落第騎士に挑むもの   作:淡麗

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第4話

土曜日の朝月読は集まったメンバーを見て来なければよかったと改めて思っていた。

「やぁ、月読君、今日はよろしくね!」

そう爽やかに話掛けてくる一輝を見ながら月読はその横を見ない様にしていた。

(お前は俺に挨拶する前に横の火の粉を散らしてるお姫様とにらみあってるゴスロリを何とかしろよ…)

「初めまして、せんぱい♪、ワタシは有栖院凪よろしくね。」

(お前はお前で濃いんだよ!)

「あ、ああ御笠川月読だ。よ、よろしく…」

「よろしくね、有栖院さん私は夏川爐と言います。」

そうにこやかにかえす爐は波と桜のあしらわれた着物を着ていた。

(そしてなんでお前は着物なんだよ!似合えば飯ってもんじゃないぞ!ショッピングモールにそんなん着て来るなよ周りの目が痛い。)

「それじゃあみんな揃ったし行こうか。」

一輝が声を掛けるとステラと雫が競って横に並びその後ろをニコニコと笑う爐と凪とうなだれた月読が続いて付いていった。

 

 

黒鉄一輝side

 

映画館の前に来た一輝達は見たい映画までの時間をレストランでつぶすことにした。

「でも、月読君が来るなんて意外だったな。」

「夏川に無理矢理連れてこられたんだ…そうじゃなきゃ来ないよ。」

「そう言えばせんぱい、生徒会長と模擬戦をして勝ったって聞いたけど本当かしら?」

「有栖院誰から聞いた?」

「それはひみつよ♪で、どうなのかしら?」

「ねぇ、一輝。生徒会長って強いの?」

ステラは隣りにいた一輝にと聞くと彼が答える前に雫がバカにしたように笑うとステラに向けてステラに食って掛かった。

「これだから、雌ブタ姫と呼ばれるんですよ、。自分の学校で一番強い人のことも知らないなんて。頭の中はいやらしいことで一杯なんじゃないですか?」

「そんなわけないでしょ!雫こそ頭の中は人のことをバカにすることで一杯なんじゃないの!」

いがみ合う二人にため息を付きながら月読は目をそらした。

「そんな話私も聞いておりませんわね?」

月読の顔を覗き込みながら冷たい声で爐が問い掛けてきた。

「いちいち言うことじゃないだろ、だいたい試合したのはお前に会う前なんだから。」

「じゃあ本当に月読君は藤堂さんに勝ったのかい!」

「まぁそうなるな、クロスレンジで戦わなかったから勝てただけさ、雷切自体は不敗のままだ。」

「それでも充分凄いよ!藤堂さんは去年の七星剣武祭でベスト4の実力者なんだから!」

一輝は興奮して話し掛けるが対する月読は難しい顔をしていた。

「そんなんじゃないんだよ、生徒会長の本質はクロスレンジの雷切、あれを破らないと本当に勝ったとは言えないだろ。ロングレンジからチクチク攻撃して勝ったとしてもそんなもの意味がない。」

(戦いで相手の弱点をつくことは悪いことじゃない。でないと僕みたいな才能のない人間は勝てないのだから。)

一輝は口には出さなかったが自分の戦いを否定されているような気分になっていた。

「それに黒鉄はAランク騎士を倒してるんだ、同格の相手を倒した俺なんかよりずっと凄いさ。」

月読はぼそぼそと言葉を発するとコップを手に取り飲み始めた。一輝はそんな月読を見て肩をすくめると今だ言い合っているステラと雫を止めに入った。

 

 

 

 

 

御笠川月読side

 

 

映画前にトイレに行って来ると一輝と有栖院が二人離れて行ったところで女子は三人で話始め月読は肩身の狭い思いをしていた。

「あ~、おにい見つけた!」

その声が聞こえた瞬間月読は横からとてつもない衝撃を受け、更に何かに吸い込まれる様な感覚が全身を襲った。

(くそっ!いきなりなんだよ!)

吸い込まれる様な感覚がなくなるとすぐさま周囲の確認を行い月読は愕然とした。

(ここは…ショッピングモールの屋上か!こんなことができるってことは空間操作系の能力を持った伐刀者か。)

「初めておにい!妹の御笠川陽向(ひなた)です!いっしょに遊ぼ。」

「私も初めてましてかな?キミの姉の御笠川水那母(みなも)だよ。姉弟同士仲良くしようじゃないか。」

月読が声のした方を向くと10歳くらいの黄色ワンピースを着たハーフの少女と20歳くらいのスーツを着た女が立っていた。陽向と名乗った少女はその小さな身体には不似合いな大きさのハンマーを持っていた。

「あいにく、俺は一人っ子だからあんたらの勘違いだ。」

(しかし、こいつら何のために俺をここに連れて着た?そもそもこいつらは何がしたいんだ。)

「勘違いではないさ、キミだって分かっているんだろう。」

月読がなにも言わずに黙っていると水那母はどこか暗い笑顔で言葉を続けた。

「いいのかい、そんなんで。今日は私達の父…御笠川鏡月(きょうげつ)も来てるんだけどね。キミの殺したくて仕方がない男がさ。」

「言え…あのクソ野郎はどこにいる。」

月読は急に低い声で水那母に問い掛けた。その両手にはデバイスである二丁の拳銃が握られ銃口を真っ直ぐ彼女に向けていた。

「父ならキミの友達のところさ、血縁としては姉弟の中でも最高傑作なのに失敗作となったキミのことを調べるためにね。」

「だったら!「もぉ~!さっきからおにいとおねえだけで難しい話ばっかりしないでよ!」

月読の言葉をさえぎって陽向が文句を言い始めた。

「ごめんごめん、じゃあお姉ちゃんはパパの所に行くから陽向はお兄ちゃんに遊んでもらいなさい。」

「お、おい!まだ話は終わってないぞ!」

「それはまた、後で父を交えて話そうじゃないか。まずは陽向と相手をしてあげてくれ。キミに会うのを楽しみにしていたかわいい妹だよ。」

そう言うと水那母は鏡を取りだしその場から消えていった。

「じゃあおにい、遊ぼ!」

「すぐに終わらせてやるよ…」

陽向は楽しそうに、月読は低く感情の読めない声で言うと戦いに入っていった。

 




すみません!年度末飲み会が多くて更新が遅れました!この時期は本当に忙しいですね。
次回は一輝達がはのお話の予定です。もしかしたら、内容的に受け付けない人もいるかもです。

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