ハリーポッターとゴーント家の令嬢   作:ゆきみかん

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組分けの儀式

汽車を降りると、ホームの中ほどから大きな声が聞こえてきた。

 

「イッチ年生!、イッチ年生はこっちだ」

 

声の方に目を向けると、大柄な男が1年生を集めている。この大男には見覚えがあった。オリバンダーの店でハリーを迎えに来ていた。

なるほど、ホグワーツの関係者だったのか。

 

「わ、大きな人だね」

 

後から降りてきたダフネも男の大きさに驚いているようだった。

 

「大柄と言うにも大きすぎるけど」

 

初めて見た時は大きさに面食らっただけだったが、今冷静に見ると大柄というよりは巨大だ。おそらく巨人の血が多少まざっているに違いない。

 

「イッチ年生。残ってるイッチ年生はおらんか?さあ、イッチ年生、ついてこい!」

 

大柄な男の先導に従って険しくて狭い小路をゾロゾロと進んでいく。木が生い茂っているのか右も左も真っ暗で、道の先にランタンの明かりが見えるだけだ。

 

「ホグワーツ特急ってホグワーツに直接乗り入れるわけじゃないのね」

「そうみたいだね」

 

ホグワーツには多様な保護がかかっているから、ある程度隔絶していないと都合が悪いのだろう。

 

「みんな!ホグワーツがみえるぞー!この角をまがったらすぐだ」

 

狭い道が急に開け、大きな湖の辺りにでた。対岸には高い山がそびえ立ちその頂上に壮大な城、ホグワーツが建っているのがみえた。

ホグワーツを見た周りの生徒が歓声をあげる。私も思わず声をだしてしまう。

星空をバックに、大小様々な塔が立ち並び、輝く窓が浮かび上がっている。なかなかに幻想的な光景だった。

 

「わぁっ」

 

隣のダフネも声を弾ませている。しばし幻想的な光景を眺めていたが、先導の大男が湖を渡るぞといったのでそちらに目を向ける。

岸につながれた小舟でこの湖を渡るらしい。

ダフネと共にのり、その後からハーマイオニーとヒキガエルを探していた男の子が続いて乗った。

 

「さあ、お前さんら漕いで向こう岸まですすむぞ」

 

引率の男が大きく声を張り、バシャバシャと回りの小舟が進み始める。

 

「ね、私船って漕いだことないや。これ両方もつの?」

 

そう言ってオールを手にしたダフネに対してハーマイオニーが続ける。

 

「あら、魔法使いは船にのらないの?そうね、片方づつでもいいけど動かし方が違うとその場で回転しちゃうから一人で漕いだ方がいいわ」

「乗らない事は無いでしょ。漕いだこと無いっていうのは恐らくこういう事だよ」

 

私が杖を取り出し船のへりを軽く叩き魔法を掛けると船は滑るように進みだす。

目を丸くしたハーマイオニーは悔しそうに言う。

 

「船を動かす魔法なんで教科書に載っていた?」

「いいや。物体操作魔法の応用」

 

それを聞きやっぱり私は遅れてるのかしらとぶつぶつ言っていたが、ダフネが逆にサラがすごいだけだよと笑っていた。

 

湖面を滑るようにすすみ、蔦のカーテンをくぐり、長い洞窟を抜けると開けた場所に着く。奥にはまた細長い道が上の方に続いているのがみえる。

どうやら、ボートはここまでのようだ。ボートから降りる。全員が船から降りたのを確認すると、大男は全員のボートを調べていく。

 

「ほい、おまえさん、これお前さんのヒキガエルかい?」

 

私が乗っていたボートを調べ終えると大男はヒキガエル片手に近づいてきた。

 

「トレバー!」

 

隣に居たヒキガエル探しの男の子は大喜びで手を差し出した。

 

「よかったですね、見つかって」

 

ダフネがそう声をかけていた。また失くしたと騒ぎ出さない事を祈るばかりだ。

 

クネクネと上へと続く石段を登るとやがて湿った滑らかな草むらが見えてくる。この近さだと城が頭上にのしかかってくるようだ。

城の巨大な樫の木の扉の前につくと、大男が全員いる事を確認し、扉を3回叩いた。

ぱっと扉が開く。

扉の先には以前会った時と同じローブのマクゴナガルが立っていた。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」

 

ここまで先導していた大男がそう報告する。

 

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」

 

