IS-Reborn Zombie- 作:茶碗
『第3試合、織斑一夏vs檀黎斗。両者準備して下さい。』
セシリアとの試合を終え、黎斗はISの整備を行っていた。
アナウンスを聞き、
「凄いねくろち〜。それ、この1週間で作り上げたの?」
どこからともなく現れた本音が質問を投げかけた。
「元々設計は練っていたんだ。『打鉄』のコアがあって初めて、今の形に出来たんだ。」
再びゲーマドライバーを装着し、黎斗は苦笑しながら答える。
「そういえばくろちー、さっきISに乗った時、『私』って言ってたよね?」
「……ああ、そのことか。」
黎斗ガシャットに息を吹きかけ、それを少し振って見せる。
「昔からゲームをすると
「そうなんだ〜あっ、そろそろみたいだよ?」
「ああ。行くぞ、幻夢!」
『マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーンX!』
ISを起動し、黎斗は再びフィールドへ飛んで行った。
『ゲームの時は別人みたいだ』
「(別人……か。……いや、僕は檀黎斗だ。)」
『試合開始!』
「来たな!黎斗。さっきの試合は凄かったけど、俺も負けるつもりは無いぜ!うおおおっ!!!」
「面白い。私にその力、見せてみろ!」
先手。一夏が急接近しながら刀『雪片弐型』を振るった。黎斗は瞬時にバグヴァイザーをチェーンソーモードに変更し、迎え撃つ。
「……くっ」
競り負けたのは黎斗だった。衝撃で後ろへ飛ばされ、さらに回り込まれもう一太刀を食らわされる。
「どうだ!このまま行くぜ!」
刀を構え直し、一夏は再び攻撃にかかる。
「流石の威力だな。ならば私も剣で語るとしよう」
腰からひとつの青いガシャットを取り出し、それを起動させる
『タドルクエスト!』『ガシャコンソード!』
音声と共に幻夢の手元に剣が召喚され、再び攻撃を迎え撃った。雪片弐型をバグヴァイザーで受け止め、ガシャコンソードで相手の懐を切りつける。
「っ!ぐわぁっ!!」
防御無しでまともに攻撃を食らい、白式のSEが初めて削れた。
「すげえな、黎斗は……でも、俺は力を手に入れたんだ!俺は皆を守ってみせる!」
一夏は目を閉じた。すると、白式が光輝き始めた。
「この千冬姉の力で!」
単一仕様能力『零落白夜』が発動したーー
「『力』を手に入れて、ヒーロー気取りか?」
一夏の攻撃を躱し、黎斗は静かに口を開いた。
「…?」
「力だけでは、誰も守れない。『守る』という言葉を、簡単に口にするな!」
「何を言って…ぐわっ!」
バグヴァイザーをビームガンモードにした黎斗は一夏の懐を連射しーーーー
「うわあああ!!」
一夏は後方へ飛ばされた。瞬時に黎斗は追撃し、バグヴァイザーで殴りつけた。
『Loading Now...complete』
「どうした?そんなものか?」
バグヴァイザーを離し、再び距離を置く。
「確かに……俺はまだ弱いかもしれない!でも、強くなって、千冬姉を…皆を守る!!」
満身創痍ながら全てのエネルギーを刀に篭め、一夏は決死の攻撃を繰り出す。
「…私のプレイスタイルを教えてあげよう。それはーー」
『タドルクリティカルフィニッシュ!』
タドルクエストガシャットがガシャコンソードに挿入されると、剣に炎が纏われ、全てを切り裂かんと一夏へ襲いかかる。
「『絶対勝利』だ!」
『GAME CLEAR!!』
爆発の煙が晴れ、立っていた人物、そしてクリアを告げる音楽。誰が勝者かは明白だった。一瞬静まった会場は、すぐに歓声に包まれた……
「さっきは本当にすまなかった!」
「えっ?」
試合が終了しピットへ戻ってきた黎斗と一夏だが、突然黎斗が頭を下げ、一夏は驚いた表情を浮かべる。
「ゲーム…いや、ISに乗る時、どうもテンションがおかしくなるみたいで……侮辱するつもりは無いんだ」
「いや、気にしてないぜ。俺が弱いのは事実だしな、……まぁ、ちょっと『別人』と戦ってるみたいな気分ではあったけどな」
「……ありがとう。気を付けるよ。僕も、人を守りたい。そう思うよ。」
「ああ!」
握手を交わし、お互いにピットから離れようとするとーー
「お待ち下さい!」
2人が振り返った先には急いで走ってきたのか、息を切らしたセシリアがいる。
「私も、お2人へのご無礼をお許し下さい!」
姿勢を正し頭を深く下げるセシリア。2人は先程と同じように最初は驚いていたが、顔を見合わせると、優しく笑い合った。
「(……やはり、ライダーシステムは未完成、か…)」
廊下の壁に寄りかかりながら、僕は息を切らしていた。
ISの制御は自らの脳波によって行われている。なので、IS操縦者達は専用のスーツ『ISスーツ』を着用することで情報伝達の補助を図っている。ライダーシステムは、システムを介することで飛躍的にその反応を素早く、また正確に出来る。
