この素晴らしい世界にデストロイヤーを!   作:ダルメシマン

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ここでやっと四人パーティが全員登場しました。
プロローグ含めれば6話……結構スローペースだと自分でも思います。


一部 5話 凶暴クルセイダー参上!

「あらどうしましたマサキ。顔色が優れませんが。昨日はよく眠れなかったのですか?」

 

 ギルドに来ると水色プリーストのマリンが出迎えてくれる。だが。

 

 

「眠れるわけねえだろ! 昨晩はずっと街中で逃げ回ってたわ! 少しずつ仮眠をとって、ハンターの気配がしたらダッシュで逃げる! それを繰り返していたんだぞ!」

 

 俺はついマリンにあたってしまう。もう誰でもいい。あのメンヘラ女の文句が言いたかったのだ。

 

 

「逃げ回るとはおかしな話ですね。ハンターとはなんです? モンスターが町に侵入したという話は聞いてませんが?」

 

 不思議そうな顔をして首をかしげるマリンに。

 

「あいつだよ! 昨日仲間になったレイだ! ある意味モンスターより怖い! モンスターは退治できるけど、あいつをどうにもならん! くっそうあのアマ! 早くなんとかしないとヤられる!」

 

 俺はマリンにいかにレイが危険な存在か説明しようとするが。

 

「……呼びましたか?」

「ヒイッ!」

 

 いつの間にか背後に立っていたレイが俺に話しかけてきた。俺は驚いてその場を飛び跳ねる。

 

「で、 出た!! この幽霊! い、いや……。レ……レイさん? いつからそこに?」

「私はいつでもあなたの側にいますわ。ダーリン」

 

 怖すぎる。

 もういやこの女。

 昨日こいつの元パーティだった奴らが大人しく引き下がった理由がわかった。

 そしてカエルの群れの中に拘束して投げ込んだ気持ちもわかる。

 っていうか俺も今すぐそうしてやりたい。

 カエルどころかドラゴンの巣に突っ込んでやりたい。

 

 

「わかったレイ。わかったから離れろ! あっち行け!」

 

 無理やりしがみ付く化け物を剥がしながら言った。

 つかこいつも一晩中一緒に走り回ってたはずなのに、何でこんなピンピンしてるんだ。なんか満足げな表情がムカつく。

 

「あらお二人とも、一体何かあったのですか? いつの間にか仲良しに」

 

 俺とレイのやり取りを見てマリンが聞いた。どこが仲良しだよ! こいつの目は腐っているのか?

 

「私とマサキ様は一晩を共にした仲です!」

「…………!! い、いつの間にお二人はそのようなご関係に……」 

 

 レイの話を聞いて顔を赤らめるマリン。彼女にはそういったエロ系の耐性が無いのか。大人びた見た目と違って意外だな。いや……そんなことマジでどうでもいい。

 

「その通り、もう私とマサキ様は男女の関係です。マリン、一緒のパーティになるのは構いませんが、私の愛しい人に手出しはしないで下さいね?」

 

 レイが赤い目をギラギラさせながらマリンに警告する。

 

「そ、そうですか……。では私からはなにも言いませんわ。ですが式はぜひアクシズ教会で」

「勝手に話を進めるな馬鹿女共! 何が共に一晩をだ! 勝手に俺の藁の中に忍び込んで! 逃げても逃げても追いかけてきやがっただけだ! おかげで眠れなかったぞ! 怖すぎるんだよ!」

 

 顔を赤くしてうろたえているマリンに説明するが。

 

「そう眠れないような熱い夜を過ごしたのです!」

 

 ヤンデレがわけのわからないことを言い出す。

 

「全然熱くなかったわ! 寒気しかしなかったぞ! 二度とやるなよ! わかったな!」

「……」

「おい! ちゃんと返事しろ! 約束しろ!」

 

 無言のレイ。絶対また来る! この女は毎晩来る。

 くっ、このアマいつか絶対重りをつけて湖の底にでも沈めてやる!

