NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
誰得猫耳回。いや、ショタコンには得かもですが。
では、どうぞー
現実逃避の下着も洗い終え、脱水と乾燥のために風遁でそこそこの強さの風を生みだして。それが終わったら下着と用意されてあった寝間着を身に着ける。
脱衣所に置いてある鏡の前に現在の自分の姿が映し出されて。オーマイガー!と再度現実逃避をする。
なぜ、こんな罰ゲームみたいなことを・・・。
メイの家で羞恥プレイに勤しむことになろうとは。
などと絶望に打ちひしがれながら、居間へと戻る。
当然ながらお風呂から上がったことに気が付いたメイと鉢合わせになる。
「うんうん、よく似合っているわよ。その寝間着。捨てないで実家から持ち出しておいてよかった~」
ご飯出来てるから遠慮しないでいっぱい食べてね。というメイに対してオレはどういう表情をしているのか。一生わからないだろうし、わかりたくもない。
ちなみに余談で、かなり後になってからわかることなのだが、このときメイは台所で声を殺して「なにあれ可愛過ぎよぉぉぉ!!」と絶叫し、興奮し過ぎて鼻血を出していたらしい。
・・・という裏エピソードを数年後に暴露されることになろうとは当然、今のオレは知らない。
閑話休題。
そしてこんな面白おかしい状況を(オレはコンマ1ミリたりとも面白くも無いしおかしくも無いのだが)放っておかない奴らがオレの精神世界には棲みついていた。
それは言うまでもなく尾獣たち。
そしてその中でも特に又旅である。
『かっかっか。おまえ様・・・ぷっ。よう似合っておるわい』
又旅以外のメンツも後ろの方で、プークスクスと笑っているのが目に浮かぶ。悟空なんかきっと大笑いして笑い転げているだろう。そのうちどっかの角に頭でもぶつければいいんだ。
それとお前らまとめていつか絶対絞めてやる・・・。と決意する一方で、又旅は話し続ける。
『よいでないか。おまえ様の猫耳姿も年相応といった感じで・・・可愛げが・・・ある、ぞ・・・ぷすっ』
吹き出すのを我慢しながら。そして結局吹き出しながら言われてもバカにされてる感が余計に増すだけだ。
要するにムカつく。超ムカつく。プラチナムカつく。
『妾とお揃いじゃのう、猫耳で・・・くくっ・・・猫耳て』
又旅。お前だけは他の連中よりハードモードの御仕置きを覚悟するんだな。
ちなみにメイから渡されたお古の寝間着というのが猫耳のフードがついたモコモコの白い毛皮が使われている見るからに可愛いらしいツナギだったのだ。男のオレが着るには抵抗感があり過ぎだ。
もちろん多少の使い古された感は拭えなかったが、それでもかなり大事に。それもある程度の期間使っていたんだろうと思われる。
だって、もうメイの年齢的に数年は使ってない寝間着をわざわざ実家から持ってきて大切に保存しているくらいのものだ。相当な思い入れがあるに違いない。
オレが着ることとなった
テーブルに座って完全にお客様状態でいるのも流石に悪いかと思い、キッチンから居間へと料理を運ぶのを手伝う。
その際、妙にバタバタしていたように見えたメイだったが。
「あら。全然座っててくれていいのに」
なんていつも通りのトーンで言ってくれたのでオレは気のせいだったのかな?と、その後は気にすることもなくなっていたが、やっぱり甘えてばかりじゃいかんだろ。
ということで、手伝ったのだが。
キッチンから運んできたのは合計3つの鍋。
ただし全部同じ匂いがする。・・・いや、美味しそうないい匂いなんだけどね?
もしかして、この量全部同じ食べ物?
