異世界侵略 ~転生者たちが侵略す~   作:グレン×グレン

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洋服崩壊! ~うなれ、新たな必殺技

 

 ついに、ついに来やがったか。

 

「アーシア・アルジェントって、悪魔を治しちゃったあの魔女?」

 

 イリナは意外なものを見るかのような目で見るが、このチャンスを逃さず話を逸らすべきか?

 

 と、思っていたらアーシアがすぐにうなづいた。

 

「はい。そうです」

 

「・・・悪魔を治した魔女がそのまま悪魔に堕ちるだなんて! ああ、なんて悲劇!」

 

 微妙にコミカルに反応しないでくれない、イリナ。

 

 それはともかく、ゼノヴィアはまっすぐにアーシアを見据えるが、そこにはそこはかとなく冷たい敵意が見える。

 

 まあ、悪魔を滅ぼすために動いている悪魔祓いからしてみれば、悪魔を治した元聖女だなんてぶち殺し案件ではあるが・・・。

 

「一つ聞きたい。君はまだ主を信仰しているのか?」

 

「いやゼノヴィア? 悪魔に転生した人が主を信じているわけないじゃない」

 

「いいや。彼女の目にはまだ信仰が残っている。・・・偶にいるんだよ、そういうのが」

 

 へえ。少しはわかってるんじゃないか。

 

 だけど、ゼノヴィアの表情は別に許しを与えるとかそういうわけでもなさそうだ・・・。

 

「・・・捨てられないだけかもしれません」

 

「なら、我が刃で主の身元に送って―」

 

「おぉっとそこまでだ」

 

 と、ゼノヴィアが動くより早く部長が立ち上がった。

 

「てめえら少し礼儀ってもんをわきまえたらどうだ? 人様の縄張りで好き勝手しようとか言ったうえに、人の舎弟に手を出そうとか・・・戦争再開を願ってるんじゃねえだろうな、ああ?」

 

「堕ちたまま苦しむ者に慈悲の一撃を与えるのは戦士として当然のことだ。なにより、悪魔と堕天使はいずれ倒すべき敵だろう?」

 

 まずいな、コレ。

 

 ゼノヴィアの奴、ここで俺たち全員を倒すつもりか?

 

 緊張感が高まる中、部長はゼノヴィアを見ながら口を開いた。

 

「言っとくが、俺様は人様の縄張りで敵対している連中を好きに動かさせるつもりはねえぞ?」

 

「なるほど。ではまずはお前たちを倒すしかないようだな」

 

 にらみ合い、そして腰を下ろすゼノヴィア。

 

 だが、部長はそれに対して片手を上げる。

 

「まあ待て。何も動くななんて言ってねえ。・・・条件がある」

 

「なんだと?」

 

「落ち着きなさいよゼノヴィア。聞くだけ聞いてみましょうよ?」

 

 割と本気で戦闘体勢のゼノヴィアを押しとどめながら、イリナは話を促した。

 

 おお、実は話が分かるのか?

 

「それで条件は何かしら? ・・・はっ! 実はアーシア・アルジェントに感化されて悪魔でありながら信仰に目覚めたとか!?」

 

 いや、ただのアレな人だ。

 

 こんなのが幼馴染だという事実を記憶から忘却したいです。

 

「その前に一つ聞きてえことがある。・・・聖剣計画、知ってるよな?」

 

 部長がそれを訪ねると、ゼノヴィアとイリナは同時に渋い顔をした。

 

「どこで聞いたかは知らないが、確かにその技術は使われている」

 

「でも最初の研究者が非人道的な研究を行ったそうなのよ。まったくもう! 誇るべき偉大な計画に汚点を作るだなんて怒っちゃうわ!」

 

 ああ、あれってやっぱり現場の独断なのか。

 

「それは神に誓えるか?」

 

「当然だ。少なくとも、当時の研究主任は異端の認定を受けているとも」

 

