三人が慎重に、警戒を強めながら鉄骨などが組み合って出来ている道を進むと、開けた場所に出た。
開けた場所というか、三人が出たのは広場のようになっている場所の上にある足場のような場所だ。コンクリートなどが足場になっていて降りられるようだがその降りた先には無数の機械生命体たちがいた。
「敵性反応を検知。個体識別反応をマークした個体はあの中にいる模様」
「あれの中に……数が多いですね……」
「だな。とはいえ、降りないことにはどうしようもないし……」
「……ポッド、7Sとの通信を開いて」
「了解。ポッド042からポッド094へ通信」
「通信信号を受信」
「2B?」
何事かを考えていたようだが、ポッドに命じて自分へと通信を送ってきた2Bをいぶかしみながら7Sが名前を呼ぶ。
同じように9Sもどうして2Bがそんなことをしているのかわからないようで、不思議そうにしていた。
2Bは特に妨害電波などが出ているわけではなく、普通に通信が繋がったことを確認してから説明を始めた。
「7Sは此処から援護射撃とハッキングをお願い。もっと広ければ問題はなかったけど、あの場所だときっと7Sは必要な距離が取れない。
7Sは本当は機械生命体との戦闘は想定されていないんだから、無理をさせるわけにはいかない」
「確かにそうだけど……」
「それに数が多いなら7Sにハッキングをしてもらえれば戦闘が楽になる。最悪全部爆発させてくれれば良いよ」
「うわぁ……2Bがあのジャッカスさんみたいなこと言ってる……」
「待って2B。それする前にちょっと2Bの記憶領域とか基本システムとか色々確認しても良い?
あのジャッカスから変な影響を受けてるとか、ジャッカスウィルスとか変なウィルスに感染している可能性とかあるかもしれないしさ」
あのジャッカスと同じように爆発させて解決、という手段を選ぼうとしている2Bを見てそんな言葉を零す9Sと、有りはしないだろうが妙なウィルスに感染しているのではないかと本気で心配する7S。
確かに爆発ということで、つい最近見たジャッカスのアレが頭に浮かぶのは仕方の無いことだろう。だがそういうことではないと2Bが説明を始めた。
「そういうことじゃなくて、単純にそれが一番早いってだけ。爆発の影響を多少は受けるかもしれないけど、それでも私と9Sなら大丈夫だから。
それと9Sには下で私と一緒に戦って欲しい。あの数を相手にするなら誰かに背中を守っていて欲しいから」
「2B……はい、わかりました。背中は任せてください」
2Bに背中を守って欲しいと言われて、嬉しそうに9Sはそう答えた。2Bに頼られたのが嬉しかったのか、気合を入れている9S。
そんな二人を見て、どうやら自分は本当に上で援護をしなければいけないようだ。と悟った7Sがため息を零す。
「わかった。此処から援護するけど二人とも無理はするなよ?」
「わかってる。7Sも自分が狙われないとは限らないから警戒しておいてね」
「そうですね……僕知ってますよ、こういうので一人だけ残るのって死亡フラグって言うらしいですから気をつけて」
「最後に嫌なこと言って行くのやめない?いや、俺も実はそんなこと思ったけどさ」
そうして話が終わると、7Sを残して二人とも下へと降りていく。7Sは自身の周囲に機械生命体がいないかスキャンするが近くにはいないらしい。いるとしてもそれは下にいる機械生命体たちだ。
ポッドへと何か近づくようなことがあれば警告をするように命令しつつ、2Bたちが戦闘を開始したら援護射撃をするようにも命令しておく。改造を施されたポッドであればそのくらいは余裕だ。
そして自身はコンソールを開いていつでもハッキングが出来るようにと準備を進める。
2Bと9Sの二人が下へと降りている道中にもアンドロイドの死体が幾つかあり、何が起こっても対応出来るように刀を握ったまま降りる。
すると途中でコンクリートが崩れ、つまり、2Bと9Sはそのまま広場の端へと落ちて行ってしまう。
