この素晴らしい世界にデストロイヤーを!   作:ダルメシマン

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7話~10話は成り上がりの章です。ついに揃った問題児達四人が、冒険者として名をはせるまでを書きます。


一部 7話 四人パーティ結成!

 ゴブリン軍団を退治し、その上初心者殺しまで倒した俺達は、ギルドから報酬としてかなりの額を貰うことができた。

 だがそれでも俺の心は晴れない。なぜなら。

 

「よし、報酬は四等分でいいぜ! 一番活躍したのは初心者殺しを倒した私だけどな、みんなよくやってたからな。うんうん」

「なに勝手に仕切ってんだコラア! なにが一番活躍だ! その後の行動で全部帳消しだぞ!わかってんのか!」

 

 俺はアルタリアに食って掛かる。報酬について文句があったわけじゃなかった。ただこの女騎士が偉そうにしてるのが気に食わなかっただけだ。

 

「は? ええっと、お前名前なんだっけ? まあいいや。ていうかお前ほぼ何もしてなかったじゃん。たった一匹のゴブリン倒しただけじゃん。情けない男だねえ」

「マサキだ! サトーマサキ! 俺の名前は置いといて、なんなのお前? なんでゴブリンなんかにやられるんだよ! お前前衛職の意味わかってんの?」

 

 アルタリアが俺の事を雑魚扱いしたからつい怒って反論する。お前の体を担いでゴブリンたちから遠ざけたのは誰だと思ってるんだ。さらに前衛職について質問する。

「前衛職? ああもちろん知ってるさ。誰よりも前に突撃する、一番勇敢な戦士だろ? この私にぴったりじゃんか!」

「前“衛”職だぞ! 衛の部分はどこにいったんだ! 攻撃力は認めてやるが、防御はどこにいった? 前衛職は敵を引きつけて盾となる役目もあるんだぞ! その辺わかってんのか?」

 

 俺は自分の役割がわかってないポンコツクルセイダーに説教するが。

 

「はっはっは、マサキとか言ったな。なに言ってんだ? 有名な言葉があるだろ? 『攻撃は最大の防御』ってな。そんなことも知らないのか馬鹿だなあ」

 

 馬鹿はお前だよ! それにしても、なんで他のみんなが彼女と組みたがらないのがわかった。こんな紙耐久のクルセイダーなんてどう使えばいいんだ。前に出したところで一瞬でやられるんだから。

 

「そういえばお前盾持ってるよな。それは使わないのか?」

「ああこれ? 離れた敵に投げつけるんだ。そしたら相手は不意を付かれてびっくりする。その隙に剣で切り裂くのさ。いい作戦だろ?」

 

 自慢げに応えるアルタリア。もういい。こいつは駄目だ。使えない。俺は彼女を諦めた。

 

 

「チェンジで。もっとマシな戦士を加えよう。誰かいませんか! 誰でもいいから戦士系欲しいです!」

 

 俺はアルタリアから離れて、冒険者ギルドの皆に募集をかけるが。

 

 

 スッ……。

 スッ……。

 みな合図したかのように首を逸らす。こいつら! レイだけでは飽き足らずアルタリアまでこの俺に押し付ける気か。最低の冒険者の屑どもめ!

 

「いいじゃないですかマサキ。私は毎日アクア様のために全身頂礼をしているので防御力には自信がありますし、盾役なら任せてください!」

 

 プリーストのマリンがそんなことを言い出した。頂礼とはアレだ。モズ●ス様が毎日やってる全身で地面に激しく頭をぶつけるパッと見ヤバイ行為だ。だからこんなに頑丈なのか。

 

「でもプリーストが盾役なんて聞いたこと無いぞ。そんなの絶対おかしいよ」

 

 俺が悩んでいると……。

 

「アルタリアなら恋のライバルになる可能性は限りなく低いですからね! 私も歓迎ですよ!」

 

 アルタリアの全く色気の無い言動に、安心したレイまでがそんなことを言い出す。アルタリアは見た目は美人だ。なのだが言動や行動はクレイジーだ。彼女に惚れる人などいないだろう。レイはそんな計算をしたみたいだ。

