この素晴らしい世界にデストロイヤーを!   作:ダルメシマン

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一部 24話 このふざけたダンジョンにクソマンチを!

 キールのダンジョンの真横には、『キール対策本部』と書かれた建物が立っている。ここでダンジョンの情報交換をしたり、避難所として使ったり、アイテムを販売したりと文字通りキール攻略のために様々な物が用意してあった。俺たち4人パーティはその建物内の一番目立つところで座っている。

 

「マサキさん! あなたダンジョンの中で炸裂魔法を使ったでしょう? 他の冒険者から! 道が途切れてて全滅しかけたとか! モンスターの配置が変わっていたとか! 苦情が来ていますよ! かってに地形を変えないで下さいよ!」

 

 ギルドから派遣された職員が俺に注意するが。

 

「どうでもいい。この俺があのふざけた魔法使いに鉄槌を食らわせる。キールにはこの世界から退場してもらう。あいつに悩まされるのも今日までだ」

 

 苦情を一蹴して答えた。

 

「なんだ? その口ぶりは? お前もあのダンジョンから命からがら脱出したくせによお。まさかお前が本気でこのダンジョンを攻略できるとでも?」

「その通りだとも。この俺が見事、キールを駆逐して見せよう」

 

 他の冒険者の煽りに、冷静に言い返した。

 

「そもそもだ。なぜダンジョンを攻略するのか? そこから考えてみよう。どう思う? マリン?」

 

 他の冒険者は一先ず置いといて、マリンに尋ねてみる。

 

「そうですね。それはダンジョン作った上位モンスターが、様々な宝を所有しているからですわね。宝を求めて冒険者達は日々ダンジョンに潜ります」

「なるほど、その通りだともマリン。いい答えだ」

 

 マリンの答えに満足し、同意する。

 

「だがこのキールのダンジョンに限れば、少し話が違ってくる。他のダンジョンはあくまで好奇心、名誉、宝を手に入れるのを目的としているが、ここのダンジョンが問題なのは場所だ。アクセルの街の発展のためには、こんな近くに危険なダンジョンがあっては困る。即ち宝などは後回し。とにかくダンジョン攻略、脅威を排除するのが最優先だ。違うかな?」

 

 俺はマリンだけでなくその場にいる冒険者全員に聞こえるように話した。

 

「ああ? なにがいいたいんだよ? どっちにせよキールを倒せばいいんだろ?」

「だから俺達が日々潜って戦っているんじゃねえか!」

 

 他の冒険者たちも反論してくるが。

 

「そもそもだ。一般的に城を攻めるのには敵の三倍の兵力が必要という話もある。ダンジョンは城ではないが、敵が用意した防衛拠点だ。そこに少人数のパーティーで挑もうなど、相手が圧倒的に優位じゃないか? こちらも力を合わせて潰すべきだ」

 

「なんだと? 何言ってやがる? そんな事をしたら宝を奪えないだろうが!! 仲良く山分けなんてごめんだぞ!」

 

 苛立つ冒険者に。

 

「そう。君の言うとおりだ。普通のダンジョンならそうだ。だが思い出して欲しい。キールのダンジョンではあくまで宝を手に入れるのは二の次だ。とにかく奴さえ倒せればそれでいいのだ」

「なんだと? つまりみんなで仲良く戦えばいいだと? 下らねえ! そんなのは冒険者のやることじゃないぜ! 騎士団にでも任せろよ! それにだな、キールは伝説じゃあたった一人で王国を相手に立ち向かったそうじゃねえか! 仮に騎士団が向かおうが対策ぐらいされてるはずだぜ?」

 

 怒鳴って言い返す冒険者たち。冒険者が他の見も知らずのパーティーと仲良く隊列を組むなんてそう簡単には行かないだろう。キールの強さも。しかしそんなことはわかっていた。

 