ただ気構えが出来ていた為か、9Sは落ちている最中にポッドに掴まることで落下の衝撃を和らげることに成功していた。また2Bに到っては落下の衝撃をものともせずに見事に着地してみせた。
「二人とも、大丈夫?」
「大丈夫です。問題ありませんよ」
「私も。それより……」
広場にいる機械生命体たちはそれぞれが奇妙な行動をしていた。
空の揺り籠を揺らしている者や横たわった者に何度もぶつかっている者など異様な光景が繰り広げられていた。
「コドモ コドモ コドモ」
「何だ……これは……」
「ダイスキ ダイスキ」
「7S?」
「これは人類の模倣をしてるように見えるな……揺り籠に子供を入れて、一定の感覚で揺らしてあやしたり眠りやすくしてたらしい」
9Sが問えば、7Sは推測を口にした。
空の揺り籠を揺らしている機械生命体はきっと、人類がそうしていたという記録があったからこそ、そうしているのではないかと。
「機械生命体の中には人類の模倣をするのがいるって話はしたけど、その場合はそれなりの数の機械生命体が同じ行動をするんだ。
砂漠で見かけたのも、今いるのも装飾や化粧みたいなのが同じだろ?」
「確かにそうですね……」
「だからこいつらも集団で人類の何かを模倣してるとは思う。それが何かははっきりとはわからないけど……」
何を、何故模倣しているのかはわからないと言う7Sは観察をしようとしているようで、2Bが上を見ると7Sが身を乗り出して広場を見ていた。
「イッショニイヨウ イッショニイヨウ」
「ダッコ ダッコ」
「オッパイ」
「スキ スキ スキ スキ」
「…………ダメだ、わからない。それにこれ以上観察を続けるのはリスクもあるし、残念だけど破壊しよう」
「そういえば、どうして襲ってこないんだろう」
「模倣するのを優先してるのか、気づいてないのか……どちらにせよ敵性反応がある以上は放っておけないな」
7Sはそう言って、コンソールを操作し始める。
同時に2Bと9Sが刀を構えると広場の中央に本来のターゲットが現れた。
先ほどまでは延々と逃げ続けていたはずのその機械生命体の手には武器が握られており、もはや逃げる気はないようだった。
「ヤッテヤル!!」
機械生命体が叫ぶと広場にいた全ての機械生命体が2Bと9Sの方へと顔を向けた。そして何処からか武器を取り出して二人へと歩み寄る。
ある程度近寄ると武器を持った機械生命体たちが二人に襲いかかろうと飛び掛った。
だがその瞬間、二人へと襲い掛かっていた全ての機械生命体が爆発を起こして砕け散り、残骸となった。
これは7Sがハッキングをしたことが原因であり、たったそれだけで全ての機械生命体が破壊されたことになる。
あまり強くはない爆風に煽られて2Bと9Sが腕を前に翳している。それが収まると転がっているのは残骸のみで、終わったのかと思い構えを解く。
「2B!9S!周囲に敵性反応多数だ!」
だが、終わった訳ではなかった。7Sがそう叫ぶと同時に砂の中や瓦礫の影から多くの機械生命体が現れる。
反射的に構えた2Bは戦闘モデルとしてのシステムに従ったのか、はたまた自身の意志なのか、先手必勝とばかりに駆けて一番近くにいた機械生命体を切り伏せる。
「9S!行くよ!」
「はい!背中は任せてください!」
「二人とも無茶はするなよ!ポッドの射撃を上手く使え!それと離れないように立ち回れ!」
「言われなくてもわかってる!」
「7Sこそ、援護をしっかりと頼みますからね!」
それぞれが声を掛け合い、やるべきことを確認して機械生命体の集団へと斬りかかる。
2Bが前に出て敵を斬り捨てポッドに指示して近寄って来る機械生命体の足止めをする。
9Sが2Bの足止めした機械生命体を斬り、ポッドで追い討ちをかける。
7Sがポッドによる援護射撃で二人が撃ち漏らした機械生命体を破壊し、ハッキングによって爆発させたり隷属化させて同士討ちさせる。
砂漠で見せた連携の一部が変わっただけのそれは、戦いを有利に進めるには充分なほど効果があるように見えた。
