IS-Reborn Zombie-   作:茶碗

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心に潜む闇-Dark Side-

今日も1組は朝から賑やかだ。話題は主に2つ。

 

「新入生が来るらしいね!」

「この時期に?」

「不思議だよね。中国かららしいんだけど」

 

今日から2組に転入するという新入生の話だ。この時期に新入生と言うのもおかしい話だが、1組ではないためそこまで話題にはなっていない。……もう1つが、前日のクラス代表決定戦、そしてこれから行われるクラス対抗戦の話題だった。

 

「昨日の試合、凄かったよねー!」

「あれなら、次のクラス対抗戦も余裕だね!」

 

そんな雰囲気の中、黎斗は1人考え込んでいた。

 

「(生徒会長……更識楯無。彼女は僕が家族を失ったことを知っていた。ISのデータを回収していることにも気付いている可能性がある。僕はーー)」

 

「くろちー?」

 

「っ、ああ。次の試合も頑張るよ。」

不意に声をかけられ、反応が遅れてしまう。

 

「専用機持ちは1組と4組だけだから、大丈夫だよ〜!」

 

「ーその情報、古いよ!」

 

勢い良くドアが開き、クラス中が目線を向ける。

「2組も専用機持ちが代表になったの。」

 

そこにはツインテールを揺らし、不敵な笑みを浮かべる少女が居た。

「私は…」

 

「鈴?お前、鈴か?」

 

立っている人物に気付いたらしい一夏が驚いたように席を立った。

 

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音(ファンリンイン)。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

「何格好付けてるんだ?すげえ似合わないぞ」

「んなっ!? 何てこと言うのよ、アンタは!」

 

思わず一夏の言葉に言い返す。どうやら2人は知り合いのようだ。

 

「一夏!そいつは誰なんだ!」

 

「そうですわ!どういう関係なんです?」

 

箒とセシリアが席を立ち、一夏に質問を浴びせる。鈴は全く気にしていなかったが、その背後には……

 

「おい」

「なによっ……痛ぁぁぁっっ!!」

 

頭上に主席簿が振り下ろされた。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん...」

 

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

「す、すみません....」

 

強気な彼女も千冬には逆らえないようだ。

 

「一夏!また後で来るからね、逃げないでよ!…それと、あんたがクラス代表ね。絶対負けないんだから!」

 

大声でそう言い残し、廊下を走り隣の教室へ向かって行った。

 

「おい、廊下を走るな……はぁ」

千冬は頭に手を当て溜息をついた。

 

「(……中国の代表候補生か。確か彼女の使用ISは『甲龍』。主要武器は…)痛っ」

「もうSHRは始まっているぞ。前を向け。」

 

「す、すみません。」

 

考え事はあとにしよう。黎斗はそう思い前に向き直った。

 

 

 

「ようし。じゃあくろちー、行こー!」

 

「え?僕は用事が--」

 

放課後。黎斗は本音に手を引かれていた。生徒会室へ行かなければいけない、そう言おうとするが……

 

「着いたね〜」

 

「ここは…生徒会室?……まさか、君が使い?」

 

「さ、入ろう!」

 

質問に答えず、本音はすぐに部屋に入っていく。黎斗も仕方なくそれに続いた。

 

 

 

「……来たわね、黎斗君。」

 

「はい。」

 

生徒会室。黎斗は応接用の椅子に座らされていた。目の前には楯無、横には本音が座っていた。

 

「お茶です、どうぞ」

 

「…ありがとうございます。」

 

「私は布仏虚。いつも妹の面倒を見て頂いて、ありがとうございます。」

 

紅茶を渡し、丁寧にお辞儀をする。名字から、どうやら本音の姉のようだ。黎斗は軽く会釈し、楯無の方へ向き直った。

 

「勿体ぶる必要も無いわね、簡潔に聞くわ。ISのデータ回収、それ自体は問題行為では無いわ。他の国も必ず行うものだしね。でも、あなたの目的は何?ISのデータを集めて何をしようとしているの?」

 

核心を付く言葉。その表情には普段の軽快さは無く、真剣そのものだった。

 

「……ゲームですよ。」

 

「ゲーム?」

 

黎斗はバグヴァイザーを取り出す。上に掲げるとそこにビジョンが写しだされた。

 

「『仮面ライダークロニクル』。僕が目指すゲームです。誰もがヒーローに変身し、VR空間で敵と戦う。そして……」

 

まるで隠す気が無いように、黎斗は次々と話す。その表情は玩具で遊ぶ子どものように無邪気な笑顔だった。

 

「それに必要なのが、ISのデータだと言うの?」

 

「……『ライダーシステム』。このシステムを僕はどうしても起動させる事が出来なかった。人間の体に直接纏わせるのは危険度が高過ぎた。その時来たんですよ。『全国男性IS起動検査』がね。」

 

「ISを使用することで起動出来るシステム……ね。」

 

「起動データを集めれば、確実にIS無しで起動させることが出来る、そう僕は確信しています。」

 

黎斗写していたビジョンを消し、再び向き直る。

「それで?僕をどうするつもりなんですか?」

 

「ふふっ。その話を聞いて、確信したわ。あなたは『IS学園の敵』じゃないってことをね。」

 

「…?」

 

