フリードがエクスカリバーをふるって、狂気の笑みすら浮かべて襲い掛かる。
真正面から迎え撃ったのは俺だ。
エクスカリバーがナイフとぶつかり合いながら火花を散らす。・・・結構重いなこの一撃!
「おやぁ? 武器を手に入れてすっごい強くなったねイッセー君。そそるぜ!」
「そりゃどうも!」
と、俺は蹴りを放ってフリードを狙うが即座に躱される。
こいつも腕を上げた? いや、これはそれ以上のそれだ。
「どうよ、俺様の天閃の
スピードの上昇か。シンプルだが効果的な装備だな。
さて、どう攻めるかと考えていると、木場が魔剣を両手にそれぞれ持って切りかかった。
「君には聞きたいことがある!!」
そこから超スピードで切り合いが発生する。
うぉおおおお! 早すぎて動きが見切れねえ!?
「なんだぁい? フリードお兄さんが知ってることなら、教えてあげてもいいかなぁ?」
「トリアのことだ! なぜ彼女が君と一緒にいる!!」
高速での剣劇が発生するが、押されているのは木場のほう。
俺たちも割って入りたいが、動きが激しすぎて、いったん仕切り直してくれないと割って入れない。
「バルパーが君たちを聖剣使いにしたんだろう!? なら、トリアがそれに従っているはずがない!!」
「おいおい何のことだか知らなけど、決めつけはよくないぜぇー」
まずい、エクスカリバーの相手ってだけでも厄介なのに、木場のメンタルが追い込まれてる!!
「トリアの姐さんは俺が聖剣使いになる前からバルパーのおっさんの直属だぜ? 何があったか知らないけど、一番の側近ってやつだなぁ?」
「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ!!」
信じられないように激昂する木場だが、其れは致命的な隙だった。
足払いを仕掛けられ、木場が転んでしまう。
そして、その隙を逃さずフリードは剣を振り上げて―
「おぉっと!」
その腕に、匙の触手が絡みついた。
「いまだ兵藤!!」
「ああ!」
その隙を逃さず、俺は二人の間に割って入る!
「なめんじゃねえぞこの野郎!!」
「うぉっと! ちょ、ちょっとタンマ!!」
フリードは慌てて攻撃を回避するが、しかし動きを阻害されているためかわしずらいようだ。
とにかく、死なない程度に切り刻んで後でしっかり話しを聞かせてもらう!
「木場! とにかくこいつをとっ捕まえてからすべて聞き出すぞ! それまでしっかりしろ!!」
「・・・そうだね、少し冷静さを失っていたようだ」
木場も冷静さを取り戻すと、魔剣を構えてフリードをにらみつける。
「そしてここまでだ。いくら君でも、動きを封じられた状態で僕とイッセーくんを同時に相手にできるわけがないだろう?」
「うっそーん! エクスカリバーに選ばれたぼくちゃんが、一転して大・ピンチ! これも武器に頼ったのが原因か!? ああ、過去に戻れるならやり直したい!!」
ふざけたことを言っているが、しかし動揺しているのが目に見える。
よし、このチャンスを逃さず一気に取り押さえて―
「何やってるの、フリード」
次の瞬間、触手があっさりと切り裂かれた。
「・・・嘘だろ!? 俺のラインをあっさりと!?」
匙が驚愕しているが、其れより驚愕しているのは木場だった。
「イザイヤ、やっぱり邪魔するんだ」
「トリア! なんで君がバルパーと一緒にいるんだ!?」
その金髪の女性に、木場は大声でなじる。
「バルパー・ガリレイは僕たちの、あの子たちの仇だぞ!? そんな奴とどうして!?」
信じられないだろうな。
同胞たちの仇と、同胞が一緒にいるだなんてそりゃあ信じたくないだろう。
だけど、木場。俺は一目見た瞬間にわかったよ。
「それがどうかしたの?」
・・・この女は、そんなことを一切気にしていない。欠片も悔やんでなんていない。
この女にとって、それはその程度のことでしかないんだよ。
「まったく、トリアに比べるとフリードは一歩劣るな」
と、そこに一人の男が姿を現した。
初老の神父の恰好をした男をみて、俺たちは警戒する。
っていうか、タイミングから考えると一人しかいないよな。
「アンタがバルパー・ガリレイか!」
「いかにも。私がバルパー・ガリレイだ」
殺意のこもった木場の言葉に、平然としてバルパーが答える。
ああ、こっちも目を見てすぐにわかったぜ。
この野郎、わかりやすいマッドサイエンティストだ。
「バルパー。危ないから下がってて。あなたが死んだら私がエクスカリバーを使えない」
「心配することはないだろう。君たち二人ならその程度の雑魚悪魔三人を滅ぼすことなど簡単だ」
この野郎、言ってくれるじゃねえか!
