ハリーポッターとゴーント家の令嬢 作:ゆきみかん
設定とプロットだけつくって自分で満足していたのですが、せっかくなので公開します
処女作、初投稿となりますがよろしくお願いします。
タグは徐々に増やしてこうと思います。
感想、お待ちしております。
ホグワーツからの手紙
柔らかな日差しと心地よいぬくもり。
ふわふわのベッドの上で微睡の中に居た私は自らを呼ぶキーキーと甲高い声で目を覚ました。
ゆっくりと体を起こすと、ベッドの脇に控えていた彼女の顔が目に入る。
「んん・・、おはよう」
「おはようございます、お嬢様」
私の挨拶に笑顔で答えると彼女は、朝食のご準備ができておりますよと言い残し小さな音とともに姿を消す。彼女の名はリーネ、ロンドン・ウェストブリッジ2番街の外れにあるこの屋敷につき、私に仕えている屋敷しもべ妖精だ。
軽く伸びをすると、ベッドを後にし洗面所に向かう。
顔を洗い完全に意識を覚醒させ、肩まである黒髪にブラシを通したら部屋に戻り簡単に身だしなみを整える。
なにせ今日は特別な日だもの。朝から最高の状態にしておきたい。
のんびりといつもよりちょっぴり豪華な朝食を済ますと、リーネが食後の紅茶をもってきてくれた。
彼女は紅茶を注ぐと深々と頭をさげる。
「お誕生日、おめでとうございます。お嬢様」
そう、今日は私の11歳の誕生日なのだ。
魔法使いにとってこの誕生日は成人の誕生日と同じくらい特別な意味をもつ。
「ありがとう、リーネ」
私は紅茶を手にとりながらお礼を言う。
彼女は頭をあげると、手に持っていた封書を恭しく私に差し出した。
「お嬢様、ホグワーツからのお手紙でございます」
11歳の誕生日が特別な意味を持つ理由はここにある。
入学資格がある子供の元へホグワーツへの入学許可証が届くのだ。
「ホグワーツから?本当に誕生日の日に届くのね」
「はい、こちらでございます」
【ロンドン・ウェストブリッジ2番街の外れ サラ・ジェシカ・フォウリー様】
思わず笑みをこぼしながら、封書を受け取る。11歳の誕生日になるとホグワーツからの手紙が届くと教えられては居たけども実際こうしてホグワーツからの知らせを手に取るのは嬉しいものだ。
裏面の封印を切り急いで目を通していく。
【ホグワーツ魔術学校 校長 アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章。勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員】
【――親愛なる、サラ殿
このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。ホグワーツ特急の切符、教科書並びに、必要な教材のリストを同封致します。新学期は九月一日に始まります。
つきましては、ホグワーツ魔法魔術学校入学についての説明訪問を行いますので日時を指定し、七月三一日必着でふくろう便にてお返事をお待ちしております。
敬具 七月二七日 副校長 ミネルバ・マクゴナガル】
一通り、内容を読み同封してあった教科書のリストを眺めながら安堵のため息をつく。
「よかった、ちゃんと入学許可証届いたのね」
「もちろんでございます、お嬢様。お嬢様程高貴な生まれの方が入学許可されないはずありません」
「お母様や先生から、そう聞いてはいたけどね、実際にくるのかと不安な部分もあったし」
「お嬢様、それでお手紙にはどのような事が?」
「うん、入学許可する旨とホグワーツについて説明をしに来るから日時を31日までにふくろう便で返信しろってさ」
「お越しになるのはスネイプ教諭ですか?」
「ううん、副校長のミネルバ・マクゴナガル」
「左様でございましたか、ではあまりお時間もございませんし、なによりお嬢様はフクロウをお持ちではございませんから、ホグワーツのふくろうが去る前にお返事を書かれた方がよろしいかと」
「そうね、そうしましょう」
羽ペンを取ると、入学許可を光栄に思う旨、訪問日時はいつでもかまわないと記載し、少し迷ったが 【サラ】とだけ署名をしリーネに渡した。
「お嬢様、よろしいのですか?」
「ええ。手紙の上で説明なんてめんどくさいもの。先生も知ってる事だしね」
「かしこまりました。ではフクロウ便を出してまいります」
お辞儀をして下がったリーネを見届けながらつぶやく。
「訪問か、めんどくさいけどもホグワーツ入学前に人と話すリハビリをするのは丁度いいかもね・・・」
別に人と話すのが苦手なわけではなかったが、思い返してみると数年前に母が亡くなってからは数える程の人としか会話をした記憶が無い。
毎日顔を合わせている屋敷しもべのリーネは別にすると、他には先生くらいだ。
先生、つまりセブルス・スネイプは、母の学生時代の知り合いで母が床に臥してから何度も薬を煎じに来てもらっていたし、母が亡くなった今となっては私の後見人だ。
最初は食料品を月に1度届けてもらい、そのついでに泊まっていく程度だったが、ここ数年は独学では限界を感じ魔術の手ほどきも受けている。先生もホグワーツでの仕事があるので長く一緒に居るわけでは無かったが、しかし私にはそれで十分だった。私にはリーネも居るし、この屋敷だってあるのだから。
