それは、突然起きた。
№1
昴君と一緒に住み始めて少し落ち着いた頃。
昼食を終えたあたしと、昴君でニュースを見ていた。
『続きまして、こちらのニュースです・・。
ここ最近、関東圏内で連続殺人事件が多発しているとの情報です。
犯人の手掛かりはまだ掴めていないとの事です・・・』
「近頃、物騒ねえ・・・。」
「そうですね・・。早く捕まれば良いのですが」
なんて、のほほんと他人事のように駄弁っていたあたし達に一本の電話が入った。
「はい、古雅ですが・・」
「麗華さん!!!今、昴さんと家に居る!?」
「う、うん。どうしたのボーイ?」
「詳しい事はそっちに行ってから説明するから、家に居て!」
言いたい事言った後、プツリと切れた電話に昴君が不思議そうにこちらを見る。
「どうかしたんですか?」
「今から、ボーイがこっちに来るって」
「??そうですか、ではお茶の用意をしてきますね」
暫くしてから、ボーイが険しい顔で口を開いた。
ボーイの話によると、ニュースで騒がせていたあの『関東圏内連続殺人事件』で
一都五県の刑事達が集まり合同捜査会議が開かれ、それに特別顧問として毛利探偵も招かれ、ボーイも事件の内容を知ることが出来たのだと。
そして、会議が終わった後、ボーイは会議に参加していた、一人の刑事が
ジンの車と同じポルシェ356Aに乗り込む所を目撃したというのだ。
流石のあたし達も状況が分かり、眉間に皺がよる。
「一応、気を付けて、二人とも今は死んだ事になっているし、麗華さんは軽く周囲にも顔がばれてる。外に出ていく時は一応変装していった方が良い。
ついさっき、入った情報によると、この事件の犯人は今米花町に居るって話だ。
可能性として、黒の組織が絡んでいるかもしれない」
「それは、あり得る話だな。わざわざ刑事に変装してその会議に参加すると言う事は、
犯人を揺るがしているという事もある。
どちらにしろ、俺達の周囲の警戒を高めなければならんな」
「OK―、大丈夫よ。ボーイ、貴方と哀はあたし達が必ず護るわ。
あちら側には、敵だとしても力強い味方があたしにはいるしね。」
待て待て、もしかしてこれあれじゃない??
パターン青じゃない?
いやまさかと思ったよ?!だって、死神並だよね?出歩くたび事件に首突っ込むもんね?
「(漆黒の追跡者ですか・・・)」
ポーカーフェイス完璧にしてて良かった・・・。
この二人は勘が嫌って言うほど冴えてるからな。
ってことは、黒の組織が変装して刑事に紛れてるってことは多分、アイリッシュ。
そんでもって確か、指紋を取られて・・・・。
これ、フラグ立ってね?
まじかー。
どうしようか・・・。いや、このまま知らない方が良いかもしれない。
本作アイリッシュはピスコを殺したジンを憎んでいたし、
このままボーイが工藤新一と同一人物と確信を持っても言いはしない。
でも、確かボーイを庇って死ぬんだよな・・。
これだけは避けたい、なんてたってジンと同じ幹部並だ。
情報も手に入る。
問題なのは、どうやってアイリッシュとアイコンを取るかだ。
「どうしたの、麗華さん?」
「ん?いや、どう動こうかなあって。」
「・・今までの話を聞いていたか?」
「分かってる、けどこれはある意味絶好のチャンスなのよ。」
「!!どういう事?麗華さん」
「アイリッシュは、ジンを憎んでいるからよ。
ピスコをジンに殺されたからね」
「「!!!」」
まあ、ボーイは知っているでしょうね。ピスコと対面した事があるだろうか。
「ピスコとアイリッシュの間に何かあるのか?」
「良い所に目が行ったわね、秀君。そう、アイリッシュにとってピスコは父親の様な存在の人だった、そんな人がいくら仲間の幹部であろうジンに殺されたってなったら、
流石に、目の色変えて親の敵と思うでしょうね。そんなアイリッシュがジンと一緒に行動している、何かありそうじゃない?」
「確かに・・・、それにあの変装術はベルモットからかもしれない。
・・・ベルモットも一枚噛んでるな・・」
「そう考えるのが妥当だろうな・・・。
ボウヤ、下手に目立つ真似はしない方が良いな。
アイリッシュの前で、目立った行動をすると怪しまれる、それこそ、工藤新一と江戸川コナンに結び付く可能性も少なくも無い。」
お、頭の回転が速い秀君は少しの情報だけでこれだけの可能性をだすのか・・。
怖いな・・。
その後、映画通りに事が動いたようで、
容疑者の1人が米花町に現れるとの情報が入り、ボーイは取り敢えず、毛利さん達と行動を共にする事となった。
残された工藤邸であたしと昴君こと秀君との作戦会議が開かれた。
「あたしは、今回の事は流れに身を任せても大丈夫だと思うわ。
下手に、あたし達が手を出して、アイリッシュはともかくジン達にバレたらそれこそ
あたし達おジャンよ。」
「確かに・・・。アイリッシュが本当にジンを嫌っていたとして、
そしてそれがボウヤの命を護れればいいのだがな。」
「それは、あたし達の役目よ。表はあのボーイが。
裏から、あたし達が手を回せばいい。頭の切れる敏腕のスナイパーの貴方と情報局担当のあたしよ?」
不敵に笑ってみせると、秀君にあまり無茶はするなと言われてしまったが。
それから、お互い情報収集をするために部屋に籠った。
あたしは、CIAの唯一あたしの生存を知っている上司に今回の話を持ちかけ、
情報を取ってもらった。
「(この後、確か連続殺人事件の第一被害者を刺す傷害事件を起こした犯人が見つかるんだっけ・・・。けど、確か・・・・・・。駄目だ、思い出せない。)」
引っかかる、そう簡単に、犯人は見つからない・・。
誰だ・・・。
まだ、ボーイの情報も少ないし、迂闊に外には出られない。
けど、確信が持てるのは今夜アイリッシュにボーイの正体がばれてしまう。
「麗、そろそろ休め。もう夜だぞ」
「!!!」
「その様子だと、気付いてなかったみたいだな」
「あー、時間経つのって早いわ・・・・。」
「・・・20代の発言する言葉じゃ無いな・・・」
「精神は、40代よ。喧嘩売ってるなら、喜んで買うわよ。体力は、アップしてるからね」
「おっと、それは怖い。止めておこう。現役だが、無駄な怪我はしたくなからな」
「よろしい。っさ、夕ご飯作りましょうか」
「もう、出来てる。だからあんたを呼んだんだ」
「んじゃ、行きますか」
「お手を、どうぞ?」
昴君の姿でエスコートをされると少し、いやかなり胡散臭さが増す。
「失礼な事考えていると、夕ご飯の量、減らしますよ?」
「そんな事、考えてないわよ。」
「そうですか」
あぶねえ・・・!なんだ、この人。いや元から侮れない人だとは知ってるけど、
そんな薄い目で、良くあたしが考えてる事分かるなんて・・・ねえ・・・。
「どうやら、麗さんは今夜は寝たくないようですね・・・。
それなら、僕に少し付き合ってください。良いですよね?」
死亡フラグ回収したかと思ったら、死亡フラグが倍になって帰ってきやがった・・。
この後、死亡フラグを回避出来なかったあたしを秀君は本当に寝させてくれなかったのは言うまでもない。