恋と禁忌と古代魔法   作:ラギアz

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第十八話「次の行き先」

 校舎の中を堂々と歩く二人に付いていくと、勿論警戒も何もしていないのだから敵に見つかるのだ。その度に驚き、焦りながら魔法を起動し始める俺とフェオに対して彼女達は冷静。相手に何かをさせる間も与えずに瞬殺してしまう。目を見張るような魔力の展開、変換速度に後れを取り続ける。

 まるで黒い炎の魔力なんて無かったかの様に、蟻を踏み潰すように蹴散らしていく。

 黒い魔力は、誰かからの付与。フェオの魔法を防いだ事や、上級魔法の行使から見るにかなりの魔力量がある筈。

 ……それすらも疑わしい速度で、もう俺たちは学校を覆う結界に辿り着いた。

 ぺたぺたと触る梓。思いっきり体を反らして、壁を殴るフェオ。それらを時々見ながら、周辺の警戒をする残り二人。

 結局、ここまでリノと会話は無かった。時々ちらりと俺を見るのは気づいているが、何と言っていいのかが分からない。今更何をしろと。そんな感じだった。結界に閉じ込められている今、ここに居る正常な四人は協力をするべきだ。何故なら相手は、これだけ沢山の大魔法を使っている人物なのだから。梓やリノが居るとしても、辛いものはあるだろう。

 それに、だ。俺は黒幕の正体がある程度分かっている。

 ここに居るとは考え難い。が、リノの逆転魔法やこれらを行える魔力を見ても心当たりは一つ。

 悪魔落ち、だ。

 学校で何をしようとしているかは分からない。だが、リノに掛けた『惚れ魔法』に逆転魔法が付与されていたと言う事は、悪魔落ちは俺自体に『惚れ魔法』の効果を逆転させるように魔法を使ったのだ。

 つまり敵は、俺の告白。そして『惚れ魔法』を知っている人物。

 ……そうするとフェオやロキが浮かぶが、あいつ等の他にも魔法があれば人の話なんて楽に盗聴できる。

 言えるのは、俺がリノに告白すると言った場所の人物が悪魔落ち。

 学校の人物だ。その誰かが、黒幕だろう。

 しかし、それが分かって何になる。魔法戦闘が強い三人が居ても、その足を引っ張るのは何も守れない、俺だ。罪だけを重ね、贖罪をした気になっていた罪人。

 協力する。それが近道で、最善策。

 脳では分かっていても、何もやる気は出ない。梓に分けてもらった魔力で回復した体をぐーっと伸ばし、視線を凝らし続けた。

 

 数分後。敵は現れず、後ろの方では梓とフェオが立ち上がって首を振っている。どうしたのかと問うと、残念そうに梓は呟いた。

「ダメだね。どうやっても開かないと思うよ。『メテオ』でも穴は開けられない。私とリノで『メテオ』と『カノン』を連発する手もあるかな、と思ったけど、結界を調べてみると自動修復まで付いていたよ。きっと、穴が開いたら直ぐに塞がる。実験をするには、リスクが高すぎる」

「それにこれ、外からは結界が見えないっぽいぜ。こっちから結界が見えるのは、両面不可視にする必要が無いからだな」

「人を呼ぶのはどうなの?」

「防音不可視……うん。凄い高度な結界。完全に、閉じ込められたし……こんな魔法を使えるのも、数人に絞り込めたし。まあ、何も分からなかったよりは良いね」

 リノの質問に答えてから、苦笑いで梓は締めくくる。

 黙って聞いていた俺は、予想が確信に変わるのを感じた。嫌な、確信だ。

(……だけど、ここからの行動は分からないよな。どうするんだろうか)

 そう呑気に思ったのも束の間、フェオが切り出す。

「なあなあ、さっきの音って何だったんだ?」

「音?……ああ、そう言えばしたわね。体育館の方だったかしら?」

 言われてやっと思い出す。音が聞こえてカーテンを開けて、結界を見つけたのだ。

 体育館の方からした音。……行先は、決まってしまったらしい。

「じゃあ、行こうか。次は体育館だ」

 梓が口に出して、俺たちは頷く。警戒を緩めず、悠々と歩く二人の後ろを男子はまた追っていく。


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