この素晴らしい世界にデストロイヤーを!   作:ダルメシマン

76 / 81
三部 21話 マサキの秘密基地

 ここはレイヴンキープ9。

 八咫烏のために密かに作った俺の秘密の拠点の一つなのだが。

 

「怪我人を運び込め!」

「プリースト! プリーストを早く!」

「まさかのアクシズ教徒が助けに来てくれたぞ! しっかりしろお!」

 

 今や滅んだノイズ残党の臨時基地となっている。ノイズも紅魔の里もあの機動要塞に破壊されつくしたからだ。

 秘密基地を中心とし、戦闘可能な者だけを拠点へ、あとの非戦闘員の住民は難民キャンプに集めた。

 

「早く回復させろ! マリンが終わったら他の怪我人もだからな!」

 

 ノイズが崩壊した事をかぎ付け、ハイエナのように廃品回収をしていたストック率いるアクシズ教徒達をとっつかまえ、マリンの治療に当たらせている。

 

「わかったよ畜生! なんでこの俺様が人助けのような真似をしなくちゃなんねえんだよ!」

 

 愚痴るストック。またの名をアクシズ教徒の永遠のナンバートゥー。

 いや、お前の職業はなんだよ。

 だがさすがは腐ってもアークプリースト。瀕死状態だったマリンの傷はあっという間に回復されていく。

 

「あのババアを引き摺り下ろせる兵器が埋まってねえか探しに来たのによ! とんだ無駄骨だ! こんなことなら先にノイズの方に行けばよかったぜ」

「だが会えて嬉しいぞストック。お前が来なければ、本当にマリンは死んでいた。言いたくないが恩に着る」

「おいおい、感謝の気持ちがあるなら、俺様の野望に手を貸してくれよ!」

 

 まぁ助かったのは事実だ。少しくらい感謝しても悪くはない。

 

「いいぞ。紅魔の里地下に封印していた、世界を滅ぼすとまで言われた兵器の一つを、貴様にくれてやろう」

「そりゃいいぜ! 本当だろうな!? 騙したら承知しねえぜ!?」

 

 世界を滅ぼしかねない兵器……実はただのゲーム機やら玩具やらなんだが。

 どうせ気づきはしないだろう。数個渡してやるか。

 

 

「ではマサキ! 約束どおり機動要塞を破壊しましょう!」

 

 なんとか喋れるほどには回復したマリンは、とたんにそんな事をいう。

 

「さっきのは無し! ナシだ! あんなん倒せるわけないだろ!」

 

 首を振って断ると。

 

「約束したではないですか! 破る気です?」

「お前が死ぬって思ったからだよ! 生きてるんなら無しだ! 壊すなら一人でやれ! それに俺が嘘つきなのは周知の事実だろ!?」

「相変わらずのクズですねマサキは! そもそもここはなんなのです!? 周りにマンティコアが沢山いるのはどうして? しかもなぜ攻撃を仕掛けてこないのです? やけに人に慣れていますわね」

 

 マリンはがっかりしながらも、この場所について疑いの目をして次々と質問を浴びせてきた。

 

「マンティコア共は俺の部下だ。あいつらに運送を護衛させている。噂で聞いたことがあるだろ? 八咫烏の隊商はモンスターに襲われないと。その理由が奴らさ。マンティコアの縄張りを守る代わりにな。WIN-WINの関係だろ?」

「八咫烏!? アクセル発祥の警備会社ですよね!? まさかあなたがトップでしたの?」 

「元な。今は社長の座はアーネスに譲っている」

「うん? たしか警備会社八咫烏の成立のきっかけは、モンスターの素材を奪う悪者から守るためで……。その悪者が確かマサキで。アレ? なんで警備会社とあなたが繋がってるんですの!? はっ!? まさかアレは壮大なマッチポンプ!?」

 

 八咫烏の事だけはマリンに知られるわけには行かなかった。今まで必死に隠してきたがここまで来たらもういい。ネタ晴らしだ。

 

「今頃気付いたか。モンスターの素材を奪う悪党にして、逆に守り手でもあるガーディアン。それがこの俺の八咫烏よ! まぁ元だけどね」

「あなたって本当に最低のクズですわ!」

 

 そんな激怒するマリンに、今度は同じく激怒しているレイが飛び掛った。

 

「マリン、先ほどはよくも私のマサキ様と、手をずっと握り合うなんて真似をしましたね! 死ぬ間際だと思ってたから許したものの! 復活するならアウトです! 許しませんよ!」

「え? あ、はい?」

 

 仲間の死の淵を目の当たりにし、さっきまで泣いてたウチのヤンデレは、涙が乾く前に頭を切り替えてキレていた。出端を止められて戸惑うマリン。

 

「あ、アレ……? なんで涙が?」

 

 レイの瞳からまた新しい涙が頬から零れ落ちる。おそらくマリンが無事だとわかって安堵したのだろう。そんな彼女自身の感情に、レイは自分でも戸惑った。

 

「……。べ、別にあなたが助かったからといって、嬉しくなんか無いんですからね!」

 

 ま、まさかのツンデレだ! ヤンデレのクセに!