「お前が・・・お前がっ!」
木場は激昂してつかみかかろうとするが、それを匙が取り押さえる。
「落ち着け木場! ゼノヴィア達が来るまで待つんだ!」
ああ、それが一番妥当な選択肢だろう。
ゼノヴィアとイリナが来てくれれば、まだ何とか勝機が・・・っ
「なら安心しろ。もう来たぞ」
「お待たせ♪」
と、トリアの真上から二人が現れて切りかかった!
おお、ナイスタイミングだ!
「っ。雑魚が増えた」
それをあっさりとかわすトリアだが、しかし顔をしかめると構えを取り直す。
「さすがに五人相手だとかばいきれない。いったん引くよ」
「仕方があるまい。フリード、頼む」
「OKおっさん! そんじゃあな諸君、次あったときが、本当のバトルだ!」
そういうと、フリードが地面に何かをたたきつけると閃光がほとばしった。
閃光弾! あの野郎味な真似を!!
暗待った視界が収まる時には、フリードたちの姿はかなり遠くになっていた。
この状況下で追いかけても追いつくころには時間がかかる。そうなればコカビエルも相手にすることになるかもしれないし、ここは不利か。
俺はそう思って矛を収めたが、しかし冷静じゃなかったのが一人いた。
「逃がすかぁああああ!!」
木場が、全力で駆け出していく。
「同感だ。これ以上好きにさせるわけにはいかない」
「アーメン! これも主のため神のためよ!」
と、イリナとゼノヴィアまで駆け出してしまう。
「あ、おい!」
俺は慌てて止めるが、三人とも聞きゃしない。
あっという間に、三人は姿を消してしまった。
「・・・どうするんだよ、コレ」
「下手に追いかけたら二の舞だ。・・・部長と会長の支持を仰ごう」
冷静になったら、すぐにでも俺たちに連絡をしてくれるはず。それを待つしかない。
ああもう、あいつの追い込まれ具合を甘く見てた!
・・・大丈夫だよな、木場。
そして、部長たちに連絡をしたら今日は休むように言われてしまった。
戦闘をしていて疲れただろうから、ここは待った方がいいと行ってきたのだ。
木場たちはほかの眷属が探してくれているし、ここは待機した方がいいだろう。
それはそれなんだけど、だけどやっぱり心配だな。
「あ、イッセーさん」
と、俺の部屋にアーシアが入ってきた。
「眠れないのか? ま、俺もなんだけどな」
「はい。木場さんが心配で・・・」
だよな。俺も心配だよ。
それに、アーシアの場合にはほかにもいろいろあるしなぁ。
「あいつらに言われたこと、気にしてるか?」
魔女・・・か。
確かに、滅ぼすべき邪悪である悪魔を治しちゃったんだから、倒そうとしている側からしたら腹も立つのかもしれないな。
人間界じゃ赤十字とかいって、怪我人は敵味方かかわらず治療するのを美徳としている。だけど異形業界ではそういうのはないようだ。
だからだろう。割と本気で敵意があった。
それを思い出したのか、アーシアは少し肩を震わせていた。
「ゼノヴィアさんは善意でああしたんだと思います。聖書の教えでは自殺を禁じていますから、楽にするというのならほかの人がしてあげないといけませんし」
「
そういえばそういうのがあった。
助からない人間を楽にするための短剣だそうだ。自決が禁じられている宗教だからこそ生まれた短剣だよな。今回のもそれと同じか。
そういう意味では、確かにゼノヴィアのそれは善意だったんだろうな。
それをわかったうえで、だけどアーシアは首を横に振った。
「ですが、それは受け取れません。私はまだ死にたくいないですから」
「アーシアなら、たぶん絶対神様のところに行けると思うぜ?」
俺は茶化してそういうが、アーシアは静かにほほ笑んだ。
「今、ここにいたいと思ってしまったんです。罰当たりなことだとは思いますが、リアス部長や木場さん、小猫ちゃんに・・・そしてなによりイッセーさんがいますから」
そっか。それは、うれしいこと言ってくれるな。
「ありがとう、アーシア。だったら俺もアーシアを守るよ」
俺はそういうと、アーシアを抱き寄せる。
「まだ気持ちの整理がついてないけど、それでもアーシアは大事な女の子だ。そんな子が嫌がることを無理やりしようっていうのなら、それは俺の敵だよ」
ああ、そんなことは許しはしない。
「大丈夫。俺も結構強いんだぜ」
「はい。イッセーさんが強いのは、私が一番よく知ってます」
そういうと、アーシアは俺の胸に顔をこすりつける。
・・・ヤバイ、すごい興奮する。
「大好きですイッセーさん。ずっと一緒にいたいです」
「そっか。アーシアみたいな可愛い子にそんなことを言われるのなら、それはすっごい光栄だ」
うん、まだ答えは出ないけど、これだけは言える。
俺は、アーシアを守るために全力を出すぜ、絶対。