ハリーポッターとゴーント家の令嬢   作:ゆきみかん

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ハロウィン

ホグワーツでの生活は瞬く間に過ぎ去っていき入学式からすでに2か月が経とうとしていた。

 

相変わらず生徒達は皆講義に頭を捻らせ、寮の談話室では膨大な課題を皆で取り組み、時にはチェスや雑誌を皆で楽しんだ。

グリフィンドールとスリザリンの関係性は最悪、といった所か。特にあのハリーのシーカー選抜後からは顕著だった。

ちなみにどうやらシーカー選抜自体は秘密だったらしいが、朝食中に箒がハリーに届いたりと次の日には全校生徒の周知の事実になっていた。

その事を知ったドラコは怒り狂っていたし、全体の雰囲気としても今までうっすらと保っていたスリザリンとグリフィンドールの均衡が破れた感じだった。周りを特に気にしない私ですらそう感じる。

ダフネが居ない時にはハーマイオニーとでさえ会話する事はない。というのも特に率先してハーマイオニーと話したい訳ではなかったので特別波風を立てる気は無かったのだ。

もっとも、ダフネは友人に優劣はつけない主義なのかしらないが、全く気にせず私やドラコと話すのと同じようにハーマイオニーにも積極的に声をかけに行っていた。

彼女としてはいまだ友人が少ないであろうハーマイオニーと仲良くしてあげたいだけだろうが、ドラコ曰くその行動がその分寮内への軋轢を生んでいるそうだ。

 

夜の散歩によるホグワーツの開拓は順調に進んでいたが、父の足跡探しはとりあえず中断とせざる負えなかった。

ゴーント家の文献を図書館であさるも、家についてはともかく父に関しては情報は無く私が確認できる場所には存在しない事を認めざるを得なかったのだ。

いっこうに見つからない父の事より、今は四階の廊下の下に何があるのかを優先的に調べていた。

なぜか、強くあの扉の下にあるものが気になっていた。因みに、未だにあの扉や犬の事はスリザリンの誰にも話していない。

ダフネに話してしまうとまた心配をかけてしまうと思いだまっているのだ。私が調べものをしたり色々と出歩いたりしていても、皆はまたか程度にしか思わないらしくありがたい限りだ。

 

 

「あー、やっと今日の授業も全部おわったわね。はやく夕飯食べたいわ」

「ほんとほんと」

 

一日の授業が終わると決まってこの会話をするミリセントとパンジーだったが、今日に限っては私もそんな気分だった。

 

「そうだね。ハロウィンのごちそうと聞かされると流石に楽しみだ」

「あら、サラにしては珍しい。じゃ決まり。今日は復習なんて後回しにして食堂に直行ね」

 

私としては普段のルーチンワークはあまり崩したくはなかったが、たまにはこの糖蜜パイの甘い匂いに従うのも悪くないだろう。

 

「あ、私ちょっとお手洗いに行ってくるから、先席とっておいてもらってもいいかな?」

「おっけー」

「まって、ダフネ。私も行く」

 

校内の至る所がすべてハロウィン仕様に飾り立てられていた。

 

「すごいね!ハロウィン一色」

「甲冑が仮装してるのはシュールだね」

 

トイレに近づくと中から話し声が聞こえてきた。

 

「・・・マイオニーは?」

「地下のトイレに居るわ。一人にしてほしいって」

「全く、男の子って子供だから」

 

そんな会話を聞いたダフネはためらう事なく中に入ると中に居たグリフィンドールの生徒へと話しかけた。

まったく、相変わらずだな。

 

「あ、ごめんね。外で話聞こえちゃったんだけど・・・ハーマイオニーどうしたの?」

 

グリフィンドール生はこっちに気が付くと少し驚いたように二人で顔を見合わせる。

 

「・・・スリザリンの貴方には関係ないでしょう?」

「関係あるわよ、私たちスリザリンだけどハーマイオニーの友達だもの!」

 

ダフネめ、言葉は立派なものだがしれっと私もまとめてくれちゃってるよ。

 

「あなた、スリザリンの変わってる娘ね。ハーマイオニーが話してた・・・」

 

 