マクゴナガルの案内で石畳のホールの脇にある小さな空き部屋へ通された。

途中で横切った右手側から何百人ものざわめきが聞こえていたから、ここは待機部屋なのだろう。

 

「ホグワーツ入学おめでとうございます。皆さん」

 

マクゴナガルがそう言うとざわついていた皆が黙った。

 

「まもなく、新入生の歓迎会が始まります。ですが、その前に皆さんが入る寮を決めねばなりません。組分けの儀式です。これは非常に大切な儀式となります。ホグワーツにいる間、同じ寮の生徒は家族のような物です。寝食、学び等を共にします。自由時間も寮の談話室で過ごす事となります。寮は4つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれに輝かしい歴史があって、偉大な魔法使いや魔女が多数卒業していきました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは自らの属する寮の得点となり、逆に規律に違反した場合は得点は減点されます。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るにせよ、皆さん一人ひとりが、寮にとって誇りとなるよう望みます」

 

マクゴナガルは全員が自分の言葉を聞いているのを確認すると言葉を続ける。

 

「間もなく、全校生徒の前で組分けの儀式が始まります。準備ができ次第皆さんを呼びに来ますので待っている間できるだけ身なりを整えておきなさい」

 

マクゴナガルはそう言うと扉から出ていった。

 

「やっぱり組分けの儀式の内容については教えてくれなかったね」

「逆に考えれば、こっちが何も準備せずに儀式に臨んでも大丈夫って事でしょ」

 

そう考えているのは私だけのようで周りではグレンジャーは基礎呪文集で覚えたと思われる呪文を早口で繰り返しているし、生徒達は誰も彼もが不安げにざわついていた。

 

「サラは緊張してないの?」

 

ダフネがそう言って話し掛けてくる。

 

「緊張はしてないよ。楽しみ」

 

私は笑って答えた。正直緊張よりも高揚していた。

 

程なくして、マクゴナガルが戻ってきた。

 

「間もなく組分けの儀式が始まります。2列になってついてきなさい」

 

そう言って案内された大広間、と呼ばれる場所はホグワーツの歴史で読んだよりよっぽど壮大で幻想的だった。この広間だけでもかなり多くの魔法が視える。天井には魔法の星が瞬き、何千という蝋燭が空中に浮かび、広間をそして4つの長いテーブルを照らしていた。テーブルには何百人もの上級生が着席しており、その目の前には金色のゴブレットとお皿が置いてある。更に上座の方にはもう一本の長机が置いてあり、教授方が座っていた。その中に私の後見人の姿も見て取れる。目が合ったので笑いかけたが、先生はうなずくだけだった。

この人もうちょっと愛想よくならないのだろうか。いや、いいんだけども。

横に視線を滑らせると、中央には白いひげを十分に蓄えた老人と目があった。

長い歴史の中でも1,2を争い闇の帝王すら凌ぐと言われている魔法使いアルバス・ダンブルドアだ。

ダンブルドアはなぜか私を見分するようにじっと見つめていた。この最強を冠する魔法使いを間近で見れるのは私にとっても大きな糧になるはずだ。

 

マクゴナガルは上座のテーブルの前まで生徒を引率し、横に広がらせると、目の前に4本足のスツールとその上にみすぼらしい帽子を置いた。

帽子はピクリと身震いをすると、驚くべきことに歌いだした。

 

帽子が歌う事も興味深かったが、重要な事はその歌の内容だった。どうやら、歌の内容を聞く限りはかぶることで隠れたものを探り出し行くべき寮を教えてくれるらしい。非常に複雑な魔法がかかっている事は視えたがようは開心術の一種だろう。

寮の特色についても歌っていた。曰く、

 

グリフィンドールは、勇気と騎士道を持つ者。

ハッフルパフは、忍耐強く苦労を厭わない者。

レイブンクローは、賢く機知に優れる者。

スリザリンは、手段を選ばぬ狡猾さを持つ者。

 

つまり、寮ごとにある種の特性がありそれに適合する生徒がその寮に所属するという事だろう。

チラリとダフネの方を見たが、帽子を見つめるのに忙しい様だった。

帽子が歌い終わるとマクゴナガルが羊皮紙を片手に前に出てきた。

 

「ABC順に名前が呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組分けを受けなさい。アボット・ハンナ!」

 

呼ばれた金髪の少女が緊張した様子で椅子に座り帽子を被ると数瞬、帽子が叫んだ。

 

「ハッフルパフ!」

 

