この素晴らしい世界にデストロイヤーを!   作:ダルメシマン

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三部 7話 戦いの傷跡

 捕虜交換になった。魔王軍に捕らわれた女騎士や村娘たちを解放させる代わりに、俺もモンスターたちを引き渡した。

 魔王軍から返された女達を見れば……モンスターが攫うのも頷ける、誰もが紛うことなき美人だ。

 あられもない格好にさせられていた美人の女性達に服を着させ、休憩室で休ませている。この後でノイズの客室に送る予定だ。

 周辺を紅魔族が囲んで守っている。

 

「一応だが、スパイがいないか確認しておけ」

「はい隊長」

 

 黒の部隊に耳元で呟く。解放された捕虜に、女性の隊員が冒険者カードを確認したり、悪魔が変装していないか聖水をかけて確かめている。

 

「あ、ありがとうございます! まさか助かるとは。もう覚悟を決めていました。代表して礼を言います」

 

 ベルゼルクの女騎士が礼を言った。捕まったのは全員ベルゼルグ出身だ。一番魔王と積極的に戦っている国家だから当然か。

 

「あ、ああああ……」

 

 目をうつらさせている女の子もいる。長い監禁生活で精神に異常をきたしたのだろうか。

 

「もう大丈夫よ。怖かったでしょ? つらかったでしょ? だけど安心してね」

 

 彼女を優しく抱きしめるのは、意外にも元魔王軍のひゅーこだった。

 うーん……陣営こそ違うが、立場が一緒だからだろうか。つい同情してしまうのかも。

 

「まずはゆっくりとお風呂にでも浸かって、ゆっくりと体の汚れを洗い流してきて。話はそれからでいいのよ。大丈夫だですからね」

 

 そのままノイズの風呂場へと案内するひゅーこ。

 

「なんだ、ダグネスはいねえのかよ」

 

 開放された女性たちを見て、残念そうに呟くアルタリア。

 

「ではこれで! 私達は王国へ帰還します! 一刻も早く故郷に無事を知らせたいもので!」

「待て、どこに行くつもりだ? 俺は帰っていいとは言ってないぞ」

「えっ」

 

 元気を取り戻した女騎士が先に帰ろうとするのを引き止める。腕を掴まれて驚く女騎士。

 

「マサキ! なにをしているのです? 彼女たちは共に魔王と戦う同士です! なぜ止めるんです?」

「マリンよ。わかってない。お前はわかっていないな。この女騎士の身柄はノイズで保護した。だが、ただで返してやるわけには行かない。ベルゼルグからたんまりと見舞金を受け取るまではな」

「人間同士で争ってどうするんです? 魔王のために一致団結をしないと!」

 

 何を言っているのか、と言った表情で俺に詰め寄るマリンに言い返す。

 

「いいか、もし今回この女騎士たちをただで返したとしよう。そうすればベルゼルグの奴らはどう思う? これからノイズに頼めばいいと舐められるだろう? それじゃあノイズが損するだけだ! 対等な関係を保つには代償が必要なんだ。俺がわざわざ救出したんだぞ! 礼金くらいは貰って当然だろう?」

「それじゃあ魔王と一緒ではないですか!」

「全然一緒じゃない!! 触手でエロい目にあわせたり悪堕ちさせたりはしないだろ? ただ金を貰うだけだぞ! 自由にさせてやったんだからそれぐらい貰っても当然の権利だろうが! 俺は凄く優しいぞ?」

 

 俺とマリンが開放された女騎士の扱いにおいて口論していると。

 

「そこの女騎士! 貴様も騎士のはしくれなら! モンスターに捕まった女がどんな目に合うか知ってるだろう!? 君からもそこの外道の男を説得してくれないか?」

 

 開放された女騎士の一人が、鎧に着替えなおしたアルタリアの姿を見て懇願する。彼女はダグネス嬢がいないと知り、やる気をなくしてだらけていたのだが。

 

「ああ? ウーン……じゃあ勝負だ! 私と勝負しろお!」

「いや、勝負しようとは言ってないんだが? 話を聞いてくれ」

 