話を聞くとどうやら、妖精の魔法の授業でハーマイオニーが魔法のかけ方を注意した事がきっかけでロンにひどく傷つく事を言われたらしい。

どうやら、まだハーマイオニーはグリフィンドールであまりうまく行っていないらしいな。

 

「ダメだよ」

「えっ?」

「ハーマイオニーを探しに行こうとしてるんでしょ?」

「・・・わかる?」

「ええ。けど本人が一人にして欲しいと言ってるのだから。落ち着くまでほっておく方がいい」

「でも・・・」

 

トイレから出るとそわそわしているダフネに釘を刺す。二人の話を聞く限りは今彼女の所に行くのは良くない。

ただでさえ、ハーマイオニーもダフネも互いに話す事で周りから疎まれがちなのだから。

どのみち今必要なのは、スリザリンの友人ではないだろう。本人が殻を破らない限り、外から手を差し伸べるだけでは解決しない事もままある。

 

私は首を振ると続ける。

 

「少なくとも今は・・・な。それにハロウィンの会場にきてるかもしれないしさ?」

 

ダフネは私の言わんとする事が分かってくれたのか、頷くと私につづいて食堂へと向かうのだった。

 

食堂に入るとすでに宴は始まっていた。

 

「遅かったわね。そんな難産だったの?」

 

そうミリセントがニヤニヤしながら聞いてきた。

 

「食事時にアホな話をするんじゃない」

 

私はため息をつきながら手近なパンプキンパイを引き寄せる。

未だ食事に手をつけずに辺りを見回しているダフネに、強引に料理の皿を押し付ける。

 

「どうした?ほら」

「ち、違うわよ。やっぱり私ハ・・・」

 

続きを言おうとしたダフネの口にパンプキンパイを突っ込んだ。

 

「むー。」

「いいから食べなよダフネ。何も考えずにさ。時間を置かないと解決しないこともあるって」

「どうした?何かあったのか?」

 

ドラコの隣に座っていたノットが聞いてくる。

コイツは意外と敏感に色々感づくからな・・。

 

「なんでもないよ。そのかぼちゃスープとローストビーフを取って」

「ん、ああ」

 

ノットから先にぼちゃスープを受け取ろうとしたその時だった。突然パーティの喧騒をかき消す程の叫び声と共に大広間の扉が開け放たれた。

 

「トロールがァァァあああああああああ―――ッ!」

 

大広間に飛び込んできたのは闇の魔術に対する防衛術のクィレルだ。顔は恐怖で引き攣り、ターバンもほどけんばかりだ。

そんな声に驚いた生徒は皆一体何事かと静まり返った。

 

静まりかえった大広間を、クィレルはよろよろと歩いていき、教職員テーブルの前、ダンブルドアの所までいくと、あえぎあえぎ言った。

 

「トロール・・・が・・・地下室に・・・。お知らせしなくては・・・」

 

クィレルはそれだけ言うと、糸が切れたようにパッタリとその場に倒れ、気を失った。

はっきりと聞こえたクィレルの声に生徒は叫び、立ち上がり大広間は大混乱に陥った。

 

目の前でもドラコが叫び、パンジーはパニックになって泣き出す始末だ。ダフネも私に掴まって叫んでいる。

 

「うるさい。耳元で叫ばないでよ」

 

ノットから受け取り残ってテーブルにぶちまけられたカボチャスープを消失させながら周りをなだめる。

 

しかしトロールが天下のホグワーツに侵入ねぇ?

 

「き、君は状況がわかっているのか?」

 

ある程度表面上は平静を保っているノットがどもりながら聞いてくる。

 

「ええ。トロールがホグワーツに侵入したんでしょ」

「トロールだぞ!?トロール!」

「そうだね」

 

ノットに適当に相槌をうちながら考える。

正直トロール自体は動きも緩慢だし、魔法生物の中では相手にしやすいはずだ。1体ずつならばホグワーツの教師は当然として上級生でも十分対処可能だろう。私は見たこともないけども。

 

問題はトロール自体というよりも。

 

「トロールの知能でホグワーツに迷い込む何てことが起こり得るはずがないってとこだよね。誰かが入れたとしか考えられない・・・」

 

甲高い破裂音が連続して広場に響き渡った。

何事かと見るとダンブルドアだ。

 