 裾で涙を拭きながらもマリンに嫉妬する様子を見せるレイ。感情と言ってる事があってないぞ。

 

「フッ、素直じゃねえな。レイは。ううっ……ぐすぅっ! ぐすっ! 私は嬉しいぜ! マリンが生きてて! もうあえなくなるかと思ったぜ!? うううう! うわーん!」

 

 一方ガチ泣きしてマリンを抱きしめるアルタリア。

 

「ごめんなさい、レイさん、アルタリアさん。皆さんにも心配をおかけしましたわね。

 

「ああ、みんな無事でよかった。生きてるって素晴らしい。俺たち四人がいる限り、どんな苦難も敵じゃないな! ハッハッハ!」

「何いい話風にまとめようとしてるんです! しっかりと質問に答えてもらいますからね!」

 

 笑ってその場を後にしようとすると、ガシッとマリンに肩を捕まれた。

 仕方なくここにあるものを説明するはめになった。

 

「この猫耳やエルフ耳みたいなものはなんです? 尻尾も」

「それはな、スパイの変装のために作らせたんだが、なぜかファッション道具としてヒットしてな。今や八咫烏の人気商品の一つだったものさ」

「着眼点は最悪ですが、商品としてはまぁよしとしますわ。で、これは?」

 

 やれやれとした顔で、今度はカードを見せつけられた。

 

「それは偽造した冒険者カードだ。これもスパイ用に……。どうだ? タッチパネルは無理だったが、見た目だけはそっくりだろう? おい! マリン! その目をやめろ!」

「マサキ、あなたって人は! 油断も隙もありませんわね!」

「うるせえ! もう全部おしまいなんだよ! ちくしょう!」

 

 マリンの非難なんて知ったことかと逆ギレする。

 他の皆も俺の悪の秘密基地の内容を確かめている。

 

「それにしても……知ってた以上に酷いな隊長。ノイズでの悪事の証拠が次々と出てくるんですが」

「物資の横流し、禁制品の密輸に、盗品の資金洗浄、王に黙って兵器を他国へ売買までしてたのか? 懲役は100年あっても足りそうにないぞ?」

 

 在庫管理の書類や取引の受注記録を発見し、さすがに庇いきれないと言った顔をするブラックネス・スクワッドたち。

 

「うるせえ! よかっただろ? 俺が悪事で金儲けしてて! もし真面目に冒険者やってたらよ、ここに基地も食料もなかったんだぞ! ああ!?」

 

 開き直って説明した。

 そう、俺には金もあるし食い物もある。武器もだ。

 全て今のノイズの難民に必要なものだ。現在アーネスに誘導させている真っ最中だ。

 

 

「愚かな人間共! こっちに避難しな! 早く逃げるんだよ! 食料もあるから! 全くなんであたしが人間の誘導なんか! これもあの旦那のふざけた予言のせいだ!」

「アーネスさん!」

「コンビニリーダーのアーネスさんじゃないか!」

「ありがとうアーネスさん! あなたは天使!」

「最悪だ! この上位悪魔アーネス様が、まさか天使扱いされる日が来るなんてえ!」

 

 アーネスは本当にもううんざりという顔で、渋々難民に食料を配給している。

 

 

「ちなみに俺が他国に売りつけた兵器はな、どいつもこいつも役立たずの失敗作ばかりだ! 廃棄処分のを回収しただけでノイズを裏切ってはない! バカな貴族が高い金で買ってくれたよ。あんなゴミをな」

「それはそれで問題だろ!」

「本当に良心が無いのか? 隊長は!?」

 

 黒の隊員が怒りを通り越してあきれ返っている。

 一方そのころ、紅魔族は紅魔族で別の発明品に夢中だ。

 

「こ、これはまさしく伝説のアイテム!」

「いくらななっこと言ってもこれは渡さんぞ!」

「待て! これは紅魔族の、いや世界にとっての宝だ! これを装備していいのは紅魔族のエリートだけだ」

 

 その様子を見てため息を吐く。

 紅魔族が取り合いをしているのは、そんな優れたチートアイテムでもなんでもない。

 俺が少し前に、貴族に成りすますために作らせていたカラーコンタクトレンズの完成品だった。

 色は青以外にも色々あるが。

 