『解説』の扇を広げ、にこやかに笑う。

 

「ゼロデイ。ISが関わった事件としては、『白騎士事件』のに次ぐ規模とも言われていた事件。」

 

「……IS5機が女尊男卑に反対している有力者を次々と狙った事件。」

 

この事件により狙われた有力者の約半数は死亡、そしてテロリスト5人はISによって捕獲された。この事件が残したものは『ISを止められるのはISしかない』という現実だった。

 

「そこであなたの母、檀明日那が死亡している。……IS委員会は、あなたがISへの直接的な復讐を狙っていると疑っていたみたいね。」

 

「それで、のほ…本音さんを監視にしたということですか。」

 

「ええ。最も、この事実は伝えていなかったけれど。」

 

黎斗は隣をちらりと見た。本音は申し訳なさそうにする。

 

「くろちー、ごめんね、騙すような真似して……」

 

「……。僕がここを潰す、という可能性を捨ててもいいんですか?信用出来る証拠なんて、どこにも……」

 

「問題無いわ。この学園において、生徒会長の名が意味するのは…『学園最強』よ。その名にかけて、私がそんなことはさせないわ。……それに」

 

「…?」

 

「簪ちゃんの友達ですもの。私は信じたい。ね?ゲームマスターさん」

 

黎斗は少し呆気に取られたが、すぐに溜息をついた。

 

「……やっぱり姉妹ですね。」

 

「何か言ったかしら?」

「いえ。…僕に選択肢なんて最初から無かったんですね。僕を生徒会に入れる気ですか?」

「察しが良くて助かるわ。今ここで、あなたを書記に任命するわ。…これからよろしくね!」

「よろしくね〜!」

「よろしくお願いします」

 

「(……彼女らと居ると、なんだか調子が狂うな)」

 

「早速だけど、アリーナに行くわよ、黎斗君。」

 

「アリーナに?」

 

「おねーさんが直々に鍛えてア、ゲ、ル♪」

 

 

アリーナの準備室。僕はISスーツに着替えていた。

 

「(友達……か。)」

 

自分は騙していたんだ。一夏、セシリア、…友達を。ゲームを作るため、皆が自由になる世界を作るため。そんなことを言って、人を騙し続ける。それが僕、檀黎斗という人間だ。

 

「(それでも、僕を信じるって言うのか)」

 

着替え終えた僕はISを起動し、ゲーマドライバーを腰に装着する。

 

『自分の才能を見せたいと思わないのか?』

 

違う。僕はただ、自由な世界を……女尊男卑のせいで犠牲が生まれない世界が欲しいだけだ。

 

『そうだ。目的の為に、手段を選ぶな。ゲームの駒は……』

 

「…黙れ!これ以上出てくるな…『ゲンム』っ…!」

 

頭を激しく振り、僕はアリーナへ飛び立った。

 

 

「いよいよ始まるね!」

 

「ああ。」

 

「頑張ってね!」

「優勝商品は私達のものだ!」

あれから一週間。今日はクラス対抗戦当日だ。

 

「ふふっ、自信はどうかしら?」

 

「…会長。」

 

振り返ると、『期待』の扇子を広げた会長が居た。

 

「…会長の特訓を受けましたからね。頑張りますよ。」

 

一週間の間、僕は会長とクラス対抗戦に向けてISの訓練を進めた。模擬戦も何回か行ったが、結局1度も勝利することは出来なかった。

 

「頼もしいわね。…今回、アレは使うの?」

 

「…まだ調整は出来ていません。負担がかかり過ぎる。今回は使用を見送ろうと考えています。」

 

『幻夢』にはISの一次、二次移行とは別に『レベルアップ』機能がある。その為に改良していたガシャットがあったが、未だに安定起動には至っていない。

 

「……そう。無理は禁物よ。」

 

「はい。」

 

言葉を返し、対戦表の発表を待つ。

 

「この試合で私が1組に勝ったら、私と模擬戦よ!一夏が負けたら謝ってもらうんだからね!」

「いいぜ。俺が勝ったら、理由を説明してもらうからな!」

 

何やら鈴と一夏は言い合っているようだ。……なんだか、巻き込まれているような気がする。

 

「あっ、対戦表が出たみたいだよ!」

 

「1回戦は……僕と鈴さんか。」

 

「手間が省けたわね!あんたとも戦いたいって思ってたわ。絶対負けないからね!」

 

「ああ。正々堂々やろう。」

 

表を見て話しかけてきた鈴と軽く言葉を交わし、僕はピットへ向かっていった。

 

『第一試合。出場する生徒は、直ちに準備をーーー』

 

 

 

 

どこかの研究所。周りは機械だらけで生活感は一切ない。

 

「……」

 

1人座る女性は無言でキーボードを打ち続けているが、とても常人のスピードではない。

 

「いけ、『ゴーレム』」

 

キーボードを打つのをやめ、『ゴーレム』は目標に向けて行動を開始した。標的の場所は……IS学園。




この小説における「レベル3」について、登場させる予定はないです。対応するガシャットは登場させる予定ですが、今の所レベル1と3は無しの方向で考えています。
そうすると、ラストのレベルアップガシャットとは…?

そういえば、スーパーヒーロー大戦を見ました。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、北岡さん良かったですね〜

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