2015年は魔法少女チノ。2016年は怪盗ラパン。では2017年は?
これは、2017年のエイプリルフールネタはどうなるのか予想する、五人の少女達の物語である。

ご注文はうさぎですか?の二次創作ですが、ごちうさ掲載紙のまんがタイムきららMAX、及びその姉妹雑誌のネタが多いです。また単行本未収録のネタも多いので、苦手な人はご注意を。

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ご注文はうさぎですか?の二次創作ですが、ごちうさ掲載紙のまんがタイムきららMAX、及びその姉妹雑誌のネタが多いです。また単行本未収録のネタも多いので、苦手な人はご注意を。


ココア「第一回 今年度エイプリルフール演出予想大会を始めよう!」

喫茶店・ラビットハウスのカウンター席にて、少女が五人、集まりあっていた。

 

一人はこの店のマスターの孫娘。二人はここのアルバイト。そしてもう二人は、アルバイトの子の友人である。

 

五人のうち、四人は何やらむつかしい顔をして、ひどく黙りこくっていた。残った金髪ウェーブの少女は、周りの友人たちが考える人と化しているのを首をかしげながら見つめていた。

 

「さて、皆。よく集まってくれたね」

 

不意に、アルバイトの茶髪のショートヘアーの少女が言った。

 

「ここに来てもらったのは他でもない、例の()()のことだよ」

 

「アレか」「アレね」「アレですね」「……アレってなに?」

 

少女の発言に、他の面々も四者四様の反応を返す。

それを見て、茶髪の少女は満足そうに頷いてから、少し真面目な声で宣言した。

 

「では、『第一回 今年度エイプリルフール演出予想大会』を始めよう!」

 

 

 

 

「「「イエーイ!!」」」

 

ココアの発言を聞くやいなや、チノとリゼと千夜の三人はテンション高く拍手し始めた。

 

それを見て、小声でぼやくシャロ。

 

「……なんなの?いったい」

 

「シャロちゃんこそ、話のみ込めてないようだけど、なんなのそれ?どうしてここにきたの?」

 

「なんで私責められてるの?」

 

困惑するシャロに、リゼが先輩らしく説明する。

 

「これは、今年のエイプリルフールに公式はどんなことをしでかしてくるのか、ということを予想する場だよ。

各自で予想を用意してきて、今ここでそれを発表するんだ」

 

「はあ……って、じゃあ皆は用意してきてるってことですか?」

 

「ああ、その筈だが……」

 

リゼが肯定すると、シャロは眉根を寄せた。

 

「え?でも、私考えてきてないですし、そもそもそんなこと教えてもらってないですよ?」

 

「え?でも私、ちゃんと千夜ちゃんに伝えたよ?シャロちゃんにも伝えるようにって」

 

と言ったのはココアである。シャロは千夜の方を恨みがましく見つめた。

 

「……あっ、ごめんなさ~い。伝えるの忘れてたわ」

 

「千ぃ~夜ぁ~~!!!」

 

シャロの怒声が、ラビットハウスに響き渡る。

 

 

 

……気を取り直して。

 

「第一回!今年度エイプリルフール演出予想大会!開催!!!」

 

「「「「イエーイ!!!!」」」」

 

今度はきっちり、四人で拍手する。よくよく見てみると、シャロとチノの頬が少し赤くなっているが、それは羞恥によるものである。

キャラじゃないから仕方ないよネ。

 

「それじゃあ最初は柄になくハイテンションになった結果可愛く赤面している可愛いチノちゃんから!今年のエイプリルフールは公式は何をやらかしてくると思う?」

 

しかしそんなチノに、ココアは容赦なく話題を振っていく。獅子が我が子を千尋の谷に突き落とすように、お姉ちゃんは妹を人付き合いというある意味日本海溝よりも深い谷に突き落としていくのだ。

何をやっているのだろうこの自称姉。

 

チノは恥ずかしくてたまらない、といった体で顔を赤面させた。もとより頬が赤かったので、今のチノの顔面は熟れた林檎のように赤く染まっている。これこそまさにアッポーチノである。