 

「じゃあこれからもよろしくなマサキ。私達はきっといい仲間になる」

 

 そう言って右腕を差し出してくるアルタリア。そんな彼女に俺は。

 

「ああこちらこそよろしく。これから一緒に頑張ろう」

 

 笑顔で答える。でも心では全く反対の事を考えていた。このへっぽこクルセイダーも! メンヘラアークウィザードも! 俺のレベルがちゃんと上がったら絶対に見捨ててやるからな! そしてもっとまともなパーティと冒険をするんだ。心に強く誓った。

 

 

 4人で夕食を食べた後、俺はレベルが5にまで上がった冒険者カードを見た。正面から倒したゴブリンは一匹だけだが、死に損ないを一生懸命探してはコソコソ止めを刺していったため、ちゃんとレベルが上がったのだ。

 

「レベルが上がりましたねマサキ様。で、片手剣の次はどんなスキルを覚えるんですか?」

 

 俺の冒険者カードを覗きながらレイが聞いてくる。

 

「次に覚えるスキルはもう決めてるんだ。これさ。『バインド』」

 

 俺はレイに向けて拘束スキルを発動させた。どうやら成功のようだ。

 

「なにをするんですマサキ様! 私は敵ではありませんよ? ああそれとも私を拘束してこんなギルドの真ん中でプレイを!? ああなんて鬼畜。でも運命の人の要求なら仕方ありませんね。いつでも覚悟は出来ています!」

 

 何か勘違いをして頬を染めて期待しているレイ。誰がお前なんかに手を出すか! 怖いんだよ! 

 

 

「よし、今日は俺はもう寝るとするよ。今日も馬小屋だな。馬小屋最高! じゃああばよ!」

 

 拘束スキルは一定の時間がたったら解けると聞いた。レイの拘束が切れるその前に早く身を隠さなければ! 俺は仲間を放置しダッシュでギルドから駆け出した。

 

 

 

 

 

 一体どれほど眠ったのだろう。

 俺は、ふと夜中に目が覚めた。

 もちろん馬小屋なんかに泊まってない。レイを騙すための嘘だ。

 俺は宿に泊まっている。それも鍵付きの少し高めの所を選んだ。手痛い出費だが仕方ない。馬小屋自体に不満は無いのだが、メンヘラ女がいつ嗅ぎ付けてくるかもわからない場所で安眠は無理だ。

 コンっと小さな音がした。そのせいで俺は目が覚めてしまったのだが……。

 窓に虫でも飛んできたのだろうか。まぁ虫ならなんの心配もないけど。

 

 ……コンッ。

 ……コンッ。

 

 しつこいな。カナブンかなにかか? いい加減しつこい音の正体を確かめようと窓に向かう。

 

「ひっ」

 

 俺は思わず悲鳴を上げてしまった。窓を見ると、誰かの手形がベタベタついていたからだ。そんな馬鹿な。ここ三階だぞ? わざわざ高めの宿を選んだというのに。

 

 カタカタカタカタッ、ガタガタガタガタッ!

 

「ヒイイッ!!」

 

 俺が恐怖で怯えているその時、追い討ちをかけるかのように急にドアがガタガタ大きな音を鳴りはじめた。誰かが開けようとしている。鍵付きで助かった。本当にマジで怖い。

 

 ドンドンドンドン!

 今度はドアに誰かが叩いている音。しかもどんどん衝撃が大きくなっていく。

 

「いやあ! もういやあ! レイ! レイだな! どうやってここを見つけたんだ! でていけ! 畜生! もうやめてくれ! 今日はもう遅い。明日話そう! 続きは明日だ!」

 

 俺はドアから距離を取って扉の向こうの人間に叫んだ。

 

「『アンロック』」

 

 ドアの外から、聞き覚えのあるおどろおどろしい声が聞こえ、部屋の鍵が外される。

 

「…………………!!!!」

 

 その瞬間、悲鳴にならない声をあげながらも、俺は窓ガラスをぶち破り、地面に落下して悪霊から逃げ出した。

 


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