 いきなり決闘を仕掛けるアルタリアに困惑する女騎士。どう考えても、頼る相手を間違えたな。

 

「私の名はアルタリア! さあどいつだ! 勝てば自由にしてやる!」

「おい! なにを勝手に決めてんだよ」

 

 アルタリアの唐突な俺様ルールにつっこむ。

 

「むぅ……こうなったら仕方ない。アルタリアと言ったな! 騎士に二言はないな! いざ尋常に……ん? アルタリア? どこかで聞いたような……?」

 

 女騎士は頷いて勝負を受けようとしたが、名前を聞いて少し考え込み。

 

「まさか……あのアルタリアか? アレクセイ家の狂人!? アレクセイ・バーネス・アルタリア!!」

「そうだぜ! アレクセイのアルタリアだ! それがなんだ? 文句あんのか!」

「ちょ、ちょっとタンマ!」

 

 アルタリアの名前を聞き、女騎士たちはヒソヒソと話し合った。

 

「アレクセイ家のアルタリアと言えば……相手が誰だろうが本気で殺しに来ると言うあの? 騎士たちの間で恐れられているあの?」

「あの頭のおかしい下級貴族か!? いざ決闘となれば相手が名家だろうが容赦なく殺しに来るって聞いたぞ? 噂では相手が王家でも容赦なく斬りかかるクレイジーだとも」

「私の知り合いも殺されかけたって言ってた。絶対に関わっちゃ駄目なやつだよ」

「確かオレンジ色の髪をしていたって……。うん、あいつで間違いはないな」

 

 アルタリアの方をチラチラ見て、徐々に距離を取っていく女性達。

 

「なんでそんな危険な奴、とっとと処刑されないんだ!」

「そ、それが……あいつはダスティネス卿の友人とかで……。罪でも犯さない限り勝手に処罰するわけには」

「じゃあどうすればいいんだよ?」

「正々堂々勝つしか……でも彼女の実力はあのダスティネス卿に匹敵するとも聞いてるけど……」

 

 女の騎士達はヒソヒソと相談をしている。 

 

「どうした! 誰からやる? それとも全員まとめてか? さあ来い! ぶっ殺す、いやそれはやりすぎか。軽くひねってやるよ!」

 

 早くしろとばかりに挑発するアルタリアだが。

 

「……アレクセイ殿、我々の処遇はあなた方に任せます。ですがあなたも騎士のはしくれなら、我らを丁重に扱ってくれると信じていますよ。信じてますからね!?」

 

 女騎士は戦いを避ける事に決めたようで、怯えながら自らの剣をアルタリアに差し出して片膝を突いた。

 

「え! なに!? 勝負しないのか? なんだよつまんねえな!」

「安心しろ、ベルゼルグの騎士共。安全を保障する。俺の、じゃなかった我が国の望みは報奨金、ただそれだけだ」

 

 つまんなそうなアルタリアを押しのけて元捕虜に約束した。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 女性達を迎えにきたベルゼルグの使者の前で、俺は叫ぶ。

 

「報酬として! わが国に100億エリスの支払い! 更にノイズ輸出品の関税撤廃! 一度あの国での裁判で痛い目にあったからな! あんな野蛮な国の裁判はダメだ! ノイズ国民は治外法権の適用を!」

「ふざけるな! そんなの飲めるか!」

 

 俺の要求は半分以上が却下されたが、それでも十分だ。ベルゼルグ王国に不平等条約を結ばせる事に成功した。ベルゼルグの使者は苦虫を潰したような顔をしていたが、これでいい。これでノイズの実力は世界に広まるだろう。ノイズが強くなれば、事実上ノイズの軍事を仕切っている俺の力も強まる。

 順調だ。全てが順調だ。ベルゼルクから大量の見舞金を受け取った後、捕まっていた女性達を解放してやった。

 

『よくやった。見事な交渉ぶりだったなサトー大隊長。これでベルゼルグには大きな貸しが出来た。このまま魔王を倒した暁には、ノイズがこの世界の覇権国家となる日も近い。コーホー』

「ありがたきお言葉。全てはノイズのためです、総督」

 

 総督に頷き答える。

 

『だが今回の勝利は、ドクターの作った『レールガン』によるものが大きいといえる。そう聞いたぞ』

「は?」

 

 思わず声が出た。

 何を言ってんだ。あんなん戦闘の序盤ですぐ役立たずになったポンコツだろ。

 どう考えても俺のDPSガスと! 『ブラックネス・スクワッド』の活躍だろ? どんな調査をすればそんな答えが出る? このアホな報告した奴は誰だ!