この状態でチノがパイナップルヘアーにすれば、晴れてチノパイナッポーアッポーチノになれるわけだ。

 

アッポーチノは小声でぼそぼそと喋った。

 

「えっと、一昨年は魔法少女チノが出てきましたし、今年はアルティメットチノがでてくるのでは、と」

 

しかし言ってることは色々と大丈夫ではなかった。

というかやばかった。版権的にもきらら枠的にも。

 

「いくら公式でも、それはしないだろう」

 

リゼが突っ込む。

 

「そも、魔法少女チノは色的にまどかじゃなくてさやかだからアルティメットなんてやるわけないだろ?」

 

「そこですか!?」

 

しかし突っ込む方向性がずれていた。シャロから更に突っ込みを食らう。

 

大体、この五人のイメージカラーでいうと、チノは青、ココアはピンク、リゼは紫、千夜は緑、そしてシャロは黄色。

それを当てはめてみると、アルティメットするのはココアだろうし、それよりもチノとシャロがどうなるか想像がつかない。

いや想像はつくのだが、想像したくない。

 

しかし、悲劇的とは行く末が決まっているシャロやチノ、ココアはともかく、リゼと千夜はどうなるのだろう。緑色と紫色の魔法少女は存在しない。

いやマギアレコードには存在するっぽいが、本編には登場しない。

ならば、それこそ二次創作界隈におけるオリ主のように、どのような扱いを受けてもおかしくないわけで。

 

シャロは身震いした。

 

その横に座っている、宇治松千夜ご本人はというと、

 

「っていうか、一年ごしとはいえ、また魔法少女をやるのはどうなのかしら」

 

疑問を呈していた。

 

「……駄目、でしょうか」

 

皆からダメ出しされて、チノは少し残念そうに眉を下げた。しかし、

 

「そんなことないよ!」

 

ココアは笑顔でチノをフォローした。

 

「チノちゃんは可愛いから、アルティメットチノちゃんが出てきても画面の前のお友達を見事に悩殺して、絵師には絵を描かせ、ss書きには文章を書かせ、挙げ句の果てには夏コミでグッズ展開されて、カネになること間違いなしだよ!だから大丈夫!普通にあり得る!」

 

「みもふたもないな!?」

 

しかしフォローの仕方が生臭いことこの上ない。チノは微妙な表情になってしまった。

 

とはいえ、実際ココアの言うとおり。エイプリルフールネタはいずれ商業展開されることになるのは過去二年を振り返っても明らかである。

となれば、別にアルティメットチノがエイプリルにきても何もおかしくないわけだ。

まあ、版権とかいろいろ大丈夫なのかってのはあるけれど。

 

チノは渋面のまま言った。

 

「……はあ。私はもういいですから。それより次の人にいきましょう。リゼさんはどうですか?」

 

「私か?」

 

リゼは漸く話題が振られたとばかりに満足そうに笑うと、

 

「突然だが皆に聞きたい。私の個性といえば何だ?」

 

どういうわけだか質問し始めた。

 

「軍人!」「鬼教官!」「王子様!」「誉めるとすぐ赤くなるチョロい紫髪ツインテール!」

 

「おいだれだ今チョロいとか言ったの。まあそれはともかく、私といえば軍人、私といえば体育会系みたいなノリはあると思うんだよ」

 

リゼのなかなかどうしてよくできた自己分析に、ココアとシャロと千夜は茶々を入れること無く頷く。

しかし、チノは首をかしげていた。

 

「え?でもリゼさん、相応に乙女っぽいところあるじゃないですか。ぬいぐるみ縫ったり、お菓子作ったりとか」

 

そう指摘すると、リゼは顔を林檎飴のように赤く染め、

 

「うるさい!その話はいい!」

 

と誤魔化した。もとい、誤魔化そうとした。

実際にはその程度で誤魔化せるわけもなく、リゼは四人から生暖かい視線をぶつけられてしまうことになったのだが。

 

