異世界侵略 ~転生者たちが侵略す~   作:グレン×グレン

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聖剣襲撃 ~再開は殺意とともに

 

 そんなこんなでエクスカリバー破壊団を結成した俺たち。

 

 そういうわけで、親睦会もかねてハンバーガーショップでハンバーガーを食べながら、作戦会議を開いている。

 

「にしても、全然見つからねえな」

 

 匙がポテトを食べながらそうぼやいた。

 

 ああ、まったくもってその通り。

 

 探し始めてかれこれ一瞬間だけど、結局全然見つかってない。

 

 コカビエルが戦争を勃発させたがっているっていうのは、悪魔で堕天使側の想像なだけで実は違ったのか?

 

「なあ、これって前提が間違ってて、実はほかの堕天使との合流に選んだだけなんじゃないか?」

 

「それはないだろう。言われて初めて気が付いたが、グレモリーの管轄でわざわざ堕天使の幹部が潜む必要がない。そんなことをしなくても自分の管轄地ぐらい持っているはずだ」

 

 と、俺の疑問をゼノヴィアが一蹴する。

 

 うーん。確かに一理通ってるんだけどさ?

 

「そもそも戦争を不用意に起こしたって何の得にもならないだろ? 基本的にデメリットの方が多いじゃねえか」

 

 金はかかるし人は死ぬし、消耗の方がはるかに大きい。なんでそんなことを自分から進んでやるのかよくわからないな、俺は。

 

 心底不思議な気持ちだったのだが、ゼノヴィアは意外そうな顔をする。

 

「何をいう。我々信徒からしてみれば信仰を広げ悪徳を正すという十分すぎる理由がある。悪魔にしてみても人類を欲に沈めるのに我々教会や天使は邪魔ものだろう? 堕天使からしてみてもいい気持になるとは到底思えん」

 

 そうなのか?

 

 う~ん。よくわからないなぁ。

 

「首をかしげてるところ悪いんだけどさ。それなら俺も分からないことがある」

 

 と、匙が手を挙げた。

 

「そもそも、なんで木場は聖剣に恨みがあるんだ? 俺、その辺の事情が全く分かってないんだけど」

 

 ・・・ああ、そういえば。

 

「簡単にいうとね? 聖剣計画の初代担当者が外道だったの」

 

 と、イリナがすごい簡単にまとめる。

 

「あの件は我々にとっても大きな汚点だ。聖なる剣の担い手を作り出す計画に、邪悪たるものがかかわっていたのだから。・・・しかも主のいとし子たちを何人も犠牲にしたのだ。・・・殉教ではなくてな」

 

 と、ゼノヴィアも心底苦い顔をする。

 

 ああ、そういえばそんなことを言ってたけど、向こうとしてもよっぽど嫌な話だったらしい。

 

「その成果があるからこそ私は晴れて聖剣使いになれたんだけど、それを思うとちょっと嫌な気分になるのよねぇ」

 

「マジか。いったいどんなことしたんだよ?」

 

 イリナが苦い顔をするので、匙も割とドンビキする。

 

 と、コーヒーを飲んで静かにしていた木場が、コップの水面を見ながら小さくうなづいた。

 

「そうだね。協力してくれる以上、詳しく話した方がいいのかもしれない」

 

 そういうと、木場は静かに話し出した。

 

 もともと孤児だった木場は、教会の聖剣計画の被験者として拾われたらしい。

 

 それまでは名無しだったらしいが、木場祐斗というのは部長がつけな名前だそうだ。聖剣計画では別の名前を当たられていたという。

 

 まあ、言われてみればすごい納得。木場ってコーカソイド系の見た目だもん。純日本人の名前って、部長ってもしかして日本オタク?

 

 まあそれは置いといて、実験は割と過酷だったらしく、それが原因で死ぬものもいたらしい。

 

 それでも木場たちは一生懸命耐えた。主に選ばれた存在だと固く信じたから。この苦しい思いが報われると、そう信じていたから。

 

 聖歌を口ずさみ、自分が報われた後のことを信じながら、そして処分の日を迎えた。

 

「アーメン。そう告げながら、彼らは僕らに毒ガスを巻いたよ」

 

 毒ガスに苦しむ中、比較的ガスを吸わなかった木場は、ほかの仲間たちに助けられて何とか施設を逃げ出したという。

 

 だが、毒ガスに蝕まれた木場もまた長くはもたなかった。

 

 だが、奇跡的な確率で近くを視察していた部長に拾われて、いまに至るらしい。

 

「・・・概要を聞いた時から腹立たしかったが、バルパー・ガリレイめ、虫唾が走る」

 

「まったくだわ! 私たちの同胞になったかもしれない子達にそんなことして! 私がエクスカリバーで裁いてあげるわ!」

 

 と、ゼノヴィアとイリナもかなり怒っている。

 

 うん、さすがに信徒なだけあって基本は善の人たちなようだ。信仰心が強くて変な方向に行ってるだけなんだな。

 

 だが、そんな二人より過剰に反応している人がいた。

 

「・・・う、うぅううううう」

 

 匙が、すごい勢いで大泣きしていた。

 

 あの、ここ確かに今俺たち以外いない時間帯なんだけどね? 場所考えてね!

 

「なんて話だ! クソッタレ! 何が信徒だその野郎は! マジで許せねえ!!」

 

 お、おう。確かにその通りなんだけど、お前が大泣きしすぎて俺たちは戸惑ってるよ!

 

「ぶっちゃけていうと今回、俺は流されてここにいただけだったよ。だが、こっからは本気で手を貸してやる!! そのバルパーとかいうやつを、俺たちでとっちめてやろうぜ!!」

 

 匙、バルパーが今回の事件にかかわっているかどうかはまだ確証ないぞ?