「勿論わかっている。だから冒険者の助けは必要ない。今のところはな。アクセルの市民の皆さんと共にキールを滅ぼす」

 

 俺ははっきりと宣言した。

 

 

 

「はぁ? ふざけんのも大概にしろよマサキ! 俺たちや、騎士団ですら手に余るキールを! 普通の住民が何とかできるわけないだろ? 馬鹿も休み休み言え!」

「君の言うとおりだ。彼らに戦わせるつもりはない。今までの冒険者が持ち帰ったデータによると、キールは貴族令嬢を監禁していたため、そう深いダンジョンは作れないはずだ。あまり深いダンジョンを作れば、優れたアークウィザードであるキール自身には耐えられても、普通の人間である令嬢には辛いはずだ。このダンジョンの浅さにこそ勝機がある」

 

 そういって俺はアクセルの地図を取り出して、キールのダンジョンの位置を指差した。

 

「では俺の作戦を話そう。このアクセルの街には水源としている川がある。そこから水を引き、キールのダンジョンに流し込む。つまり水攻めだ。あのダンジョンは手強いが、浅い。すぐに水で一杯になるだろう。こうなればいくら強いモンスターがいたとしても関係ない。まとめて処理できる」

「「「「「うわあ……」」」」」

 

 その場にいる全ての冒険者やギルド職員が一斉に引いたが、構わず俺は続けた。

 

「蟻の巣に水を入れるとどうなる? 大慌てで外へと逃げ出すだろう? さらに俺達の調査とこれまでの情報によれば……あのダンジョンにはアンデッドが大量に潜んでいた。キールは十中八九リッチーとなっているに違いない。それが更に好都合だ。奴の配下であるアンデッドはろくに泳げまい。大量の水でダンジョンの下部に押し流される。キールが一人必死で這い上がってきたところを……俺達全員で集中攻撃する。これならば完璧だ」

 

 俺はキール駆除計画について自信満々に詳しく説明した。

 

「も、もしもキールが……想定通りアンデッドの王、リッチーと化しているとすれば、我々の手に負えない場合はどうすればいいんだ?」

 

 そう、リッチーといえばアンデッドの王と呼べるモンスターだ。この小さな町の冒険者を集めてでも倒せる可能性は低い。

 

「倒せなくても問題はない。今回の第一目的はこのアクセルの街からキールを追い出すことだ。キールが手に余るようならばすぐに撤退しろ。またダンジョンに戻ったら水攻めを再開させる。とにかく嫌がらせを継続させるんだ。他の場所でダンジョンを作るなら許してやる。キールがこの地からいなくなってくれればそれでいい」

 

 冒険者の質問に素早く答えた。

 

「キールがキレて襲って来たらどうするんだ?」

「その時はそのときだ。この街から一時退却。あとの処理はベルディアの騎士団にでも頼めばいい。いくらリッチーとはいえ地上でたった一人で騎士団を相手にするのは辛いだろう。とにかく奴を疲弊させる。二度とこの街に関わりたくなさせる。それだけだ」

 

 二人目の質問者にもそう告げた。

 

「では他に、質問のある奴はいないか?」

 

 そう辺りを見回すと。

 

「いやよう。普通ダンジョンっていったらさ、ロマンとか名誉とか、そういうもののために戦うもんじゃねえの? いくらなんでも水でいぶりだすのは酷くないか? ダンジョンマスターの気持ちも考えてやれよ?」

「なんだそれは? ロマン? 下らない。結果さえあればいいのだ。では用意にかかろう。安心しろ、すでにベルディアには話はつけてある。これよりキール討伐作戦を開始する! わかったかな!?」

 

 質問を打ち切り、自らクエストの用紙に判を押して全員に告げた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「まずは城壁を作ってるドカタの兄ちゃん達に作戦を説明するぞ! レッツゴー!!」

 

 呆然とした顔の冒険者達を無視し、仲間と共に工事現場へと向かう。

 