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「で、次はどんなクエストを受ける?」

 

 周囲1メートル以内から離れようとしない悪霊少女レイのことは諦め、マリンに次のクエストについて相談する。

 

「次こそジャイアントトードの討伐を! レイさんがいれば簡単です! 絶滅させる勢いで行きましょう!」

 

 全く懲りてないマリンに。

 

「ダメだ。そもそもあのカエルにはお前じゃダメージを与えられないだろ? 俺も一匹倒してレベル2になったばかりだ。ほぼ全ての戦闘をレイに丸投げする気か? パーティとはみんなで助け合うものだ。それにジャイアントトードだとレイを置いて逃げられないじゃないか!」

 

 俺はマリンにダメだしする。

 

「今私を置いて逃げるって言いませんでしたか?」

「言ってない」

 

 つい本音が漏れてしまったが話を続けよう。

 

「とりあえずはゴブリンとかそういう雑魚モンスターを倒すんだ。まず俺のレベルが上げないと始まらない」

 

 俺は説明する。アークプリーストのマリン、アークウィザードのレイ。そして冒険者の俺となるとバランスが悪すぎる。二人とも上位職なのに俺だけ最弱とか肩身が狭い。

 性格がアレすぎるのはおいとくとしても。

 

 

「にしてもプリーストにウィザードか……。二人とも後方支援系だな。バランス的には俺が前衛の戦士になった方がいいのかな? 魔法には憧れるがこの際仕方ないかな」

 

 俺は最弱の冒険者だが別のジョブにクラスチェンジすることは出来る。冒険者カードを見て考え込む。

 

「でも戦士も溢れてるって聞くしな……。やっぱりなり手が少ない盗賊になった方が? でもなあ……」

 

 なかなか踏ん切りがつかずに悩む俺に、マリンが。

 

「ではパーティを募集してみるのはいかがでしょう? 戦士職ならすぐに見つかりますよ。マサキのジョブはレベルが上がってから決めればいいんですよ! 冒険者はレベルが上がりやすいですしね」

 

 マリンが中々いい提案をする。そうだ、何もこの三人だけでやると決まったわけではない。っていうかレイはとっとと別の人に押し付けたいのだが。

 

「よしそうしよう。戦士系のメンバーを募集するぞ」

 

 

 

 

「……………………来ないな……」

 

 

 一時間後、俺は冒険者ギルドにて呟いた。

 いや来ないんじゃない。正確に言おう。

 この町にもそれなりには冒険者がいる。

 その中で戦士系のジョブについてる人間も多い。

 だがいざ勧誘となると問題が発生するのだ。その戦士たちはレイの姿を一目見るやいなや、無言でダッシュで逃げ出してしまうのだ。男女問わずに。

 

「このメンヘラ! お前一体どれだけやらかしたんだ? なんでどいつもこいつもお前を見ると逃げ出すんだ!」

 

 俺はレイに聞く。

 

「えっと、それはですね……この町に来たばかりのころは普通にウィザードとしてクエストをこなしていたのですが、いつになっても運命の人が現れるそぶりが無かったので、より積極的にアプローチしていくことに決めまして。だからとりあえず男性の方がいると運命の人か聞くようにしていたのです。もし邪魔をする女性がいたらまあやっちゃいますよね? 魔法で。でもそのおかげでマサキ様と――」

「もういい。もうわかった。想像つくからもう喋るな」

 

 レイを黙らせる。まさかこの町の人間はみんなこのお化け女の事を知ってるのでは? そして俺のような新参に押し付けあっていたのではないだろうか。よし俺も新人がやってきたら絶対こいつを押し付ける!

 

「このまま待っても仕方ない。この先俺達だけでゴブリン退治といくか」

 

 俺がそう言って、立ち上がろうとしたときだった。

 

「きゃっ!」

 

 ドカッと大きな音がして、マリンが悲鳴を上げる。大きな音がギルドの扉から響き渡る。なにか剣か何かで攻撃を受けているように聞こえる。そしてついにギルドの扉が破壊された。

 

「なんだ! 敵襲か!?」

 

 俺は驚いて立ち上がるが、なぜか室内にいる人々は何事も無かったように座ったまま談笑している。この町の冒険者っておかしくないか? ギルドの扉が破壊されたのに何でこんなに落ち着いていられるんだ?