しかしそうして戦い続けているが、機械生命体の数は一向に減らない。いや、減らないどころか広場を埋め尽くさんばかりに増えている。
今はまだ2Bと9Sは無傷で立ち回れているが、それがいつまで続けられるかわからない。一撃入れば、そこから一気に畳み掛けられて死んでしまう可能性が高い。
どうにかしなければジリ貧だ。このままでは勝ち目はない。
現に、徐々にではあるが2Bへと振り下ろされた機械生命体の腕が衣服の一部を掠り、回避が間に合わなくなっていることがわかる。
また9Sに関しては操る刀が精細を欠き始めており、一刀で斬り伏せることが出来ずに機械生命体を半分ほど斬ったくらいで止まってしまうことがある。
「7S!」
「数が多すぎる!ハッキングが間に合わない!」
2Bの意図を察知しながらもそれが出来ないと叫ぶ7S。
確かに7Sのハッキング能力であれば一度に複数の相手を爆発させたり隷属化させることも可能だろう。だがそれはこの場では敵の数が多すぎると言う理由でまともに機能しない。
爆発させたところで何処からか追加の機械生命体が現れ、隷属化させてもすぐにそれが破壊され、追加で敵が現れる。そんな状態ではハッキングの意味がない。
単体の強さ、ハッキングの難易度は対したことはなくともこれだけの数が集まれば驚異となる。これこそが数の暴力というものなのだろう。
どうすれば良いのか、三人が考えながら何とか戦い続けていると突如として機械生命体たちが喋り始めた。
「コノママジャダメ」
「コノママジャダメ」
「コノママジャダメ」
だが喋り始めたかと思うと電源が落とされた機械のように急に動きを止めた。
そんないきなりの出来事に何事かと2Bたちが警戒していると、機械生命体たちは慌てているような、もしくは悩んでいるように頭を抱えて奇妙な動きをしながら「コノママジャダメ」と繰り返した。
それはこの場にいる全ての機械生命体が同じ行動をしており、気付けばまるで合唱をしているかのようにその言葉が響いている。
意味の無い言葉を喋ることはあっても、これほどの数の機械生命体が同じ言葉を発しているとなると、それは非常に不気味な光景だった。
「何だ……何が起こってるんだ!?」
「わからない。けど、嫌な予感がする……」
「二人とも!今のうちに数を減らさないと!」
9Sが叫んで近くの機械生命体を斬り捨てる。それが小さな爆発を起こした瞬間、機械生命体たちは突如として柱をよじ登り始めた。
そして、瓦礫の影や砂の中から更に出てきては次々と柱をよじ登り、機械生命体たちがまるで繭を作るように密集するとその繭が奇妙な光を発し始める。
同時に、上にいたはずの7Sがポッドに捕まって広場へと降りてきた。
「何がどうなってるのかわからないけど、とりあえず数の暴力は終わりで良いよな……」
「良いとは思いますけど、どうして降りて来たんですか?」
「2Bが嫌な予感がするって言ったからな。なら離れてるよりは三人で固まってた方が良いかと思って」
「あぁ、なるほど……」
「7S、あれに心当たりは?」
「ない。機械生命体が集まって繭を作るなんて初めて見たし聞いたことはなかったな」
「だったらこれは一体……」
三人が警戒しながらも相談をしていると、重いものが動いているような、耳障りな音が聞こえ始めた。何事かと周囲を見回してその音が何処から聞こえてくるのかを探すと、それは頭上にある機械生命体の繭からだった。
一体何が起こるのかと咄嗟に刀を構えてそれを見ると、機械生命体の繭が割れ、その中から何かが落ちてきた。
広場の中央付近に落ちてきたそれは人の形をした物で、アンドロイドのように見えた。
「あれは……アンドロイド……?」
「違う……こいつは機械生命体です!」
アンドロイドに似た質感を持つその機械生命体はヨロヨロと立ち上がると三人をじっと見る。
2Bと9Sは襲って来るわけではないが、どうにも観察をされているような、そんな気がした。
「2B、敵性反応を検知しました。
あれがどういう存在かはわかりませんが、壊しましょう」
「そうだね……7Sもそれで良いよね?
