落第騎士に挑むもの   作:淡麗

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第6話

御笠川月読side

 

「キャハッ!おにい!楽しいね!」

 

手に持ったハンマーを振り回しながら、月読に近付こうとする陽向を月読が閃光を使って牽制し、それをヒラリ、ヒラリと陽向がかわす。先程からその繰返しを続けていた二人は疲れを見せることなく動き回っていた。

 

「俺は楽しくないな!」

 

月読は陽向のハンマーを横に回転して避けながら、怒鳴った。

 

「それじゃあ、おにいのためにもっと楽しくしてあげる!」

 

そう言うと陽向は、ハンマーをその場でふった。

 

(空振りだと? 。こいつは相手との距離感が分からないほど素人ではなかったはずだが?)

 

明らかにハンマーのリーチの外にいた月読はその行動を訝しく思っていると、強烈な危機感を覚え体勢を低くした。

 

ドコンッ‼。

 

突然月読の背後の柵がひしゃげ、吹き飛んだ。柵が、くの字に折れ曲がり屋上から落ちていくのを月読は冷静に見ていた。

 

「なるほどな、お前の能力はハンマーの射程を伸ばす能力か。目に見えないのは厄介だがいくらでも対応は可能だ。」

 

月読はクスクスと笑う陽向に向かって低い声でそう言うとゆっくりと銃口を向けた。

 

「おにい、クイズの答え合わせは後でね。まだまだ遊んで?おにいが死ぬ時に答え合わせしてあげる!」

 

楽しそうに笑う陽向はハンマーを構えなおすと、ぶんぶん音を立てながら振り回し、それに合わせて屋上の床や柵が吹き飛んだ。

 

月読はそれを交わし、何発か閃光を放ち陽向を牽制した。

 

「食い尽くせ、餓狼群!」

 

(あまり、時間を掛けるとあの男が逃げちまう、悪いがこれで終わりだ!)

 

月読の周りに沢山の炎の狼が現れて、一斉に陽向に向かって駆け出した。

 

「これがおにいの能力なんだ!かわいいね!」

 

陽向は年相応の笑顔を浮かべると向かって来る狼を眺めていた。

 

(なんだと!何故なにもしない?相手の能力を取り合えず受けるなんざ、ただの馬鹿のすることだぞ!)

 

「おいで狼さん!陽向と遊ぼ!」

 

遂にはハンマーを放り出し、自身にたどり着き噛みつく狼をなで始めた。

 

月読は混乱しながらもトドメを刺すべく、口を開いた。

 

「はぜろ!」

 

その言葉に反応し、狼達は次々に爆発し陽向を爆炎が包み込んだ。

(あっけなく終わったな、あいつのところまでいかないと!)

 

月読はここで大きなミスを犯した。普段であれば絶対にしないミスを。自身の父のこともあり焦っていた月読は敵の生死の確認を怠ってしまったのだ。

 

突然、月読は右の脇腹に強い衝撃を受け地面に倒れた。状況を掴めずに困惑していると、今度は背中に衝撃を受け、口から大量の血が吹き出した。

 

「おにい!まったく!陽向をおいてどこに行くの!?おにいは陽向と遊べばいいの!」

 

その声を聞き月読なゆっくりと陽向の方に顔をあげた。そこには服を少し焦がしただけの陽向が腰に手をあてて、頬を膨らましながら立っていた。

 

「今度は陽向の番ね♪」

 

そう言うと彼女はハンマーを振り上げた。

 

黒鉄一輝side

 

黒鉄は周りの様子を確認しつつ、目の前の狐面の男を警戒し続けていた。

 

「これはこれは、まさか息子より先に黒鉄の息子が来るとは…、あいつなら陽向など簡単に殺して来ると思ったんだがね。」

 

(この人が理事長の言っていた人類最悪。御笠川君の父親か。)

 

一輝は鏡月を睨むと隕鉄の切っ先を向け、ゆっくりと問い掛けた。

 

「取り合えず、ここにいる人を解放してくれませんか?この距離なら僕の方が速いですよ。」

 

それを聞いた鏡月は呆れた様に首を振ると一輝の方に歩いて近付いてきた。

 

「黒鉄の息子よ、くだらない…本当にくだらないね。何故ゴミの心配をする?君がゴミの心配をせず私を切っていれば全て終わっていただろう?何故ゴミの親子を助けた?」

 

(何を言ってるんだこの人は!まるで、人を人として扱っていない!)

 

一輝は怒りに身をまかせたくなったが、それを押さえ鏡月に答えを返した。

 

「人が人を助けるのは当たり前でしょう。親に子供を殺させるなんてこと見過ごせる訳がない!」

 

一輝の答えを聞いた鏡月は立ち止まり少し考える様な仕草をすると突然笑いだした。

 

「クックッ!こいつは傑作だ!教えてあげよう!何故こいつらがゴミなのかという理由をね、黒鉄の息子よ、伐刀者の魔力量は何に比例する?」

 

「その人間の持つ運命の大きさに比例するでしょう。それがなんです?」

 

一輝は鏡月の笑い声になんとも言えぬ嫌悪感を抱きつつ答えた。

 

「正解だよ!さて、ではまったく魔力を持たない一般人には、運命とやらは存在するのかね?いてもいなくても、この世界の運命になんの影響をもたらさない、そんなゴミの様な存在を何故大切にする?くだらない、どうせ何もない、なにも世界に対して影響のない連中を助けることになんの」

 

ザシュ!

 

「第七秘剣 雷光。」

 

鏡月が言葉を終える前に一輝の最速の剣技が鏡月の首を切り落とした。

 

「あなたは狂ってる、ここで何としてでも仕留めなくてはいけない人だ。」

 

一輝は隕鉄を振り刃の血を落とすとビショウと水那母の方を向いた。

 

「一輝!(お兄様!)」

 

鏡月の死によって解放されたステラ、雫、爐が一輝の元に集まった。

 

「4対2です。大人しく投降してください!」

 

水那母とビショウに一輝が声を掛けるとビショウは悲鳴をあげその場を逃げようとした。

 

「無駄よ、あなた達の影を縫い止めたわ。」

 

しかし、それは背後に現れた有栖院によって食い止められた。

 

「ミナモさんだったかしら?もう終わりよ!早く捕まりなさい!」

 

ステラもレーヴァテインを水那母に向けると叫んだ。

 

「フフッ、ねぇ黒鉄さん父を殺したの?」

 

水那母は投降する素振りを見せず笑いながら一輝に問い掛けた。

 

(この人は何を言っている?目の前で僕が首を切り落としたのを見ていたはずだ!)

「ええ、間違えなく首を切りましたから。」

 

それを聞いた水那母は可笑しくてたまらないといった表情になり一輝に問い掛けた。

 

「じゃあ、なんであなたは今ゴミ共に捕まっているのかしら?」

 

「!!!」

 

その瞬間一輝の見ていた景色が激変した。自身もステラ達も一般人に押さえ付けられ、水那母の横には殺したはずの鏡月が立っていた。

 

「よお、黒鉄の息子よ。さっきぶりだな。」

 




更新遅くなってすみませんでした!
今週は本当に忙しくて全然書けなかった。
次回は早目に更新できると思います。

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