モモンガさんが冒険者にならないお話   作:きりP

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前回のお話を投稿したことで、やりきった感が……w
今回のお話は、書きながら「あ、私あたまおかしいんだな」と再確認できました。




第三話

 アインズは悩む。『おかあさんといっしょ』は勘弁願いたいのだが、仲間が制作してくれたという意味合いが何なのか。だがさすがに装備をしなければ話が進まないわけで、おそるおそる仕方なしにとばかりに指輪を嵌める。

 途端まばゆい光に包まれて、現れたのは淡いピンクのドレスを着た黒目銀髪の少女だった。

 

「これはまた……うわあ……」

 

 なんと言っていいか言葉が出ない。美少女だ。間違いなく美少女ではあるのだが、鏡に映る驚いている表情を見て、完全にこれは自分であると認識できてしまう自分にまた驚愕してしまい言葉が出ない。

 1分、2分と経った頃にそれに気づく。アンデットの≪精神安定化≫の効果が効いていないのだ。

 

「よっ、よし! ふぅ……色々と考えるのは実験が終わってからだ」

 

 この声茶釜さんの声だよなあと思いつつも、とにかく飲食が出来るかの確認だ。それが出来ないようなら、このアイテムは不必要であるのだから。

 アインズは先ほどまでと同じように無限の水差しで注いだ冷たい水に口をつけた。

 

「んくっ、ぷはぁ。冷たくて……すごくおいしいな……」

 

 水ってこんなにおいしかったっけ? と、実験も忘れて感動してしまったが、そういえばアウラやマーレもそれは美味しそうに飲んでいたことを思いだした。これは結構特別な水であるのだろうか。

 実際のところリアルで鈴木悟が飲んでいたのは、汚染された水を限界まで濾過し、薬液で殺菌した水。ほぼ工業用水と変わらぬH2Oに味などあるはずもないのだが、今の彼には知る由もなかった。

 

「おめでとうございます! んー、アインズ様! 実験は成功でございますねっ」

 

 完全にパンドラがいたことを忘れていたために、その声に驚く。この高い声では無駄であるかもしれないが、威厳ある態度を示さなくては。

 

「!? そっ、そうだな。これならば実用に足るかもしれん。それでパンドラズ・アクターよ。思い違いでなければこの指輪は、私が宝物殿に……違うな、確か……やまいこさんに宝物殿にしまっておいてもらった指輪であると思うのだが」

「何分そこまではわかりませんが、至高の方たちが書き残したメモが付属しておりましたので、こちらに書かれているのではと愚考いたします」

 

 渡されたメッセージカードには表書きに『モモンガさんへ』と書かれてあった。早速開いて読んでみる。

 なるほど、あのときの光景を思い出してきた。あの後そんなことがあったのかと、悪いことをしたなと思う反面、それはそれで自分が仲間はずれみたいな、でも自分の為にやってくれたことに感謝もあるしと、唸ってしまう。

 メモにはそのほか、たぶん私が指輪の仕様を知らないだろうと、簡単な説明が書かれていた。

 

 

 要約すると、まずLvの大幅な低下。これは人間種になることで種族Lvがなくなるため起こることのようだ。つまり私なら今Lv60ってことだな。

 正直これについては疑問があるのだが……まあ後にしておこう。

 

 二つ目は装備品について。装備はすべて外されアイテムボックスの中に移動してしまう。手を伸ばしてアイテムボックスの中を確認してみると、なるほど確かにある。通称『モモンガ玉』までもが移動しているようだ。

 追記で、指輪はまた課金しないと他の指には装備できないみたいですよって……どうやって課金しろと……

 

 最後に効果範囲について。

 

「え?」

 

 つまるところ、この指輪は人間種の街や村、および自身の拠点から1Kmほど離れると効果が切れるそうだ。

 

「あー……レベリングが難しいってこういうことか……」

 

 当時の噂話を思い出す。複垢(アカウント)的な効果なのか、この外装、レベルが上げられるのだ。だが上げ切ったという話は聞いたことが無かった。

 拠点付近までMobを引っ張ってきてから倒すなんて手段もあるにはあるが、そもそも拠点や街でしか使えないのにLvを上げる意味が薄すぎるからなのか。

 考えれば効果的な使用方法はあるかもしれないが、それはユグドラシルでならと前置きが付く。

 

 それはともかく最後に書かれてある「やりすぎちゃってごめんね♪」に頬がひきつるのはなんでだろう。かなり恐ろしい。

 

 

 再び姿見をのぞき込む。やはり美少女だ。だがアルベドやシャルティア、アウラやマーレ(?)、プレアデスや一般メイドを見慣れてしまうと、それほど違和感は無いかもしれない。ないよな?