――私は、父【イーサン・ゴーント】と母【ジェシカ・フォウリー】の一人娘として生まれた。
母ジェシカは、長く柔らかな髪、深海を彷彿とさせる青い眼、ピンクの唇に透き通るような肌を持ち、癒者として聖マンゴ魔法疾患傷害病院に勤めていた。その関係で時折家に帰ってこれない事もあったがそんな時は決まって糖蜜パイを買ってきてくれるし、私がなかなか寝付けないときには患者から聞いてきた面白い話やいろんな童話などをよく聞かせてくれた。そんな美しく、優しい母が私は大好きだった。
そんな母だったが、唯一父の事になると決まってお父様の事は調べてはいけませんと言うだけで急に人が変わったように黙り込んでしまい、名前の他、詳しいことは何一つ教えてもらえなかった。
だから私は父イーサンについてはほとんど何も知らない。生きているのか死んでいるのかさえ。
幼い頃に父の事が知りたくて自分でも家の中で調べてみたが、結局何も知ることはできなかった。この屋敷には、父自身を知れるものは写真はおろか何一つといって無かったのだ。
そんな父についての質問に一度だけ母が答えてくれた事がある。
『お母様、お父様の事をあいしておられないのですか?』
母は悲しそうな顔をした後に少し考えてから答えてくれた。
『いいえ、私はイーサンを愛していたし、イーサンは私を愛してくれたわ。サラなんでそんな事を思ったの?』
『だって、お母様はお父様のはなしをしたがらないし、このお屋敷にもお父様の物がが無いから・・・』
『それは・・・。そもそもイーサンはここに住んではいなかったの』
『お父様はすんでいなかった?なんで、いっしょじゃなかったのですか?』
『私やサラを守るためだったのよ、サラにはまだ難しいかもしれないわね』
『うーん?、でもお母様がお父様をあいしていたと聞いてあんしんしました!』
『大丈夫よ、サラは私達の愛情の結晶で、たしかにお父様の血を継いでるのだから』
そう言って優しく私を抱きとめてくれたのを今でも覚えている。
そんな出来事から何年か後に、ひょんな事から私は父の生家であるゴーント家について知る事になった。母に教わった魔法の復習をしようと、書庫で呪文書を探していた時の事だ。目的の呪文書を見つけ手に取ろうとした時にふと隣の本のタイトルが目についた。
『純血一族一覧・・・?』
母に純血について教わった時に、ゴーントもフォウリーも純血の家系の一つだと聞いていたのを思い出し、ページをめくってみる。
そのページを見つけて目を通した時、驚きのあまり当初の目的の呪文書も手に取らず母に駆け寄った。そこにはこう記してあったのだ。
【ゴーント家はかのサラザール・スリザリンの直径の子孫であり聖28一族の中でも最も純血の一族の一つ】
父、そして自分が母から聞いていた物語に出てくる、伝説の偉大なる大魔法使いの血を継いでいると知った時は心が踊ったし、とても誇り高い気持ちでいっぱいになり、なんだか自分が急に偉くなった様に感じた。
『お母様!私はあのサラザール・スリザリンの子孫なのですね!物語にでてくる偉大な魔法使い!私もその血を継いでいるのですね!』
そんなはしゃぐ私に母は少し驚いた顔をした後にやや厳しい顔で言った。
『あなたが、偉大な先祖の血を継いでいるのは間違いないわ。でも間違っても、血に驕ってはいけないの。サラ自身が努力し、血にのまれないようにしなければ』
『血にのまれないようにですか?』
『そう、血を誇るだけではだめ。あなた自身が、その体に流れる血に見合うような偉大な大魔法使いになれるように自らを高めなさい』
そう教えてくれた。当時の私はこの意味を理解しきれていなかったのだが、母が亡くなり、リーネと二人きりとなった今ではよく分かる。
私は、リーネが居なければ朝起きられもしないし、ご飯も作れない。母が死に苦しんでいた時にも最期まで声をかけることしかできなかった。
そんな、無力でわがままで、一人では何もできない、ただ祖先に偉大な大魔法使いが居るだけの小娘だ。
皮肉にも母の死によって私は自分自身を見つめ直すことができた。今、亡き母の言葉は、私の中に深く根付いている。
自らを磨き、知識を蓄え、鍛えて行くことは、偉大な血を体に流す私の義務なのだ――。
「お嬢様、ホグワーツへの返事を出して参りました」
昔の事を思い返していたが、リーネの声で現実に引き戻された。
「ご苦労様、リーネ。何も問題はない?」
「はいお嬢様、スネイプ教諭からもお手紙がきておりました」
「先生から?」
リーネから受け取るとサッと中身を確認する。
誕生日と入学を祝う旨、どうしても予定がつかず入学前に訪問出来なさそうな事そしてホグワーツで会うのを楽しみにしているとの内容だ。
「いつもながら、簡素な手紙だね」
思わず笑いながら手紙を脇に避ける。
「ホグワーツか・・・」
ホグワーツ側にも都合があるだろうから、正確なところは分からないが、1週間もすれば返答があるだろう。
ホグワーツへの入学も決まった事だし、今のうちに屋敷から持っていくものの選別を始めてもいいのかもしれない。
手にしていたリストに再び目を通しながら、リーネが入れてくれた紅茶を口にするのだった。
2017.11.02
一部設定を変更修正
2018.07.14
母との会話を一部修正