(先輩かわいい……)

 

加えると、約一名は金属も溶ける熱視線を送っていたが。

 

リゼはわざとらしく咳払いすると、話を続けた。

 

「とにかく、私といえば体育会系だろ?それから、突然話を変えるわけだが、去年のエイプリルフールは公式はどんなネタをやってきたんだっけ?」

 

またも唐突な質問。シャロが答える。

 

「怪盗ラパンでしたね。公式サイトだけでなく、ツイッターの公式アカウントも名前を変えていました」

 

リゼは頷く。

 

「ああ。しかし去年の一番の目玉はなんといってもクイズだろう。全問正解すると壁紙がもらえたやつ」

 

「ああ、私とシャロちゃんが囚人服になってた奴だね!」

 

「違う!それ間違ったときのやつ!」

 

怪盗ラパン(偽)(ココア)のボケに怪盗ラパン(真)(シャロ)が突っ込む。

最近お馴染みとなってきた二人の茶番劇を前にして、リゼは苦笑する。「あのイラスト、私も看守として出てましたよね?」という呟きが聞こえてきたが、無視した。

 

「とにかく、だ」 苦笑したまま話を続ける。

 

「私は今年も、そういう感じのギミックというか、遊べる何かが存在すると思うんだよ」

 

「なるほど、確かに!っていうことは今年もクイズをやるわけかあ」

 

ポンと手を叩いて納得しかけたココアに、リゼは、

 

「いや、それはないと思う」

 

きっかり否定した。

 

「え?」

 

「二年続けてクイズやるとか芸がないだろ?エイプリルフール(四月馬鹿)だってのに「これ、去年も見たわ」ってなったら寒いことこの上無いし」

 

「それはそうかもしれないけど……。じゃあ、リゼちゃんは何をすると思うの?」

 

ココアが尋ねると、リゼは顎に手を当てて考え出した。

 

「そうだなあ。フリーゲームとかどうだろう」

 

「フリーゲーム?」

 

「ああ。ステラのまほうの公式サイトでもやっていたじゃないか。あんな感じのミニゲームがあるんじゃないかなって」

 

「ああ、すたーちぇいさーやすたーしゅーたーのことですね」

 

「うん。すたーらいなーはともかく、すたーちぇいさーくらいの簡単なミニゲームだったらエイプリルフールにはぴったりなんじゃないかなって」

 

チノの発言に、リゼは頷いた。

 

ちなみにすたーちぇいさーとは、ステラのまほうの公式サイトにて絶賛配信中のフリーゲームのことである。

落ちてくる星を爆弾をかわしながら拾うだけのシンプルなゲームであるが、スコアアタック形式のゲームであるためやりこむと意外と面白い。その上、弾幕STGのすたーしゅーたー・パズルゲームのすたーらいなーに比べてプレイ時間が短い。難易度も簡単と、気軽に遊ぶにはもってこいのゲームである。

 

しかし、そもそもゲームを作るには技術がいる。千夜は尋ねた。

 

「どうやってゲームを用意するのかしら?」

 

リゼはしどろもどろになり、

 

「そこは……まあ、うん。気合いでどうにかなるさ」

 

THE・体育会系といった様相の返答をした。

 

「気合いで誤魔化した!?」

 

「凄いですね気合。気合いさえあればなんでもできるじゃないですか」

 

後輩二人の罵倒も咳払いで誤魔化し、リゼは話を続ける。

 

「とにかく!私は今年のエイプリルフール、公式は間違いなくフリーゲームを用意してくると思うんだ。でもフリーゲームを作るのには口実がいるだろう?」

 

「まあ」「そうね」「そうですね」「そうだよ」

 

リゼの問い掛けに、他の面々は相槌を打つ。中にはテキトーに便乗した者もいるが。

 

