今日のオカルト研究部は、なんと俺の部屋で行われてる。
なんでも旧校舎を大掃除するとかで、部室が使えないとのことだ。
そういうわけで、いまやってるのは悪魔稼業をどれだけで来たかの確認。
「うぉっしゃぁあああああ! 何とか依頼がそこそここなせるようになったぁああああ!」
俺は自分の部屋で心の底からガッツポーズをした。
最近ようやく悪魔の契約もまともになるようになってきた! この調子でどんどん契約をとっていきたいところだぜ!!
「イッセーも最近は契約をちゃんと履行できるようになったもんだ。俺様も安心してきたぜ。・・・涙腺が緩むなぁこりゃ」
「部長、ハンカチです」
うぉおおい部長! それ一周回って酷いです! あと小猫ちゃんもね!
だけど、この調子なら上級悪魔とまではいかずとも、中級悪魔ぐらいなら狙えるかもしれない。
この調子で頑張っていけば、昇格も間違いなしだ!
「イッセーさんすごいです! もう仕事をこんなにこなせるだなんて」
「いやいや、アーシアさんもだいぶできてるから人のことは言えないよ」
「悪魔としての後輩はみんな優秀で自慢になります」
おお、仲間たちからも良好な反応! こりゃ気合が入るってもんだ。
「しっかし、それに比べてライザーの奴は情けねえ。一時はあいつに股を開いてもいいと思った自分に泣けてくらぁ」
と、部長は先日のレーティングゲームを思い出したのかため息をついた。
あのあと、ライザーは寝込んだうえに引きこもってしまったらしい。
特に俺にやられたのがよっぽどショックだったらしい。なんでもおもちゃ恐怖症を発症しているとか。
いや、確かに水鉄砲はおもちゃだけど、宝具化してるんだからそこまで落ち込まなくたっていいだろうに。
「脆いとは思ってたけどここまでとはな。もしかしたら二度と立ち直れねえかもしれねぇし、情けねえにもほどがあるぜ」
「とはいえ、新進気鋭のルーキーとして自他ともに認める実力者だったのです。悪魔になって日が浅いイッセーくんにやられれば仕方がないでしょう。彼はイッセーくんが転生者だということを知らないのですから」
木場がフォローを入れるが、しかしそれにしたって脆すぎだろう。
部長の言った通りだ。今まで負け知らずだったから、いざ負けるとショックが大きくて動けなくなってる。
「あらあら、せっかくの部活動なのに表情が暗いわねぇ」
と、母さんがお菓子を持って部屋に入ってきた。
「お、すいやせんお袋さん。お菓子までもらっちまって」
部長が頭を下げようとするが、母さんはそれを手で制した。
「いいのよ。この家に女の子が来るなんて、一樹ちゃんが大学に入るまでの間以来なんだもの」
「一樹ちゃんというと、蛇野さんのことですよね? 彼女はそんなに仲が良かったのですか?」
一樹と面識のある木場が訪ねるけど、実際冷静に考えるとすごいことだよな。
母さんはそれにうなづくけど、しかし俺をジト目でみる。
「それにしたって。一樹ちゃんが男遊びしてるのはどうかと思ったけど、イッセーもそれで「童貞食べてください」って土下座するのはどうかと思うわ。一樹ちゃんが泣いてもおかしくないのよ?」
「何で知ってんの!? そしてなんで一樹が泣くの!?」
一樹ぃいいいいい! 何を母さんに言ってんだ恥ずかしいだろうがぁああああああ!!!
第一あいつ男遊びしてんだから、その程度でなく分けないだろうに。
と、思ったらなんか一斉に半目で見られている。
「イッセー。俺様ですら今のですぐにわかったぞ」
「向こうに責任はありますが、イッセー先輩もイッセー先輩です」
「イッセーさんはいろいろと勉強するべきです」
「あ・・・あはは。イッセーくん、フォローできそうにないよ」
え? なに? どういうこと?
童貞食べてなんて言ったのがそんなにひどいの?
でも、でも、でも、
「彼女とエッチするときぐらい、格好つけたかったんだよぉおおおお!!!」
「「「「「いや、そうじゃない」」」」」
じゃあなんなんだぁあああああ!!!
なぜか罰ゲームを受けることになった。
そして、ノリノリで母さんがアルバムなんか取り出してきやがった。
うぉおおおおお! 記憶が戻る前の子供のころの写真とか恥ずかしいよぉおおおお!!!
「はぅうう。小さい頃のイッセーさん素敵ですぅ」
アーシアの顔が怖い!?
「イッセー先輩の赤裸々な過去」
「おうおうちっこくてかわいいじゃねえか? お前にもこんな頃があったんだぁ?」
小猫ちゃんと部長も容赦なく見てきやがる。くそ、止めたいけど止めれない!
っていうかマジでなんで罰ゲーム!? 俺が童貞捨てようと思うことは、そんなにひどいことなのかよ!?
「イッセー先輩は根本の失態に気づいてません。零点です」
マジですか小猫さん!
え? 何に気づいてないの? 教えてプリーズ!!
「いやはや。イッセーくんは僕のこと悪く言えないよね?」
どういう意味だ木場!
確かにアーシアのことにはまだ答えは出せてない。アーシアはいまだに信仰を捨ててないから、付き合うなら純粋にしないといけない。ハーレムとかは難しいだろう。
だが、俺は悪魔になったのならハーレムを作ってみたいという願望がある。それに若いからまだ遊びたいんだ! ワールマターのおかげで欲望も強いしな。
だから、どうしたものかと思ってるんだ。
でも、もう数かヶ月もたつし答えを出した方がいいだろうか・・・。
その辺も相談しようと思って木場の方を向くが、何やらおかしな表情になっていた。
俺は、その表情を知っている。
戦場で同僚を殺された人たちがよく目にする感情。戦争なんだってわかっていても、どうしても脳裏をよぎってしまう負の感情。
それを、人は憎悪という。
だけど、そんな感情を浮かべるような奴が俺の写真にいるか?
リアス部長に合うまで、俺は異形社会になんて欠片もかかわってないぞ?
「イッセーくん。この写真について聞きたいんだけど」
そういって木場が差し出すのは、かなり小さなころの写真だ。
ああ、それはたしかあれだ。
「小学校に上がる前に引っ越した女の子の写真だな。たしか一樹とは別口でかかわってなかった子だよ。・・・ヤバイ、名前はもちろん男が女かも思い出せない」
うろ覚えすぎて全然思い出せない。このころの子供って男と女の区別すらつきにくいからな。
見る限り中性的だし、さらに区別がつきにくい。
あ、でも一つ言えることがある。
「確かその子クリスチャンだったけど・・・まさかそれでキレてるんじゃないよな?」
さすがにそれはどうかと思うぞ? ほら、日本って一応信仰の自由認めてるし。
「さすがにそれはないよ。・・・だけど、この真ん中にある剣が問題だ」
そういって木場が指さすのは、部屋に飾ってある一本の剣。
装飾が施されていて結構高そうな剣だ。っていうか今更思うけど、銃刀法違反に引っかからないか、コレ?
だが、そんな感想がぶっ飛びそうなほど、木場の表情は真剣だった。
「・・・これは、聖剣だよ」
そして、この子と聖剣が駒王町を大きく揺るがす事件の重要関係者だということを、俺はまだ知らない。