「これをつければ! あの姿が! ビジュアル的には最凶といっても過言でもないオッドアイになれるんですね!」

 

 オッドアイ。正式には虹彩異色症。

 目の色が左右で違うという有名なアレだ。

 厨二心をくすぐる最強クラスの設定だ。

 認めよう。俺も憧れた事があった。

 かって募集された小説の中には、10作に一つはオッドアイキャラが存在したという噂もある。

 オッドアイとは、それほど若き子供たちを捕らえて話さない、魅惑の姿だ。

 この秘密アイテムを使えば、全中学生の夢が実現する。

 まぁぶっちゃけ単なるカラコンなんですけどね。

 

「そういえばいっくん、手に持っている長いのはなんですか?」

 

 巨大なライフルを背負ういっくんの姿を見て、仲間が尋ねていた。

 

「え? これ? ああ、これは業物の物干し竿だ。大事に使ってくれ」

 

 レールガンだということは黙っておくようだ。やはりみんなをがっかりさせたくないからだろうか。

 長いだけのライフルは彼らの厨二センスから外れてるのだろうか? 境界がよくわからん。

 

 

 ――こうして。

 マリンが回復し、そして今までの罪が洗いざらいバレて怒られた後に逆ギレし、ブラックネス・スクワッドからも呆れられてやはりまた逆ギレし。

 アクシズ教徒に謝礼の手はずを考えながら、紅魔族のカラコンの取り合いは放置して。

 それからアーネスに命じて、悪事で稼いだ富を全部ノイズの難民のためにばら撒く。

 

 ああ忙しい!

 明らかに隊長の仕事を超えてるぞ!?

 俺の役目は戦いのはずだ。なんで難民の世話までしないとならんのだ。

 ノイズの地位を利用して好き勝手した引け目はあるけどさ……。

 つーか他にいないのかよ! それなりの地位の生き残りとか!?

 俺の肩にのしかかる、やるべき仕事が多すぎて大きなため息をついていると。

 

「ベルゼルグ王国からの使者が参りました。隊長」

 

 くっそなんだこの忙しいときに!

 

「入れろ!」

 

 ベルゼルクから二人の使者がやってきた。一人は文官。もう一人は騎士。どちらも女性だ。

 うん、あの文官は見覚えがあるんだけど。

 あいつは確か、俺をベルディアとセットで処刑しようとしたクソ検察官だな。

 

「あの時はよくも俺を処刑台に送ってくれたな。サナー、お前への恨みが消えたわけではないぞ?」

 

 睨み付けて、脅すように告げる。

 そもそもベルディアの単なるセクハラ問題と、国家転覆罪をごっちゃにしたこの無能が悪いのだ。

 ベルディアは軽犯罪はしたかもしれないが、処刑されるほどの大罪は犯してなかった。

 全部この女の勝手な決め付けのせいだ。

 そんな致命的な間違いを犯したサナーは、俺に掴みかかってくるかと思いきや。

 

「さぁ殺しなさい! ここに送られた時点で死を覚悟してますからね! ベルディアの件以降、私は責任を取らされて失職! 貧しい日々を送っていたらいきなり使者になれといわれ! 任務はあのサトー・マサキの元へ向かえだなんて! もう死ねってことでしょうが! これ実質処刑ですもん! さぁ覚悟は出来てますよ! やりなさい! 私を殺せば、おそらくベルゼルグがあなたを完全に敵認定しますからね! さぁ」

 

 どうやらを地位を剥奪されただけに留まらず、全てを失ったようで、もうやけくそ気味に煽ってきた。

 

「いいから早くやれええ! 殺せええ! キルミーベイベー!」

「サナー殿、落ち着いてください。私たちは話し合いに来たんですよ?」

 

 元エリートのプライドも何もかも捨て、小さな子供のように寝転がりジタバタするサナーを宥める、一人の女騎士。

 

「久しぶりだなサトー殿。いや今はサトー隊長と言ったほうが正しいか? 私たちはノイズの状況の確認と、サトー・マサキ殿、あなたの真意を尋ねに来たのだ」

 

 兜を取るとそこには見知った顔が。ダグネス嬢ことダスティネス卿。アルタリアの幼馴染の騎士だ。

 

「ダグネース! よく来たな! 今すぐ勝負……」

 

 ダグネス嬢の姿を見るやいなや、剣を鞘から抜こうとするアルタリア。

 だがハッとした顔で手を戻し。

 

「……すまんダグネス。今はお前に構ってる暇は無いんだ。ちょっと後でな」

 