 

「違いますとも総督! 決め手になったのは私が開発したDPSガスで! 『レールガン』のほうは一発撃っただけですぐに動かなくなりましたよ?」

『だが毒は紅魔族の前線基地を機能不全に追い込んだとも聞いておる。紅魔族の者が苛立ちの声をあげているぞ』

「ぐっ。そ、それは……」

 

 確かにその通りだ。

 DPSガスは戦場で戦果をあげたが、大きな傷跡も残した。現時点で紅魔の里は毒まみれで人が住めない状況だ。とりあえず汚染された土砂を浄化しないといけない。

 

『ドクターの秘密基地を守るために作られた紅魔の里だが、今や重要な我が領土だ。この先、ノイズの領内で毒ガス兵器を使うことは許さん。いいな』

「……わかりました。総督」

 

 渋々王の間で引き下がる。

 せっかく開発したというのに、毒ガス兵器の出番はもうなさそうだ。防衛での毒ガスは守るべき土地まで汚染してしまう。もしあるとするなら魔王城を攻めるときにぶち込むか。

 草原での戦いでは紅魔族が暴れただけなのに俺の成果になって出世した。だが今度は俺が頑張ったのに功績を博士の『レールガン』に奪われた。

 なかなか思ったようにはいかないなあ。

 ため息をつきながら、紅魔の里へと戻る。

 

「もう毒ガス兵器使うなって言われた」

「当たり前ですよ! いくら多数の魔王軍を倒すためとはいえ、どう考えてもあんなんまともな戦法じゃないですもの! どう見ても悪役のやり方でしたし!」

 

 DPSガスで見事魔王軍を追い払ったのはいいが、おかげで紅魔の里は毒まみれになり、当分人の住める場所ではなくなった。そのせいで紅魔族が激怒している。

 しかたなく黒の部隊と俺達は毒を除染作業をしている。毒で穢れた土を掘っては外へ捨てに行く。

 

「で、こいつらはどうするんだよ?」

 

 モンスターの一団を見てマリンに尋ねる。

 こいつらは尋問中にマリンによってアクシズ教徒に改宗させられ、捕虜交換のときに自分の意思で戻らなかったのだ。

 

「これはこれはマリン様! そしてマサキ隊長。全てはアクア様のために!」

「ニホンに生まれ変わるため、この身全てを投げ出す所存でございます!」

「私は悪くない! 全ては社会が悪い! つまり魔王が悪い!」

「魔王しばくべし!」

 

 口々に御馴染みの危ない教義を唱えているモンスターたち。目が本気だ。

 なんかヤバそうな青いオーラ出してるし。いいのかこいつらは。

 

「この洗脳兵の世話はマリンに任せるぞ」

「洗脳ではありませんわ! 改心者です! 私の熱心な言葉に耳を傾け、モンスターの身でありながら正義の心に目覚めた立派な方々です! これもすべてアクア様のおかげですわ」

 

 そうだろうか?

 弱ったところに毎日優しい言葉で言いくるめ、巧みにアクシズ教徒へと誘導したマリンの姿は、俺から見てもドン引きだったんだが。

 

「なんなのあなたたち! なんでまだここにいるの? 捕虜は全員解放されたはずじゃあ?」

 

 ぞろぞろモンスター達を引き連れているのを見るとともに、驚いてこっちにやってくるひゅーこ。

 

「我々は自分の意思でこちらに残ったのだ!」

「そう! あのまま魔王の部下でいても、どうせ痛い目に合うだけ!」

「それならば人間に加担し、共に魔王を倒す! そしてユートピア・ニホンに生まれ変わるのだ!」

「アクシズ教徒ならアンデッドと悪魔以外は問題ないと! 預言者マリン様のお墨付きだ!」

 