「名前はバルパー・ガリレイ。確か堕天使のところに逃げ込んだって聞いたけど?」

 

 とイリナが効いて、朱乃さんはふむと指に手を当てる。

 

「私も全部を知っているわけではありませんので。・・・ただ、コカビエル様は聖剣に興味があるそうなので、個人的に囲っていたかもしれませんね」

 

 まあ、神の子を見張るものも相当にでかい組織らしいしなぁ。一枚岩じゃないってことか。

 

「しかしまあ、どこもかしこも一枚岩ではございませんわ。そういう意味ではリアスはどんな側なのでしょうか?」

 

 そう、確かめるように響く言葉に、リアスは静かに周りを見ると、胸を張って声を出す。

 

「そちらに対する行動の許可は単純明白! うちから二人、そしてシトリー眷属から一人、監視役をつけることだ!! そうじゃない限り、縄張り内での好き勝手は一切許さねえ!!」

 

「そう来るか・・・っ」

 

感心したかのようにゼノヴィアは納得したようだ。

 

 これなら、朱乃さんの依頼を果たしながら、教会の二人組の監視を続けることができる。

 

 そして、その担当は―

 

「ソーナのところからはソーナに選ばせる。俺様は、木場祐斗と兵藤一誠を指名するぜ?」

 

 あ、やっぱり俺ですかそうですか。

 

 木場の監視役も兼ねろということですね。

 

「・・・いいだろう。だが、こちらからも一ついいだろうか」

 

 ゼノヴィアは少し考え込んでいたが、しかし肯定的な返事を返す。

 

「え、ちょっとちょっと! いいの!?」

 

「まあ、上の意見を伝えれば不機嫌になるのはわかっていた。動く肉の楯ができたと思えばいいし、相手の側から見てもそれが妥協点だろう」

 

 あれ? 発現こそ辛らつだけど割とスムーズだよ?

 

 だが、こっから先が大変だった。

 

「その前に、実力を見せてもらおうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧校舎の外で、俺と木場と匙が聖剣使いの二人と対峙していた。

 

 向こう側が出した条件は極めて単純。戦力になるかどうかを模擬戦でテストすることだ。

 

 そういうわけで、旧校舎の外に結界を張って模擬戦の場を作ってやることになった。とりあえず多少暴れた程度では外に気づかれることはないようだ。

 

「匙? これは私の名代のようなものなので、恥かしくないようにしなさい」

 

「え、あ、はい! が、頑張ります!」

 

 割とてんぱりながら匙はうなづき、そして俺をぐいと引き寄せた。

 

「どういうことだよ! なんで俺がこんなことに巻き込まれてんだ!」

 

「いや、俺に言われても。お前を選んだのは会長だし、信頼されてんじゃないの? 駒価値4だろ?」

 

「それはうれしいけどすごく怖いんだよ! だって聖剣エクスカリバーだぞ? 生半可な聖剣よりはるかにすごいんだぞ!?」

 

「それはそうだよ。七分割されているとはいえどエクスカリバーだからね」

 

 そういう木場は、なんていうかものすごい微妙な表情を浮かべている。

 

「どうしたんだよ木場。せっかくのエクスカリバーとの戦いだぜ? 少しぐらいテンション上がるかと思ったんだけどな」

 

 かなり意外なぐらいだ。ぶっちゃけ何かきっかけがあったらすぐにでも切りかかりそうだったけど、最後の最後まで何とか抑え込んでいる。

 

 木場は何も答えなかったが、だけど何か複雑な表情を浮かべていた。

 

「・・・なあ、木場ってエクスカリバーとなんか因縁でもあるのか?」

 

「ああ、もともと教会出身だったんだけど、エクスカリバーがらみで転生する羽目になったらしい。さすがに詳しいことは俺の口からは・・・」

 

 俺たちは想小声で話し合うが、しかしそこでゼノヴィアが剣を抜いた。

 

「私達と肩を並べるというのならば、せめて三人がかりで五分は持ってもらわないとな」

 

 そしてイリナも擬態の聖剣を抜く。

 

 なんだろう。涙を浮かべながら生き生きとしている。

 

「アーメン! これもまた主の与えた試練なのよきっと! 悪魔に堕ちた幼馴染を乗り越えることで、私は新たな信仰に目覚めるのだわ!!」

 

 あれ? もしかして俺がターゲット?

