NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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076.『宵』からの至上命令

 独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊。

 

 『宵』。

 

 木ノ葉の暗部長である大蛇丸によって秘密裏に結成されたその組織。

 トップを任されているのは、羽衣カルタ。つまりはオレ。

 その活動は諜報活動、情報収集がメイン。

 里内外。国内外に構成員。エージェントを派遣して、紛争の火種になりそうなことを調査し、その場で解決できるようであれば解決をする。

 そんな正義の味方まがいなことを主に行っていたりする。

 ただ不足しがちな活動資金を集めるために、たまに賞金首を狩っていたりもする。

 資金くらい潤沢に寄越せや。大蛇丸ェェェ。

 

 その数多ある業務を行うメンバーは両手の指で数えきれてしまうほど。

 つまり、人手が足りない。人材が足りない。常に枯渇しているのだ。

 

 まさに猫の手も借りたい状況とはこのことだ。

 そういうとオレの中の駄猫が「なんじゃ、おまえ様。とうとう妾の出番かの?」とニヤニヤしながら出てくるに決まっているので、言葉には出さないが。いや、出せないが。

 

「私、しばらく暇をいただきたいんですけど。組長」

「え?急にどうしたの。職場環境になにか不満?それとも同僚からのセクハラ?もしかして上司からのパワハラとか?」

 

 いつものように与えられていた任務を終えて、オレに報告しにきたパクラ。

 部下になったということもあって、オレはタメ口で話しているわけだが、この日は突然の宣言に驚いてしまった。

 

 この忙しいときに・・・という意味で。

 

「いいえ。そういうわけではなくて・・・」

「じゃあ、どういうわけなのさ」

 

 悪い冗談ならやめてほしい。ドッキリ大成功のプラカード背中に隠してんじゃないだろうな。という雰囲気(オーラ)を滲ませるオレ。

 

「え~っと」

 

 しかし、それにしてもこんなにも煮え切らないパクラは初めて見た。

 何をそんなに言いにくそうにしているのかと、そう疑問に思っているとようやくパクラは意を決して次の言葉を発した。

 

「組長!」

「なに?」

「私、身籠りました!」

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・。

 

「えェェェェェェェェェ!?」

 

 数秒間の沈黙を置いて。

 さほど広くない『宵』のアジトにオレの叫び声が木霊した・・・。

 

 

 

 こほん。落ち着け、オレ。

 

「ちなみに誰の子?」

「もちろんサソリとの子です」

 

 サソリェェェ!!

 

 ですよねェェェ!!!

 

 でも、まぁよかった。これで仮に違ったら昼ドラも韓流もドン引きの三流泥沼愛憎劇のはじまりはじまりだ。

 人形殺人悲劇のはじまりだ。操演者はもちろんサソリだ。

 

「それ、サソリには言ったの?」

「いえ、サソリはまだしばらく潜入捜査で帰ってこないので・・・」

 

 そういえばそうだった。

 オレはつい先日、何の情報も上がってこない不気味な国。水の国へサソリを派遣したばかりだったことを思い出す。

 命じた期間は最短でも半年・・・か。

 

「こんな大変な時期に、申し訳ございません・・・」

「なんで謝るのさ」

「人手も今でさえ少なく、組長はお困りでいらっしゃるのに」

 

 そういうパクラの表情は暗い。

 

 なんだってんだ。

 これから新しい命が。愛おしい我が子が生まれるってのに。

 

 人類のバトンリレー。ご先祖さまから代々。脈々と続いてきた命の系譜を次の世代へと繋げるというのに。

 

 ・・・あぁ。

 

 オレか。パクラにそんな顔をさせている張本人は。

 

 ったく。何やってんだよ。オレ。

 

 ここはバチッと応援すんのが筋ってモンだろーが。

 

 ふぅーっと。ひとつ長めの息を吐く。

 

「パクラさん」

「・・・はい」

「しばらくの休暇を認めましょう」

「はい。すみません」

「ただし!その前に『宵』からの至上命令です」

 

 

 元気いっぱいのかわいい赤ちゃんを産んでください。

 

 

 あ、生まれたら見に行くからそのときはよろしくね。

 

 

 

 

 

 そのあと。

 悪阻がきたらしく立っているのもやっとなほどに体調を崩したパクラを抱えて家へと運んだオレは水の国領内へと飛んでいた。

 

「あの野郎・・・こんな肝心な時にどこほっつき歩いてるんだ?」

 

 あの野郎とは、もちろんパクラを孕ませた張本人。赤砂のサソリだ。

 本名、うずまきサソリのことだ。

 

 ほっつき歩かせている張本人は上司たるオレなのだが。そこはそこ。それはそれ。

 

 オレも昔から比べると大分レベルが上がったのか。チャクラの反応を結構遠くまで感じることはできるようになっていた。

 なってはいたのだが・・・。

 

「どれがサソリかはわからんなぁ」

 

 それにもしかしたら、どれもサソリではないかもしれない。

 オレの探知範囲外にいる可能性も大いにある。

 

「霧隠れにバレない程度に影分身使って虱潰しに探すっきゃないか・・・」

 

 人海戦術も立派な戦術のひとつなのである。

 

 影分身を十数体ほど出して、あとは散らばるだけ。という時。

 

 ザッと。黒い影がオレの前に現れた。

 

「よぉ。どうしたカルタ。なんでお前がここにいる」

 

 頭髪は校則違反の赤髪。

 

 身長は成人男性の平均には遠く及ばない低身長。

 

 体格も小柄。

 

 服装は黒ずくめマント。

 

「おい。無視すんな。なんかしゃべれよ」

 

 この口調と、この声質。

 

 間違いない。

 

 意味もなくもったいぶったが、今オレが探していた人物。

 

「・・・サソリ」

「だからなんだよ。俺になんか用事あったんだろ?」

「与えていた任務は中止だ。お前にはもっと重要なことができたんだ」

「・・・はぁ?なんだそりゃ」

 

 1年半。しっかりパクラのこと支えてやって、ちゃんとパパになってこいよ。

 

 新米パパさんよ。

 

 

 

 それにしてもサソリさんよ。お前さん、世界が世界ならまだ高校生だろ・・・。

 

 若っけぇパパだなぁ・・・おい。

 

 運動会じゃあスターになれるぜ。

 

 

 




サソリェェェ。
パクラェェェ。

おめでとうェェェ。



さて。黄金世代の赤ちゃんになるが、どげんしよう・・・。

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