人理修復に芸術家を入れてみた   作:小野芋子

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しばらくは物語に沿ってキャラをだしていきますが全員がヒロインというわけではありませんので悪しからず。


ジャンヌ・ダルク編

今回は第1特異点。

即ちフランスで起こった出来事について語っていきたいと思う。

 

 

 

冬木とは違い正式な手順によってレイシフトされた俺たちの前に現れたのはあちこちから火の手が上がっているパリの様子だった。

冬木に比べればまだマシだと思うかもしれないが冬木の時とは違い今回は生存している住民がいるため正直精神的にはこちらの方がこたえた。

不謹慎だがあちらこちらに人の...その....死体が転がっていると言うのは平和な日本の地で悠々と暮らしてきた俺にとってはあまりに現実味がなくいっそ作り物だと思わないと崩れてしまうくらいには俺の精神は削られていた。

 

あいつがそんな死屍累々とした光景を見ても眉ひとつ動かさなかったときは思わず敵のスパイかと疑ってしまったが、さり気なくマシュの視界から死体を隠すように動いていたのに気づいて直ぐに疑念は晴れた。

 

それにこんな状態でも変わらずにマシュを心配するあいつを見て俺の精神もだいぶマシになったのだからこの時は素直に感謝した。

 

そうこんな状況でもこいつはまるで変わらなかったのだ。

 

 

そりゃあ俺やマシュの負担を減らすために遠距離にいるワイバーンを処理してくれていたことには感謝するし、ゾンビ兵を請け負ってくれたことにも感謝はしている。

いくら普段の行いがあれとはいえそこに感謝の念を持たないほど俺は腐ってはいない。

 

 

問題はその先だ。

 

とある都市を訪れた際にルーラーのサーヴァントとして召喚されたジャンヌ・ダルクを見た途端瞬間移動のごときスピードでジャンヌの前に移動したと思ったら開口一番

『俺の作品(もの)になれ』

だぞ。

 

普段通りすぎて逆に引いた。

俺の感謝の念を返せ。

そりゃあ、あいつの功績に比べれば誰かにモデルとなってもらうという報酬は割に合わないかもしれないけどそれでも言わせて欲しい。

 

お前何やってんの?!、と。

 

 

 

まあ俺がいくら吠えたところであいつが言うことを聞くわけもなく

 

『さすが聖女と言われるだけのことはある。誇っていいぞジャンヌ・ダルク。俺がこれまで出会ってきた人間の中で外見も中身も美しい女などお前が初めてだ』

 

とかいう始末。

おい周り見てみろよ。

セイバーオルタさんとか聖剣構えてるぞ。

思わず通信を切ったが所長がキャンキャン喚いてたぞ。

マシュもほお膨らまして怒ってるぞ。

 

なんとかしろよ芸術バカ!!

 

そう思わず言ってしまったが

 

『どうしたマシュ?ほおを膨らませて。何?自分は美しくないのかだって?バカを言うな、お前はまだ可愛いの域を出ていない。中身も外見もまだまだ発展途上の段階だ。けどまあこの俺が目をかけているんだ断言してやるお前は必ずいい女になる。中身も外見もな。それからセイバーオルタ、お前もその聖剣をしまえ。確かに武器をとるお前の姿は思わず息を呑むほど美しいがそれを周囲に晒すことは控えろと言った筈だ。少なくとも今はお前の全ては俺の作品(もの)だからな。もっともこれから先も手放す気は無いがな』

 

最後にやけに様になっているニヒルな笑みを浮かべながらそう言った芸術バカに思わず周りが赤面してしまう。

 

なんとかしろとは言った手前強くは言えないがそれでも言うよ。

 

お前に羞恥心という感情は無いのか?!なんだそのセリフ?!ジャンヌさんも思わず赤面しちゃってるよ『ほう、美しいな』じゃねえよ!!まじで誰かなんとかしてください!!この変人俺の手には負えません!!

 

 

 

 

 

うん当時を思い出して愚痴って見たがよく俺あいつと旅ができたな。

因みにだが所長は『早くお前の絵が描きたいよ』のひと言で機嫌を直したらしい。

所長がチョロすぎて将来が不安になるよ。

まあなんだかんだ言って気に入ったものには病的なまでに甘いあいつだから万が一は無いと思うが。

むしろそのせいで所長に対する不安がさらに募っていくのだがこの際そこには目を瞑ろう。

 

 

 

 

 

さてそれでは現在の話をしよう。

というのも今俺の前であいつはジャンヌの絵を描いている訳だが、その周りの空気がヤバイ。

普段無表情のくせに絵を描く時だけ男の俺ですら思わず見惚れるくらいの真剣な表情をするのだが、それに当てられてダウンしている女性サーヴァントが数人ーーフェルグスさんが意味深な目であいつを見ているが無視する。

それと絵なんて描いてないで遊ぼうと誘っている子供サーヴァントが数人。

約1名アヴェンジャーの聖女様もそれに混じっているがそこは暖かい目で見ておこう。

仕方ないよね、あいつの起爆粘土で遊ぶのも最後に爆発させるのも確かに楽しいもんね。

 

話を戻そう。

他にも芸術家のサーヴァント数名が興味深そうに見ていたり。

バーサーカーズがおとなしく様子を伺っていたり。

食事を楽しみながら野次馬よろしくこちらの様子を覗いているサーヴァントがいたりとまあ何が言いたいかっていうと今現在食堂にはカルデア全てのサーヴァントがいるのだ。

 

もっと言おう珍しくも全てのサーヴァントが集まっている食堂のほぼ中心で男の俺ですら思わず見惚れるほどの真剣な顔でジャンヌの絵を描いているのだ。

それも時々独り言のようによく通る声でやはり美しいなとかいう始末

 

分かるか?

 

つまりはジャンヌがものすごく居た堪れない状態なのだ。

まじでジャンヌ可哀想。

まあ助けずにマシュと仲良く食事している俺が言えた道理は無いんだけどね。

頑張ってくださいジャンヌさん。

そいつが満足するまで耐え抜いてください!!

 

 

余談だがどうして食堂で描くんだと聞いたところ

 

『じゃあどこで描けばいい?マイルームだと?俺にその気は無いとはいえマイルームで男と女の二人きりになれば意図せずとも緊張するだろう?バカかお前』

 

と正論で諭された。

妙にムカつくが反論できなかった。

 

 

 

 

 

 




主人公
美しいものには目が無いけれど周囲の状況を見張らせたり半径数キロを常に警戒していたりとなんだかんだ言ってやることはやっている男。もっとも弁えていないのは事実だし言ってることも本心なのでタチは悪い。

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