 

「あ! てめーはサトー・マサキ! 伝説のバックラーじゃねえか!」

「たった一日すらもたずにバックレしやがって! しかも時間分の給料はよこせと次の日に集りに来た恥知らずのサトーマサキじゃねえか!」

 

 工事現場の方々の暖かい歓迎の言葉に。

 

「ああ、ゴホン。うん、そんなこともあったね。そうだとも、でも過去のことは忘れよう。今や俺はちょっと名の知れた有名な冒険者だ。協力してもらいたいことがある」

 

 少し顔をそむけながら返事をした。

 あの時は悪かった。だって土木工事があんなに大変だなんて知らなかったんだもん。

 

「誰がテメーみたいなクズの言うことを……ってそれは!」

 

 嫌そうな顔で断ろうとするおっちゃんたちにすかさずクエスト受注書とベルディアの書類を見せつけた。

 

「まぁこういうことなんで。この街の発展のため、俺に協力してもらうよ」

「チッ。しゃーねえなあ!」

「てめーの命令なんてごめんだが、ベルディアさんの頼みならなあ……」 

 

 仕方ない、と言った顔で引き受けてくれる工事現場のおっちゃんたち。よし、中々順調だ。それから水源とキールのダンジョンを繋げるように指示を出した。

 

 

 

 

「あんた力持ちだなあ! しかも仕事が早い! 女にしとくのが惜しいぜ」

「そうか? モンスター殺してたらこれくらい余裕だぜ?」

 

 アルタリアの攻撃スピード特化のステータスは、工事現場でも大いに役立ったようで彼女は気に入られていた。

 

「それをこっちに持ってきてくれ!」

「よゆーよゆー! 任せろ!」

 

 楽々と荷物を運んでいくアルタリア。意外な側面が見えたな。あいつならこんなことめんどくさいといって投げ出すと思ったのに。力仕事させとけばいつもの凶暴性が抑えられるのか?

 

 

「そこのガキ! たしかお前は前に炸裂魔法を学びにきてたよな? 今でも使えるのか?」

「勿論です。この私は炸裂魔法を日々極めていますからね。今では誤差もなく正確な射撃が出来ます。でもガキ扱いは……うーん。マサキ様? 彼女が子ども扱いされるのは嫌ですか? 嬉しいですか?」

 

 レイの質問はどうでもいいから無視することにした。

 

「そうか! 正確に撃てるのか! それは心強い。じゃあお嬢ちゃんにも是非手伝って欲しい。このままで行くと邪魔な岩盤が多くてなぁ」

「いいですとも。この私がマサキ様の計画の完成のため! 見事工事を完遂させて見せましょう!」

 

 レイもその能力を買われ土木工事に参加することになった。

 

 

「みなさんお疲れ様です! お茶をどうぞ! 疲れた方には回復魔法をおかけしますよ?」

「おお! ありがとう! 効く効く! 疲れがいえていく」

「まさかプリーストが工事現場に来てくれるとはな。普段ならこんなこと絶対にないぞ!」

 

 マリンが休憩している人達に『ヒール』をかけ、次々と体力を回復させていく。

 

「お役に立てて光栄ですわ!」

 

 お辞儀で答えるマリン。その謙虚な姿勢におっちゃん達も大喜びだ。

 

 

 ここにきて俺の仲間3人はみんな、工事で実力を発揮し始めた。俺がこいつらを冒険者としてまとめるのにあんなに苦労したのに。なんだよお前ら最初から肉体労働やっとけよ。

 

「あのー……この俺にもなにか役に立てることは?」

 

 仲間の活躍している姿、しかも全員女が働いている姿を見て恥ずかしくなり、俺も尋ねるが。

 

「マサキはいいよ。どうせまたすぐバックレるだろ? 期待してない」

「お前のやりたいことは理解したから。後はプロに任せておいてくれ」

「っていうかどっか行ってろ。邪魔!」

 

 仲間とは対照的に、しっしっと追いやられる俺。

 

「ぐっ!」

 

 悔しい……。なんだか凄くムカつく。

 特にやなのが俺だけ無能扱いされている事だ。あのダンジョンを破滅に導く、見事な策略を思いついたこの俺をだ。

 普段ならこのパーティーでは俺が一番まともなのに! 冒険者からも嫌われているとはいえ実力は認められているというのに! 闇社会では荒くれどもを震え上がらせているこの俺がだ! 工事現場に来たらただの邪魔扱い! 

