異世界侵略 ~転生者たちが侵略す~   作:グレン×グレン

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不死鳥来訪 ~出会いは炎とともに?~

 

 

 

 

 その日の夜、俺とアーシアは悪魔稼業も終えて帰ってきた。

 

「んじゃ、先にシャワー浴びてなよ」

 

「はい。お先にいただきますね」

 

 アーシアに先にシャワーを譲って、俺は自分の部屋でくつろいでいた。

 

 ・・・しっかし、最近はだいぶ平和だなぁ。

 

 はぐれ悪魔の討伐もあれ以来ないし、何より堕天使とのもめ事もない。本当に話は通ってたらしい。

 

 悪魔になってから短い間に、やれはぐれ悪魔やらやれ堕天使やら大変な目にあってたけど、意外とこの業界は平和らしい。

 

 でも、それもいつかは崩れ去る。

 

 ワールマターは必ず来る。そのつもりがなければ、俺たちに力を渡したりなんてしないはずだ。

 

 部長のキロキロの実も、俺の騎士は徒手にて死せずも強力だ。部長曰く、神器の究極形態である禁手(バランス・ブレイク)に匹敵するとか。

 

 それだけの代物を持っている連中が何十人もいるはずなんだ。そして、そいつらが俺たちと同じようにワールマターに反旗を翻すとは限らない。

 

 ああ、これは覚悟を決めないといけないだろう。

 

 一美とアーシアの顔が脳裏をよぎる。次に父さんと母さんの顔が、一樹や松田や元浜の笑顔がよぎる。最期に、部長たちの顔もよぎった。

 

 ・・・ああ、絶対になくしてたまるものか。

 

 あの時は、結局守りたいものすら手に入らず、そのまま無残に朽ち果てた。

 

 今回は、そんなことをしてたまるものかよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、義姉貴(あねき)? 話が違うんじゃねえか?」

 

『グレイフィアとお呼びくださいリアス様。・・・それに関しては旦那様にお聞きください』

 

「いや、受けないだなんて誰も言ってねえだろ? だけど、今のあいつはガラスのエリートだからよぉ・・・ちょっと気後れが」

 

『旦那様の意向に従うとおっしゃったのはリアス様ですよ?』

 

「いや、そうなんだけどな? それでも大学出るまでは好き勝手させてくれるって話だったろうが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の午後、俺たちは部室に向かっていた。

 

「しっかし部長ってかなり男勝りな口調だよな?」

 

「そうだね。前世(まえ)からあんな感じだったらしいよ?」

 

 木場たちとしゃべりながら、俺たちは旧校舎の前にまでくる。

 

「そういえば小猫ちゃん、部長さんはもう部室でしょうか?」

 

「部長はたいてい一番についてます。なんでも頭が常にいなければ格好がつかないとか」

 

「なにそれ、すっげえかっこいいんだけど」

 

 部長。なんであんたはそんなに漢なんだ。畜生かっこよすぎてグラマラスな体系なのに立たねえよ。

 

「そういえばアーシアさん。日本語のほうは慣れたかな?」

 

「漢字というのが難しいですけど、ひらがなのほうは大体わかるようになりました」

 

 アーシアは木場にそう答える。

 

 そう。アーシアちゃんは勉強もすごくできる頭のいい子なんだ。

 

 この調子だと、俺がアーシアに勉強を教えられる日が来るのかもしれない。そ、そんなことになったら立ち直れなくなるかも!

 

 うん、しっかり毎日勉強しないとな!!

 

 と、思いながら部室の近くまで来ると、何やら人の気配が多かった。

 

「あれ? お客さんでも来てるのか?」

 

 しかもこれ、そうとうできるぞ?

 

「・・・僕が、この距離まで気づかないだなんてね」

 

 木場は戦慄すらしているが、特に殺気は感じないな。

 

 うん、とりあえず開けよう。

 

「失礼します! お客様ですか?」

 

「・・・せめてノックをしてください先輩」

 

 あ、いけね! ツッコミありがとう小猫ちゃん!

 

 と、そこにいたのは銀髪のすっごい美人さんだった。

 

 俺たちに気づいた部長が、片手をあげて声をかける。

 

「おうお前ら! ちょうどいいところにきやがったな」

 

 そういうと、俺とアーシアにその銀髪の人を紹介する。

 

「兄貴の嫁さんのグレイフィアだ。いろいろややこしいことがあるんで、普段はメイドに徹してるから恰好は気に擦んな!」

 

「・・・はあ。ご紹介にあずかりましたグレイフィア・ルキフグスと申します。以後お見知りおきを」

 

 な、なんかややこしいお姉さんだな。

 

 部長の性格上、結構扱いに困ってるかもしれない。あとでお茶でも入れよう。

 

 しっかし、そんな人が何でここに?

 

「あの、それでグレイフィアさんはなんで駒王学園に?」

 

「・・・あー。それがだなぁ・・・」

 

 と、部長がすごくいいズラそうな顔をした。

 

 なんだ? なんだなんだ?

 

「お嬢様。ここは私が説明します」

 

 と、グレイフィアさんが前に出る。

 

「実は・・・」

 

 その時、部屋中に炎があふれかえった。

 

 な、な、なんだ?

 

「とりあえず消火しないと。消火器消火器」

 

「落ち着いてください先輩。魔力的なものなので燃え移りません」

 

 あ、そうなの?

