落第騎士に挑むもの   作:淡麗

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第2話

月読は左手をかばう刀華を見ながら思う。

(なんて素晴らしい騎士なんだ。逃げてばかりの俺とは違う、気高い騎士だ。)

月読は自分の能力が嫌いだった。他者から見れば強力な能力だと羨ましがられるかもしれない。だが、月読は自身の能力を嫌う、逃げてばかりの自分自身を良く表しているからだ。

(黒鉄もこの人も真っ正面から相手に向かい打倒しようとする勇気がある。俺はそれが羨ましい。)

「生徒会長、僕の能力は自分自身の魂の分解と再生ですよ。まぁ副次的な効果として触れたものの分解と再生もあるのですが。」

その言葉を聞いた刀華は驚愕したような理解出来ない様な表情を浮かべ彼を見ていた。

「喰い殺せ! 餓狼群(がろうぐん)!」

月読の言葉に呼応する様に何処からともなく黒や白い炎でできた狼が現れた。狼達は皆刀華のことを赤色の眼で睨み低い声で唸っていた。

「それがあなたの能力と言うことですか?」

「ええ、この狼達な皆僕の魂を分解したものに魔力で形を付けたんです。要するに彼らもまた御笠川月読なんですよ。」

狼を従えた月読はゆっくりと銃口を刀華に向けた。

「再開しましょうか生徒会長さん!」

そう言うと彼は引き金を引き狼達な一斉に刀華に襲いかかった。彼女は左手を庇いながら閃光をかわし一番近くにいた狼を切り裂いた。

「なっ!」

しかし、彼女は再度驚くことになる。切り伏せたはずの狼が揺らめきながらも形を取り戻し襲いかかって来たのだ。すぐ様刀を振るうも他の狼達も襲いかかって来ていて数秒で 彼女は狼に覆われてしまった。

「終わりです。生徒会長…爆ぜろ!」

月読の声に合わせる様に群がっていた狼たちは爆発し刀華は炎に包まれた。月読はそれを悲しそうに見ていた。

(会長は正面から正々堂々と戦ってくれていただが俺は自分は傷つかない方法で戦ってそんな会長を倒したのだなんて醜い、汚い戦いなのだろうな。)

炎が収まるとそこには幻想形態での戦いであったため外傷は無いが気絶している刀華がいた。

「勝者、御笠川月読!」

黒乃の勝利宣言を受けた月読は悲しそうにデバイスを消すと何も言わずその場を去っていった。

 

 

 

 

新宮寺黒乃side

月読が去るのを見送った黒乃は横でニヤニヤと笑っている悪友に声を掛けた。

「寧々、お前はアイツの能力を知ってたんだよな。何故私に何も言わなかった?私が七星剣王に届きうる騎士を探しているのを知ってただろう。」

「ん~、くーちゃんには悪いとは思ってたけどさ、あのガキ自分能力を人に言いたがらないのさ、よっぽど強い相手じゃないと使いたがらないしね。」

「あそこまで強い能力を何故隠そうとする?物理攻撃でははじけない誘導弾など対処できる者などそうはいまい。」

「それはそうなんだけどさ、別に手の内がバレるからとかじゃないんだよアイツの場合。くーちゃんもアイツが孤児院出なのは知ってるだろ」

「それは知っているがそれと何の関係がある?」

「アイツさ、孤児院に入るまで親に虐待を受けてたんよ、でそんな自分を守るために自分の中にもう一つ人格を作って逃げた訳よ。なんだっけ防衛本能だっけ?そんな感じでさ、自分自身を分割してツラい境遇から傷つかない様に逃げたって訳。」

「それは別に恥じることではないだろう、むしろ其れが普通だ。なんで気にやむことがある?」

「そんな時に黒坊を知っちまったのさアイツは、自分よりも更にツラい境遇にいながら前を向いて戦い続ける黒坊の姿を見て、逃げてしまった自分やその象徴みたいな能力が恥ずかしく思えたんだろうね、だからこそ黒坊が去年の七星剣武祭に出れないと聞いて自分も出る資格がないと考えたんだよアイツ。」

「そうか…」

「まっそう言う訳だからアイツのことも頼むぜくーちゃん!うちも黒坊並みには気に入ってんだ。」

そう言うと寧々は演習場を出ていった。黒乃は刀華を介抱しながら一輝と月読のことを考えていた。

 

 

 

 

黒鉄一輝side

 

ステラとの一戦から数日後一輝はステラと共にトレーニングをするのが日課となっていた。もうすぐ学園にやってくる妹のことを考えながらステラを待っていると前から一人の男が走って来ていた。

(あれは御笠川君?彼もトレーニングかな?)

月読とは中学からの付き合いだがあまり話したことがなく去年同じクラスではあったのだが話し掛けて来る様なこともない一輝にとっては印象に薄いクラスメイトだった。

「おはよう!御笠川君。君もトレーニングかい?」

月読は驚いた様な顔をすると走るのをやめ汗を拭きながら近付いてきた。

「おはよう黒鉄、俺のことは月読でいい。」

「なら、僕のことも一輝って呼んでくれないかな。そう言えばこの前の模擬戦見にきてたみたいだけど月読君ってそういうの興味あったんだね」

「それはまぁ選抜戦には俺も参加するつもりだったし、Aランク騎士の試合なんて生では見られないからね興味も沸くさ」

「それもそっか、選抜戦もしあたることがあればよろしくね。僕も全力でやるからさ。」

月読はそれに手を挙げて答えるとその場から走り去っていった。

(結局なんで僕に闘気をぶつけたのかは分からずじまいか、Bランクの彼がステラに勝つ前の僕を気にする理由が分からないけれど)

「イッキ~!何ボーとしてるのよ!」

いつの間にかランニングを終えたステラが一輝の顔を覗き込んでいた。

「す、ステラさんち、近いよ!」

「ステラよ!それで何か考えごと?」

「ごめんステラ、ちょっと気になる人がいてね。」

「そっ、それって女の人!?」

慌てた様に言うステラに一輝な少し笑いながら答えた。

「いや、男だよ。御笠川月読君、ステラしってる?」

「名前だけは知ってるわよ?なんかすごい怠け者だって聞いたわ」

「そっか、さてとステラ、トレーニングの続きをしようか。」

一輝はステラにそう促しトレーニングを再開した。御笠川月読はたぶん怠け者なんて甘い騎士ではないと思いながら。




という訳で御笠川の能力はブリーチなスタークとさすおにとナルトのデイダラの能力を混ぜました。そのまま使うとチート過ぎるんである程度押さえて混ぜたつもりです。


さすおにがチートすぎてかなり押さえないと全部こいつで良いんじゃないかってなるので困りました。
さて、次回ぐらいヒロインを出せればいいなって考えてます。オリヒロの予定です

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