「そこで私なわけだよ。教官系、加えて最近は教師キャラという属性も追加された私がいれば、「あ! やせいの リゼきょうかん が とびだしてきた!!」的な感じで試練開始、ミニゲームに入る……というふうにストーリーも組み立てやすい。立てやすすぎて、いずれ誰かがssのネタとして文章を書いてくれるまである。何ならポケモンとクロスオーバーで」

 

「メタい発言、というか要望は止めてください。こんなところに書いたところで誰かが書くとでも思っているんですか」

 

チノの手厳しい指摘が聞こえていなかったかのように、リゼは「とにかく!」と声を張り上げてから、

 

「私は、今年のエイプリルフールはこのような「鬼教官リゼ」をやると思うんだが、どうだろう」

 

自分のプレゼンをまとめ、他の面々に問うた。

 

問われた他の面々は、

 

「うーん……」「なんというか……」「そ、そうねえ……」「鬼教官の先輩……!ああ、指導されたい!」

 

と、何とも微妙な雰囲気を醸し出していた。一人欲望をぶちまけている奴がいるのは気のせいだ。

 

「え、あれ?私の案、なんかおかしなところあったか?」

 

そのようなアトモスフィアに、リゼも流石に狼狽えた。

それなりに自信があったからだ。

 

ココアは、非常に気まずそうに、目を伏せながら、

 

「えっと……リゼちゃんがエイプリルフールでメイン張るとしたら、取り下ろしボイスやキャラソンはどうするの?」

 

と訊いた。

 

リゼは目を見開いた。

 

「……………………あっ」

 

口元を手で抑えるその表情には、驚愕が張り付いているように見える。

 

そうなのだ。リゼーー天々座理世の声優・種田梨沙は体調不良により、現在絶賛声優活動休業中なのだ。

 

先程ココアも言っていたが、エイプリルフールでは公式サイトにて取り下ろしボイスが流れ、更に8月のコミックマーケットではキャラクターソングが発売される。

 

だというのにリゼがメインを張るということは、それらを全て行わないということになる。

取り下ろしボイスはまだしも、キャラソンに関してはカネになる話である。

だというのに、それを不意にすることができようか。

いやできない(反語)。

 

そんなわけで、リゼがエイプリルフールでメインを張る線は、極めて薄いように思われた。

 

「そうか……。失念していたよ。それなら私の案はないな」

 

リゼもがっくり項垂れながら自分の案を撤回する。

実際、このように問題点が発見できるため、商業的観点からアプローチするのは良い方法ではある。

ただどうしても生臭い話になってしまうだけで。

 

ココアはリゼちゃんのターンはこれでおしまいとばかりに、司会役らしく進行する。

 

「じゃ、次の人だね。千夜ちゃんはどう?」

 

話題を振られて、千夜はキョトンと自分の顔を指差した。

 

「私?そうねえ……。『降兎術師チノ』とか、どうかしら」

 

「「「「降兎術師チノ?」」」」

 

何やら聞き慣れないフレーズに、他の四人がおうむ返しをする。

千夜は頷いて、説明を始めた。

 

「ええ。前にチノちゃんが頭に乗っけた兎によって性格が変わるっていうことがあったじゃない?

それをエイプリルフールネタに昇華させたって感じ。どう?面白そうじゃない?」

 

「え。ああうん。確かに面白そうだが……」

 

リゼは当惑した。

 

なんだこれは。

 

《《あまりにも普通すぎる》》。

 

千夜といえば、見てくれはおっとりした和服美人。しかしその実、面白いことを何よりも好み、相方が居れば漫才を始め、幼なじみがいればちょっかいをかけに行き、ネーミングセンスは凡人の我々には理解できないほどハイセンスと、エキセントリックな人物である。

 

そんな人物の予測なのだから、いったいどんな突飛な予測をたててくるのかと半ば楽しみにしていたのだがーー。

 

余りにも普通すぎて、突っ込みどころもない。異論を唱えるものは誰もおらず、結果としてリゼのときとはまた別ベクトルで気まずい空気になっていた。

 

