CIAの彼女   作:ツム

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今回は、ちょっと甘くしてみました。
誤字報告ありがとうございました!


亡霊の逢引

パーティー当日。

有希子にあたしは引きずられ、秀君は優作に引きずられ。お互い準備が出来たら落ち合おうとのこと。なんでも、会ってからのお楽しみなんだと。

 

有希子のマシンガントークと手さばきで、どんどん鏡の向こうのあたしが別人になっていく。

 

「麗ちゃん、若返ってお肌つるつる!化粧のノリ全然良いわー!!」

 

「完全に前のあたしの嫌味ね。」

 

「やあね、そんなんじゃないわよ!!よし、次は髪ね」

 

ただいまのあたしの恰好は、

女としては長身の170センチを活かし、緋色のオースティン・スカーレット。

下品と感じさせないのは流石有希子というべきか。

その上から、軽めのストールをかける。

ヒールは慣れている高さにして全体的に黒がアクセントとなる白い宝石がまた綺麗。

髪は肩くらいまでの長さだから、アレンジし放題。

 

「出来た!!!うんうん、我ながら良い出来ね!!」

 

「ほんと、手際いいわね・・。ありがと有希子」

 

「久し振りに、麗ちゃんを飾ったからねえー。

折角日本に来たからあたしも、今から優作とデートするの!」

 

「いつまで経ってもバカップルね・・・。

これは感謝の気持ちとして、これあげるわ。そこのレストランのオーナーと顔見知りでね。あたしの名前出せば、良い席くれるわよ」

 

「ありがとう、麗ちゃん!!!」

 

「はいはい」

 

そこから、優作たちも準備が出来たらしく有希子も身だしなみを整えていく。

 

「きゃー、昴君かっこいい!!

うちの麗ちゃんも負けてないでしょう?!」

 

「昴君」の容姿での正装は、髪はあまり弄ってないけど、片方だけ耳に髪をかけて

スーツはカジュアルだけど上品さも出ていて、極めつけはネクタイの色だ。

ネクタイの色は、あたしのドレスと同じ緋色。

変声機は、スーツでぎりぎり隠れている感じ。

 

「さあ、もうそろそろ時間だね。楽しい時間をありがとう、有希子行こうか」

 

「じゃあね、楽しんできて!!」

 

有希子と優作が去っていき、あたしと秀君もパーティー会場へと足を運んだ。

 

会場へ着いたものはいいものの、まだ園子ちゃん達が来ていないと分かり、

噴水のある庭に行くと。

グイっと、秀君が回していた腰を引かれ、距離を縮める。

誰も居ない、二人だけの空間に少し緊張する。

ピっと、変声機が切る音がしたと思ったら耳元で

 

「綺麗だ。あの頃よりも危険な立場になったが、今だけは「赤井秀一」に戻らせてくれよ。」

 

「お互い、亡霊同士よ。外ではあたしも軽く変装はしてるし。

貴方に至っては公安に目を付けられてる始末だし。

・・・でも、そうね。今だけは休息と行きましょうか」

 

近づいていく顔に、キスされるのかと呑気に考えていたら、それは口じゃなく、おでこにリップ音が鳴った。

 

「流石に、二人だけと言っても公共の場だしな。

俺も、口紅を付けたくはないんでね。」

 

「それは、最後に取っておきましょうか。そろそろ、あの子たちも来るはず」

 

それと。

 

「昴君の恰好も好みだけど、あたしは、秀君の方が好みよ。」

 

してやったりとニヤリと笑うと、柄にもなく耳が赤くなっている。

そんな所を。

 

「ちょっと!!!あの二人、さっきからすっごい良い雰囲気じゃない?!」

 

「園子!けど、大人の雰囲気っていうか・・・」

 

「ちゃっかり、人の目を遠ざけてる所とか抜け目ないな」

 

あの女子高生三人に見られてるなんて、露知らず。

 

 

それから会場に戻ると、

何故か、興奮している女子高生と毛利小五郎とボーイと会えた。

 

「始めまして、古雅麗華です。有希子から小五郎さんの話は聞いていますよ。

あの有名な探偵「眠りの小五郎」とか。お会い出来て光栄です」

 

「やあ、貴女のような綺麗な方に私の名前を知っていただけるなんて、恐縮です。

改めて、毛利小五郎と申します。何か困ったことがありましたら、どうぞこの毛利に!!!」

鼻の下伸ばしながら、言っても説得力皆無だけどね。

蘭ちゃんは慌てて、お父さん!!って怒ってるし、ボーイは乾いた笑みでやり過ごしてるし。

 

