NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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このサソリは黒歴史。


069.風と砂と離間の計 其の陸

「風影とは俺がやる。異論は認めないぞ。人の子の分際でこの俺の女に手を出したこと・・・万死に値するッ。彼奴には死ぬよりも惨たらしく、永遠に続く無間地獄を味合わせてやる」

 

 砂隠れの秘密の地下集会場で、贄殿一族主導の決起集会が開かれ、同盟者として敵国の木ノ葉の忍であるオレこと羽衣カルタが紹介されたことにより場は一時的に多少荒れはしたが想像していたよりも早く収束していた。

 パクラの兄さん。お主はもしや口先の魔術師か。

 

 そんなことを思っていたら、それまでは全てを悟ったようなニヤケ顔でクールに澄ましていたサソリが急に真顔となってからの第一声が冒頭のそれだった。

 

 みんな固まってしまっていた。

 そして再起動が早かった者から、いくらお前ほどのものだとしても歴代最強の三代目風影に1人で立ち向かうのは無謀が過ぎると止めに入るが、当の本人であるサソリは聞く耳を持たない。

 その後も「俺の右腕が」とか「封印されし魔界の王が」とか「疼く・・・疼くぞォ」とか。

 終始、厨二病の妄想(サソリワールド)を展開し、周りの大人たちを大いに困惑させていたサソリに痺れを切らした数人が最終手段として、パクラちゃんも何とか言ってくれ、とサソリの説得に協力させようとするが、これまた当の本人であるパクラのサソリを見る目は完全にハートマークとなっていた。乙女っていた。

 

 うん。お前らお似合いのイイカップルだよ。

 

 ただオレにこれだけは言わせてくれ。

 

 だめだこりゃ。

 

 

 

 反乱を起こすXデーは、2日後の寅の刻。

 つまり、午前4時。日が昇る前。

 反乱軍は一斉に蜂起し、同時多発的に里の重要機関を制圧することと上役の捕獲捕縛、もしくは殺害することを並行して行うまさに電光石火の作戦。

 

 個人的に作戦名は『風火陰雷』というのはどうだろうか。と思っていたりする。

 元ネタはもちろん、孫子の兵法だ。

 

 其疾如風、侵掠如火、難知如陰、動如雷霆。

 直訳すると、其の疾きこと風の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。といったところだろうか。

 

 ・・・前言撤回。これはやめておこう。今のは全部妄言だ。ただサソリの毒に影響されただけなんだ忘れてくれ。

 

 話を変えよう。Xデーまでのオレの動きだ。

 

 オレは砂隠れの里、全ての住人の動きを監視するために雨を降らせることにした。

 原作でペイン天道がやってた《雨虎自在の術》だ。あれはなんも輪廻眼の固有忍術なんかじゃあない。とは言っても普通の人じゃチャクラ量的に使えない代物だけどな。

 ただ、ここは雨隠れの里のように湿度は高くない。高くないという次元(レベル)ではない。砂漠だ。皆無だった。

 そこでゼロから雲を作り続けるのは億劫だということで水脈を引いてきたんだ。風の国の首都にある淡水湖からな。原理は原作でヤマトがやっていた《水遁・滝壺の術》の応用だ。ただそれをより大規模にしてやってやっただけだ。

 それによって風の国の首都にある淡水湖だった場所は1日も経たぬうちに枯れてしまいただの大きなクレーターと化し、逆に砂隠れの里は周りを大きな湖で囲まれてしまった。

 うん。明らかにやり過ぎた。反省はしている。しかし後悔をしているかは怪しいがな。

 

 やってしまったものは仕方ない。これで湿度の低さを気にしないで雨雲を作り続けられるじゃないか。ということで納得したオレは早速《雨虎自在の術》を発動させて情報収集に励むのであった。

 

 

 

 そんなこんなで反乱当日の寅の刻ちょい前。

 

 オレの当日与えられた役割は三代目風影とは自分が戦うと一歩も引かなかったサソリの補助(サポート)のみとなった。

 こうなった要因としてはいくつか考えられるのだが、サソリ1人じゃ流石に歴代最強と謳われる三代目風影相手じゃ時間稼ぎもままならないだろう。だったら、部外者である木ノ葉の雷皇もくっつければ多少の保険にはなるだろうし、そのまま木ノ葉の雷皇も死んでくれたらラッキー。といったところだろうとオレは考えている。

 まぁ、それでも別にいいんだけどね。オレは。

 

「いいかカルタ。お前は絶対に、手を出すな。三代目風影(あいつ)は俺の獲物だ」

「はいはい。わかってるよサソリ。ま、負けたら骨くらい拾ってやるさ」

「ふんっ。そんな可能性はこの地球(ほし)で天変地異が起こったとて万が一にも無い」

「あぁそうかい」

 

 一体どこからその自信は湧き出て来るのだろうか。

 まったく。厨二病ってやつはこれだから恐ろしい。

 

「Ladies and gentlemen!さぁ・・・稀代の天才操演者。この俺。赤砂のサソリによる人形喜劇の始まりだぜェ」

 

 こいつ。戦闘が始まるまで敵に勘付かれないように静かにするっていう思考回路は存在しないのか?

 

「オレの集めた情報が間違っていなければ風影は昨日も今日も家に帰らず執務室で残業だそうだ。徹夜でな」

 

 サソリはオレの話を聞いてるのか聞いていないのかわからないが、傀儡に仕込んでいる毒刀を月光に照らしながら眺めて恍惚の表情を浮かべている。

 うん。やばいやつだね。

 これは関わり合いにならない方がいい類の人種だね。

 それともまだ刀身を舐めていないだけマシとでも思っておこうか。

 

 オレはそんなことを感じながら作戦開始の合図を待っていた。

 

 

 




次回。戦闘に入るだろうと思います。

さぁて。ぶっとびサソリの活躍はあるのか。どうなのか。


明日も更新できるようにがんばりますー

ではでは、新名蝦夷守でした。

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