変態兵器たちでIS 作:アメンドーズ
「ま、まじかよ…?」
学校の体育館で、僕はISに乗って周りを見下ろしていた--
〜数時間前〜
「へ? 男性IS適正検査?」
「ああ、そうだ。 うちのクラスは1、2時間目に体育館に行って検査をすることになる。 検査官の女性の指示にキッチリ従うこと。」
例のニュースから数日後、学校のHRで担任の先生が言った。
男性IS操縦者の出現のおかげで、ISに自分も乗れるのでは? 通っている男子諸君が騒ぎ出す。
一方僕は、この寒い季節に体育館で検査をすることに怒りを覚えていた。
1時間目の授業中に僕たちのクラスは2組で、1組から検査をしていたのですぐに体育館に呼ばれた。
このシーズンのアホみたいに寒い体育館は騒つく男子の声に満ちている。
「なあ、銀。 もしもISに乗れたらどうするよ?」
寒さを考えないために、ボーッとしていた僕に出席番号が一つ前の蓮が話しかけてくる。
「別にどうもしないんよ。 ただ、僕の書いた兵器たちを自分で使えるかもしれない、ってうことは嬉しいんよ。」
「そういやお前はお父さんの企業に就職だっけ? 羨ましいな… 受験無しの中卒で大手IS企業に就職って… 何者だお前。」
将来はISの整備士を目指し、さらに志望する就職先がうちの企業である蓮からしてみれば、やはり羨ましいのだろう。
「ただのコネなんよ。 それとこの頭脳。」
「ったく、天才殿は羨ましいねぇ… 俺も就職の時はお前のコネに頼むよ。 おっと、次は俺の番だわ。」
「ま、君が使える人員ならばその時はコネを使ってあげるんよ。 乗れるといいね。」
ジト目でこちらを見た後、名前を呼ばれた蓮はひらひらと手を振りながら先にISがあるであろう仕切りの中に入っていった。
「駄目だったわ。 でも貴重な体験にはなったぜ。」
仕切りの向こうから出てきた蓮はやれやれと首を振って、教室に帰って行った。
最初から動かせるとは思っていなかったのだろう。
さて、次は僕の番だ。
「次、えっと… ひゃく…もくぎ…さん?」
「あ、
検査官の女性との初対面の恒例行事をすまし、ISに近づく。
「じゃあ、そのISに触って。」
「はい。」
検査官の女性に従い、ISに手を伸ばす。
なんでも、起動できる場合脳内に情報が流れ込んでくるらしい。
「へ?」
脳内に大量の情報が流れ込んでくる。
わかる、こいつの動かし方が。
「まさか… もう1人の男性IS操縦者が…」
そして、冒頭に続く…
♢♦︎♢
その後、本当に2人目の男性IS操縦者が現れることなどありえないと思っていたのかはわからないが、あまり迅速ではない対応の末に僕は黒い車とモノレールでIS学園まで連れて行かれた。
「まさか… 本当に動かしちまうとはな…」
この発言をしたのは父だ。 父は僕がISを動かしたと聞き、会社をほっぽり出して飛んできた。
いや、きちんと許可は取ったらしいが。
現在は2人で来賓室に通されている。
「まあ、乗るしかないんよ。 正直男性IS操縦者として1番安全なのがこの学園だしね。」
「入学の説明は受けたんだよな?」
「うん、さっき受けたんよ。」
先ほど、理事長室に通されて理事長から直々に入学の説明を受けたところだ。
その証拠に僕の手元には幾つかのパンフレットがある。
「それにしてももう1人の男子以外は全員女子か… 羨ましいぞこの野郎。」
「いや、息が詰まるに決まってるんよ… でも! 僕の兵器たちを自分で使うことができるんよ!」
「やっぱりお前はそれか!? ってか絶対作らせねえからな!?」
ふふ… そんな忠告を僕が聞くとでも?
操縦者権限でたくさん作ってやるんよ。
「つっても聞かねえよなぁ… 頼むからうちの若いのを使いすぎんなよ?」
「問題ないんよ。 僕の設計図は控えめに言って完璧、作業は一度だけで十分なんよ。」
「それとうちの企業を変態的な企業として宣伝するのはやめてくれ…」
「当たり前なんよ! あの変態兵器の数々を父さんらの企業の物にしてたまるかってんよ!」
「OK、それでいい。」
溜息をつきながら了承する父さんが気を取り直して、目線を上げて僕に言った。
「卒業式が終わったらすぐに寮に入るんだろ?」
「うん。 一年の寮はまだ先輩方が使ってるけど、空き部屋が一つあるらしいからそこに入るんよ。」
「にしてもお前が一人暮らしか…」
「うん? 9歳までは一人暮らしだったんよ?」
「あれは一人暮らしじゃねえ、一人旅だ。」
確かに、思い返せばあれは旅立ったなぁ…
「さて、帰るか。」
「うん。」
懐かしい記憶に思いを馳せていると、父さんが立ち上がって言った。
確かに、そろそろ夕飯時だ。
「晩御飯何にするんよ?」
「うーむ… 寿司行くか!」
「わーい! カウンターの方?」
「回転に決まってんだろタコ。」
来賓室の扉を開けて、廊下に出る。
近くの理事長室にいる理事長に帰る旨を伝えて、並んで廊下を歩く。
「それにしても馬鹿にでけえ学園だよな。」
「そりゃあ、世界中からIS乗りになりたい子たちが集まってくるから当たり前なんよ。」
このIS学園世界で唯一のIS操縦者育成高校である。
よって、世界中からIS操縦者を志望する女子たちが集まってくるのだ。
「にしても… 春からIS学園かぁ…」
予想していなかった高校生活、嫌なわけではないしどちらかというと楽しみだ。
なんてったって自分の兵器を自分で使えるんよ!!