「男の子だからいっぱい食べるかと思って・・・作り過ぎちゃったかしら?」
と、可愛らしく首をかしげるメイにオレは何も言うことはできない。
だって作ってもらった側なのに、あーだこーだ不満を言う権利はないだろ?それになによりも可愛いは正義だ。
「ううん、ありがとう。・・・いただきまーす」
「はい。召し上がれ」
箸置きから箸を右手にとって。オレは3つある鍋のうち、一番近いところの鍋を開ける。
モワーッという蒸気とともにいい匂いが部屋に充満する。
鍋の中、つゆだくの汁から顔を出しているのは豚肉、じゃがいも、ニンジン、しらたきなど。
一番スタンダードな具材がぎゅうぎゅうになるほどたくさん入っていて、家庭の味アンケート調査では常に上位に入って来るそれをまずはひと口いただく。
・・・。
うん。味付けは問題なく・・・といったら失礼か。普通に・・・といっても失礼だろう。
素直に言うと、オレの口に合うとても好きな味付けだった。
「おいしい」
「ホント?カルタくんのお口に合ってよかったわぁ」
その一言を求めていたのか、結構至近距離まで近づいていたメイが満面の笑みを浮かべる。
女の子の笑顔ってすごいかわいいよね。特にメイの笑顔は、見るものすべてを虜にするといったら大袈裟かもしれないが、少なくともオレの箸の動きは止まってしまった。
無意識的にその笑顔を脳裏に焼き付けようとしているのか、意識、集中力、情報処理能力の全てがメイの方を向いてしまって結果的に固まってしまった。
「肉じゃが。いっぱい作ったからいっぱいたべてね」
オレはメイからかけられたその言葉で再起動し、それからというもの無我夢中で・・・といったらがっつき過ぎな気がするので、無心で肉じゃがを食べ始めた。
その様子を自分が食べるわけでもなく、テーブルに肩ひじをつきながらじーっとニコニコしながら眺めているメイ。
それに気恥ずかしさを感じながらも、それを誤魔化すかのように肉じゃがと白米を食べ進めるオレという構図がどれほど続いたのだろうか。
白米は既に3合を食べて。肉じゃがしか入っていない鍋も2つを空にして、3つ目も中盤戦といったところ。
食前は内心。「肉じゃがしかないのかよー」と思っていたオレだったが、今のオレからすると食前のオレをぶん殴ってやりたい。
だって、こんなにおいしいんだもの。
とはいえ、そろそろお腹もキツくなってきたところで口の中にあった肉じゃがと白米を麦茶で一気に流し込む。
流し込んで一息ついたところで、そういえば、水道とガスが土石流の被害によって止まっていること言ってないことを思い出す。
そこで湧き出るふとした疑問。
あれ?じゃあ、この肉じゃがはどうやってつくったんだ?
「あ、あのさ。メイ」
「ん?なにかしら?あぁもしかしてじっと見つめすぎちゃってた?ごめんねカルタくん。食べっぷりがよかったから、つい」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「あら?違ったの」
「お風呂の時に気付いたんだけど、このアパート土石流の被害の影響で水道とガスが止まってるんだ。そんななかどうやってメイは料理をしたんだ?」
単純に疑問に思ったから聞いただけだったのだが。
メイの表情は青ざめた後、悲壮感を漂わせてしばらくの間、沈黙した。
そして・・・。
「私、料理なんてできないのよぉぉぉ」
そんな悲痛な叫びのあと。
ぽつりぽつりと話し始めた内容を要約するとつまり。
元からこの部屋には水道とガスは通っておらず、普段からオレが風呂場でやったように忍術を使って代用していた。
ごはんは常に外食。
オレが食べていたご飯と肉じゃがは野戦病院(仮)を出る前に影分身を瞬身の術で派遣して実家の料理人たちに作らせたものだったのだ。
なるほどな。片付けも含めて家事能力が低いんだこの人。
そりゃあ、原作で結婚できなかったわけだわ。
「騙しててごめんなさいぃぃ」
と。見栄を張っていたことをなぜか泣きながら謝るメイを落ち着かせつつ。
ここにいる間の家事はオレがメインで受け持ちつつ、できることから教えて行こう。と決意するオレなのであった・・・。
恋愛描写?になっているのかどうかは怪しいですが。
大目にみてください。切実