖痕スキルによりランクが上昇している。
ルーラーは秘蹟の効果上昇を選択している。


洗礼詠唱:A+
教会流に形式を変化させた魔術。霊体に対し絶大な効果を及ばす。
ルーラーの場合、生前の神秘家としての研究により対人間霊や対自然霊、などそれぞれの対象に最適化させるアレンジを加えた独自の詠唱を使うのみでなく、教会の教えに影響を受けた魔術というものも行使可能。
ただしその場合、聖痕からダメージを受けてしまう。

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