「死んで、くれないかな?」
いきなり彼女になったばかりの子にそんなことを言われて、俺こと兵藤一誠は後ろにとんだ。
おいおいおいおいマジで殺気出てるよ。マジか、マジかコレ。
「た、ただの女子高生がなんでそんな殺気だせるのかな? ちょっとマジで勘弁してくれない?」
俺は冷や汗をかきながら軽口をたたくが、そしたら俺の彼女こと夕麻ちゃんは、けげんな表情を浮かべた。
「あら? あなたはただの一般人のはずだけど、なんで殺気がわかるのかしら」
・・・あ、やべ。
普通の日本人は殺気なんて察知できないの忘れてた。これちょっと怪しまれるか?
いやいやいやいや。殺されかけてんだから気にしてる場合じゃねえだろ。そんなことしてる場合じゃねえだろ。
ま、とりあえずここは何とかするしかないか。
幸い体は鍛えてるし、戦闘の心得もだいぶ鈍ったけどあるにはある。だから襲い掛かってきても戦えないことは―
「まあいいわ。恨むなら神をうらみなさい」
と、そんなよくわからないことを言いながら夕麻ちゃんは右手に光の槍を出す。
・・・ってさらりと自分で言ったけど、光でできた槍ってなんだよ一体!
っていうかよく見たら、夕麻ちゃんの背中から黒い翼が生えてる!?
なに、なにあれ!? なんなんだあれ!?
「さあ、死んで頂戴!!」
うぉおおおお投げてきたぁあああああ!!!
俺は慌てて横に飛んでかわすけど、槍は地面に深々と突き刺さった。
あ、これ喰らったらダメなやつだ。ちょっとした対物ライフルより威力あるよ。
「あらあら、結構逃げちゃうんだ。・・・いいわ、少しは楽しめそうね」
ああ、あああ、あああああ!
なんでこんなことになったんだぁああああ!!!
暗闇の中、多くの少年少女がそこにはいた。
彼らの来歴はわからない。わからないが、想像ができた。
なぜなら、彼らは全員銃を手にしていた。硝煙の匂いを放っていた。死んだ目をしていた。
彼らはみな少年兵だ。
紛争地帯で親から捨てられ、そしてそれを武装勢力に利用されて訓練を受けた。
人を殺すための訓練を積んで、ただ人を殺すための道具として使われる。そんな糞みたいな人生。
それがひどいということすら理解できないものの多く、その大半がそのまま使いつぶされる。
少女であるならばさらに悲惨だろう。それがどうしてかなど口にしたくもない。
そんな、少年少女たちが集められていた。
そして、彼らはそれがあり得ないことであることも理解していた。
なぜなら、彼らは戦場で死んだはずの少年兵だからだ。
銃で撃ち殺された。ナイフで首を切り裂かれた。爆弾で体が四散した。車で跳ね飛ばされた。
全員理由はまちまちだろうが、しかし死んだはずだということはわかる。
その多くがそれに憤りすら感じず、何がどういうことかも理解できていなかった。
そして、そんな彼らに声が響く。
―我は、ワールマター。この世界の言葉でいうならば、神に近いもの。
その言葉は、強大な力を感じさせる。
―哀れな者たちよ、汝らは選ばれた。
その言葉は、説得力を感じさせる。
彼らは、意図的にこの存在によって集められたのだ。
―汝らはこれより、神と呼べる我の尖兵としてある世界へと送られる。
その言葉に対して、彼らの多くは感慨を得なかった。
なぜなら彼らは道具として育てられたもの。中には感情が喪失しているものも多く、だからこそそれはただの上が変わっただけと認識していた。
―そして、きみたちに力を与えよう。
と、その声は彼らに力を与えた。
それは、銀色の大きな硬貨のようなものだった。
それは彼らの体にするりと飲み込まれ―
「あ、ああ・・・っ」
そのとたん、彼らの心に欲望が生み出された。
女を抱いてみたい。
おいしいものが食べたい。
ゆっくり眠りたい
もっと殺したい。
強くなりたい。
そんな感情が強くなり、そして抑えられなくなる。
―その気持ちを忘れるな。そして、それを行使するための力を与えたことを忘れるな。
声はそうつげ、そして送り出す。
―覚えよ。我はワールマター。汝らに欲望を与えし恩人なり
・・・なんてことがあったけど、まさかこうなるとは思わなかったよ!!
いや、俺もね? いろいろとしたいことはあるよ?
おいしいものは食べたいし、友達っていうのも欲しいし、できれば彼女も欲しかった。
そんな欲望を与えてくれたことには感謝してるけど、してるけど!!
別に普通に生きていけば普通に手に入るもんじゃん!!
記憶を取り戻した後、俺はそれを素直に両親に打ち明けたとも。
取り戻したのが三歳の時で、もともと生まれたときから少年兵として育てられた俺は何かあったら上に報告するっていうのが当たり前にあった。
今思えば、普通にそんなことをすれば大変なことになるのは当然だっただろう。
だけど父さんと母さんは普通に接してくれた。
親として、子供に当たり前の愛情を与えてくれた。
だから俺も、子供として当たり前の人物になろうと決めたんだ。
親を悲しませるような悪党にはならない。平和に生きて人として正しいやり方で幸せを手にするって。
・・・まあ、友達がなぜか覗きを繰り返すうえに、俺も初めて女性の裸を見て暴走しかけたのはいい思い出だ。
エロいお姉さんの友達に土下座で童貞卒業させてくれと言って、白い目で見られたのもいい思い出だ。
そしてできれば付き合いたいと思っていた女の子が、よりにもよって彼氏を作ったと聞いた時は死にたかった。
だけど人生はまだまだこれからだ。だから俺は生きていようと思ったし、最近になっていきなり女の子に告白されてハイテンションだった。
それなのに!
それなのに!
それなのに!!
なんでその女の子に殺されそうになってるんだぁああああああああ!!!
・・・続き? どうしようかな?
とりあえず書いて人気が出るかを調べるために、念のために投稿してみました。
続きが気になる? でしたらぜひ感想を!!