当事者の千夜はというと、何だろうこの微妙な雰囲気はなどと狼狽えることは全く無く、それどころか柳のようにたおやかな笑みを浮かべ、

 

「あら?質問はないの?」

 

と聞いてくる始末。

 

誰のせいだと思っているのか。シャロは千夜をはったおしたくなったが、淑女らしく耐えた。

 

実際、こういう普通の案が採用される可能性が一番高い。チノが兎を頭に乗っけると性格が変わる云々のエピソードはまだ単行本未収録ではあるが、去年の怪盗ラパンだって当時は立派な単行本未収録のネタであった。

単行本勢がネタバレを喰らうからといって、そこに配慮してくれるような公式ではない。

 

降兎術師チノは、十分現実的な線であるといえた。

 

 

 

「とりあえず、何も異論が出てこないようなので、次の方発表してください」

 

微妙な空気に耐えかねて、チノが進行させる。

 

……次の方、というと。

 

「な、何よ。どうしてみんなこっちのほうを見てくるの?さっきも言ったけど、私何もネタ持ち合わせてきてないわよ?」

 

皆がシャロの方を向くので、シャロがそんなことを言った。

そんなシャロに、千夜が、

 

「あら。ネタを持ち合わせてなくても、即興で考えればいいんじゃない?」

 

どの口でそれを言っているのか。

 

シャロは激怒した、と言えるほど怒っている訳ではなかったが、とにかく邪知暴虐の千夜に必ず文句を言わねばならぬと決意した。

 

「あんたが伝え忘れたせいでネタを持ち合わせてないんじゃない!」

 

「それはごめんなさい。でもシャロちゃんなら大丈夫。事前に用意していた私たちよりもハイセンスな予測を立ててくれるって私信じてるわ」

 

「あんた反省してないでしょ」

 

しかし千夜はどこ吹く風、どころかハードルを上げてくる始末。

シャロが駄目だこいつとでも言いたげに、額に手を当てて溜め息をついたその時。

 

「でも、シャロさんなら凄い案出してくれますよね」

 

チノが曇りなき目で言った。期待と信頼と尊敬に満ちた、とても純粋な目である。純粋すぎてマイナスイオンを感じるまである。空気がおいしい。

しかしながら台詞の内容は予測に対するハードルを上げただけである。悪気がないのがむしろ質が悪い。

 

「そうそう!シャロちゃんなら私たちが想像もつかなかった予測を立ててくれるんだろうなあ。楽しみだなあ」

 

うるさい黙れ。

シャロはココアを睨み付けた。妹と違って自称姉は悪意ありまくりである。その目は嗜虐やら期待やら信頼やら何やらが渦を巻いていて、曇りしかない。

 

いよいよ予測のハードルは成層圏を越えようとしている。シャロは先ほどよりもさらに盛大な溜め息をついた。

全く。チノちゃんはあんなにきれいな瞳をしているというのに。仮にも姉を主張するのだったら妹に合わせて心の中くらいきれいにしてほしい。あれではただの千夜(鬼!悪魔!(胸が)デブ!サディスト!) ではないか。

 

「私の尊厳を著しく否定する当て字はやめてほしいんだけど……」

 

何か聞こえたが無視する。というか、曲がりなりにも文系の成績は良いわけだからあちらよりも質が悪い気がするのだが。

鼻を鳴らしたシャロに、ココアが屈託のない笑顔で言ってくる。

 

「じゃあそんな、世界が、いや宇宙すら注目しているかもしれなくもない予測をどうぞ!発表しちゃって!」

 

こいつ……。

 

シャロは渋面になりながらも一応顎に手を当てて、考えた。

 

「えーと、そうね。去年はチマメ隊のキャラソンCDやアンソロジー、それからポポロンラジオが始まったのも去年よね。だから今年のエイプリルフールはチマメ隊がメインで来ると思うわ。人気キャラだしね。

それで、チマメがメインとなると三人を主役にする必要があるわけだから……。三銃士?いや、三悪っていうのも十分考えられるわね……」

 

考えが駄々漏れになっているが。

 