右側のテーブルから歓声が上がり、アボットはそのテーブルへと着いた。そうして組分けが進み、生徒達がそれぞれの寮のテーブルへと座っていく。どうやら大体10秒前後で決まるのだが、1分近くかかる生徒もいた。その生徒の特色が複数の寮にまたがっていると長いのだろうか。

 

「グリーングラス・ダフネ」

 

ダフネが呼ばれる。ひどく緊張した様子で帽子をかぶっていたがやがて帽子が叫んだ。

 

「スリザリン!」

 

ほっとした表情をすると、ようやく周りが見えるようになったのかこちらを見て笑顔で笑うい手を振ると、スリザリンのテーブルへと走っていった。希望した寮に入れたようで何よりだ。

 

「ゴーント・サラ」

 

どうやら私の番が来たようだ。しっかりとした足取りで前に出ると椅子に置いてあった帽子を手に取り、腰を掛けると帽子を被る。すると頭の中に低い声が響いてきた。

 

「なんと、サラザール・スリザリンの系譜の者かね?ふーむ。偉大で強大な魔法使いになりたいという意思、それに伴う機智も備えておる。そして目的のためには手段を選ばず、努力をも怠らない。普通なら悩むところだが、君の入る寮は決まっておる。そしてこの寮に入れば間違いなく偉大な魔法使いへの道がひらけるだろう」

 

頭の中の声が聞こえなくなると同時に頭上で叫び声がした。

 

「スリザリン!」

 

端のテーブルから歓声が上がるのが聞こえる。帽子を脱ぎながら思わず笑ってしまった。帽子の言うとおりここからが私の第一歩。偉大な魔法使いを目指す上での入り口だと思うと今まで以上に気分が高揚していくのがわかった。帽子を椅子に置き、スリザリンのテーブルへと向かった。

 

「よかった!サラ一緒の寮だね」

 

先にスリザリンへと配属されていたダフネが笑顔で迎えてくれる。

 

「ええ。7年間よろしく」

「うん!こちらこそよろしくね」

 

その後も組分けの儀式は順調に進んでいく。汽車であったハーマイオニーやハリー等はグリフィンドールに所属したようだった。

全員の組分けの儀式が終わると、ダンブルドアが立ち上がった。

 

「おめでとう、ホグワーツの新入生諸君、おめでとう!歓迎会を始める前に二言、三言いわせてもらおうかの」

 

そう言うとダンブルドアはわっしょいと掛け声を上げ席に座った。在校生は割れんばかりの拍手を送っていたが、新入生は完全にぽかんとしていた。

そんなダンブルドアショックも目の前の皿に出てきた豪華な料理に勝る事はなく、皆すぐに料理へと夢中になった。

 

私がダフネと会話しながら、ローストチキンに手を伸ばした所で斜め前に座っていた男の子が気取った風に話しかけてきた。

 

「いやぁ。全く驚いたよ」

 

声のする方へと目を向けると、汽車のコンパートメントの前でハリーと揉めていた奴だ。ダフネが食べるのを一旦止めて返事をした。

 

「ん、何がです?」

「君たちがスリザリンに選ばれたことがさ」

「何で?」

 

今度は私が答える。

 

「君達は汽車でポッターを庇ってたじゃないか。そういう事をする騎士道精神とやらに溢れている奴はグリフィンドールだとおもってたからね」

「別に庇ってないよ。私は自分のコンパートメントに入ろうとしただけ」

「へぇ。まあいいさ。僕はドラコ・マルフォイ、ドラコでいい。こっちはクラッブとゴイル」

 

そう言ってドラコは、自分と横に座っていたガタイの良い男の子二人を指し示した。クラッブとゴイルとやらも、ハグリッドと比べるべくもないが小柄なドラコの左右に座っているからかこいつらも十分大きかった。

 

「ええ、よろしくドラコ。私はダフネよ。ダフネ・グリーングラス」

「サラ。サラ・ゴーント」

「ダフネにサラか。スリザリンに入ったって事は当然君たちも純血なんだろう?」

「ああ」

「ん、一応はね」

 

満足そうに頷くと、言葉を続けた。

 

「僕ももちろんそうさ。そうでない連中はホグワーツで学ぶべきでは無いと思うね。中には手紙をもらうまでホグワーツのホの字も知らないような奴もいるんだ。僕らのやり方が分かるような育ち方をしていないのさ。君たちもそう思うだろう?」