「皆、落ち着くのじゃ。監督生よ、すぐさま自分の寮の生徒たちを寮へ引率しなさい。例外は許さん」

 

先ほどの魔法かダンブルドアの声に鎮静の効果でも含まれていた様に皆周りが見れるほどは落ち着いたようだ。

監督生のジェマ・ファーレイが前に出るとよく通る声で全員へと話しかける。

 

「さあ、皆落ち着いてついてくるんだ。私達は大きく迂回して談話室に帰るよ。トロールは地下室にいるらしいからね。皆が冷静で私に着いてきてくれれば、トロールは恐れる必要はない。さあ皆分かったら出発だ」

 

「全く、まだパイしか食べていないというのに」

 

そう席を立ち上がりながらつぶやく。

 

「サラはまったくぶれないね、まったく」

 

気取った様子で言うドラコに肩をすくめる。どうやらドラコを始めみな多少は落ち着きは取り戻したようだ。

 

食堂の出口の辺りで隣にいたダフネが何かを思い出した様に立ち止まる。

 

「大変!地下室にはハーマイオニーがいるわ!彼女何も知らない。伝えないと」

 

確かにそういえばグレンジャーは地下室のトイレにこもってると聞いたな。

走り出そうとしたダフネの腕を乱暴につかむ。

 

「まって!やめておきなよ。ダフネが行って何ができるの?」

「何もできないよ。だからってなにもしなくていいわけじゃないもの。これでハーマイオニーに何かあったら私絶対後悔する」

 

そうでしょう?そう私に問いかけると、腕を振りほどいて走っていってしまった。

 

「おいおい、何の話だ?というか地下牢の方向にいっちゃったぞ・・・?」

 

ドラコが焦りながらそう言ってくる。

 

「ちっ・・・」

 

私は止めた。だからこれ以上は私に関係ない・・・。感情だけで動くとろくな結果にはならないのは昔からしっている。

だが、さっきの何かあったら絶対に後悔する。と言ったダフネの言葉が頭のなかに変に残っていた。

私も、立ち止まり列の最後尾からそっと離れる。

 

「お、おいサラ・・?」

 

世話が焼けるやつだ。だが、ダフネとハーマイオニーの二人に何かあるのは確かに寝覚めがわるい。

 

「監督生にはうまくごまかしておいてよ」

「おい、待てって」

 

そう言うとノットたちの静止を聞かずにダフネが向かった方へと走り出した。

 

 

 

地下室の女子トイレ前につくとハリー、ロンが丁度扉を閉め、鍵をかけた瞬間だった。

トイレから漂う悪臭、そして二人の行動を見て全てを理解した。

 

「ゴーント!お前なんでここに?」

 

ロンのそんな問いかけを無視しながら杖を引き抜く。

 

「どけ!っ」

 

そんな私の声と女子トイレから二重の悲鳴が聞こえたのは同時だった。

 

自分たちが何をしてしまったのか理解した二人の顔面はみるみる蒼白になっていく。

 

「レダクトっ」

 

もはや、猶予はない、考えるよりも先に扉を吹き飛ばした。

 

二人の横をすり抜け、女子トイレの中へと踏み込むとあたりは嵐が通ったあとみたいだった。

瓦礫の山の奥で丁度ずんぐりとした灰色のトロールが振り上げた棍棒を振り下ろそうとしていた。

女子トイレの奥の壁に居るハーマイオニーとその前にかばうように立っているダフネに向かって。

 

「プロテゴ!」

 

振り下ろされた棍棒が二人に届くことはなく、空中で私の盾の呪文にぶつかっていた。

獲物に届いてない事に気がついたトロールがガンガンと何度も棍棒を振り下ろす。

遠距離に出した盾の呪文は多少効力が弱くなるがこの程度ならば問題なさそうだ。

 

「・・・・っ」

 

二人はまだ自分たちが肉塊になってないのに気がついたようだった。

トロールの足の隙間からダフネと目があう。

 

「サラっ・・・来てくれたの」

 

ダフネが息も絶え絶えにそう呟く声が聞こえる。

 

「・・・私の忠告を聞け馬鹿」

 

トロールは棍棒を下ろせない事に苛立つように棍棒を振り回す。

ダフネが襲われている光景をみて血が沸き立つ感覚を覚える。

 

