NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
木ノ葉隠れの里から見て西方に存在する、とある森の中。
そこにオレはいた。ラクサの監視から逃れるために飛んだ場所がそこだったのだ。
だが先程、ベストコンディションとラクサに言い放ったもののかなり体調は辛い。
天送の術の原理を用いた、オレ単体のみを天送させる時空間忍術。
元の天送の術よりは単純な原理で術を発動できる優れものだ。
原作、時空間忍術のなかでもチートと呼ばれていた飛雷神の術と座標天身の術。どちらにもメリット・デメリットが存在する。
まず飛雷神の術のメリットだが、これは一度マーキングをしている場所や人へは一瞬で移動することができる。
デメリットとしては、マーキングした場所や人のところへしか移動することはできない。
対する座標天身の術はというと、メリットは単純に演算能力が及ぶ範囲であればどこへでも移動することができる。マーキングが必要ないのだ。
これだけ聞くと座標天身の術の方が圧倒的に優れていると思われるが明確なデメリットも存在する。
まず一つ目はチャクラの消費量は半端なく消費する。これは距離によって消費量は増えていく。
そして二つ目が演算ミスによる事故。限りなく移動できるということはひとつの演算ミスで下手をしたら地球の中心部マントルや逆に大気圏外・宇宙空間へ間違って飛んでしまうということもあり得なくはない。
と、いうことはだ。高速戦闘時には使い物にならない可能性が高い。
結論。時間のある、余裕のある場所で使うにはメリットが十二分に発揮される座標天身の術が優れているが、高速戦闘時など余裕がない場合は飛雷神の術の方が優れている。
今回、オレに与えられた任務は、雨隠れの里の内部に秘密裏に基地をつくっていると思われる岩隠れの基地を完膚なきまでに片っ端から潰すことだった。
木ノ葉が感知していない場所。認知していない場所。動きの読めないところから一気に火の国へと攻め入られたら
そんなことは起こさせやしないと、与えられたこの任務。
絶対的に感知タイプ最強の瞳術使いである日向の方が向いていると思う。オレ、多重影分身の数撃ちゃ当たる人海戦術作戦くらいでしか見つけることなどできんぞ。写輪眼だけじゃ遠くまでは見通せない。
何はともあれ、任されてしまった任務。託されてしまった任務だ。やるっきゃない。やり遂げないと木ノ葉に火の粉が飛んでくるからな。それだけは勘弁だ。
『おまえ様よ。具合悪い時にそんなにはしゃぐでないわ!精神世界で繋がっている妾とおまえ様は一心同体。一蓮托生じゃぞ?おまえ様が吐きそうになったら妾も吐きそうになるんじゃ!』
木の枝から枝へと飛びながら移動していると急に又旅が話しかけてきた。
「なんだよ、又旅。一心同体はともかく、一蓮托生とか重いんだってーの。まずオレ死んでもお前らは死なないだろ。封印が解除されて野良尾獣になるだけだろうが・・・」
『アホを申すな、このバカタレが。それぐらい強い絆で結ばれているという比喩みたいなもんじゃよ。それがなぜわからんのじゃ』
「んなことわかるか!っていうか、お前以外の2匹はどうしたんだよ。まだ喧嘩してんのか?」
『あー。あの
又旅がそこまで言うと、ポンと頭の中にオレの精神世界の映像が流れる。
「・・・あぁ」
そこに映っていた2匹はグロッキー状態だった。
もう、ゲロゲロ。
その様子を例え健康な人が見ているだけでも吐き気を催すほどに、げろげろしていた。
『この有様じゃ。おまえ様が、いんふるえんざ?とやらにかかる前までは妾と重明で仲良くあの猿のことを調教していたのじゃがな。おまえ様がぶっ倒れた途端にあやつらが仲良くゲロっておるのじゃ』
嫌じゃ嫌じゃ、と又旅は続ける。
『ほれ。どうにかせんか。この酸っぱい酸味の効いた独特なゲロの臭いを。妾はこの空間にいることが苦痛で苦痛でもう辛抱できんぞ』
「できるわけないだろ。お前の炎で焼き払っちまえよ」
『それができたら苦労しておらんわ。おまえ様に泣き言を言うのも躊躇ったやも知れぬ』
そうだった。オレの精神世界では尾獣たちは術の行使が一切できないんだった。
「でも、オレ自体はそこまで吐き気が酷いとかそういうレベルではないんだけど。なんでお前らがこんな状態にまでなってるんだ?」
『それこそ知らんわ。もしかしたらおまえ様の具合の悪さとかも妾たちが代わりに請け負ってしまっているのかもしれんがな』
そのわりには、又旅は3匹の中では一番ピンピンしている。
でも仮に、本当にそうだとしたら気の毒な気もするし、多少なりとも悪いなとも思うけど。
「どうせなら具合悪いの全部受け持ってくれよ。又旅」
『嫌じゃ』
「そしたらもう酸味の効いた空間が嫌とは言っていられなくなるぞ?」
『もっと嫌に決まっておるじゃろ!!』
又旅とこんな会話をしていられるだけ、オレはまだ平和だった。
雨と暁と木ノ葉の闇と。交錯するまで残っている時間はあと僅かとも知らずに・・・