NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

25 / 128
お気に入り登録、評価、感想。ありがとうございます。

お気に入り登録件数が200件を突破しました。皆さま、本当にありがとうございます。




017.東部戦線異状あり 霧忍

 

 雨が上がった。あれほどの暴風と豪雨であったのにもかかわらず。海上全ての戦闘が収まったと同時のことだった。

 

 霧隠れの多くの忍びと多くの物資を犠牲にして、対海神獣(かいじんじゅう)との海戦は終結した。残ったのは20人ほどの忍びと1隻の大型輸送船(オレが乗ってたやつだ)のみ。被害は文字通り甚大で、第2艦隊は壊滅状態だった。

 

 そして現在、唯一残った大型輸送船の甲板に立っていた。

 

「助太刀感謝する。お前さんがいてくれなかったら俺達もどうなっていたかわかんねぇ。だが、どうして木ノ葉の忍びがここにいるんだ?」

 

 終結したが、新たな問題が発生していた。

 そりゃあそうだ。木ノ葉の額当てをしてあれだけ大活躍してたら、気付かれるに決まっている。木ノ葉と霧は現在戦争中。敵国同士だ。

 

「あ、いや。そんなに身構えないでくれ。恩人であるアンタを害するつもりはねェんだ」

「まぁ、俺達があんなに()えぇお前に何かできるとは思わねぇけどなっ!!」

 

 がっはっは!と、豪快に笑う霧の忍びの生き残りたち。なんだ、こいつら。海の漢みたいだな。イメージ的には海賊と言われても頷ける。

 

「オレこんな小さいのに、見縊らないんだな」

「バッーロー。あんなすげぇ戦いを魅せられてオメェをガキ扱いできる猛者(ばか)なんかここにゃいねぇよッ!」

 

 そしてまた、がっはっは!と豪快に笑う。

 気はいい奴らみたいだな。ずっと八門遁甲を開いておくのも体が痛む。とりあえず開門も休門も閉じておく。それと同時に雷遁も弐式は解除する。通常の纏は継続。

 バチバチとスパークが体のまわりに散っていたのが解除されたからか、それとも単にオレが警戒を解いたからか、霧の忍びたちのほうの雰囲気も先ほどよりも丸くなったような気がした。

 

「それで、なんでお前さん木ノ葉の忍びが前線からこんなに離れた海にまで来てるんだ?補給路の襲撃が目的だったのか?でもそれなら俺達を助けてくれるわけねぇよな?」

 

 ん?どうなんだ?と探りを入れてくる霧忍。

 

「・・・道に迷ったんだよ」

「へ?」

「だから!道に迷ったんだって言ってるだろっ!」

 

 前線部隊の奇襲攻撃作戦の陽動役だなんて本当のことは口が裂けても言えない。だから、普通に考えてあり得ないことをマジで言ってるように見せかけるためにあえて逆ギレしてみる。

 

「ぷっ」

 

 そんなあり得ない言い訳に対して誰かが吹いた。それを皮切りに、がっはっは!とまた豪快な笑いの大合唱が始まる。

 

 えぇ、お前らそんなんでいいのかよ。簡単に騙されんなよ。まぁオレとしては楽だからいいけど。

 

「オメェ、ぷーくすくす、、、その年で、滅茶苦茶に()えぇのに方向音痴とか、ぷっ。てか迷子って」

 

 笑いを堪え切れずに声が震えている。

 

「やっぱどれだけ強くても子どもは子どもなんだな!いやいや、悪くとらえないでくれよ?子どもっぽさ、ってぇのがお前さんには無いのかと思ったら、案外かわいいとこもあんじゃねーかよ。ってことでだな」

「つまり、褒めてんだ」

 

 うん。悪い。道に迷ったっていうのは噓なんだ。・・・なんて今更言えるわけもなく。

 そんなことで可愛いと褒められてもちっともうれしくもなんともない。まぁ、かわいいと言われること自体、

元々好きじゃないが。

 なんか、ピュアな人を騙しているようで罪悪感すら覚えそうである。

 いやでも、相手は強面のおっさんたちだからどうでもいいか。

 

「そんなんで褒められたとしても全然嬉しくないからな。ましてや海臭いおっさんたちに」

「そりゃあそうだ!」

 

 そして、がっはっは!といつも通り大合唱。

 

「じゃ、次に会うときは戦場だな」

「まだ戦時中だからな。でも、お前さんとは矛を交えたくねェよ。もちろん恩人だからってぇのもあるが、それ以前に俺達が何人束になっても全く勝てる気がしねぇかんな!」

「ま、そんときゃお手柔らかに頼むわ」

「あぁ、全力で叩き潰してやるよ」

「「「ひっでぇ!!」」」

 

 そしてまた大爆笑。

 なにこいつら、すげぇいい奴らばっかじゃんか。

 

「じゃ、オレそろそろ帰るわ」

「お前さん、名前教えてくれないか。恩人の名前くらい知りてぇんだ。俺は九鬼(くき)一族、現族長の九鬼イカリだ。一応、この艦隊を率いていた」

「俺は村上一族、本家次期族長の村上ゲキドだ」

 

 いままでメインで話していた方が九鬼イカリ。強面で肌黒。筋肉は隆々で背丈も2m近くはある。ということはだいたいオレの倍だ。

 もう1人後半に名乗った方が村上ゲキド。青髪にピアス。ぱっと見は、チャラい兄ちゃん。上半身裸の背中にはでかでかと刺青がある。優し気な笑みを浮かべながら話すが、顔に大きな傷跡はあるし、言葉遣いは悪い。

 先程の戦闘を見る限り、どちらも水遁を軸に戦っていた。

 

「羽衣カルタ。羽衣一族の末裔だ。それじゃあ、次会うときは戦場でないことを祈るよ」

 

 そして別れ際、最後にもう一度、「本当ありがとな」と礼を貰った。片手を挙げて返事をしたあと雷遁瞬身で俺はその場を後にした。

 

 照美メイには、今はもう会わない方がいいか。時間もないし。

 

 

 

 想定外のことに巻き込まれ、前線奇襲の予定時間までは本当にあと少ししかない。全速力で戻っても間に合うかどうかだ。

 

 仕方ない。また身体に鞭打って飛ばすか。

 

 八門遁甲の休門を開き、纏も弐式にし、まさに雷光の如き速さで移動する。

 

 

 




こんにちは。新名蝦夷守です。

今まで1日最低1話更新をモットーに活動してきましたが、今後更新速度が下がってしまう可能性が高くなってまいりました。

しかし、執筆のほうは続けてまいりますので最後までお付き合いいただけると幸いです。

次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。