 他者視点で考えると自分のこの外装を含めて、全員の中で誰が一番美人か美少女かと言われたら甲乙つけられないって感じだな。

 

「これの原画……いや、外装(見た目)はク・ドゥ・グラースさん? それともホワイトブリムさんが?」

「はっ! ホワイトブリム様が至高の御方々の意見をまとめて設計したようでございます」

 

 どちらかというと一般メイド寄りかなと思い、パンドラに尋ねてみるとなるほど、全員の意見が反映されているわけか。

 

「それにしては、ホワイトブリムさんならメイド服だと思ったんだがな」

 

 『メイド服は俺の全て!(ジャスティス)』の彼を思い出す。

 

「それはアインズ様、いえモモンガ様が御可哀そうであるからとのことで、4パターンの外装(衣装)の一つのそれは、シンプルなものを制作したとのことです」

 

 なんだそれ……えっ、4パターンてなんだ? むちゃくちゃ怖くなってきたんだが。

 

「……もったいぶった話はやめよう。パンドラズ・アクターよ。このメモにはあまり詳しいことが書かれていないようなのだ。どうやらお前は制作過程を覚えているようであるし、当時のことを踏まえて教えてくれないか」

「おお! 我が創造主様の為ならどんなことでも! 私奴が覚えている限りすべてーをお話しさせていただきますっ!」

 

 ぐるぐると回転しながら、スケートのイナバウワー的なポーズを取る。助けて! ≪精神安定化≫効果さん!

 

 

「ではまず簡単な身体構成から。身長は158cm、体重は「秘密だよ♪」とのことでございます」

「……」

「身長については40名の意見の平均値を取ったとの事ですが、ペロロンチーノ様が120cmとおっしゃった事でずいぶん小さ「ペロロンチーノおおおお!」」

 

 思わず咆哮する。そうだね、≪精神安定化≫が無いものね。うん、ロリコンだものね。知ってた。

 

「髪色については、これはかなり意見が分かれたようなのですが、ペロロンチーノ様、ウルベルト・アレイン・オードル様、タブラ・スマラグディナ様などの意見が僅差で通り、次点の黒髪と2票差で銀髪が採用されました。その際には黒髪を推していた、たっち・みー様が膝をついて悔しがり「たっちさーん!?」」

 

 どうやら中二病の勝利だったようだ。

 

「外見年齢については18歳前後を想定しているようです。これもまた至高の御方々が考えた年齢の平均値だそうで、最低年齢をペロロンチーノ様が『永遠の12歳』と。最高年齢を死獣天朱雀様が『34歳熟れ頃妻』とおっしゃったことで「おいぃ!教授何言ってんの!」」

 

 女性陣はドン引きだったようだ。

 

 その後も、出るわ出るわの性癖の暴露大会の様相を呈してきたが、なるほど、この目、口、鼻に至るまで、手足に首、胸、腰に至るまで、徹底して『思考した至高の嗜好』なのだろう……うん、上手いな。

 

「って上手くねーよ! てかみんな楽しそうだな!?」

 

 もう「なんなのなの?」と膝を突いてぐったりしてしまう。そして目から涙がぽろぽろと……あれ? これ涙じゃなくて『エフェクト』か?

 

「おお! ついに出ましたねっ! ヘロヘロ様他AI担当の猛者たちが『仕事の合間に血尿を垂らしながら仕込んだ』とおっしゃられていた『涙エフェクト』がっ!」

「あの人たちなにやってんだよぉおお!!」

 

 アインズは叫ぶ。それはまさに魂の咆哮であった。

 

「そして最後にそのドレスについてですが、ぶくぶく茶釜様、やまいこ様、餡ころもっちもち様による理想のウェディングドレスになります。ですが三人の意見は統一されず、他の至高の方々を一人づつ壁際に寄せて御三方で囲むようにして説得し、外装元を希少金属製の糸で作り替え『形態変化のクリスタル』をなんと3つも仕込み、現在のドレスをホワイトブリム様が。そして形態変化で外装効果をそのままに、3つのウエディングドレスに変更できるという、まさに! 神器級のドレスとなっております!」

 

「……」

 

 アインズは倒れ伏しながら姿見をちらりと見る。なんか両目の色が赤と金に変わってるなーなんて思いながら、思考を放棄した。真っ白に燃え尽きて倒れ伏したそれは、まさに昔見た某アニメ、竜玉のヤ〇ムチャのようであった。

 

 




ちなみに外装効果は『色彩・色調変更』『温度調整』など戦闘には全く関係ないものばかりです。

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