 

 だけど、やる気になってくれたならいいことだ。

 

 ああ、こいつも結構いいやつだな。

 

「その通りだわ! 匙くんだっけ? あなた悪魔の割にはいい人なのね?」

 

「おう! あんたも教会の人間にしちゃぁ話が分かるぜ! こうなりゃ本気でエクスカリバーを取り戻すぞ!」

 

 と、テンションが基本高いイリナも一緒にテンションを上げていく。

 

「・・・なあ、気持ちはわかるのだが店員もいるのを忘れてないか?」

 

 ・・・あ。

 

「や、やべえ! 俺たち変なやつに思われるのか!?」

 

「大丈夫よ! 聖書を渡して布教をすれば―」

 

「いいわけないでしょ」

 

 と、聖書を取り出したイリナの高等部にチョップが叩き込まれた。

 

 そこには、心底あきれた顔をした一樹の姿があった。

 

「はあ。あんたら演劇の練習でもしてんの? 見てて恥ずかしいからカラオケボックスとかでやってくんない?」

 

「え、あ、ごめん! これから気を付ける!!」

 

 なんか勘違いしてくれているようだし、とりあえずそれに乗っかろう!!

 

「すいません蛇野さん。騒がしかったですね」

 

「まあ、今は静かな時間帯だからいいんだけどね? 他のお客さんがいつ来るかわからないからもうちょっと静かにお願い」

 

 いや、本当にすいません!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういうわけで、夜になってから俺たちはエクスカリバーを探していた。

 

 いま、俺たちは神父の恰好をしている。

 

 まあ簡単にいえばただの囮作戦だ。

 

 神父を何度も襲っているのだから、神父の恰好をすれば襲い掛かってくるかもしれないという単純な作戦。

 

 とはいえ、向こうも見つけてくれないせいでなかなか襲われない。いい加減少し飽きてきたな。

 

 ちなみにイリナとゼノヴィアは少し離れたところで移動している。彼女たちがいると向こうが警戒するかもしれないからだ。

 

 そういうわけで俺たちは気合を入れて探しているんだけど・・・。

 

「全然出てこないな。怪しまれてんのか?」

 

「だろうな。何度も殺していれば向こうも武闘派を送り込んでくるって想定するだろうしよ」

 

 匙の推測にそう答えながら、俺たちはそれでも襲われやすい人通りの少ないところを歩いている。

 

『だが、そろそろ向こうも動くはずだ。これまで犠牲になってきた神父たちのタイミングからしてそろそろ周期的なタイミングだ』

 

 と、電話越しにゼノヴィアが告げてくれるけど、全然うれしくない。

 

「・・・そういえば、まだ言ってなかったことがある」

 

 と、戦闘を歩く木場が言った。

 

 なんだ?

 

「実は先日、エクスカリバーを持ってるものと交戦している。一人はフリード・セルゼンというはぐれ悪魔祓いだ。・・・知っているかい?」

 

 な!?

 

 フリードの奴、まだ駒王町に潜伏してやがったのか!?

 

「黙っていて済まないねイッセーくん。ちょっと別件で思うところがあって、言い出せなかった」

 

 と、複雑な表情で木場が謝る。

 

 別件? いったいなんだ?

 

『フリードってあれよね? 14歳で悪魔祓いになったけど、味方まで殺して追放されたっていう』

 

 イリナ、それマジで?

 

 あいつ確かに危ない奴だったけど、そっちでも扱いに困ってたのか。

 

「また物騒なやつがエクスカリバー持ってるんだな。・・・聖剣も使い手選べよ」

 

『それについては同意見だ。あのような外道にエクスカリバーを使われるとは、心底腹が立つね』

 

 ゼノヴィアの方も心から不満らしい。

 

 まあ、あんな奴と同じ種類の件を持っているだなんて腹が立ってもおかしくないか。

 

 だが、木場は顔色が悪くなっている。

 

 なんだ? 別件っていったいなんだ?

 

「もう一人のエクスカリバー使いは、トリアという。聞き覚えはあるかい?」

 

『いや、そんな名前の悪魔祓いは聞いたことがない』

 

『でも、私達だって悪魔祓いの顔と名前全部把握してるわけじゃないわ? そういう人の一人じゃない?』

 

 ゼノヴィアとイリナの声を聴きながら、木場は静かに首を振った。

 

「いや、彼女は聖剣計画の被験者だよ。・・・僕たちの同期だった」

 

 ・・・え?

 

 ちょ、ちょっとまて!

 

「聖剣計画の被験者って、全員殺されたんじゃなかったのか!?」

 

 思わず大声を上げる。

 

 だけど、それにしたっておかしいだろう。

 

 だって聖剣計画の被験者はほとんどが殺されたんだぞ!?

 

「生き残ってるにしたって、なんでバルパーなんかに従ってるんだ!? ・・・いや、もしかして別件なのか?」

 

 匙の推測があたりと思うしかない。

 

 バルパーの研究で聖剣使いを作ってるのなら、木場の同期が従ってるだなんて信じられない。

 

 俺はそう思ったが、しかし―

 

「いやー? バルパーのおっさんが俺たちを聖剣使いにしてくれたんでござんすよ?」

 

 と、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 その声は―

 

「フリード!!」

 

「おっひさー! 久しぶりイッセー君? 俺に殺されるまで死んでなくってうれしいよん?」

 

 そう不愉快な声をだすフリードは、その手に耶馬気なものを持っていた。

 

 聖なるオーラを垂れ流すすごそうな剣。

 

 ああ、あれが―

 

「さあ、俺の天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)で切り刻まれて頂戴な!」

 

 エクスカリバーか!!

 


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