IS-Reborn Zombie-   作:茶碗

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幻夢ーPhantasmsー

「それにしても大変な事になったなぁ……早くISの事についてもっと覚えないと」

 

「元々君が招いた事だとは思うけどね。」

 

「うっ、黎斗にそれを付かれると痛いな」

 

ISの専用機を譲渡されるという話を聞いた後でも、織斑一夏の表情は晴れない。彼は初日の授業において分からない所はあるか?と聞かれれば

 

『殆ど全部分かりません』

 

参考書は?と言えば

 

『古い電話帳と間違えて捨てました』

 

となる始末だ。IS学園に正規の入試で入ってきた他の女子や、元々IS整備関連の勉強をしていた黎斗と比べ、明らかに知識が不足している。

 

「(そんな状況で代表候補生に喧嘩を売るとはね)」

 

内心溜息をつく。

 

「そうだ!箒、俺にISの事を教えてくれよ!」

 

「む?…ま、まあ良いだろう」

 

「そうか、ありがとう!黎斗も一緒にどうだ?」

 

篠ノ之箒(しのののほうき)。一夏の幼馴染みらしく、ISの開発者、篠ノ之束(しのののたばね)の妹らしい。

 

「(篠ノ之……束。)」

 

「?どうした黎斗?」

 

「……いや、なんでもない。僕は少し学園内を見てみようと思ってるから、パスしておくよ。」

 

「そっか。お互い頑張ろうぜ!」

 

「ああ」

 

拳が突き出されたので、それに笑顔で返す。

 

「よし、そうとなればまずは剣道場へ行くぞ一夏!」

 

「えっ?ちょっ、ISは、」

 

「子どもの頃からどれだけ強くなったか試させてもらう!」

 

「おい、引っ張るなって……黎斗、また後でなー!」

 

やる気に満ち溢れた箒へ引っ張られ、一夏は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「これが檀に支給されるIS『打鉄』の待機状態だ。」

 

翌日の放課後。黎斗は千冬からブレスレット型になっている『打鉄』の待機状態を受け取った。

 

「ありがとうございます。……これが、僕の専用機ですか。」

 

「整備室の使用許可はもう出ている。使用指南書にしたがって早めに初期設定と一次移行を済ませておくことだ。それと……すまなかった」

 

「……?何の話ですか?」

 

必要な資料を黎斗に渡した後、千冬は急に頭を下げた。

 

「織斑には専用機が与えられたが、檀には渡らなかった。IS委員会にも打診したが、女権団の介入が……いや、なんでもない。全て私の実力不足だ。」

 

「いえ。量産機が与えられたこと、それだけでも十分ですよ。」

 

「……そうか。今度の試合、期待しているぞ。あの入学試験の出来は私も久々に驚いた。」

 

「まあ、負けたんですけどね。期待は程々にお願いします。」

 

一礼し、黎斗は整備室へ向かって行った。

 

「(……入学試験の時。彼の動きは確かに初心者とは思えない程正確だった。だが、あれは何だったんだ?まるで()()()()()()()ような言動は……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

整備室。僕は手に入れたISの情報を確認し、()()()()()()の更新を進めていた。

 

「(織斑一夏……織斑千冬……彼らは)」

 

「IS学園に来たっていうのは本当だったんだね……『DAN』。」

 

「君こそ、代表候補生になったって聞いた時は驚いたよ……『SHIKI』。『ノックアウトファイター』の大会以来だな。」

 

声の先には水色の特徴的な髪を持つ少女が居た。懐かしい、ゲーム仲間が。

 

「今の私は、更識簪。名前で呼んで。……あなたの目的は何?」

 

「目的?人聞きが悪いな。僕は偶然ISを動かしてしまったが為にここにいるだけさ。」

 

「でも!あなたは、ISで……」

 

身を乗り出して言うが、言葉を続けずに俯く。

 

「この学園の人々を見た」

 

「……?」

 

