NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
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オビトが息をしなくなった。
リンの瞳からは涙が溢れる。
俺が最初からリンのことを守れていれば。
俺が最初からオビトの言葉を聞いていれば。
俺が最初から任務遂行を最優先事項として、独り突っ走らずに、オビトと連携してリンを助けに行っていれば。
俺がもっとしっかりしておけば。
もっと、強ければ。
自分を守れるだけの強さがあれば。
他人をも守れるだけの強さがあれば。
リンも連れ去られずに、オビトも死ぬことは無かったのに。
オビトは俺が殺したようなものだ。
全部、俺が悪い。
俺の・・・せいだ。
「ちくしょう・・・。ちくしょうッ!!!」
地面を殴りつけたカカシの手から血が滲み出る。
カカシの両目に移植された写輪眼の模様が変わる。
二つ巴から三つ巴へ。
そして、万華鏡写輪眼へと。
そんなときだった。
崩れた洞窟の外から『ドゴンッッッ!!』という凄まじい音が聞こえたのは。
カカシはサッと腕を出し、リンを守るようにして辺りを警戒する。
そのあと、数度の揺れと轟音が鳴り響き・・・。
そして静寂が訪れる。
「い、いまのなんだったの?」
「さぁ。わからないが外のチャクラの動きが激しかった。きっと戦闘があったんだろう。安全を確認しながらここを離れよう」
「う、うん。わかった」
そう言ってまさに2人が移動をしようとしたその時だった。
ドゴンッッッ!!という音がもう一度鳴り響き、崩れた洞窟の天井部分に穴が空き、空が見えたのは。
カカシとリンはこの出来事に警戒をし、すぐさま息を殺して岩陰に隠れる。
「やっぱりいた!!オビト先生っ!!」
上から飛び降りて来た人物。それは・・・。
「やばいな、息してない。あ、でもまだ身体がちょっと温かい・・・これなら」
本作、本編の主人公であり、この外伝の遅れてやって来たヒーロー。
羽衣カルタ。その人だった。
その姿を見たカカシ、リンは味方で良かったと胸を撫で下ろし、カルタの前に姿を現わす。
「カカシさん!リンさん!」
「カルタ。お前、どうしてここに・・・」
「お話は心肺蘇生のあとで」
カルタはカカシに対してそう言うと、自分の世界へと入っていく。
「穆王。早速で悪いんだけど、少しだけ力を貸してくれ」
そんなことをひとりで呟きながら。
カカシが必死になって退かそうとした巨大な岩を軽々と持ち上げ、横にあった空間へと移動させる。
その様子にカカシもリンも驚きの表情を浮かべる。
「さんきゅー穆王。もういいよ」
その言葉を境に岩を持ち上げたときに身体から噴出していた蒸気のように見えるものが霧散する。
そうしてオビトの身体を救出したカルタは・・・。
「これでよし、と。あとは・・・」
《逆天送の術》
術が発動され、カルタの手の中に出現したのは液体がすでに入った1本の注射器。
それをおもむろにオビトに射し込み、中に入った液体を体内に注入する。
しかし、なにも起こらない。
だが、そのことに何の反応も示さないカルタはその後、別の印を結ぶ。
雷遁の印だ。
《雷遁・死者蘇生の術》
オビトの右胸と左脇腹に置いたカルタの手から電流が流れ、ビクンッ!と、オビトの身体が大きく跳ね上がった。
「ゲホッゲホッ!・・・ゲホッ!」
息を吹き返したオビトに駆け寄るリンとその場に呆然と立ち尽くしているカカシ。
「うぐっ・・・つぁーッ!!痛ってぇなァ」
「うぅ、オビトォォ!!」
「ッッッ!!!」
オビトに抱きついたリン。
抱きつかれたことにより、全身にさらに強い痛みが走り何も言えなくなってしまっているオビト。
まぁ、マイスウィートプリティエンジェルとまで言っていたリンに抱きつかれて死ねるならオビトも本望なのかもしれないが。
だが、そうは問屋がおろさない。
「あのリンさん。せっかくぼくが生き返らせたのに息の根を止めに行くのはやめてくれませんかね」
カルタのストップにより、リンの殺人的抱擁から解放されるオビトは、またというか、すでにというか気を失っている。
死の間際でもリンに抱きつかれて嬉しかったのだろうか。
ニヤケ顔にも見えるその表情がやけに気持ちが悪い。
「リンさん、早く掌仙術を!」
「は、はい!」
カルタに急かされたリンは大至急オビトの治療にあたる。
リンの治療を見ながらカルタは投与した注射薬の説明をはじめる。
「先ほどぼくがオビト先生に投与した注射は非合法なものです。効果は自然治癒力とチャクラの潜在容量を増やすというものです。これだけを聞いたらとても画期的なものだと思われがちですが、これにはもちろん高いリスクがあります」
その言葉に掌仙術をしているリンも、それを見守るカカシもゴクリと唾を飲んだ。
そしてカルタは続ける。
「オビト先生に注入した液体・・・実はこれはとある細胞なのですが、適合しないとこの細胞に浸食されて死んでしまうというものです」
だが最後にカルタは「でもまぁ、オビト先生なら大丈夫でしょう」と軽い口調で付け足した。
その説明をしている間にもオビトの致命傷はどんどんと治っていく。
治療にあたっているリンもこの驚異的な回復力には目を見開いている。
だって、先ほどまでは息も、心臓も完全に止まっていたのだから無理もない。
「その写輪眼・・・万華鏡写輪眼ですね。違和感とかないですか?」
と、カカシに対し、世間話のように話題を転換するカルタはオビトの状態が山を越えたことを理解しているようだった。
「万華鏡写輪眼?・・・いや、チャクラの減りが異常に早く感じる以外違和感は感じないが」
「あ、そうなんですねー。確かうちは一族でも近親者以外への移植手術の成功例はないはずなんですけどねー」
もしかして、移植された組織に対する拒否反応が少ない体質なのかな?ということは、ひょっとして柱間細胞も・・・。
というカルタの言葉をこの場には理解出来る者はいなかったがその言葉を聞き終える前ににカカシもオビトのように気を失った。
限界を超えたのだ。
己のチャクラの使用量の限界が。
彼の気絶の原因は、チャクラの枯渇という理由だったが、そのことを知らないリンは大いに慌てオビトの治療を途中にもかかわらず投げ出し駆け寄ったということを明記しておく。
こんにちは。遅いゴールデンウィーク中の新名蝦夷守です。
実はストックが切れてしまいました・・・。
次回更新は近々ということで!
楽しみにしてくださっている方々ごめんなさい!!
では、また次回もよろしくお願いします。