NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
「明日よね。半蔵との会談は」
「あぁ!これでようやく雨隠れも一つに纏まって、三大国への平和交渉に臨める!」
青紫の髪に紙で作られた花のコサージュをつけている少女とオレンジ色の髪を持つ青年。
「いままでありがとうな!小南!長門!」
そして、少し長めの赤髪で右目を隠しており、三大瞳術の一つである輪廻眼を持つ青年。
「これからが本当の戦いなのよ。そんなに浮かれないの弥彦」
「そうだよ、弥彦。もっと気を引き締めないと・・・」
この者たちが発足させ、組織化した「暁」。
武力に頼らない平和というものを見つけるべくして仲間を集めたこの3人の瞳には今、希望の光がたしかに宿っていた。
降りしきる雨。降り続く雨。
黒く厚い雨雲がほぼ絶え間なく空を覆っている。
それは明るい未来など全否定されているような、そんな場所。
火の国・木ノ葉隠れの里。風の国・砂隠れの里。土の国・岩隠れの里という3つの大きな国に挟まれた場所。大国からは緩衝地帯としての役割があるため、3つの大国の均衡が一気に崩れない限りは国が潰える可能性は限りなく低い。
雨隠れの里。
ただの戦場として。領土は存在できる。
ただの搾取される土地として、里は存在できる。
だが、そこに住む民に
時間は数日遡り。
場所も変わり、ここは木ノ葉隠れの里。
「オレの状態?ああ、確かに通常じゃない」
オレこと羽衣カルタは現在、ベッドの上にいた。布団は被せられているが薄いもの1枚以外は全部蹴り飛ばした。
「・・・・・・頭はぼやーっとしているし。身体は火照るように熱い。服が今にも燃え上がりそうだ」
ベッドといってもラブなホテルにあるベッドじゃねーよ。5歳の身体じゃ性欲が湧き上がってくるようなことは皆無だ。というか、それどころではない。
「あちこちがだるくて一歩踏み出すだけで倒れそうだ」
かと言って、病院のベッドでもない。
「眼球から水分が飛んでいるのか、ラクサちゃんの姿もまともに見えやしない。次に瞬きしたら、もう二度と目を開けないかもしれねーな」
限りなく自分の見知った天井、壁、畳。その他諸々。
そして顔のすぐとなりに見知ったラクサの顔。すごく近い。
「つまり、ベストコンディションだ」
「なにバカなこと言ってるじゃんね。インフルエンザよ。イ・ン・フ・ル・エ・ン・ザ!ちゃんと寝てなさい」
怒られた。ナース服を着て、きちんとマスクまで装着している完全武装のラクサに怒られた。
「熱なんか42.5℃もあるし・・・本当、おばさまに呼んでもらってよかったわ。私がいなかったら勝手に任務行ってたでしょ?そんな状態で戦場に言っても死ぬだけよ」
全く、いつの間にオレの母さんと面識を持っていたのか。
ラクサは今、看護婦として木ノ葉の病院に勤務している中忍だ。医療忍者を目指して絶賛修行中らしい。てか、今の時代看護師っていうのが正式名称か。個人的にはナースさんが一番いいと思う。
「外ではいつも礼儀正しい良い子って感じなのに、家の中じゃわがまま放題のオレ様なのね」
「ひとりっ子だからね。それに爺さんへの反抗期もある」
小さい時に受けた修行と銘打った虐待の数々は許さんぞっ。
それはさておき、そろそろ動き出さないと。
「ちょっと、トイレ行ってくる」
「そう言って逃げ出すつもりじゃんね。トイレの前と窓で監視させてもらうからね。影分身の術!」
十字の印を結んだラクサが2人になった。
あれ?オレ具合悪いからラクサが2人に見えたのか?
「「私だって1人くらいなら影分身できるようになったじゃんねー」」
有無を言わせないという2人ラクサの態度。オレとのにらみ合いが勃発。
「むむむ・・・わかった」
結局、先に目が乾いたオレが折れた。
てくてくとオレはトイレに向かって歩を進める。
その前に縄を持ったラクサとオレの後ろで監視をしているラクサが続く。ちなみにその縄の反対側はオレの手首が縛られている。その見た目は囚人そのものだった。
トイレの前までたどり着く。そしてラクサに絶対に途中で開けたりはしないでね。と、念には念を押してドアを閉めた。
写輪眼を使うまでもなく、ラクサがトイレの窓の方へ移動したのがわかる。縄を握っている本体のほうはトイレの前で待ち構えている。
前門の
よし。じゃあ、逃げるか。
オレはまず、
《影分身の術》
ボフンとオレが現れる。
「お前は囮役だ」
「おーけー」
『ちょっと!今の音はなにー?』
「ごめん!おなら!!」
ラクサが恥ずかしそうな声で「ご、ごめん!」と叫んでいる間に本体のオレはその場から立ち去る。
《座標天身の術》
残された影分身の方のオレが、トイレの水を流し、がちゃっとトイレの扉を開ける。
「お待たせ。ね?逃げなかったでしょ」
未だに照れながらもきちんと逃げ出さずに出てきたことにホッと胸を撫で下ろすラクサ。
そこから出てきたのが影分身という事実にラクサはまだ気づいてはいなかった。