 モヤモヤする! ムカつく! この3馬鹿どもは俺がいなければどこのパーティーでも断られるような問題児ばかりだったのに! なんで今は逆に俺がこんな目に……。クソッ! 悔しい!

 

「もういい! 工事が終わるまで寝とくか! それでいいわ!」

 

 俺は少し拗ねたが、心を切り替えて戦いのときまで英気を養っておくことにするか。最近は普段のクエストに加えて、裏家業の調整とかあって忙しかったんだ。休むときにはしっかり休もう。

 そのまま俺は対キール用の避難所に向かい、そこにあるベッドで爆睡することにした。

 

 

 

 ――それから数日の時が過ぎた。

 

「マサキ! 起きて下さい!」

 

 誰かの声がする。なんだよ、煩いなあ。またベッドを返せとかギルドの奴らが言って来たのか?

 

「ムニャムニャ……このベッドはこの俺が占領したんだ。怪我人なら他のベッドに行けよ。満員なら床にでも寝かせとけ」

 

 声を無視して布団の中に包まると。

 

「私ですよ! マリンです! マサキ! 起きてくださいよ!」

「なんだよマリン? まだ朝じゃないか。もう少し寝かせてくれよ」

 

 声の主はマリンか。まったく煩いなあ。今はこの世界に来て初めての長期休暇なのに。気が利かない奴だ。何か忘れているような気もするが。

 

「もうとっくに正午は回ってますよ! いやそんなことより! ついに完成したんです! 起きてください!」

「ああ? なんだよ? なにが完成だって? ふあああーー」

 

 欠伸をしながらマリンに生返事をすると。

 

「ですから! マサキの考えた策略に必要な! 水攻めのための工事が完成したんです!!」

「工事? なんの?」

 

 寝起きで頭が上手く回らない俺は聞き返す。

 

「なに言ってるんですか? マサキがやれって言ったんじゃないですか! こんなときにボケないで下さい!」

 

 マリンが俺を怒鳴りつける……それでようやく俺も。

 

「ふあ? あ! ああ! ついに完成したのか! よくやった! この時を待っていたぞ! よくやった! っていうか思ってたより早かったな!?」

「それはレイさんが寝る間も惜しんで作業を続けていたからです。『マサキ様のために命を懸けてでもこの計画を成功させます!』とかいって張り切ってましたし!」

 

 あいつが夜這いに来なかったのはそういう理由があったのか。おかげで久々によく眠れた。まあ後で少し褒めといてやろう。

 

「なるほどな。なるほど。全て順調だ。あとは実行あるのみだ。みな、よく働いてくれた。お前もだ。マリン」

 

 俺はパジャマで立ち上がり、労をねぎらった。

 

「さっきまで全部忘れて寝ていたくせに」

「それを言うなよ! ちょっと寝ぼけてただけ! 忘れてなんかいない!」

 

 マリンのつっこみを否定しつつ、すぐさま服を着替えて外へと向かった。うん、君の言うとおり、半分くらい忘れてたけどね。思い出したからセーフだよな。さあ戦いはこれからだ。

 

 

「時は来た! 今こそ我らの宿願であった! キールをこの街から追い出すのだ!」

 

 キールのダンジョンの前で冒険者や工事現場の職員に号令を下した。

 

