NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
「カルタァ!!」
バゴンッ!と、ドアが壊れるんじゃないかと思うほど強く開いて『宵』のアジトへと入って来るサソリ。
その顔は今まで見た中でも最上級にキラキラとした笑顔だった。
だがオレはそれに対して。
「ドアが壊れるだろ!バカ野郎ッ」
と、反射的に手に持っていた筆を雷遁を身体に纏ってその強化された手首からスナップを効かせて投げつける。
音速に近いであろうそれに即座に反応し、自分自身をカラクリ仕掛けにしているサソリは腕のシールドを展開して、ドヤ顔で飛んできた筆から身を守る。
「ソォラァ!!」
ドヤ顔のままその腕を今度は分離させて、まるでロケットのようにして飛ばしてくるサソリ。
オレはそれを写輪眼で見切って回避するまでもなく、サソリ本体の背後に飛んで後頭部に。
「
と、心の中でつぶやきながら。
全体重を込めたダブルスレッジハンマー決める。
・・・ってあれ?激しくデジャヴュ。
そのまま顔面から崩れ落ちるサソリを眺めながらオレはそんな感想を抱いたのだった・・・。
そういえば、前回の話の導入もこんな感じだったなと思い出したのもつかの間。
前回よりも早く気絶から目を覚ましたサソリは開口一番に、高笑いをしながら。
「刮目せよッ!」
と言って。巻物から口寄せしたものが。
『~闇の世界を駆け回る真の支配者~ドラゴニック・X・ナイトウォーカー(闇の衣/MarkⅡ)』
大層達筆な文字で書かれている木箱だった。ご丁寧にも赤砂のサソリが製作者だという印のマークまで付いている。
思わずサソリを殴ったね。
あれだけ言ったのに名前変えてないじゃん!と。それ以前に名前は買ってくれた子どもたちが付けることになったよね?と。
そう言うオレの様子に命の危険を感じたのか。
慌てて否定するサソリ。
「い、いや。そうではなくてだな!商品名としてのタイトルを付けるとするならばっていうことで」
吾輩は『~闇の世界を駆け回る真の支配者~ドラゴニック・X・ナイトウォーカー(闇の衣/MarkⅡ)』である。名前はまだない。
「・・・という訳なんだ」
「いやいやいや!お前、夏目漱石じゃないんだからさ」
「なつめそうせき?・・・って誰だよ」
オレのツッコミは虚しくもこの世界では通用しなかった。
そりゃそうだ。だってこの世界に夏目漱石どころかシェイクスピアやその他の作家はいないもんな。
ただ。そのおかげでいい案を思い浮かぶことができたのだが。
「夏目漱石のことはもう忘れていい。そんなことより考えておくって言った販促に関わる案なんだけどな・・・」
そういってオレは考えた半分悪巧みにも近い提案をサソリに言って聞かせる。
内容を聞いて受け入れたサソリとオレは、丸1日をかけてその案を実行するための準備やら練習やらに取り掛かるのであった・・・。
そして翌日。サソリの造った人形完売大作戦(命名オレ)の実行の時。
天気は雲一つない青空が広がるまさに秋晴れといった様相。
決戦場所は子どもたちがよく集まる広場。
そこに小さめの舞台が出来上がっていた。
一夜城ならぬ。一夜舞台を作り上げたのだ。主に土遁の術で。
舞台演出や脚本、その他諸々の雑用はオレ。
そして人形に命を吹き込むのはサソリだ。
しばらくして子どもたちは朝ごはんを終えるとぱらぱらと広場に集まり出してくる。
普段ならすぐにボール遊びやら忍者ごっこやらをして遊び始めるだろうが、今日に限ってはいつもと見慣れない
ファーストインパクトはまずまずのようだな。子どもたちの視線はこの舞台に釘付けだ。
It's show time!
カルタ童話『眠れる森の白雪姫と木ノ葉の碧い野獣ピーター』。
はじまりはじまり~。
・・・え?なんだかどこかで聞いたことあるようなタイトルがごちゃ混ぜだって?
仕方ないだろ。一から物語を作るなんて無理だったんだ。それにグリム童話もディ〇ニー作品も内容は全てうろ覚えなんだよ。オレは。
でも何とか試行錯誤の結果、ところどころ継ぎ接ぎして話の筋は通るようにしたわけよ。
文句を言う前に褒めて欲しいくらいだぜ。まったく。
ほら。それに申し訳程度に木ノ葉隠れ要素入ってるだろ?
人形劇の上演時間は1時間にも満たない尺だった。
物語の内容としては、白雪姫がお妃様から逃げて迷い込んだのは眠れる森。
そこには木ノ葉隠れの里で碧い野獣と呼ばれているピーターという一人の忍びが空を飛ぶための修行をしていた。
眠れる森とは生きて帰れない森という意味だったのだ。
そこで白雪姫はピーターに助けられながら生き延びて森を出たところ、お妃様に見つかり毒で半永久的な眠りにつかされてしまう。
ピーターは白雪姫を助けるために本性は魔女だったお妃様とのバトルに発展する。
最後はお約束のキスで白雪姫はお目覚め。めでたしめでたしである。
裏方のオレはというと、物語の要所要所で忍術を使って、場を盛り上げたり。
例えば、クライマックスの魔女と化して最終的に竜にまで変身してしまったお妃様とピーターとの白熱した一騎打ちでは竜の口から火を噴かせ、ピーターの剣からは稲妻を走らせるなどしてな。
操り人形たちの声はオレが担当したり。
その方法は人数分の影分身を用意して、全部声色を変えて頑張った。
他にも場面転換の背景を一瞬で変えたりなどもした。
そして何とか無事に終わったときには観客は子どもたちのみならず、近所の大人や非番の忍びの姿も多くあった。
スタンディングオベーションで拍手喝采だ。
でも、喜劇終了後に行ったグッズ販売は思ったほどは伸びなかったんだ。売り上げ自体は。
だから、このあと口コミで木ノ葉や火の国を席巻するカラクリブームが起こることなんてこの時はまだ予想すらしなかった。
まさか、この赤砂人形新喜劇が赤砂傀儡新喜劇にスケールを大きくして国内行脚することになろうとは。
そしてそれがきっかけで操り人形で遊び始めた子どもたちが忍びとなり数年後には木ノ葉で傀儡部隊が結成されることになろうとは。
まだ誰も知る由もなかった・・・。