「え、うーん。純血主義はもちろん理解してるけどね、私はそこまで狭量にならなくてもいいかなって思ってるわ。もちろんスリザリンに入れた事には感謝してるけど」

 

ドラコはダフネの答えが意外だったのか少し驚いた様子だった。

 

「そういうことはスリザリンに所属しながら言わないほうがいいとおもうけどね。サラ、君はどうだい?」

 

手元にローストチキンの塊を引き寄せながら答えた。

 

「純血主義を否定する気は無いよ。ただ、真理は一つだけつまり、私か私以外か。学びたい奴には学ばせればいいんじゃないかな。マグル出身だろうと、魔法族出身だろうとね。私の役に立つ日が来るかもしれないし」

 

そんな私の答えが面白かったのか、ダフネは笑いながら言った。

 

「役に立つって・・・。サラは何処を目指しているのよ」

「唯一無二だよ、世界一の偉大な魔法使いに私はなる。どういう形であれね。私の血に見合うように私自身も最高を目指すのは当然でしょ?」

 

そう、ニヤリと笑いながら返した。

ドラコは笑い返すと、続けた。

 

「だ、大丈夫か?明日の朝今のセリフ思い出して恥ずかしくなったりしないか?」

「するわけないでしょ。大いに本気だもの。すぐに実力でわからせるよホグワーツにね」

 

私はそう続けた。多少ドラコは面食らったようだったが、肩をすくめると

 

「まったく、君たちはスリザリンにしては変わってるな。まあ、血の誇りは持っている様だし、これから7年一緒なんだ仲良くしようじゃないか」

「そうだな、よろしく」

「ええ。改めてよろしくね。ドラコ」

 

 

その後もしばらく、食事を続けながら話していた。開口一番が純血主義の話題だったので何だコイツと思っていたが話してみると、気取っているだけのクィディッチ好きの年相応な普通の男の子だ。今もダフネと推しているチームについて熱く語っていた。ちなみに私はクィディッチに大した興味が無く、チームどころかルールもよく知らない。クラッブとゴイルはこちらには目も向けずに延々と食事を続けていた。

 

 

皆がよく食べ、デザートまで平らげた辺りで、ダンブルドアが立ち上がり祝辞と今年度の注意点が述べられた。

四階の廊下には決して近づいてはならない。禁じられた森への立ち入り禁止。夜中の出歩き禁止、廊下でむやみに魔法を使わない。等だ

 

夜中の出歩きは禁止なのか。最近は体力づくりの一環で夜中に散歩するのを日課にしていたのにな。

夜中だと人目に付かないし、誰もいない場所を散歩しているとまるで世界が自分ひとりだけの物みたいに思えて気分がいいのだ。

見つからなければまあ続けても大丈夫かな?ホグワーツの中を早めに探検しておきたいし。

 

そんなすでに規則破りを考えていた私と違いドラコはダンブルドアに怒っていた。

 

「痛い死に方をしたくなければ立ち入るなって、まったくダンブルドアは何を考えているんだ?」

 

ドラコが不満げにつぶやく。

 

「ね、最初も思ったけど、やっぱりダンブルドアってちょっとおかしいというか、変わってるわよね?」

「そうだね。私はダンブルドアより悲痛な死を与える4階の廊下の方が気になるかな。魔法なら視てみたい。死ぬのはごめんだけど。」

 

そのうち散歩で調べてみるとしよう。

そう私が言うとダフネとドラコは顔を見合わせ

 

「ダンブルドアより、サラのほうがよっぽど変わってるみたいだな」

 

と、言ってきた。変わってるなどとは心外な。私は新しい知識を欲するがゆえに割りと好奇心旺盛なだけなのに。それに、死を防ぐには死を知らないといけないのだ。

原因と結果。当然の帰結だとおもう。

 

こうして、歓迎会はお開きとなり監督生の案内で談話室へと向かう。

ついていくと、スリザリンの談話室は地下のようだった。地下牢の奥、湿ったむき出しの石が並ぶ壁に談話室へと続く隠し扉があった。

 

「マーリン」

 

監督生が合言葉を言うとスルスルと音もなく隠し扉が開き、談話室への道が開いた。談話室は細長く、壁と少し低めな天井は石造りの様だった。天井からは丸い緑がかったランプが吊り下げられており、大きな窓の外にはなんと巨大なイカが泳いでいるのが見えた。来る時に通った湖に面しているのかもしれない。チロチロと柔らかく燃える暖炉とその前においてある椅子には壮大な彫刻が施してあった。談話室を軽く見回した所で監督生が傾注するようにといったのでそちらに目を向ける。