 

 俺は小猫ちゃんの言葉にちょっと安心しながら、その炎をを警戒する。

 

 見れば、炎の中には魔方陣が展開されている。

 

 なんだ? これ、たぶん転移の魔方陣か何かだとは思うけど。

 

「フェニックスか。なるほど、そういうことか」

 

 と、木場がため息をついた。

 

 おいおい、俺にも説明してくれよ。

 

 そんなことを思った時、ついに炎が消え、そして一人の男が其の場に立っていた。

 

 なんていうか、ホスト風の男。あとあの髪は染めたんじゃなくて天然の金髪だな。それにしてもなんていうか悪ガキっていうイメージが浮かんでくる。

 

「・・・相変わらず不愉快な風だ。人間界はこれだから嫌いなんだ」

 

 そんなことを言いながら、その男は部長に近づいた。

 

「会いたかったぜ、愛しのリアス」

 

「・・・よぉライザー。元気してたか?」

 

 と、微妙にうんざりした様子で部長が返事をした。

 

 って、え? ええ?

 

「「えぇえええええ!?」」

 

 俺とアーシアは同時に驚いてしまった。

 

 つまり、えっと、これは。

 

 部長の恋人―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―じゃあないな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・でさぁ、飲んだら帰ってくれねえ?」

 

 とりあえずジュースを出しながら、部長ははっきりと言い切った。

 

 うっわぁ、言い切ったよこの人。

 

「そういうつれないこと言うなよ、リアス。俺ぐらいだぜ? お前の本性を知って婿入りしたいなんて上級悪魔」

 

 と、ライザーも負けてない。

 

 ・・・あ、確かに貴族とかにあのキャラは受けが悪いかも。

 

「実際、上級悪魔の当主候補で部長以外にあの手のキャラをしてるのはいなくてね」

 

 木場が補足してくれるが、確かにその通りだよなぁ。

 

 貴族があのキャラって、冷静に考えたら間違いなく問題だよ。普通に考えて敬遠するって。

 

「それに、貴族の跡取りとしてグレモリーだって割と切羽詰まっているんじゃないか? だから話が進んだんだと思うんだが」

 

 と、ライザーが本格的に話を切り出した。

 

 それを聞いて、部長はため息をついた。

 

「確かに、貴族だなんて跡取り候補を何人も用意しなきゃならねえのに俺様とミリキャスしかいないってのはあれだけどよぉ。それにしたって話が違うだろうが」

 

 と、割と本気で不機嫌な部長。

 

「大学を出るまでは好きにしていいって話しだったろうが。なんでいきなり婚約って話になるんだよ」

 

「ああ、確かに大学に行ってもいいし下僕も好きにすればいい。だが、君のお父様も心配なんだよ。72柱と呼ばれた御家も、その半数以上が断絶している。転生悪魔や人間の混血と子をなす旧家もあるが、できることなら純潔の悪魔を途絶えさせたくないっていうのは当然だろう?」

 

「それとこれとは別問題だろうが。・・・第一、結婚しないなんて言ってねえだろ」

 

 ライザーの説得に再び肩をすくめながら、部長はどっかりとソファーに座る。

 

「お前ができる男なのはわかってる。親父殿の人を見る目も信用している。・・・これはただ単に筋が通ってねえってだけだろうが」

 

「そういうわけにもいかないさ。・・・君の事情はお父さんからちゃんと聞いている」

 

 と、ライザーも返す。

 

 ・・・って待て? つまりライザーは、部長が転生者だってことも知っているのか?

 

「・・・コレクター魂が燃え上がったか? 俺様系転生者貴族悪魔なんて、俺様ぐらいしかいねえだろうしなぁ」

 

「おいおい失礼なこと言うなよ。俺は全員愛してるぜ?」

 

 ん? 何やら不穏なことになってきたような・・・。

 

 と、思ったら魔力が吹き荒れる。

 

「・・・物理的にたたき返されねえとわからねえようだな。俺様は、必要なら半殺しぐらいなら平然とするぜ?」

 

「・・・なら俺も、君の眷属を全員燃やし尽くしてでも連れて帰るとするか」

 

 えええええええ!? いきなり戦闘ですかぁああああ!?

 

「・・・ヒっ」

 

 ああ! アーシアが悲鳴を上げてる!

 

 うん、怖いよね!? いきなり殺し合いとか、いくらなんでもアーシアには荷が重いよね!

 

 クソッタレ! こんなところで戦闘までする羽目になるのかよ!!

 

 そんな風に俺がみがまえたとき、グレイフィアさんが二人の間に割って入った。

 

「お二人とも落ち着いてください。これ以上やるのでしたら、サーゼクス様の名誉のためにも鎮圧させていただきます」

 

 静かだけど迫力のこもった声が、二人に冷徹にたたきつけられる。

 

「・・・最強の女王(クイーン)と称される貴方にそんなことを言われたら、俺もさすがに怖いよ」

 

「それはそれで望むところ・・・と言いてぇけど、さすがに無謀な勝負を挑むのは馬鹿のすることだな」

 

 魔力を霧散させる二人を見るに、それだけ強い人なんだな、この人。

 

 っていうか最強って言った? なんでそんな人がメイドやってんの!?

 

「こうなることは旦那様もサーゼクス様も、フェニックス家の方々も承知しておりました。そのため、最終手段は用意しております」

 

 グレイフィアさんがそういうと、部長はやれやれといわんばかりにいやそうな表情を浮かべた。

 

「・・・つーとあれか? レーティングゲームをやれってか?」

 

「その通りです。貴族同士のいさかいを、レーティングゲームでつけることはよくあることですから」

 

 えっと、レーティングゲームって悪魔の競技だよな?

 

 つまり、それって・・・。

 

 俺たち、いきなりレーティングゲームですかぁああああ!?

 


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