「麗華さん!!本当、綺麗ですね、女のあたしでも見惚れちゃいます!!」

 

「ありがとう、園子ちゃん達だって充分可愛いわ。ナンパされないようにね」

 

「大丈夫さ、僕が二人を護るからね」

 

ウインク付きで真澄ちゃんが言う。

そんな彼女の服装は、ドレスコートじゃなく、カジュアルなパンツスーツ。

まあ、彼女らしいっちゃらしい。

 

「なかなかのボディーガードね、頼もしいよ、真澄ちゃん」

 

「麗華さんには、立派なパートナーが居るから大丈夫だろ?」

 

「そうですね、今日の麗華さんの恰好は一段と素敵ですからね。心配ですよ。」

 

「ちょっと!!聞いた今の!!!昴さんサラッと言っちゃう所ほんとカッコ良い!!!」

 

「落ち着いて、園子!!・・でも、ほんと憧れるなあ。」

 

「なに、旦那の事でも考えてんの、蘭ったら」

 

「べ、別に新一の事なんか考えてないよ!!」

 

「新一君なんて、言ってないけどね!!」

 

園子ちゃんにからかわれて真っ赤になってる蘭にボーイは居た堪れなさがとてつもなく感じる。

分かる、ガールズトークは自分達が居ない所でやってほしいのよね。

 

「そ、園子ねえちゃん。そろそろ次朗吉おじさんがくるんじゃない?」

 

「あ、そうだった!!じゃあ、ちょっと抜けるけど、簡単に何か立食しておいて!!

ゆっくりしていってくださいね、麗華さん!昴さん!!」

 

慌ただしく、園子ちゃんが挨拶しに行くと、ボーイ達も立食しに歩いていく。

 

「それじゃあ、僕達も行きますか。お酒は軽めのもので?」

 

さりげなく、腰に回してエスコートする昴君に腹が立つけど、気にしないふりしておく。

 

「そうだなあ、後で飲み直したいから今は軽めで。何か、食べたいものは?」

 

「飲み直すなら、食事も軽めにしておきます。

では、お酒を貰ってくるので、少し待っていてください。」

 

「了解、ナンパされないようにね」

 

少し、からかいの意味を含めて注意しといたら昴君も、

人の事は言えませんよ。とか言いやがった。

 

それから、壁の花として少し待ってたら若い男性がこっちに歩いてきた。

 

「おひとりですか?」

 

「いえ、待っている人が居て・・」

 

「こんなに、綺麗な人を待たせるなんて勿体ない。」

 

「そんな事ありませんよ。それにこういうパーティーは少し苦手で・・」

 

「そうでしたか。今夜は怪盗キッドが出ると予告に入っていましたね。」

 

「そうですねえ、・・・・それで、あたしに何の用かしら?怪盗さん?」

 

「何の事で「しらきってどうすんの、あのボーイと一緒の所を見て、同行者か近しい者かと思って近づいたんじゃないの?丁度、今一人だしね。」・・・・鋭い頭脳のお持ちの方だ」

 

「それで、あたしのパートナーに真似ようかと思ったけど、上手く避けられたかしら?」

 

「そこまで、見破られるとは。流石、あの名探偵のお連れですね。

貴女の様な人に出会えた礼に、こちらをどうぞ」

 

生の怪盗キッド、アニメで見るより気障過ぎて秀君と同等かもしれない・・・。

侮れない・・・、って思ってたら、一本の赤い薔薇が出た。

 

「別れの時間が近づいてきたようです・・・。

貴女とはまた何処かで出逢える気がします。その時はお名前を聞いても?」

 

「そうね、『怪盗キッド』じゃない貴方に出会えたらね。考えておくわ」

 

「!!!光栄ですね、それでは。」

 

ドレスの緋色にも負けない、真っ赤な薔薇。

それを、瞬時に抜き取られて、顔を見上げると昴君が居た。

 

「ふと目を離した隙に声をかけられるとは、本当に妬けますね。

そして、いつまでその赤い薔薇を見ているおつもりで?」

 

「・・・・・」

 

「なんです?」

 

「いや、秀君も妬くんだなーって」

 

「・・・俺をなんだと思ってるんだ」

 

「いや、別にサイボーグとか思ってないから安心して。」

 

「思ってたのか・・・」

 

なんて茶番が続いたのは言うまでもない。

 


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