 

「行くわよイッセー君! 私がエクスカリバーで裁いてあげる!!」

 

「いやこれ模擬戦うぉわぁ!?」

 

 真正面から全力で切りかかってきたよこの子!?

 

 ヤバイ。この人間違いなく危ない人だ! 信仰に酔っぱらってるよこの人!!

 

「アンタ狂信者と呼ばれる類だよ!!」

 

「失礼ね! せめて純信者とかうまいことは言えないの!?」

 

 ひぃいいいいい! お助けぇえええええ!!!

 

 確かに純真な信者だけど! これは悪魔になってなくてもごめんだっての!

 

 くそ、木場と匙はどうした!

 

 と、思ったら木場はいきなりゼノヴィアに追い込まれていた。

 

 ゼノヴィアがエクスカリバーを振るうと、余波で地面が粉砕される。

 

 なんだあの破壊力!? 接近戦用の武装であれって、ライザーと火力で打ち合えるんじゃないか!?

 

「我が破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)はすべてを打ち砕く・・・が」

 

 木場の聖剣をやすやすと弾き飛ばしながら。ゼノヴィアは嘆息した。

 

「そもそも下級悪魔風情が、集中力を欠いた状態で聖剣使いを倒そうなどと片腹痛い。・・・いくら私が聖剣計画とは無関係の天然ものとはいえ、これはいささかどうだろうな」

 

「く・・・っ!」

 

 どうしたんだ木場の奴。

 

 いつものように冷静なわけでもなければ、ブチギレているわけでもない。

 

 敵意こそあれ、なんか集中できてないぞ!

 

「その程度で監視役など侮蔑に等しい。模擬戦といえど骨の一本は覚悟してもらう!」

 

 あ、やべ! このままだと―

 

「おぉっとそうはいかねえな!!」

 

 と、エクスカリバーに黒い鞭のようなものが絡み憑いた。

 

 そのとたん、破壊の聖剣の力が明らかに落ちる。

 

「・・・神器か!?」

 

「その通り! 俺の神器はくっつけた相手の力を吸い取るのさ!」

 

 見れば、匙が得意げな表情を浮かべながら腕にトカゲの頭のようなものをつけていた。

 

 さすがは駒価値4! 俺も負けてられねえな!

 

騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)! 力貸せ!!」

 

 俺はジオティクス様にもらったナイフを抜くと、宝具化させたうえで真正面からエクスカリバーを迎え撃つ。

 

「そんな! 確かにすごいナイフだけど、エクスカリバーとまともに打ち合うなんて!?」

 

 驚愕するイリナだが、そもそも甘い!!

 

「形状変化が持ち味なのに、そんな真正面から使うからだよ!!」

 

 隙を突いて俺はぶん投げるが、しかしイリナはすぐに態勢と整えると着地する。

 

「やってくれるわねイッセーくん! だけど勝負はここからなんだから!!」

 

 そうか? だがすでに終わっている。

 

 見るがいい、レーティングゲームではいろいろあって使う暇がなかった俺の新しい必殺技!

 

「一糸まとわぬ姿を見せろ! 必殺、洋服崩壊(ドレス・ブレイク)!」

 

 そういって俺がパチンと指を鳴らすと同時、イリナの服がはじけ飛んだ。

 

「・・・いやぁああああああ!? な、ナニコレぇえええええ!?」

 

「ふっ! イメージこそが魔力の根源と聞かされたんでな。女の裸を見たいというイメージでちっぽけな魔力を凝縮したのがこの技だ」

 

 ああ、俺は女の裸を見てみたかった。

 

 戦闘中なら合法だと思ったんだ! だから習得したんだよ!!