 にこやかに答える様々な種族からなるモンスターたち。

 

「この裏切り者! モンスターでありながら人間に加担するなんて! しかもよりによってあのアクシズ教徒なんかに!? 恥ずかしく無いの!? 軽蔑するわ!」

 

 激高してモンスターに迫る元魔族。

 

「なんだとこのクソ女! 俺はなあ、もうウンザリなんだよ! 赤い目をした奴らは馬鹿みたいに強いし! それに加えて今度は毒ガスだぞ? もう魔王に付いても無駄死にだ!!」 

「そもそもなんで人間のあんたに言われなきゃいけないんだ? ふざけた眼帯しやがって!」

「これは好きでやってるわけじゃないもん! 無理やり付けさせられてて!」

 

 眼帯の事を言われ顔を真っ赤にして反論している見た目中二病少女。

 

「そういえばこいつ、自分のことを元魔族とか言ってた奴じゃねーか?」

「ああ、そんなのいたなあ」

 

 モンスターたちの中でも、一人無防備に突っ込んでいくひゅーこの姿は印象に残ったらしい。

 

「そう、その通りよ! 私の名はヒューレイアス・サルバトロニア! 魔王空軍に属していた、幹部候補よ!」

 

 自分の胸を叩き、はっきりと自己紹介するひゅーこに。

 

「誰?」

「知ってる?」

「そんな奴いたっけ?」

 

 案の定、首を傾げるモンスターたち。

 

「信じてよ! っていうかなんで誰も私の事知らないの? 魔王城のパーティーでも毎回参加してたと思うんだけど? 邪魔にならないように隅っこで飲んでたんだけど。誰か見てたよね? ねえ?」

 

 ……。

 あんまり詮索したくないが、やっぱりひゅーこって魔族の中でもぼっちだったのかな。なんかパーティーの隅っこで、誰とも話さずに飯をちびちび食べている姿が想像付くのだが……。

 

「はっ! そういえばなんで、私は捕虜交換の時に戻らなかったんだろ?」

 

 ひゅーこが今更になって言った。

 

「そういえばそうだった。俺もお前が一応捕虜だってことすっかり忘れてたわ。魔王軍にも伝えてなかったし。でもさ、人間社会にすっかり馴染んでるし、もう諦めて俺たちの仲間になれよ。どの道紅魔族がお前を手放すわけがないだろ」

 

 俺自身もひゅーこを返すという発想が思い浮かばなかった。あまりに自然に紅魔族と一緒にいるから元敵だってことを失念してた。

 

「ひゅーこはこれからはノイズの冒険者として生きるしかないんだよ。観念すれば冒険者カードも返してやろう」

「私は今でも! 魔王軍の一員なんだから! いい? あんたたちに協力することは絶対に100%ないんだからね! いつの日かここを脱出して今までの屈辱を返してやるんだから!」

 

 見事な改心フラグを立てながらも言い返すひゅーこ。

 

「ひゅーこさん、そういわずに。ではあなたもアクシズ教徒に入ってみればいかがです? 人生が変わりますよ?」

「断じて断る!」

 

 マリンの勧誘を跳ね除けている。

 

「気に入らないですね! 気に入らないですよひゅーこ! あなただけマサキ様に気に入られてて特別扱い! 一体どういうつもりですか! この泥棒猫! マサキ様を私から奪うつもりですね!」

 

 そんなひゅーこと話していると、急にれいれいが間に入ってきた。

 

「え? どういうこと? 私達、そういう会話してたっけ?」

「キシャー!」

 

 今にも飛び掛りそうなれいれいを前に、誰かがひゅーこを庇うように現れる。

 

「ひゅーこ、隠れててください! 我が名はななっこ! 紅魔族最強にて、いずれ伝説になるアークプリースト!」

「ヒーッヒヒヒ。いいでしょう! あなた達流に名乗りましょうか。我が名はれいれい! 改造人間のプロトタイプにて、いずれ世界を手にするマサキ様の伴侶となる女性! あなたもそこの元魔族もまとめて葬りさってくれます!」