簪の方へ向き直る。

 

「勿論、『女尊男卑』という馬鹿げた思考を持ってる人が多数だ。……だが、彼らは純粋だった」

 

同居人や織斑姉妹、それ以外にも自分へ親切にしてくれた生徒達を思い浮かべる。

 

「彼らの心は水晶のように透き通り、輝いている。……それ故に、曇り、傷付きやすい」

 

「……黎斗」

 

「……今、君の心の水晶は曇っている。専用機凍結のことだろう?」

 

「私は、構わない。必ず、ISを完成させる……私1人で。」

 

「君なら分かるはずだ。今の僕にそんな君を利用することは出来ない。」

 

再びISに目を戻す。新しいデータの更新は、もうすぐだ。

 

「でも、目先に興味深い試合(ゲーム)が迫ってっているからね。僕も当然、手を抜く気は…ない」

 

『GAMER DRIVER Loading Now』

 

懐から取り出した緑色でベルト状の装置をコンピュータに繋げる。すると、電子音声と共に画面にISが映し出された。

 

「それが、あなたのIS…なの?」

 

「ああ。僕の夢を達成させる為の半身……『幻夢』さ。」

 

ただ純粋に、待ち受けるゲームを楽しみに僕は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「行くぜっ!」

 

「一次移行したくらいで、勝てると思ったら大間違いですわ!」

 

クラス代表決定戦当日。

初戦のカードは織斑一夏vsセシリア・オルコットだ。

 

序盤の戦況はセシリアが圧倒。しかし、織斑一夏の専用機『白式』が一次移行を果たし、戦況は大きく動いた。

 

「白式から、単一仕様能力『零落白夜』を確認しました!」

 

「……」

 

真耶から報告を受ける千冬だが、頭ではウサミミを付けたある人物の影がちらついていた。

 

「あいつめ……」

 

「?あっ、織斑君が間合いに入りました!これはもしかして、」

 

「それはないですね、山田君。」

 

試合の様子に目を戻し、厳しい言葉をかけた。

 

 

『勝者、セシリア・オルコット。』

 

「『零落白夜』は自らのSE(シールドエネルギー)を攻撃に回す、云わば諸刃の剣だ。一撃で仕留められなければ……こうなる。今後はもっと鍛えていかなければな……」

 

そう言いながらも嬉しそうなのが溢れ出ている千冬に真耶は微笑む。

 

「次は檀君の試合ですね!聞いた話だと、ISの整備室に毎日通っていたって話ですが……」

 

「機体の改造は好きにしていいと許可してありますからね。」

 

黎斗の評価は教師陣の中で上がりつつあった。教師には女尊男卑思考の強い人間も居たが、真面目に整備を続ける黎斗の姿には好感が持たれていた。

 

「出てきたようだな。……っ!?」

 

フィールドに姿を現した黎斗。その姿は彼らに衝撃を与えることとなった。

 

 

 

「くろちーも頑張ってね〜」

 

アリーナのピットで僕は試合開始まで待機していた。…何故かのほほんさんも付いてきたが。

 

「2人に遅れを取らないよう頑張るよ。」

 

僕はベルトのバックルーゲーマドライバーを腰に装着し、ISの姿を思い浮かべる。そして、身体にISが展開された。

 

「……それが、くろちーのIS?」

 

「ああ。……行くぞ、『幻夢』」

 

試合準備のアナウンスを聞き、幻夢はフィールドへ飛び立った。

 

 

 

 

「待たせたな。」

 

「いえ。全力で行かせてもらいますわ!」

 

フィールドのセシリアの表情は何かに吹っ切れたように清々しい。だが黎斗のISを見て、少し顔を顰めた。

 

()()()()のISは、第二世代機『打鉄』と聞いていましたが…?」

 

打鉄は日本制量産機で、銀色もしくは黒色の機体だ。しかし、黎斗の機体はそのどちらでもなく、全身が紫に覆われていた。

 