 アルタリアはそっと武器をしまい、ポンと肩を叩く。

 

「おいアルタリア! それだとまるで私が戦闘狂みたいじゃないか! 仕掛けてくるのはいつもお前のほうだぞ!」

 

 そんな彼女に心外とばかりに言い返すダグネス嬢。

 

「本題に移りましょうか。サトー・マサキさん、あなたはベルゼルグ王国での狼藉だけでは飽き足らず、ノイズを崩壊させたテロリストの疑いがかかっています! 殺るなら早く、なるべく痛みの無い方法で! ベルゼルグの使者である私を殺せば、自動的にあなたと戦争状態に――」

「落ち着いてくださいサナー殿、あなたは王国に見捨てられたわけじゃあありません。騎士であるこの私が付いているでしょう?」

 

 決断を急ぐサナーにダグネス嬢が落ち着くように説得している。

 

「フン! 騎士といってもダクティネス卿一人だけでしょうが! あなた以外の騎士は同行を拒否してましたよ!? どう考えても私を処分するつもりよ! あなたも私の事なんかより自分の事を気にした方がいいですよ! 帰ってきた女騎士たちはみんな言ってましたねえ! サトー・マサキはとんでもないクズだと。その非道さは貴族中で噂になってて! そんなケダモノがダクティネス家の令嬢を目の前にしたら、きっと野望をむき出しにして犯されて殺されますよ?」

「まぁ確かに、最近では『マサキが来る』といえば、人どころかモンスターさえ怯えて逃げ出すという。『マサキ』という名前を呟くだけで子供が泣き止んだり、モンスター避けの呪文になってたりと。そういえばこんなものが」

 

 そう言ってダグネス嬢が差し出してきた紙には。

 

 

『マサキに対する好感度アンケート』

 

「……この街で店を出しましたがちっとも客が来ません。八咫烏という会社ばかり儲けています。よく分からないけど、多分マサキの所為だと思います(アクセル武器屋の店長)。マサキが怖くて夜も眠れず昼寝してます。夜襲専門なのにおかげで仕事したくても出来ません。俺がトマトジュース飲んでいるのもマサキの所為です(吸血鬼)。マサキが実在する所為で、ウチの神様の人気がちっとも出ません。マサキこそ真の破壊の化身だと信者の間で変なうわさがでてやってけません(破壊神崇拝者)。怖い怖い、マサキが怖い、あとはビンに入ったスライム怖い(元魔王軍のモンスター)。彼女が出来ないのはマサキの所為(中年男性)。彼氏が出来ないのはマサキの所為(冒険者のお姉さん)…………。…………えっと、なにコレ」

 

 思わず聞き返す。

 いつの間にか俺がとんでもない人物に仕立て上げられてて驚く。

 ていうか勝手に人の名前で遊ぶなよ! 誰が破壊の化身だ! なに変に神格化してるんだ。馬鹿にしてるだろ。

 

「まだあるぞ」

 

 続けて言いながらダグネス嬢が再び差し出してきた次の紙を受け取ると。

 

「…………マサキって響きがなんか怖い(女騎士)。部下に隠れて横領とか脱税とかやってそう(ギルドの人)。そんな事より出会った時の感心を返して欲しい(元チンピラ冒険者)。山を出て新しい縄張りを作ると言ったら、それは良い事だと最初の狩りを手伝ってくれました(マンティコア)。魔王よりマサキの方が嫌い(国王)。ウチのカミさんが詐欺に引っかかったのは多分……(疲れた顔のおじさん)。もう一度言うぞ。……なにコレ」

 

 しかも大体あってるのがムカつく!

 ムカついて紙をぐちゃぐちゃにしていると。

 

「国民の正直な声だ。マサキ殿が賞金首にするのに、異を唱えるものはいなかったぞ。なあ、本当にお前たちが起こした事件ではないのか? 正直私もサトー隊長、いやマサキ殿の人柄は知っているからこそ、あまり擁護出来なくてなあ……」

 

 ダグネス嬢は困ったような顔で俺を見て告げた。

 

「お前も俺がやったと思ってるのか? ついさっきノイズを滅ぼした、その例の兵器と戦ってな! 死に掛けたところだよ! なんで俺がノイズを破壊する必要があるんだ! まだあの国には利用価値があったのに!」

「ああ、ここにいる黒い服の冒険者に聞いたよ。泣く子も黙る紅魔族と、マサキ隊長殿の部下達を総動員させ、命がけであの機動要塞に立ち向かったのだろう? 結果こそ残念だったが……見事な奮闘だったそうだな。……だがな、それだけではベルゼルグの貴族やお受けが納得してくれないだろう」

 

 ダグネス嬢は俺を本気で俺を疑っているわけではなさそうだ。死んだ目をしている無能検察官とは違って。あっこの女酒を飲み始めやがった! 完全に挑発してやがる!

