NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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097.赤砂人形新喜劇 中編

 前回の話から1週間。

 オレはまだ木ノ葉隠れの里に残っていた。

 

 今まで9ヶ月も木ノ葉隠れの里に本体不在の状況にしていたため、書類整理は溜まっているし、木ノ葉にある多くの名家との会合や懇親会などの行事にも参加しなければならなかったのだ。

 それに今年は原作主人公のナルトが生まれたことからも分かるように名家のベビーブームの年でもある。もうすでに生まれている名家のご家庭にはお祝いの品を持って挨拶をしにいくなどして、なかなかに忙しかったのである。それにしても赤ちゃん可愛い。

 

 そういう様々な事情が重なり、今日は書類整理の日と決めて集中力を高めてデスクワークに励んでいる最中だった。

 

 だったのだ・・・今の今までは。

 

 オレの仕事を邪魔してくる奴が来てしまったのだ。本当にお呼びでない。

 

「カルタァ!!」

 

 バゴンッ!と、ドアが壊れるんじゃないかと思うほど強く開いて『宵』のアジトへと入って来るサソリ。

 

 それに対して。

 

「ドアが壊れるだろ!バカ者めっ」

 

 と、反射的に手に持っていた筆を風遁で強化して投げつける。

 

 それに即座に反応し、自分自身をカラクリ仕掛けにしているサソリは腕のバリアを展開して、ドヤ顔で筆から身を守る。

 

「ソォラァ!!」

 

 ドヤ顔のままその腕を分離させて、まるでロケットのようにして飛ばしてくるサソリ。

 

 オレはそれを写輪眼で見切るまでもなく、サソリ本体の背後に飛んで後頭部に。

 

このバカ(サソリ)の背中に術式付けておいてよかった」

 

 と、心の中でつぶやきながら。

 全体重を込めたダブルスレッジハンマー決める。

 

 そのまま顔面から崩れ落ちるサソリを放置したままオレはデスクワークに戻るのであった・・・。

 

 完。

 

 

 

 ・・・と。これで終わればどんなに楽だったか。

 

「んで?今度はなんだ」

「あのな。カルタ・・・」

 

 気絶から復活したサソリは悲壮感溢れる姿でオレの前に正座している。ちなみにこの正座はオレが強要させているわけではない。

 

「この俺様が造った芸術品がひとつも売れないんだよォォォ!!」

 

 その原因はお前の上から目線の態度が理由なんじゃないか?と、思ったりもしたわけだが、話を聞いていくうちにどうやら他にも問題点はあるらしかった。

 

 まず第一の問題点。子どもが多くいる公園や広場。人通りが多い屋台などが立ち並ぶスペースで売っても、見向きもされない。

 第二の問題点。サソリはチャクラ糸で操ることを想定して作っていたため、一般人はおろか普通の忍びでも操作ができない。

 第三の問題点。こいつ、技術料・芸術料と称して絡繰人形1つに対しての単価をアホみたいに上げている。

 第四の問題点。やたらと人形の名前にこだわる。例えば、普通に「タロウくん」とネーミングすればいいものを「~闇の世界を駆け回る真の支配者~ドラゴニック・X・ナイトウォーカー(闇の衣/MarkⅡ)」だとか、一般人が覚えきることができないし、ウケない名前しか付けていないことだ。

 

 それらの問題点がわかったオレの反応は言わなくてもわかるだろうが、言わせてくれ。

 

「サソリ・・・お前、バカだろ」

「っく。貴様もこの俺の芸術を理解できない愚者のひとりだったか・・・」

 

 などと、戯言を抜かしながら右目を抑えている。

 

 最近は厨二病も昔よりは落ち着いてきたと思って見ていたが、完治するどころか逆に邪気眼の設定も追加したのだろうか。

 

「とりあえず。人形は普通の糸でも操れるように改良しろ。それと操り人形型の他に変形合体型人形も作成するんだな」

「・・・まぁ、それは仕方ねぇ。けど、変形合体型って一体なんだ?」

「同じモデルの人形でも、腕や脚の装備を変えられるようにしたり、手に持たせる武器を剣や弓に変えられるような人形のことだよ。これなら1つの人形で色んなパターンを楽しめるだろ?」

 

 なるほどな。と、納得した顔で頻りに頷いているサソリを見てオレは話を続ける。

 

「あとターゲットはまず子どもたちだ。子どもの誕生日やらに親が買ってあげられるくらいの値段設定にしろ」

 

 原価なんて元々大した額じゃないだろ。と、言外にぼったくり過ぎなんだよ。と指摘するオレに対してぶーたれるサソリだが、良いから言う通りにしろ!そうすればお前の芸術に理解を示してくれる人も増えるさと諭して次の問題点の改善策へと話を移す。

 

「それにな。人形の名前なんて子どもたちが勝手につけるんだよ。その方が子供たちも人形に対して愛着が湧くだろ。お前の趣味嗜好を子どもたちに押し付けんな」

「っく・・・俺は自分が造った人形に真名を授けるまでが造形師としての責務だと考えている。俺は一造形師としてその責務を投げだすというのは矜持(プライド)が許さない」

「はぁ?家族の金を使い込む奴に矜持とか言う資格はない。いいからまずは金を稼げ。一家長としての責務を果たせ」

 

 オレに正論で返され。

 

 ぐうの音も出ないサソリはただ項垂れるだけだった。

 

 よし。大人しくなったから最後の問題点だ。これが一番難問だろう。

 

「問題点の中で唯一サソリの力だけじゃどうしようもないのが、どんな場所に店を構えても見向きもされないというところだが・・・」

 

「お前が造る作品は世界一だ。それは保証する」

 

「だからなんとか皆が注目するような良い案を考えといてやるから。オレはもうしばらくはこっちにいるつもりだから、まずサソリは今言った改善点を全て直して来ること。それが終わったら皆をあっと驚かせるようなすげーこと一緒にやろうぜ」

 

 そう言ってサソリの肩を叩くと、今までの態度とは打って変わって縋るような視線で目を潤ませている。

 

 自分の作品を否定されなくなった途端の変わり身の早さ。もしかして芸術の境地なんじゃないか?

 

 そんなことを思いながら、とりあえずサソリを家に帰して。

 

 オレは中断させられた書類整理に再び取り掛かる。

 

「それにしても・・・」

 

 書類整理の合間に掛け軸を眺めながら。指で筆回しをしながら。

 

「なんか良い案って言ったけど・・・そんなに簡単に思いつくもんかなぁ」

 

 サソリの人形の販促に役立ちそうなこと考えながら。

 

 結局この日に終わらせるはずだった仕事は日付を跨いでようやく終わったのだった。

 

 


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