「では、余興として俺のペットと戦ってもらおうか」
そういってコカビエルは指を鳴らす。
次の瞬間、炎とともに巨大な存在が姿を現した。
一番簡単にたとえらえるのは狗。だが、そのサイズはむしろ象、って感じで非常に大きい。んでもって首は三つあるという化け物っぷり。
あ、俺これ知ってる。ケルベロスってやつだよね!?
「部長! あれ、ギリシャ神話の化け物では!?」
「そうだよ! あんにゃろう、そんなもんまでこんなところに持ち出しやがったのか!」
部長が舌打ちしながら、重量を上げて接近戦を挑む。
あの巨体にもひるまず殴りかかれるとか、部長マジ
「さっさと帰ってもらいましょう」
って子猫ちゃんも!? 君ら根性ありすぎだよ!!
ええい! 俺は素直に後衛に回って援護射撃していると使用。
アサルトライフルを構えて、俺は狙撃体制に入る。
部長たちもそれをわかっているのか、大きめに動いて射線を作ってくれている。本当にいい人なうえに戦闘センスがある人たちだ。
と、いうわけででかいことをいいことにバースト射撃で俺はケルベロスを撃つ。
宝具化しているから、神話の化け物相手でも十分なダメージが見込めている。そしてもちろん部長と小猫ちゃんの拳も強力だ。
あっというまにケルベロスは倒された。おお、これマジですごい!!
どうだコカビエル! 少しは驚いたか!
「なるほど、どうやら少しは楽しめそうだ。・・・では、こんどは三体出すぞ!」
・・・えええええええええええ!? 今度は三体!?
くそ、つまりは一人一体! それはきついか?
「イッセー、小猫! 一匹はこっちでつぶすから、お前らは残り二体を足止め―」
「いや、一匹は任せてもらおう」
と、そこにやばいオーラが放たれた。
こ、このオーラは!
「・・・ゼノヴィア!?」
「加勢に来たぞ。もともと、これはこちら側の問題なのでな」
そういうなり、ゼノヴィアはエクスカリバーを一閃。ケルベロスの首の一つをあっさり切り捨てた。
おお、なんて破壊力だ!
「さすがは聖剣だな、魔獣の類にも効果てきめんかよ」
そう感心しながら、部長はケルベロスの一匹の真上に飛び乗る。
「最高速荷重、合計一万キロ!!」
そのまま、体重増加で一気に押しつぶした!!
エグイ! えぐいけど確かに必殺技じみた攻撃力だ!!
「イッセー先輩、動きを止めました」
と、気づけば小猫ちゃんがケルベロスの足にしがみついて、祖の怪力で動きを止めている。
・・・あ、これ、俺が倒す流れか!
とりあえず顔面にグレネードでも叩き込もうとライフルを構えるが、しかしそこにさらにもう一匹!
「おっと、俺としたことが数え間違えたな」
わざとらしぞコカビエル!!
あ、ヤバイ! あいつアーシアを狙ってる!?
「逃げろアーシア!」
「は、はい!!」
走り出すアーシアを援護するため、俺はアサルトライフルをそっちに向ける。
くっ! 間に合え―
「そっちは任せてもらおうかな?」
その時、ケルベロスの足元から莫大な量の魔剣が出現した。
こ、この魔剣は!
「・・・祐斗! 無事だったか!」
「心配しました」
部長と小猫ちゃんが声を上げる中、木場は苦笑でそれにこたえる。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。・・・この通り、かろうじて無事です」
「お前なぁ、先走っていくからこういうことになるんだろうが!」
本当に心配したんだからな!?
「さすがは情愛の深いグレモリー。なかなか愛されているようだな」
と、ケルベロスをさらに倒しながらゼノヴィアが関心する。
それはともかく、これでケルベロスは打ち止めか?