「目の前しか見えない愚鈍な奴だ。だが・・・私の友人に手をだした代償は高く付くぞ」

 

破壊された壁などの破片を無言で杖を振りはねのけながらトロールを睨みつける。

 

「フリペンド」

 

二人の前で暴れるトロールを引きつけるために、魔力も碌に込めずに素早く魔法弾を発射する。

トロールの厚い脂肪は簡単な魔法攻撃は全て弾き飛ばしてしまう。多少肉体を削ってもダメージは無い様だったが愚鈍なこいつも流石に後ろからの攻撃に棍棒を止め、辺りを見回し私を見つけると叫びながらこちらに向かってきた。

 

私の前で足を止め、棍棒を振り上げる。

 

その棍棒に向かって呪文を放とうとしたが、放つ事はできなかった。そして棍棒が振り下ろされる事もなかった。

いつの間にか、トイレの中に入ったハリーがあろうことか、トロールの首にうしろから飛びついてしがみついていたのだ。

 

「やーい、うすのろー!こっちだ!」

 

ロンも私、そして奥の二人から引き離すような位置から石や木をなげつけている。

どうやら、二人なりに皆を助けようとしてるようだ。

 

トロールも破片には気を止めてないみたいだったが、さすがに首周りにまとわりついたポッターを振りほどこうと体を振り回していた。

 

「まったく、自分達の実力も考えずにっ」

 

どうしようかと逡巡している所にハリーの杖がトロールの鼻に突き刺さる。さすがに粘膜への攻撃がきいたのか、トロールが低く叫ぶと強く首を振りぬいた。

 

しがみつききれなかったハリーは吹き飛び、受け止めたロンも巻き込んでダフネたちの手前まで飛ばされる。

 

「ハリーっ!ロン!」

 

腰を抜かしていたハーマイオニーが目の前に飛んできた二人を見て悲鳴を上げる。

二人とも吹き飛んだだけで起き上がろうとしてるところを見ると大丈夫そうだ。

 

だが、ハリーの杖が契機になったのか完全にそちらを獲物としてターゲットにしてしまったようだ。

 

トロールが4人に体を向けるのと同時に私は強く床を蹴ると、4人の前に体を滑り込ませる。

 

「余計な手をだすなっ!アレは私がやる」

 

「ゴーントっ」

 

こちらに叫びながら向かってくるトロールの棍棒へ杖を向ける。

 

「エクスパルソ」

 

棍棒が破裂するとさすがに痛みがあるのか驚いたようにその場に止まり棍棒が爆発した手を見ている。

 

「ヴォオオオオ」

 

攻撃されたと認識したのか今までで最も大きくフロア中に響き渡る様な声で叫ぶと

私を叩き潰そうと走りながら腕を振り上げる。

 

「ボンバーダ・デュオ」

 

振り上げた腕に向けて放った呪文は寸分違わずトロールの右腕に命中し腕を吹き飛ばした。

 

「ブモオオオオブオオオ」

 

地面に膝をつき吹き飛んだ腕の根本を押さえているトロールへと正面から近づく。

 

「こっちを見ろ獣」

 

私の言葉を理解した訳ではないだろうが怯えた目をしたトロールと目が合う。

 

「お前はダフネを殺そうとした。因果応報だ。まあ、トロールに言っても仕方ないだろうが」

 

「ブォオブモ・・・」

 

苦しそうに唸っている。

 

「とどめだ」

 

後ろにいる彼女らに呪文が聞こえないように唱えると私は魔力を集中させ一気に杖へと流し込む。

 

私の十八番である魔術が発動すると杖先から不可視の呪いを帯びた刃が発現し、トロールは最期に耳を劈くような叫び声をあげると、全身から血を吹き出しながら倒れそのまま再び動くことは無かった。

いかに分厚い脂肪をもつトロールでも私の呪いには到底抵抗できなかったらしい。

 

ドクドクとトロールから血が流れ出る音だけが聞こえている。

 

だれも、声を上げることができなかった。だれも、目の前の光景を理解する事ができなかった。

ここに居る誰よりも小柄な少女がこの光景を作り出した事が。

 

私は目の前で動かなくなった物体を一瞥し起き上がらない事を確認するとようやく冷静になった。

 

