夕暮れ時の空き教室、そこには俺と彼女の2人だけ。
外では、運動部が片付けをしていたようだ。異性と2人きり、しかも夕暮れ時と来たもんだ。並の男子高校生は歓喜するだろうな。だがしかし、俺は歓喜なんてしない。むしろ、罰ゲームか、嫌がらせの二択に絞るまである。
え?告白だと思わないのか…だって?昔は思いましたよ。えぇ思いましたとも。だけどね?全部罰ゲームだったんだよ。本当に俺の純粋な心を返して欲しいぜ。まあそのお陰で淡い期待をしなくても済むんだけど。すこし、話が脱線したな。何故俺が、女子と2人きりかというと、目の前の女子……まあ由比ヶ浜なんだが…に呼び出されたのですよ。多分雪ノ下辺りの相談だと思うが。
「ヒ、ヒッキー」
「ん?何だ由比ヶ浜。」
「えっと…あの……」
「………」
「えっと…」
「(早くしてくれませんかね。家で小町が待ってるんだよ。)」
「ふぅ…よし」
「?本当にどうした由比ヶ…」
「好きです!!あたしと付き合ってください。」
「え……何?」
「好きです」
「何?」
「好きです」
「何?」
「好き……って聞こえてるでしょ!!ヒッキー!!」
「聞こえてるが……」
「返事は?」
「……分かった」
「……」ゴクリ
「あの扉からドッキリーとか言って三浦や戸部辺りが出てくるんだろ?俺がそんな簡単な罠に引っかかるとでも?」
「ち、違うよ!!本当に……本当に好きなの!!」
「本当に?」
「本当だよ!!ていうか、ヒッキーも何となくわかってたでしょ?」
「………」
確かに何となくだが、きづいてはいた。夏祭りの帰りの時や、選挙の時…だが、俺は怖かったのだ。やっと出来た『本物』が壊れるのが、2人と1人に別れるのが、きっと雪ノ下の事だ俺達が付き合えば、気を使って奉仕部に来なくて良いと言うだろう。
だから、俺は停滞を望んだ。決して壊れない3人の関係を…だがそれは、俺が拒んだ上辺だけの関係なのだろう。しかし、上辺だけの関係だとしても心地良いのだ。もっと浸かっていたい、もっと続けていたい…俺はそう思ってしまった……これを昔の俺が見たらどう思うだろう。そんな物を続けて何になる?とでも言うのだろう。だが、それでも良かったのだこの心地良い空間が、紅茶の香る温かい空間に居れるのなら……しかし、由比ヶ浜結衣はそうは思わなかった。俺が出来ないことを難なくやれる由比ヶ浜だからこそ出来たのだ。昔由比ヶ浜は自分に良いところが無いと言った。しかし、俺からしたら由比ヶ浜そのものが眩しかった。由比ヶ浜の良いところなんて山のようにある。
もしかしたら俺は、知らず知らずの内に由比ヶ浜が好きになってしまったのかもしれない。なら…勇気を出して『本物』を求めた、由比ヶ浜に…俺は……俺は…………
答えを出すのが道理だろ