 

 

「ちょっと困りますよアルタリアさん。ちゃんとドアを開けてください」

「ああまたやっちまったよ。ついなあ。うちではドアは破壊して入るものって決まりがあるから。扉が閉まってるのを見てついぶっこわしちまったよ。ははは!!」

 

 ドアを破壊して入ってきたのはガチガチのフルプレートメイルを着込んだショートヘアのお姉さんだった。

 危なそうで、何も考えてなさそうな印象の野蛮そうな美女だった。

 俺より年上だろうか。身長がかなり高い。

 燃え上がるようなオレンジの髪をポリポリとかきながら、受付に謝っていた。

 

「ドアの修理費はあなたの報酬から引いときますからね!」

「いっつもわりぃなあ! そうしてくれ!」

 

 全く悪びれることもなく笑顔で告げる美女。

 うん、こいつは無いな。こいつも無い。いくら美女でもドアを破壊して入るとか頭おかしい。

 

「おいなあ! 誰か一緒にクエスト受けてくれないか? 頼むぜ! 一人より仲間がいたほうがいっぱいモンスターを殺せるだろ? そのほうがワクワクすんだよ」

 

 戦闘民族のようなことを言いながら仲間を探す女騎士。だがギルドのものはみんな目を反らす。

 ……この冒険者達の反応、レイの時と同じだ。

 一応この眼鏡で確認してみるか。

 

『Warning!』

 

 ああやっぱりレイと同じか。

 

「レイ、ちょっと来てくれ。ああもういい」

 

 隣に座っているレイを見通す眼鏡で覗く。

 

『警告! 危険!』

 

 ちゃんとレイも危険だと出てる。眼鏡は壊れてないな。うん、あいつは関わらない方がよさそうだ。これ以上頭のおかしな女と関わってられるか。そう思っていると。

 

 

「ああ? お前ら見ねえ顔だな。どうだ? この私はクルセイダーだぞ? 一緒にクエストしようぜ?」

 

 関わりたくないと思った矢先に急に話しかけてきた。

 

「マサキ様、やめたほうがいいですよ! この女はアルタリア。ギルドのやっかいものです。この人と関わったら碌な目に合いませんよ?」

 

 レイがそんなことを言い始める。それはお前もだろう? と俺は言いたい。だがややこしくなりそうなのでやめといた。

 

「あぁ? そういえばお前は見たことあるぞ。ええっと、なんだっけ? 話すと呪われるという黒ロンゲのウィザードじゃねえか!」

 

 間違ってない。よく知ってるじゃないか女騎士さん。

 

「まいっか。この際お前でもいいよ。私は剣でお前は魔術で。一緒になれば怖いもの無しだ。クエストに行こうぜ? みんな付き合い悪くてよう……」

 

 そりゃそうだ。ギルドの扉を剣で斬りつけるような狂戦士なんかと関わりたくないだろ。でも意外なのは、この女騎士の方はレイの事を気にしてないことだ。レイの方は凄く警戒してるが。

 

「ちょうど戦士を募集してたところですの。もしよろしければ――」

「ダメです! この人は危険なんです! 普通に危ない人なんですよ!」

 

 なんだ自己紹介か? 普通に危ないのはお前だよ。

 マリンは乗り気だが必死で止めようとするレイ。

 

「いいじゃねえか。ちょこっとだけ。ちょっと組むだけだしよ」

 

 彼女たちの言い合いを聞き、俺は少し考えた後。

 

「じゃあよろしく。とりあえず一日だけな」

「えっ! 本気ですかマサキ様! こんな危険人物、きっと後悔しますよ!」

「うるさい! お前の時点ですでに後悔してるんだよ。いやマリンもだ。それにお前とこの人でマイナス同士相殺されるかもしれないだろ!」

 

 レイに怒鳴りつける。

 

「よくわからんが……私の名前はアルタリアだ。ギルドではちょっとした有名人なんだ。さっきも言ったけどクラスはクルセイダーな。じゃあよろしく! ゴブリンでも初心者殺しでも何でも来やがれ!」

 

 

 アルタリアが仲間に加わった。

 後で思えば何で俺はアルタリアをパーティに加えたんだろう。眼鏡で危険だと表示されていたのに。レイが嫌がるのを見て当て付けでこんなことをしたのかも知れない。

 


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