変態兵器たちでIS 作:アメンドーズ
時間が経つのは早いもので、僕は月辺りにISを動かしてから、既に卒業式を迎えていた。
ちなみにその間にISを作ったり、武器を作ったり、マスゴミの取材を全力で断ったりしていた。
今は卒業証書の授与で、番号順に名前を呼ばれるのを待っていた。
「手室蓮!」
「はい!」
僕の一つ前の番号である蓮が名前を呼ばれて、登壇する。
校長に一礼をして卒業証書を受け取り、そしてそのまま制服のポケットから自撮り棒とスマホを取りd…!?
予想外の蓮の行動に、体育館が一瞬ポカンとした後ドッ笑いが溢れた。
そのまま蓮は眉ひとつ動かすことなく校長と自撮りをし、ステージから降りてきて、僕の隣の席を目指す。
「百目木蓮!」
「あっ、はい。」
あまりにも驚いていたもので、一瞬遅れて返事をして立ち上がり歩き出す。
その途中、蓮とすれ違う時にそいつは渾身のドヤ顔とともにスマホの装着された自撮り棒を僕に渡した。
「ふんっ!」
「グッ!?」
自撮り棒を渡され、すれ違う瞬間蓮の脇腹に肘を入れる。
そのまま表情を崩さず登壇。
一礼して校長から卒業証書を受け取り… 溜息をつきながら自撮り棒を使って校長と自撮りをする。
そのまま周りの空気を気にせずにステージを降り、自分の椅子へ向かう。
すると僕の隣の席には先ほどのドヤ顔を保ったままの蓮がいた。
僕は脛に蹴りを入れながら自撮り棒を手渡し、椅子に腰を下ろす。
全くもってこのアホは…
いや、僕もアホなのか。
☆★☆
「いや〜、良かったぜ銀!」
「うるせえんよ。 てめえはなんでああいう事を普通にやるんよ。」
「だって… ウケが狙えるだろ?」
「死んじまえ。」
卒業記念品を受け取り、僕は蓮と一緒に帰路についていた。
ふざけた会話をしていたのに、蓮がいきなり真面目な顔になっていう。
「だが… この道をお前と歩くのも最後か…」
「何いきなりシリアス始めてるんよ。 キャラに全く似合ってないんよ。」
「うるせえ! 俺だってシリアスになる時ぐらいあるわ!」
口ではこう言ったが、実は結構寂しかったりする。
こいつはアホだが僕が日本に来て1番最初に出来た友達なのだ。
「まあ、今生の別れってわけでもないんよ。」
「だがIS学園は全寮制だろ? 会う機会も少なくなるなぁ…」
「まあ、休みにでも会いにくるんよ。」
「おう、いつでも来いや。 …じゃあな。」
「うん、また。」
僕の家の前で、蓮に手を振って別れる。
さて、僕はこれからIS学園の寮に行くのだ。
ちょっとは休ませて欲しいものだ。
「おかえり。」
家の扉を開けると、父の声が聞こえてきた。
僕の卒業式を見に来るために有給を取ってきたらしい。
そのまま靴を脱いで家に上がると、父さんがソファーでお酒を飲んでいた。
「ただいま。 こんな時間からお酒?」
「ああ、今日は息子の晴れ舞台だったからな。 それにしても今日からIS学園に行くのか…」
「うん、今までありがとうなんよ。 まあ、全寮制でも休みには帰ってこれるんよ。」
「もう荷物は業者の人たちが来て運んでいったぞ。」
「じゃあ後はIS学園に行くだけなんよ。」
「気をつけてな。」
「わかってる。 もう子供じゃないんよ。」
「行ってらっしゃい。」
「…行ってきます。」
財布を持って、もう一度靴を履き、外に出る。
少し歩いて振り返って自分の家を見る。
二人暮らしには少し大きい家。
僕が8歳の頃に日本に来てからずっと住んでいた家だ。
「まあ、こう言うのはキャラじゃないんよ。 それに何度でもこれるんよ。」
そう独り言を言い、もう一度回れ右をして歩き出す。
今日からIS学園の寮に行くのだ。
IS学園は本州からほんの少し離れた人口の島にあり、そこに行く経路はモノレール以外ない。
まずモノレールの乗り場に行くために電車に乗る。
だがその前に、昼食だ。 それなりに長い時間電車に揺られるので先に昼食を食べておかなければお腹が空く。
「ムックでいいんよ。」
たまたま目に映ったムクドナルド、通称ムックに入って注文の列に並ぶ。
平日の正午ということもあって結構空いている。
何を頼むから考えながら列に並んでいると、ヒソヒソと話し声が聞こえた。
「あれ、2人目のIS操縦者の子じゃない?」
「本当だ〜。」
「男がISに乗るなんて生意気な…」
女性の僕らへの認識は大きく二つに別れる。
ISに乗ることができる選ばれたやつか、男なのにISに乗る生意気なやつ。
そもそも現代はISの存在により、女尊男卑の風潮が広がっている。
その中で、女尊男卑の思想に染まったような人が後者の認識をとるわけだ。
まあ、報道されてから何度もあったことだし今更気にも留めない。
注文したハンバーガーとポテトを急いで食べて、店の外に出る。
まだ注目を集めすぎるのは慣れていないのだ。
早くIS学園に行こう、と駅までの道を歩いていると、見知った顔が見えた。
「や、篠ノ之さん。」
「む、百目木か。」
同じクラスの女子の篠ノ之箒、中3の時に転向してきた子で、剣道で全国優勝を果たす猛者だ。
そして幼馴染… もう1人のIS操縦者である織斑君に恋をしているらしい。
「そういえば百目木は今日からIS学園寮に行くのだったな。」
「うん、そうなんよ。 篠ノ之さんもIS学園でしょ? 幼馴染君との仲が縮まると良いね。」
「な、何を言っている!? 私はあいつのことなど…」
幼馴染君の名前が出たらすぐこの反応だ。
バレバレだよ。
「じゃあ僕はこれで、早く行かないと電車に間に合わないんよ。」
「そうか。 じゃあまたIS学園で会おう。」
「うん、またね。」
篠ノ之さんに別れを告げて、駅まで歩く。
駅はかなり空いていて、僕の他には数人ほどしか人がいなかった。
やってきた列車にもほとんど人は乗っていないので、席に座ることができた。
「ふう。」
一息つき、鞄の中から本を取り出して読み始める。
幸運なことにここからIS学園のモノレール乗り場までは乗り換えなしで行けるのだ。
『次の駅はIS学園行きモノレール乗り場、次の駅はIS学園行きモノレール乗り場。』
ボーッと読書に熱中していたら、到着を告げるアナウンスが聞こえてきた。
本を鞄の中にしまい、首をコキコキと鳴らして電車の外に出る。
モノレールが来るまで10分ほど時間があるので、また本を読んでいることにしよう。