頭に血が登ってやりすぎてしまったな・・・。

よく考えればこいつも誰かに入れられただけだった筈だけど。

それでもダフネを害そうとしたのは許せなかった。

 

後ろを振り向き固まっているダフネの肩に手をおく。

 

「ダフネ、大丈夫?」

 

私の言葉で呪縛がとけたのか、4人が我にかえったようにへたりこんだ。

 

「え、ええ。サラのお陰でね・・・。私、生きてる・・・」

 

 

ちょうどその時、廊下からバタバタと足音が聞こえ、5人はそちらへと目を向ける。

トロールの叫び声や破壊音を聞いたのだろう。マクゴナガル、スネイプ、そしてクィレルが飛び込んできた。

クィレルはその場で腰を抜かし、他の二人も目の前の光景に目を疑った。

 

「これは・・・?」

 

壁は壊れ床は水浸しになっている。そして何より、私達の少し前に巨大なトロールが血を吹き出しながらな倒れているのだ。

 

そして、その奥に杖を下げ立っている私と、呆然座り込んでいる4人を見つけた。

 

「一体全体、あなた方はどういうつもりなんですか・・・っ」

 

マクゴナガルが悲鳴のような声で問いただした。

 

こんなに怒ったマクゴナガルを見るのは初めてだ。

その後ろで私を見つけじっと視線を向けてくるスネイプ先生と目が合うがとりあえずは目をそらす。

 

「わ、私の・・私のせいなんです」

 

そんな中、ハーマイオニーが囁くように話し始めた。

 

「私が、トロールを捜しに来たんです。私、1人でやっつけられると思いました。本で読んで、トロールについていろんなことを知っていたので」

 

私は思わず、ハーマイオニーを見てしまった。あの融通の利かない優等生だった彼女が、嘘をついて皆をかばおうとしている事におどろいたのだ。

 

「でも、ダメでした。トイレに居たダフネを巻き込んでしまって殺されそうになっている所を、皆が助けてくれたんです・・・。ハリーとロンも私が居ないことに気がついて探しに来てくれて、二人もトロールの注意をひきつけて助けてくれました。でも、皆私のせいで追い詰められて殺される所だったのを最後に彼女が・・・」

 

皆、グレンジャーの言うとおりですといった顔をした。

 

マクゴナガルは深くため息をつくと厳しくいった。

 

「ミス・グレンジャー、なんという愚かな真似を。貴方には失望しました。グリフィンドール15点減点です。あなた達もですよ!1年生が野生のトロールと対決するだなんて・・・。生きていたのは非常に幸運でした。ポッターとウィーズリー、グリーングラスには5点づつ与えます」

 

その言葉に笑顔になったハリー達に対して

 

「その幸運と友を思う友情にですよ」

 

とピシャリと釘をさした。

 

マクゴナガルはトロールだった物を再度まじまじと確認し、私に向き直り続けた。

 

「これは、本当にミス•ゴーントが•••?」

 

私はかるく頷いた。

 

「一体どのようにして•••、いえ。野生のトロールに対して1年生が対抗出来たことは驚異的なことです。結果的には貴方がいなければ皆どうなっていたか。その魔法、そして友情を評価して15点を与えます」

 

私は肩をすくめると感謝を述べる。

 

「さあ、全員ケガは無いようですね。皆寮にもどりなさい。パーティの続きを寮で行っています」

 

頷き、トイレから出た所でハーマイオニーが声を掛けてきた。

 

「ありがとう」

 

私はひらひらと手を振ると振り返らずに腕にしがみついたままのダフネを伴って談話室へと向かう。

それにしてもお腹が空いたな。そういえば、トロールのせいでパイしかまだ食べていなかったことを思い出した。

 

 

 

 

マクゴナガルは皆が、ゴーントが見えなくなると呟いた。

 

「一体全体何がおこったというのですか」

 

スネイプはトロールを確認しに女子トイレへと足を踏み入れつつ答える。

 

「彼女らの話のとおりでしょう。蛮勇な馬鹿な学生が皆を巻き込み、ゴーントが来たという幸運で命を拾った」

「しかし、これは・・・1年生がトロールを討伐するなんてありえません」

「だが、事実はこのとおり」

 

トロールだった物体の前で注意深く吹き飛んだ腕や切り裂かれた傷を調べながらスネイプは答える。

 