「やっと起きたよあいつ! いつまでもベッドの一つを占領しやがって」

「しかも周辺を私物で散らかすし! ゴミも自分で捨てないし!」

 

 避難所の人間がちょっと愚痴っているが、まぁ無視しとこう。

 

「いいか! 敵はリッチーと化している! 夜中に戦うのは危険だ! 水攻めは早朝から行うことにする! 太陽に照らされる時間にキールをおびき出せ! 夜になってもまだ出てこないなら一時中止! 次の夜明けを待つ! わかったな!」

 

 集まった人々にてきぱきと指示を出していく。

 

「よし、では明日早朝に集合! だがその前に冒険者は集まれ! リッチーを倒すのはあくまでベルディアに任せるが、それまで出来る限りのダメージを与えておくぞ! 効果的な戦術をここで教えておく!」

 

 嫌がる冒険者達を無理やり訓練させる。アンデッドの王、リッチーを相手にするんだ。ベルディア騎士団を呼ぶまでの時間は稼がないといけない。それを説明するとみな納得してくれた。そんなに難しいことは必要ないからすぐに出来るだろう。

 訓練は終了! あとは明日を待つだけだ……。

 

 

 

 ――次の日。作戦決行日。

 

「全員戦闘配置についたな! いいぞ! では水を注ぎ込め! どんどんいけ!! 工事のおっちゃん! Go!」

 

 俺の合図と共にダンジョンに流れ込む水。中々の勢いだ。素晴らしい! やれやれ!

「この調子だ! そのまま注ぎ続けろ! このまま行けば昼までには水で満杯になるはずだ。もしも俺の想定通りの深さであればだが」

 

 それからも水が注ぎ込まれていく。最初の頃は緊張感があった冒険者たちも飽きてきたのか、抵当にダベって暇を潰している。ううん、思ったよりも長期戦になるかもしれない。俺も椅子に座り、少しうとうとしながらダンジョン陥落まで放置することにした。

 

 

 ……。

 …………。

 にしても暇だな。もう数時間は過ぎたぞ。そろそろ出てきてくれてもいいんだがなあ。

 

「でましたマサキ様! モンスターです! ダンジョンに潜んでいたモンスターが驚いて飛び出してきました!」

 

 そんなだらけてきた俺にレイが報告するが。

 

「モンスターなどほおって置け。狙いはキールだけだ。適当に戦って追いやれ! こんな奴との戦いに力を消費する必要はない! 逃げ道は用意してあっただろ? そっちに誘導しろ! アルタリア! 任せたぞ」

 

 水の勢いに逆らって高レベルのモンスターが飛び出して来るが、相手にしない。彼らの前でアルタリアがデコイスキルを発動させ、森へと誘導させる。

 

「オラッ! かかってきな! この私に追いつけるものならなア! ひゃははははあ!」

 激怒するモンスターたちを挑発しながら逃げるアルタリア。

 

「おーいアルタリア! そいつらは倒す必要はないぞ? あくまで目的はキール個人だ! 森まで上手く誘い込んだらあとは戻って来い! リッチーのキールとの対決に参加したくないなら構わないが」

「ははっ! そんなこといわれたらしゃあねーなあ。こいつらの相手はまたにしてやるか! あばよ!」

 

 そうアルタリアに忠告すると納得してくれたようだ。

 

 

 ……。

 …………。

 そして水は注がれ続け、ついにその時はやってきた。ダンジョンの入り口から凄まじい魔力を感じ、さっきまで適当にゴロゴロしていた冒険者達も急に身構えだす。この俺の『敵感知』にもびんびん威圧感が漂ってくる。

 

「……こここここの私はキール! かって貴族の令嬢を攫った悪い魔法使いだが。わわ、私のダンジョンに、水をどんどん流してくる卑怯者は、誰だあああああああーっ!!」

 

 伝説の魔術師キールは、もう限界だとばかりにお怒りだった。

 


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