ボソボソと呟くシャロを前に、

 

「……あれ、何か」

 

「意外とまともな案っていうか、何というか」

 

「すごいです!流石シャロさんです!」

 

「目から鱗だな。去年のメディア展開からアプローチするなんて」

 

チノは目を輝かせ、リゼは感嘆の声を漏らし、その隣でココアと千夜は呆然としていた。

散々誉めそやしておいて、いざシャロが予測を立てだしたら神速で梯子を下ろすつもりだったのだが、当てが外れたようだ。

 

ぐぬぬ、と唸りだしたココアと、凄いわシャロちゃん!とにっこり微笑む千夜。

その二人を尻目にボソボソと呟き続けたシャロだったが、どうやら考えがまとまったようだ。

 

シャロは勝気な笑顔を浮かべ、皆の顔をぐるりと見回すと、きっかりと宣言した。

 

「今年のエイプリルフールは、「三匹のこぶた」をやると思うわ!!!」

 

「「「「いやどうしてそうなった(んですか)」」」」

 

どうやら自分から梯子を捨てたようである。

唖然とするココア達を前に、シャロはやはり勝気で、

 

「えっと。去年はチマメ隊のキャラソンCDやアンソロジー、それからポポロンラジオが始まったのも去年だから、今年のエイプリルフールはチマメ隊がメインで来ると思って」

 

「いや、そこはいいから。どうして三匹のこぶたになったんだ?」

 

解説しようとしたシャロに、リゼが訊いた。

 

「それはですね、三銃士や三悪は傍から見たらおままごとにしか見えないから、開き直って三匹のこぶたの演劇をやっちゃえばいいんじゃないかなと思いまして。……ちょうどオオカミ役の適任もいますし」

 

「……え?オオカミの適任って、もしかして私?」

 

「どうしてそこで開き直っちゃったんですか……」

 

自分を指差して尋ねるココアをきれいに無視して、チノは呆れたように言った。

 

 

シャロは予測の立て方は悪くは無かったし、実際公式のことだから唐突に「今年は演劇はじめまーす」と言ってきても不思議ではない。

しかしそれなら三匹のこぶたに限らず、赤ずきん、北風と太陽、オオカミと七匹の子ヤギ、ヘンゼルとグレーテル、シン・ウサギ、この木組みの街の片隅で、パン生地の名は。などといった有名な童話が選ばれても何もおかしくない。

一部童話じゃないのが含まれているのは気のせいである。

 

何にせよ、演劇をやる可能性はあるにしても三匹のこぶたをやるかどうかは分からない。

 

「だけどこぶたさんのコスプレしたチマメちゃんなんてかわいいこと間違いなしだからやってもおかしくないよ!絶対大丈夫だよ!」

 

欲望まみれのフォローをするココア。

 

「なんか全然大丈夫に聞こえないわね……」

 

やはり微妙な顔をするシャロ。ココアは中途半端なフォローをする才能でもあるのだろうか。

 

シャロは微妙な顔を引っ込めると、ココアに促した。

 

「それで、ココア。次はあなたの番よ」

 

ココアは頷くと、ふんわり笑った。

 

「よーし皆、お姉ちゃんに任せなさい!ノーベル賞すら取れそうな凄い推測言っちゃうぞ~!」

 

「いいからはよ言いなさい」

 

腕をぐるぐるとブン回すココアにシャロが呆れ顔で言った。

 

「それもそうか。じゃあ、早速言っちゃうよ。私の予想では……」

 

「「「「…………」」」」

 

一旦言葉を切るココア。お姉ちゃん云々はともかく、自分で「ノーベル賞すら取れそうな凄い推測」と言うくらいだ。嫌が応にも、期待値も上がるというもの。

 

皆に注目される中で、ココアは凄い推測を言い放った。

 

 

 

「今年のエイプリルフールは、何もやらないと思うよ!」

 

 

 

「「「「……………………」」」」

 

誰もがぽかんとした。一瞬だけ、誰も何も言わない、静寂のひととき。

 