()が改造した。このISの名は、『幻夢』」

 

黎斗は腰から装置を取り外す。

 

『マイティアクションX!』

 

「……ゲームカセット?」

 

「変身!」

 

掛け声とともにゲームカセット……ガシャットをゲーマドライバーに装着する。

 

『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!? アイム ア カメンライダー!!』

 

黎斗の周りにゲームパネルが出現し、『マイティアクションX』のパネルを選択すると、ISに新たな装備が装着されていく……

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーンX!!』

現れた姿に観客がざわつきはじめる。ISの形態が突然変化し、全身を覆う装甲となったからだ。

 

「さぁ、ゲームを始めよう…」

 

『試合開始!』

 

アナウンスと共に2機が動き出す。セシリアはすぐ様ビットを展開し、黎斗と距離をとった。

 

「さぁ踊りなさい!私とブルー・ティアーズが奏でるワルツで!」

 

「生憎ダンスゲームは私の手元に無くてね。今は、別のゲームで戦ってもらうとしよう」

 

黎斗は腕に装着されたパッドー『ガシャコンバグヴァイザー』を操作し、その向きを変える。

 

『チュ・ドーン!』

 

ブルー・ティアーズのビットから迫りくるレーザーを交わし、ビームガンモードとなったバグヴァイザーから攻撃を放つ。黎斗とセシリアの距離は急速に近づいていく。

 

「くっ…私の攻撃をここまで交わすなんて」

 

「シューティングゲームは得意でね」

 

『ギュ・イーン!』

黎斗は再びバグヴァイザーを操作し、チェーンソーモードに変化させる。

 

『ガシャコンブレイカー!』

 

セシリアにさらに接近するとともに、ハンマー状の武器『ガシャコンブレイカー』を出現させ、更に攻撃にかかる。

 

「きゃあっ!」

急接近する黎斗に対応しきれず、セシリアは武器の直撃を食らいSEを大きく削られた。

 

「やりますわね」

 

「……流石は代表候補生だ。ビットの操作、射撃の精度は素晴らしい。」

 

黎斗はブースターを噴射させ、再び接近する。

 

「だが、単調だ。それでは……私に勝てない!」

 

「(何故、何故なの!?一夏さんも確かに攻撃を受け流せていた。でも、それは完璧じゃない。どうして黎斗さんは攻撃を交わしながらここまで速く……)」

 

軽々とレーザー攻撃を躱し、バグヴァイザーで腹部を殴りつけた。

 

『Loading Now...complete』

 

「……」

 

電子音を確認し、バグヴァイザーを放すと黎斗はガシャコンブレイカーのハンマーモードでセシリアを殴り飛ばした。

 

「い、今のは...?」

 

既にセシリアのSEは尽きかけているが、出現させたライフルで黎斗を狙う。

 

「…っ」

 

攻撃直後で躱し切れず、黎斗は直撃を食らい少しふらついた。が、ゲーマドライバーからガシャットを取り外し、左のスロットに入れた。

 

「…何、必殺技のローディングさ。ゲームにキメワザは必要だろう?」

 

『キメワザ!マイティクリティカルストライク!』

 

「…ハァッ!」

 

足にエネルギーを集め、ブルー・ティアーズに向けて強烈な飛び蹴りを放つ。それは、ISのSEを全て削りきった。

 

『勝者、檀黎斗!』

 

クラス代表決定戦第2試合は、2人目の男性操縦者が代表候補生を圧倒する衝撃の最後を迎えた。




戦闘描写ってやっぱり難しい。


途中のバグヴァイザーの音声はオリジナルです。
今回登場したISについて補足すると、ガシャット装着前はカラーリングが紫なだけで打鉄と姿は大差ありません。ガシャットを装着しレバーを引くことで、アクションゲーマーレベル2と似た姿に変身します。

(追記・修正)マイティクリティカルフィニッシュ→マイティクリティカルストライクに修正。

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