「え? なに? なんなの? なにが始まってるの?」

 

 れいれいとななっこの間で、困惑しているひゅーこ。

 

「紅魔族の嫌いなところその一! マサキ様に逆らうところ! そのニ! マサキ様のやることにけちをつけるところ! その三! マサキ様のセンスを否定するところ!」

 

 叫びながら血走った目で睨み、赤い魔力が体から流れ出している。

 相変わらず危ないなあ。レイは。れいれいになっても相変わらずだ。

 

「待てよれいれい。紅魔族は確かに俺の部下だが、001こといっくんに任せて自由にさせている。俺には黒の部隊がいるし、こいつらが命令を聞かないのは想定内だから、別に問題ないぞ?」

「アルタリアですらマサキ様の命令は聞くのに……紅魔族はいつも逆らってばかり。本当は頭が悪いんですか? 見せしめに、一人くらい殺してもいいですよね?」

 

 話を聞けよ。ナチュラルにスルーするな。

 一方ななっこの方も目を光らせ、周囲の空気が震えている。

 ……この二人が戦ったら、辺り周辺なにも残らなそう。

 

「やるんですか! 売られたケンカは買いますよ! この私の伝説の魔法! 『爆発魔法』の威力を見せてあげますよ!」

「私の『炸裂魔法』の方が詠唱は短い。先に撃てば終わりです」

 

 指に魔力をこめ、ななっこをロックオンするれいれい。

 

「やめんか」

 

 れいれいの腕を掴み、炸裂魔法の軌道を反らさせた。ななっこの横で小さな爆発が起きる。

 

「なにをするんですマサキ様! これから生意気な紅魔族へお仕置きをするんですよ!」

「紅魔族同士の決闘は危険すぎるから禁止だ! 文句があるときは、戦闘以外の方法で決着をつけろ、いいな!」

 

 れいれいを拘束しながら命令した。

 

「たとえばどんな方法ですか?」

「そうだな、今紅魔の里はデッドリーポイズンのせいで土壌汚染が酷いから、より綺麗にしたほうが勝ちってのはどうだ? どちらも爆発系の魔法使いだし。穢れた土をより多く吹っ飛ばした方が勝ちってことでな。丁度いいだろ?」

 

 俺の提案に。

 

「いいでしょう」

「異議なし!」

 

 ケンカっぱやい二人は頷いた。

 

「私の炸裂魔法は、誰よりも正確に打ち込むことが出来ます。毒に汚染された場所だけ綺麗に掘り返し――」

『爆発魔法!』

 

 れいれいがそこまで言ったところで、ななっこの無差別な爆発魔法で全て吹っ飛ばした。

 

「どうやら私の勝ちですね、プロトタイプ!」

「なっ!」

 

 劈くような音が響く。

 ななっこは俺たちが地道に掘り返していたものを、完全に無視してまとめて全部里の外目掛けて吹き飛ばした。

 

「おいおい」

「せっかく人が頑張ってたのに」

 

 爆発魔法によって今までの苦労が水の泡になった黒の部隊が文句を言う。

 うん? だが待てよ。

 

「なるほどな、毒だろうがなんだろうが全て吹き飛ばせるなら問題ないか。よし7番。その調子で紅魔の里に片っ端から『爆発魔法』を撃ちこんでくれ。里を修復するより一から作り直したほうが早いな」

 

 ななっこの爆発魔法を使えば除染が早く済みそうだ。

 

「どうやら私の勝ちのようですね!」

 

 にっこりとピースサインをするななっこに。

 

「ぐうううう!!! おのれえええええ! ひゅーこ……ななっこ……! この借りは絶対に返してもらいますから。私の殺すリストに加えておきます。ふふふふふふふふふふふ」

 

 不気味な笑い声をし、二人に警告するれいれい。

 

「ねえ? なんで私が恨まれないといけないの? 関係ないよね?」

 

 そんな二人に納得いかないといった顔をするひゅーこだった。


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