「・・・へえ、ケルベロスをそんな簡単に倒せるのか」
と、そこにトリアとか言った女が現れる。
彼女は光の剣を手に取ると、いきなりこっちに切りかかった。
「やめてくれ、トリア!」
木場がそれを真正面から魔剣で受け止める。
そのままつばぜり合いながら、木場はそれでも止めようと声をかけた。
「なぜだ! 選ばれたものになるために努力してきた彼らをみなごろしにしたバルパーに、なぜ君がついてくる!?」
「選ばれたものになるためにぃ? は! あいつらはそんなことなど考えてもいなかったでしょう! そんなことも忘れてるのか!」
トリアは激高したのか木場を殴りつける。
まさか拳で来るのかとは思わなかったのか、木場はそのまま殴り倒された。
「イザイヤ。お前はそんなことまで忘れたの? あの屑どもなそんなことなんて一度たりとも考えてはいなかった」
心の底から嫌な思い出なのか、トリアは唾を吐き捨てる。
「どん底の人生を送ってきて、そんな人生を這い上がる機会が得られたのが私達。エクスカリバー使いという桁違いの栄光は、今まで私達を見下ろしてきたゲスどもを見下ろすのにふさわしい。私は心からその機会を得るために死に物狂いで実験に参加してきた」
トリアは静かにそう語る。
その目は曇りなく真剣で、それが彼女の本音だってことがよくわかる。
そして、その目からは怒りの色があふれ出していた。
「それをあの屑どもは! レーサーならまだいい。だけどお花屋さん? サラリーマン? 何よりみんなで一緒にいたい!?」
履き捨てるようにそう言うと、トリアは苛立たし気に地面を踏みつける。
「何だあいつらは! なんで高みを目指さない! 私達を塵屑に扱ってきた糞どもを踏みにじる機会を得ながら、あいつらはただ普通に生きれればそれでいいだなんて腑抜けたことを!」
髪の毛をかきむしりながら、トリアは木場を見下ろした。
「だから、頼んだよ心から。「あんな屑どもより私を聖剣使いにしてください」ってね」
「・・・・・・なんだって?」
その言葉に、木場は固まった。
そしてその様子をみて、バルパーは得心したかのように手を打った。
「なんだ。そいつもあの時の被検体か」
「ええ。エクスカリバー使いになろうだなんて特に思ってない、普通に生きたいだなんて欲のない屑の1人」
「そこまで言うな。そいつらのおかげお前もエクスカリバー使いにはなれなかったんだろう?」
その会話に、俺は首を傾げそうになって・・・肝が冷えた。
「オイオッサン。人造聖剣使いって、どうやって作るんだ?」
なんか、すごい嫌な予感がしてきたぞ。
まさか、まさかだけど・・・。
「人口聖剣使いを作るには、死体が必要だなんて言うんじゃないだろうな!!」
その言葉に木場は目を見開いて、バルパーはにやりと笑った。
「いい線をついているな。まあ、殺す必要はないのだが・・・」
そういいながら、バルパーは懐から結晶を取り出した。
「研究の結果、聖剣を使用するにはある種の因子が必要だということが判明した。人工聖剣使いとは、その因子を外から補充して適正値まで押し上げたもののことを言うのだよ」
「そう、私はのし上がるために必要なものを雑魚から奪って手に入れたの。・・・別にいいでしょ、必要としてなかったんだし」
そう告げる二人の表情は、間違いなく醜悪だった。
「そ、そんな・・・」
木場は力なく膝をつく。
そうだろう。やっと出会えたと思った生き残りが、寄りにもよって仲間たちを殺した元凶の1人も同じなんだから。
「・・・待て! 確かにイリナ達人工聖剣使いはそれと似た結晶を移植されているが、それが他者の命を奪い取っただなんて話は聞いてないぞ!」
「それはそうだ。用済みなった被験者を殺したことが私の追放された原因だからな。さすがにそのうえで殺しを容認するわけがあるまいて」
ゼノヴィアの言葉に、バルパーはそう返答する。
ま、まあそれなら献血と大して変わらないから問題ない・・・のか?
「だが、私の研究を勝手に使うなど許せるものか。聖剣使いの量産体制は確立された、エクスカリバーの力で協会の聖剣を奪い、そのまま奴らを蹂躙してくれるわ!」
「ああ、実にいいぞバルパー。それぐらいでなければ戦争なんてできはしないだろう」
「うひゃひゃひゃ! 頭の枯れたおっさんたちだろ? ホント気前良いよねー」
ふざけた連中がどいつもこいつもテンションを上げていく。
クソッタレ! ワールマターがいつ動くかもわからないのにこんな連中まで相手しないといけないのかよ!
「外道どもが・・・っ!」
リアス部長もマジギレ寸前だが、しかしそんなことをしている間に魔方陣が光り輝いた。
「おお、完成だ」
そう硬骨な表情を浮かべるバルパーの目の前で、一振りになったエクスカリバーがゆっくりと降りてくる。
「これで魔方陣も完成だ。あとに十分もたたずにこの街は滅びるだろう」
・・・まずい、このままだと間に合わねえ!
どうする、どうする!?