そして、数瞬後。

 

 

 

「「「「は?」」」」

 

皆にまじまじと見つめられたココアは、何故だか得意気に説明し出す。

 

「エイプリルフールの日、ごちうさのアニメのホームページはは毎年のように作り替えられます。

例えば、一昨年は魔法少女チノちゃん。去年は怪盗ラパン。

どっちも超かわいい、どこがかわいいってマジかわいい、かわいさの宝石箱やーだったのは記憶に新しいよね。

 

ところで、今年は何をしてくるのだろう?去年や一昨年みたいなかわいいやつか、それともステまみたくゲームか、きんモザみたく何もしないか。

色々可能性はあったわけだけど、最終的に私は最後の何もしないだと予想したよ」

 

「なんでだ?」 リゼが尋ねる。

 

「うーむ。長くなっちゃうから、単純に一言で理由を説明すると……『そんなもの作ってる暇があるんだったらさっさと劇場版の製作しなさい』っていうところかな」

 

劇場版ご注文はうさぎですか?は、数ヵ月前にキービジュが公開されて以降サブタイトルくらいしか音沙汰がない。それどころか、知らない間に春頃とされていた上映時期まで未定になっている始末。

 

そんな状況でぬけぬけとエイプリルフールにホームページ改造なんてやっていたら「お前はなにをやっているんだ」とばかりに銃殺されることうけあいである。

 

そんなわけで、ココアはエイプリルフールは何もしないと予想したのであった。

 

「なるほどね、理屈は分かったわ」 シャロはココアの案にひとまず頷いて、それから。

 

「ーーそれはそうと、ココア。皆をわざわざ呼んで案を考えさせておいて、自分はなにもしないと予想するのはどういうこと?」

 

剣呑な目付きでココアに尋ねた。

 

ココアは、

 

「えっと、それはそのーーほら、予想するの楽しかったでしょ?だから、楽しい時間を作れたんだからいいじゃないか、みたいなーー」

 

「私、その予想する時間とやらなんて与えられなかったんですけど?」

 

「え、えっと、それはその……」

 

なんだか、妙にシャロが怖い。目は剣呑としすぎていて冷凍ビームを放っているかのようだし、その表情からは怒りが滲み出ていてとてもこわい。

 

それはそうだ。予想するからと言って皆を集めた張本人が「何もしない」などとあんまりな予想をたてたのだから。

 

ココアは助けをすがるように周りを見た。

 

まず最初にリゼと目が合い、

 

「うーん。残念だが、私もシャロと同意見だな」

 

と言われて目を逸らされ、次に目が合った千夜は、

 

「ノーベル賞を取れそうにない予想をどうもありがとう」

 

と言われて目を逸らされ、最後に目が合ったチノは、

 

「……ちょっとココアさんには幻滅しました」

 

と言われて、やはり目を逸らされた。

 

「がーん!」 チノから幻滅したと言われ、空気の抜けた風船のように顔から生気が抜けていくココア。

 

そんなココアに、青筋を立てたシャロが、

 

「コ~コ~ア~?」

 

地面が震えているかのような低温ヴォイスで迫っていく。

 

ココアは慌てて、

 

「えっと、その、うん……あれだね、ドンマイ!」

 

 

 

………………。

 

 

 

「ココアー!!!!」

 

「ごめんなさーい!!!!」

 

ラビットハウスに、シャロの怒鳴り声と、ココアの謝罪の声が響き渡る。

 

木組みの街の喫茶店は、今日も平和である。




気の向くままに書いていったらなんか長くなりました。その癖オチは雑っていう……。

ちなみに私自身の予想としてはココアの言っていた「今年はやらない」というものになります。
理由は本編参照。

ただチノ以外の予想も結構頑張って考えたので、なんか一つくらい当たっていると良いなあ。


エイプリルフール当日追記

選ばれたのはシャロちゃんでした!!!!!!!
いや~ココアのじゃなくて良かった(安堵)


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