 ……どうしよコレ。

 どうやったらベルゼルグ王国を説得できるんだ?

 機動要塞を破壊できれば? いやいやいや。

 ぶっちゃけ無理ゲーなんだよ。あんなんどうやっても勝てない!

 

「うう……」

 

 困る俺。同じく困るダグネス嬢。酒に逃げるサナー。使者を威嚇するレイに、一人だけやる気満々のマリン。多分何にも考えていないアルタリア。

 次第にみんな無言になっていると。

 

「隊長! 我らアルティメット5も到着しました!」

 

 モノクルの女性を中心に、5人の紅魔族が大きな声と共に姿を見せる。

 

「そうか、そういえばいたなお前ら。で、少しは強くなったか?」

「現時点ではレベル5まであがりました! ちなみに使える魔法はありません! 上級魔法意外覚える気が無いからです!」

「難民キャンプに篭ってろ! 邪魔だ!」

 

 使えない奴らに怒鳴り返した。

 彼らを帰らせた後、もう一度考え込み前回の戦いを冷静に分析する。

 

「俺達は敗れたが、全くの無駄ではなかった。先ほどの戦いでわかったことがある。あの機動要塞、誰かが動かしているのかと思ったが……、おそらく暴走しているな。チームの一つにカタパルトを組み立てさせていたが……全く無視して行きやがった」

「カタパルトが残ってるんですか? 魔王との戦いで全部破壊されたのかと」

「正確にはカタパルトっぽい何かだ。発射能力はない。だが遠目で見ると本物に見えるはずだ。もし誰かが操っているなら真っ先に破壊に向かったはずだが……」

 

 あの機動要塞の、機械とは思えないむき出しの野生的な動きを思い出して言った。

 

「おそらくだが……、機動要塞は人の手で動いていない。ただただ暴走している。コロナタイトから湧き出る無限のエネルギーを源にな。敵に意思のないことが、機動要塞を破壊する最後の鍵かもしれん」

「なるほど。それでどうやって壊すんです? 機動要塞を!?」

「俺は鍵と言っただけだ! 方法はない! 今のところはな。だがもし……仮に、機動要塞を破壊することが出来る兵器があるならば、隙を付くことは出来るかもしれない。あくまであればの話だぞ?」

 

 マリンに説明する。

 

「それでサトー殿。機動要塞を止めることができる、そんなモノが実在するのか?」

「わからないな。少なくとも俺は持っていない。だがノイズにはあるかも。ノイズの軍隊長である俺でも、全ての兵器を把握しているわけではないからな。そもそも機動要塞だって聞いてなかったし! そうだ。この際一度ノイズに帰還するか? 使えるものがあるかもしれないぞ?」

 

 ダグネス嬢に答えた後、今度はこちらから提案する。

 

「そうだな。我らの第一の目的はノイズの政府と接触することだった。ノイズが崩壊したため、誘導されてここに着いたが……。もし王が存命なら謁見せねば」

「サトー・マサキではなく、ノイズの王がお相手なら使者としての礼儀がありますからね。そしてサトー・マサキがこの事件に関わっている証拠を見つけましょう!」

 

 飲んでた酒瓶をポイ捨てて、急に真面目になるサナー。

 俺には礼儀は無しかよ。

 まぁこんな小物などほうっておこう。

 

「俺が紅魔族の抑止力としてブラックネス・スクワッドを創設したように、あの機動要塞に対抗できる兵器があるかもしれない。あいつらに俺のような聡明さがあることを願うよ」

 

 可能性は薄いな。

 もしそんなものがあるならば、ノイズが襲われたときにとっくに使ったはずだろう。

 しかし他に頼るものは無い。

 最後の望みを賭けて、俺のパーティーと最小限の部下を引き連れ、ベルゼルグからの使者と共に、魔道技術国ノイズへと向かう事にした。




おのれえええ!
書いていると文字数が二倍に膨れ上がった。
またここで一話増えてしまう……
戦後処理って結構やること多かったわ。甘く見てたわ。
キャラもラストに向けて再登場させたら、台詞で文字数がやばい事に。
最小限の描写のはずなのに。

予定

次話タイトルがコンティニュー
その次が最終回です。

本当はこの話がコンティニューで、次で最終回の予定が、文字数が増えすぎたせいで分割。
最終回で全て丸く収まり、このすばの世界に移行するようにプロットを書いているのに、中々行きません。
頑張らないとなあ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。