 

「入学おめでとう、諸君。私は監督生のジェマ・ファーレイ、スリザリン寮へ心から歓迎するよ。幾つか君たちに話しておくことがある。スリザリンに所属したからには我々は皆兄弟であり家族なんだ。何か困ったことがあればスリザリンは一丸となって君たちを助ける事だろう。間違ってもレイブンクローの様に自分の成績を良くするために互いを蹴落としたりはしない。

我らスリザリンは4つの寮の中でも最も秀でた寮だ。事実この6年常に優勝してきたし、それにあぐらをかかずに、常に勝利を目指している。1年生の諸君もそうあることを強く望む。なぜならばスリザリンは名誉と伝統を重んじているからだ。だが、このスリザリンの看板に諸君が気後れする必要は全く無いよ。もしかしたら、諸君の中にはとても特別な運命があるようには思えない人がいるかもしれない。でも、それは心の中にしまっておくべきだろうね。この寮に入れたということは、何かしら偉大な部分があり偉大になる可能性があるのだからそれを忘れないように。諸君はすでにスリザリンの蛇なのだ。気高く、賢く、強い、ね」

 

そう言って、ファーレイは談話室に掲げられた寮の旗を指差し、私達を見回すとさらに続けた。

 

「スリザリンについて、全員闇の魔術にのめり込んでいるとか様々な噂を聞いたかも知れないが、何ら気にする事は無い。確かに闇の魔法使いを多数排出はしたが、それは他の寮だって同じ事さ。他の寮はそれを認めていないけどね。それにライバルであるグリフィンドールや他の寮が言った言葉を鵜呑みにすればいいってものではないだろう?こういった噂はスリザリンに対する尊敬と恐怖の裏返し。だが我らはその噂をわざわざ否定したりはしない。ありとあらゆる呪いの呪文を知っていると思わせるような態度を取れば、誰がスリザリン生の筆箱を盗もうなんて思うんだね?ホグワーツの廊下では不用心な生徒を驚かせるようなことも起きるけど、スリザリンが仲間なら安心して校内を歩き回れるだろう」

「さて、我らスリザリンについては分かってもらえたね?最後にもう一度言っておこう。スリザリンは常に勝利を目指している。諸君も皆助け合いながら努力を怠らずに優勝をめざすんだ。特にグリフィンドールに負けるような事が起きないようにね。

堅苦しい話しはここまでだ。皆疲れたことだろう。私たちが寝るのは、緑の絹の掛け布がついたアンティークの 4 本柱のベッド、ベッドカバーには銀色の糸で模様が入っている。有名なスリザリン生の冒険が描かれた中世のタペストリーが壁を覆い、天井からは銀のランタンが下がっているんだ。きっとよく眠れる。夜、湖の水が窓に打ち寄せるのを聞いているととても落ち着くから耳を傾けてみるといい。では解散だ荷物はそれぞれの部屋にもう運び込んであるよ。皆ゆっくりとやすむといい」

 

そう言ってファーレイの長い演説が終わり解散となった。

 

「私、監督生の話を聞いてようやく自分がスリザリンに所属したっていう実感がわいてきたわ」

 

そう言ってあくびをしながらダフネが言う。

 

「そうだね。それなりに共感できる部分も多かったし。所属したからには本気で優勝を目指すかな」

「あら。意外と乗り気なのね。寮の順位なんて興味ないっていうかとおもってたわよ」

「まあね。だが指針があるのは悪くない、目指すなら頂点だ」

「サラって、クールかと思いきや意外と熱いわよね」

 

ダフネは新しい一面を発見したと嬉しそうだった。

 

寝室は4人部屋のようで、ダフネと共に入った時にはすでに他の二人は部屋に居た。パンジー・パーキンソンとミリセント・ブルストロードだ。

私達は互いにこの日何度目かの自己紹介した後はほとんどおしゃべりすること無くベッドへと皆潜り込んだ。皆疲れていたのかすぐに寝息が聞こえてくる。

さすがの私も今日は疲れたから移動で十分動いたし日課の散歩は無し!明日からの授業や生活に思いを馳せながら、ベッドの心地よさに身を任せた。

 




ドラコはきっといいやつ。
ジェマ・ファーレイは、うちの作品では5年生。

転職した関係で時間が取れませんでした。
落ち着いたのでボチボチ投稿します。


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