「腕は爆破呪文でしょう。直接の死因はこの強力な呪いによって全身を切り裂かれた事でしょうな」

「これは本当にミス・ゴーントが?」

「本人達の供述を信じるのならば。どのみちポッターやグレンジャーが使う事の出来る魔法ではトロールに血の1滴すら出させることは難しいでしょう」

「彼女にはそれが・・・?セブルス、あなたはゴーントの後見人でしたね?知っていたのですか?彼女がこのように・・・」

 

少し考えたが軽くうなずく。

 

「爆破呪文を始め個人的に彼女に多くの知識を教えたことは事実。しかし彼女がどのように使うかは存じ上げないですな。ただ、彼女は自分を守るためなら苛烈にもなれますな。今回は友人を守るためだったようですがね」

 

「とにかく校長にアルバスに報告をしなくては・・・」

 

 

スネイプは杖を振るい、後片付けをしトイレを封鎖すると立ち上がる。

 

「吾輩も行きましょう。彼女の事は寮監として報告すべきでしょう。クィレル、君は部屋に戻るのがよかろう」

 

そう促しおびえるように立ち去るクィレルを見届けるとスネイプは深いため息をついた。

 

 

 

ダフネと共に談話室に入ると、ドラコ達が安堵したように駆け寄ってくる。

 

「無事だったか・・・」

 

「この私がトロールなんかにやられる訳ないでしょ」

 

そう言ってニヤリと笑った。

 

皆が呆れたようにため息をつく。ダフネに何があったのか聞いている皆を横目に食べ損ねたローストビーフを探しに行くのだった。

 

 

 

校長室ではマクゴナガルとスネイプが大まかなあらましをダンブルドアへと報告していた。

 

「では、トロールが入り込みそれをミス・ゴーントが討伐したとそういうのじゃな?」

「ええ。アルバス。私は末恐ろしい。1年生がトロールを害する事ができる魔法を使うのもそうですが、あのようにいたぶったような・・・。そこになんの抵抗もなく使えたことが」

「友人を助けるために周りが見えなくなることはままあることじゃ。彼女の深い友人に対する愛を評価すべきじゃろう」

「ですが、彼女はゴーント家のものです。かの家がどのような存在かしらないあなたではないでしょう?もし彼女が道を誤ったとしたら・・・あの者のように・・・」

 

ダンブルドアは副校長の言葉にうなずきつつも否定する。

 

「ミネルヴァ、それ以上は言うべきではないじゃろう。彼女はまだ無垢な存在じゃ。善悪の分別が付く前に大きな力を手にしているのはそのとおりじゃろう。だからこそ我々教育者はそこに対して忌諱すべきではないのじゃ。

私達がしっかりと見守らねばそれこそ彼女は歴史をたどってしまうじゃろうて」

「ああ、アルバス。そのとおりでした。教育者として私は失格です」

「確かに彼女はあ奴をイメージさせられる事も多い。機智に富み周りのなん学年も先を行く魔力。だが見る限り彼女にはあ奴と違い多くの友人が居るようじゃ。これは重要なことじゃ。友情や愛情を知るのであればこれに勝ることはあるまいて。セブルス彼女を見守ってくれるな?」

 

仏頂面でうなずくスネイプを見て満足そうにうなずくダンブルドア。

 

「ミネルヴァ彼女のことは一旦セブルスにまかせようて。貴方は寮の様子をみにいかれるといい」

「ええ。アルバス。ではセブルスお願いしますね」

 

そういうと校長室をあとにした。

副校長が近くには居なくなったことを確認し唸るようにダンブルドアは続けた。

 

「いかに後見人と言えど、未成年に容易に闇の魔法を教えるのは関心せんのぅ」

 

鋭い指摘に肩をすくめる。

 

「彼女には自分の身を守る為の術をおしえただけで、闇の魔法を教えた記憶はありませんな」

 

じっとブルーの瞳で見透かすように眺めていたがため息をつくと首をふる。

 

「まあよい。今はミス・ゴーントよりもクィレルじゃ。ヴォルデモートの手先として動いているのは否定しようのない事実じゃ。よいな?あ奴から目を離すでないぞ?」

 

軽くうなずくと校長室を後にした。


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