「(……後遺症が残る程では無いが、脳への負担がかかり過ぎる……そう長く使用することはまだ不可能か)」
改良のためには更なるISのデータが必要となる。ーふと対戦した2人を思い出す。
「何が、本当にすまなかった、だ……」
懐からバグヴァイザーを取り出す。
『Byakushiki』『Blue Tears』
映し出されたのは先程対戦したISのデータだ。
「(ヒーロー気取り、か……人のデータを奪っておいて、人を守る、だと?僕の方が余程ヒーロー気取りじゃないか)」
僕は、バグヴァイザーに刺さったままの何も描かれていない白いガシャットを取り外し、強く握り締めた。
「僕は…誰も不幸にさせない。傷付くのは僕1人で良いんだ……」
僕は足を速めた。まだやることは山積みだ。ガシャットの出力の調整、そして『ゲンム』の制御。全ては、皆が笑顔になり、皆が救われるゲームーーーー
『究極のゲーム』完成のために。
『それじゃ、檀君のクラス代表決定を祝って、かんぱーい!!』
翌日。クラス代表決定戦の祝賀会が行われていた。1組はほぼ全員参加し、皆で楽しんでいる。黎斗は置かれたジュースを飲み干した。その時、後ろから声をかけられる。
「はいはーい!新聞部でーす!君が檀黎斗君ね?私は二年の黛薫子って言うの、よろしくね!」
「よろしくお願いします。」
先輩と言い丁寧に名刺を渡した薫子に黎斗はにこやかに受け答えをした。
「おおっ、2人の男性操縦者はどっちもレベル高いね〜っと、本題だね。クラス代表決定戦を終えて、一言どうぞ!全勝の檀君!」
「そうですね、まだまだISに乗った時間は少ないので、これからも先生や先輩、同級生からもっと技術を学んでいきたいと思っています。」
「いいね、真面目!……これは捏造いらないかな?最後にもう1つ!今回使用したIS。1人で作り上げたって話だけど、真偽の程は?」
黎斗はその質問に一瞬表情を強ばらせたが、すぐに気を取り直して答える。
「いえ、IS自体は学園に来てから、その設備と支給品を利用して組み立てたものです。でも、入学前に設計したのは僕1人の力じゃありません。」
「なるほど、でも1年でその技術力、学園でも注目が集まってるよ!インタビューありがとう!これは良い記事になりそう!じゃあ次は一夏くんにーー」
薫子の質問が終わり、黎斗は一息をついた。
「ー少し風に当たるか」
黎斗はパーティを離れ、ひっそりと外へ出ていった。
「…くろちー?」
本音はその様子にすぐ気付いていた。
「屋上に1人佇むクラス代表……絵になるわね」
「……誰ですか?」
僕に話しかけた人物は水色の髪を靡かせ、手元の扇子を素早く広げる。そこには『生徒会長』の文字が。
「私は学園
「…更識」
「あなたの思う通り、私は簪ちゃんの姉ってことになるわね」
水色の髪、そして更識の名字。推測するのは容易かった。
「僕に何の用ですか?」
「突然だけど、あなたには生徒会に入ってもらうわ。」
「…急な話ですね」
僕への唐突な生徒会への勧誘。その意味を考えていると、
「……ゼロデイ」
「…っ!?」
「あなたはそこで家族を失った、そうね?」
教師でもなく、1生徒であるはずの彼女が、何故そこまで知っているのか。全く予想が付かない。
「随分驚いているみたいだけど、私を、暗部を舐めないで貰いたいわね。」
「暗部ですって?」
「そう、暗部よ。IS学園の『裏』と言えば良いのかな?」
「…僕に、そんなことをペラペラ喋ってもいいんですか?」
「問題無いわ。明日の放課後、生徒会室に来てね、使いを寄越すから。」
「ちょっと、待ってーー」
「あっ、言い忘れてたけどこれ、決定事項だから。生徒会長権限☆おねーさん楽しみに待ってるぞ!」
そう言うとすぐに出ていってしまった。『暗部』か。思えばISという兵器を扱っている以上そうした機関の存在は仕方ないものなのかもしれない……
「学園最強……」
1人残された僕は表情を強ばらせた。
「ーーやっと着いたわね。待ってなさい一夏!!」
1つの戦いの決着。新たな出会い。プレイヤーは揃いつつあったーー
To be continued...
バグヴァイザーの『Loading』の音声はISのデータを回収する音声でした。ゲンムがバグスターのデータを回収した時みたいな感じですね。今回登場したタドルクエストについて。エグゼイド劇中の爆走バイクのように、武器だけを出現させたことにしています。
エグゼイド本編の話ですが仮面ライダークロニクル、始まってしまいましたね。……浅倉さんとかいたら買うっていうか盗むんだろうなぁ。
(追記・修正)ガシャットをキメワザスロットに~
→ガシャットを起動〜ガシャコンソードに挿入
に変更を行いました。