NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

122 / 128
114.武器屋の看板娘 其の壱

 やぁ。

 巷では最近、鬼の副長と呼ばれ始めている羽衣カルタだ。

 

 今日の任務(火の国大名との会談に出席する火影様(ミナト)の護衛)を終えたオレは火の国の首都から木ノ葉隠れの里へと帰ってきていた。

 

 オレがなまじ天送身の術や飛雷神の術が使えるから移動に時間をかける必要がない分、火影の行動範囲が馬鹿でかくなっている。そのせいで火の国国内で行われる会議や挙句の果てには同盟国との会談などへの出席率が高くなり、既に歴代最高記録を更新している。

 

 まったく・・・火影自ら出しゃばらなくても良いレベル(代理でご意見番や幹部クラスの上忍で事が済む案件)の会議にまで今代の火影は顔を出そうとするから、部下(オレ)は大変なのだ。

 

 たぶん、お出迎えする相手側も会場の準備とか万が一が無いようにと警備だとか大変なんだろうなぁと、他人事で考えてみたりもする。

 

 護衛にオレがついているし、火影(ミナト)も当然忍界最強格のひとりだし、最悪の場合は自力で飛雷神の術を使って逃げることだってできるから万が一なんてことは起こりえないとは思うんだけど。

 

 まぁ、色んなことを考えても火影が会議に出るから今までよりも火の国や同盟国との間に太いパイプが出来ていることは大きなメリットではあるんだろうがな。

 

 

 

 さて。話は変わるが、木ノ葉隠れの里には武器・忍具を取り扱う隠れた名店があるのをご存知だろうか・・・いや、知るわけもないよな。悪い変なことを聞いて。

 

 今、オレはその店に向かっているのだが、オレはその店の存在に気付いたのは数年前。ひょんなことから傀儡好きな少女と出会ったことがきっかけで、そのときからずっと贔屓にさせてもらっている武器屋だ。

 

 その店の外には看板が出ておらず、また店舗が建っている立地も悪いため人通りも少ない。

 日が暮れてきた時間帯ということもあって、この場所を見ると多くの人が治安が悪そうな印象を持ちそうなそんなところ。

 

 クナイや手裏剣といったメジャーな忍具の品質、品揃えの充実さは当然のこととして。

 鎖鎌やヌンチャク、刀。今の時代ほとんどお目にかからない槍や斧、ハンマー、弓などのマイナー武器をも取り揃えており、店頭に並んでいる商品全てが高クオリティ。

 

 そして何よりも、どんな武器であろうが、どんな忍具であろうが、研磨や修理などをきちんとこなしてくれる職人技。

 

 故に、名店。

 

 しかし、知る人ぞ知る隠れた名店。

 

 そんな名も無き武器屋には看板娘がひとりいる。

 

 カランコロンと扉を開けると共になる音。そして続けて聞こえてくる明るく元気で可愛い「いらっしゃいませー!」の声。

 

 それがこの店の看板娘。お団子ヘアーがトレードマークの美少女、テンテン(CV.田村ゆかりさん)である。

 このテンテンが傀儡人形を操る練習を公園でしていたことがきっかけでこの武器屋に出会えたのだ。

 

「やっほーテンちゃん。親父さんは奥にいる?」

 

 オレがそういつものように尋ねるとテンテンは「あ、カルタさんだったんですね!逆光で誰かわからなかったです!いつもありがとうございます~」と礼儀正しくお辞儀をする。その動作に合わせるようにしてテンテンの指から出ているチャクラ糸で操られている人型の傀儡もお辞儀をする。

 

 ・・・うん。前よりも傀儡の動きがスムーズになってきてるな。

 

 テンテンの傀儡捌きにそんな感想を抱いていると、どうぞどうぞ~と商品が並んでいる店内を通り奥の部屋へと案内された。

 

 暖簾で仕切られたその部屋の中へと入っていくと、そこにはいつもと同じく親父さんが座って商品であろう武器を丁寧に磨きあげている最中だった。

 

「・・・らっしゃい」

 

 相変わらず渋い声だこと。

 

「こんにちは親父さん。近くに用事があったからダメ元で寄ってみたんだけど」

 

 流石にこの前、頼んでおいた忍具はまだ揃ってないよね?と、聞くオレに親父さんはポツリ「あるよ」とだけ返事をして部屋の入口近くにあった大きな木箱の山を顎で指した。

 

 あ、それね。

 

 オレは木箱を開けてその中身を確認すると天送の術で木箱を自室へと転移させた。

 

 仕事が早いこともオレがこの店をに贔屓にする理由のひとつだ。

 

「支払いは後日、いつもの部下に持ってこさせますんで」

 

 今回の依頼した品物は暗部が使う消耗品の武器類。

 主にクナイや手裏剣といった品々なのだが、一度に発注する量が多かったためもうしばらく納品には時間がかかるかと思っていたんだけど。流石だ。

 

「あ、あとそれから別件で、この忍刀を見てもらいたいんだけど」

 

 そう言ってオレが口寄せ・雷光剣化の術で取り出したのは、鬼灯満月・新月のペアに渡していた爆刀『飛沫』と鈍刀『兜割』。

 

 奴らはつい先日、派遣した任務先で大暴れしてきた際にボロボロにして帰ってきやがったのだ。・・・大事に使えよとぼやきたくもなる。

 

 それでメンテナンスに出そうと思い訪れたのだが、果たしてこんな世界にも唯一無二のヘンテコ武器でも修理してもらえるのだろうか。

 

 ・・・なんて、考えていた自分がおこがましくて恥ずかしい。

 

 親父さんはチラッと一瞥すると「任せな」と言って、また忍具を磨く作業へと戻った。

 

 か、カッケェ・・・。

 

 

 

 そのまま『飛沫』と『兜割』を親父さんに預けて部屋を出ると、テンテンが部屋の外でじっとこちらを見て立っていた。

 

 どうやらオレの用事が終わるのをずっと待っていたようだ。

 

「どうした?テンちゃん。なんか用でもあった?」

「カルタさん。いまお時間大丈夫ですか?傀儡のこの動きなんですけど」

「んーどれどれ・・・あ、それはちょっと貸してみ?ここをこうして、こうやって・・・」

 

 そう言って、テンテンから傀儡人形を借り受けたオレはチャクラ糸を出して操り始める。

 

 その様子を一瞬たりとも見逃さないようにテンテンはオレの動かす指先とそれに連動する傀儡人形の動きに釘付けになる。

 そして、少しの間オレが傀儡人形を動かし続けると次第になるほどなるほどと言わんばかりに頷いて「そうやったらよかったのねぇ」などと呟く。

 

 オレはこの光景に懐かしさを覚えて、テンテンと初めて会ったときのことを思い出していた・・・。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。