 

 フハハハハ! 眼福だが、しかしそんなことをしている暇はない。

 

「次はお前だ、ゼノヴィアぁああああ!!!」

 

「む、来るか」

 

 木場と匙を相手に渡り合っていたゼノヴィアに、俺は真正面から切りかかる。

 

「人のアーシアちゃんをさんざん罵倒しやがって! ちょっと落とし前つけてやるよ!!」

 

「異端を異端といっただけでそこまで言われるとはね。だが、私はイリナのようにはいかないぞ」

 

 ゼノヴィアは無理やり俺を弾き飛ばすと、匙のラインを強引に引きちぎる。

 

「なんだと!? 俺のラインを引きちぎった!?」

 

「伊達に破壊の二文字を与えられているわけではない。これでも『切姫』の名を与えられたのでな!」

 

 そのまま強引にゼノヴィアが切りかかるが、しかし舐めるな!

 

「ふん!」

 

 俺はグローブを宝具化させると、真正面から真剣白羽どりした。

 

 宝具化されたグローブ越しなら、聖剣のオーラも届くまい!!

 

「・・・なんだと!? グローブ越しとはいえ悪魔が聖剣をつかんで無事なはずがない!!」

 

「俺の両手は特別製でね。それと―」

 

 俺が視線で後ろを示すが、其れより早く木場が首元に剣を突き付けていた。

 

「油断大敵だよ。いくら腑抜けていても、これぐらいはできる」

 

 木場がそう告げ、ゼノヴィアは十秒ぐらい黙っていたがやがて剣を下す。

 

「さすがに三対二は無理があったか。・・・よくぞ私とイリナを相手にして勝利を掴んだといっておこうか」

 

 不満気だが、しかしこれで実力を認めざるを得ないだろう。

 

「よくやったじゃねえかイッセー! っていうか・・・マジで習得しやがったのかよ! ブ、ブハハハハハ!!」

 

「イッセーさん!? ひ、卑猥です、エッチです、恥ずかしいです!!」

 

「・・・最低です、イッセー先輩」

 

「まあ、悪魔らしいといえば悪魔らしいのですが・・・」

 

 あ、洋服崩壊(ドレス・ブレイク)は一部を除いて女性陣には不満のようで。

 

 だけどまあ、これぐらいはしておかないと俺の気がすまなかったからな。

 

 なにせアーシアをさんざん魔女呼ばわりしてくれたんだ。

 

 教会の教えはよくわからないけど、アーシアは全然文句を言うとしない。それどころか当然の罰だと思っている節すらあるからな。

 

 俺が、文句を言うぐらいのことはしてもいいだろう。

 

「まあ、教会の教えからしてみれば悪魔を助けるなんて罰当たりもいいところなんだろうけどな」

 

 俺は、ゼノヴィアに真正面から向き合って告げる。

 

「この国じゃあ。悪魔だからって理由だけで排斥する理由にはならないんだよ。郷に入っては郷に従えって言葉を知ってくれ」

 

「・・・ふむ。納得はできんが理解はした。一応の共闘が受け入れよう」

 

 思ったよりスムーズに納得すると、しかしゼノヴィアは苦笑を浮かべながら指をさした。

 

「だが、彼女は納得しなさそうだぞ?」

 

 ん?

 

「イッセーく~ん?」

 

 後ろを振り返った俺の目の前には、聖なるオーラを身にまとった、貫頭衣姿のイリナの姿があった。

 

 な、なんだその服? あ、擬態の聖剣を利用して服にしたのか!

 

 なかなか使いこなしてるじゃないか。見直したぜ。

 

 なんて思いながら親指を立てるが、そのとたんにイリナの額に青筋が浮かんだ。

 

 あ、これやばい。

 

「主よ! この変態をこの世から完全に抹消するために力をお貸しください!!」

 

 ぎゃぁあああああああああああああああああ!?

 


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