…………7S?」
声を掛けても反応がないことをいぶかしんで2Bと9Sが7Sを見ると、7Sは小さく震えていた。
この未知の存在に恐怖を感じたのか、そう心配になり更に声を掛けようとした瞬間。
「へ、変態だぁぁぁ!!」
ビシッと人差し指でその機械生命体を指差して7Sがそう叫んだ。
恐怖で震えているのかと思ったがそうではなかったようだ。いや、恐怖を感じてはいるのかもしれないが、それは2Bと9Sの考えていた恐怖とは別物である。
確かに全裸の変態が突如目の前に現れれば恐怖くらい感じるとは思われるが。
「人類で言うところの成人男性の見た目で全裸とか完全に変態じゃん!更に言えば女性型の2Bと男性型かつ少年型のオレと9Sの前にそれで出てくるとか言い逃れ出来ないだろ!ぶっ壊すぞお前!」
「7Sは何を言ってるんですか!?」
「二人とも、あの変態から少し距離を取ろう。もしくは壊そう」
「2Bまで!?」
「冷静に考えてみろよ。普通に任務に当たってる最中に全裸の変態が出てきたら9Sはどうするよ」
「それはハッキングします」
ハッキングする。つまり、殺すと言っているようなものだ。そして、それを即答する辺りある意味では二人と大差ない。
というか先ほどまで驚いたように二人を見ていた9Sだが、そんな状況を想像してから答えるまでのタイムラグがほぼなかったことを考えると一番怖いのは9Sなのかもしれない。
また、それぞれが違う反応をしているようで、実は同じことを考えている。これは7Sに毒されてしまったのか、それとも元々なのか。それは誰にもわからないが、もしかすると類は友を呼ぶというやつなのかもしれない。
そうした三人を観察していた謎の械生命体は変態という言葉をぶつぶつと呟いている。
「とりあえず敵性反応もあるし変態だし壊そう」
「そういう判断基準はどうかと思うけど変態だから今回は同意かな」
「でも気をつけてくださいよ。あんなの見たことがありませんし、変態ですから僕たちが思っているより危険な存在かもしれません」
どうしてこの三人は理由に「変態だから」を追加しているのだろうか。
だがそうして馬鹿なことを言いながらも7Sがコンソールを操作している。どうやら謎の機械生命体をハッキングしているようだったが、突如として叫んだ。
「あいつ、凄い速度でシステム面で進化してる……2B!9S!馬鹿やってないで壊そう!放っておくとヤバイ気がする!」
「わかった!9S、もう少し頑張ろう!」
「うわっ!?機械生命体ってこんな速度で進化するものなんですか!?」
一瞬だけ7Sのコンソールを確認した9Sが驚愕の声を上げる。その進化速度は異常の一言に尽き、尚も進化を続けている。このままいけば、数分としないうちに戦闘可能なレベルでシステムが完成するだろう。
いや、完成ではない。これはきっとその先へと進化をし続けるような、そんな確信にも近い予感を7Sは感じた。
「くっ……!ハッキングが追いつかない!システムを乗っ取ったところから進化されて主導権を上書きされてる!
行動の妨害もまともに出来ないからハッキングでの支援は無理だ!」
「だったら一緒に戦って!その話を信じるなら手数が必要になる!」
「7S!2Bの援護に回りましょう!」
「わかった!ポッド、グラビティ、スロー、ハンマー!」
「了解。命令を実行」
ハッキングが意味を成さないというのならどうやって支援すれば良いのか。
簡単なことだ。自身が改造強化を行ったポッドにプログラムを発動させて支援をすれば良い。
まずはグラビティの効果で謎の機械生命体を引き寄せ、スローで無理やり動きを遅くして、ハンマーで叩きつけて攻撃する。当然、そうしている間にも2Bや9Sが攻撃を行っている。
だがどうにも攻撃の通りが悪い。
「こいつ……防御システムから構築したのか!?」
「どういうこと?」
「他の機械生命体に比べて防御力が上がってる。単純に今までの機械生命体よりも硬いってだけの話だけど……」
「それって僕と7Sの攻撃、通りますか?」
「……厳しいだろうな。9S、オレたちの役目は如何に2Bの攻撃を通させるか。ってところだな」
「わかりました。2B、あまり長引かせても僕たちが不利です。一気に決めましょう」
「そうだね……7S、拾ってきてくれたこれ、使わせてもらうよ」
グラビティとスローのおかげで此方に攻撃はして来ない。だからこそこうして作戦会議が出来るのだが、その結果は2Bが強力な攻撃を叩き込むというものだった。
ならばと2Bは7Sが回収していた大きな刀を取り出した。今まで使っていた刀より、此方の方が破壊力が高いからだ。
「ポッドのプログラムの効果が残ってる今の内にやろう。
一応は強化プログラムの物理攻撃力上昇を使って……あ、これ飲む?」
「これは……?」
「知り合いからもらった酒。何故かこれも支援プログラムと同じ効果があるから一気に決めるなら使えるかなって」
「お酒……少しくらいなら大丈夫かな……」
「2B、不安ならやめた方が良いですよ。7Sも強制はしない、ですよね?」
「しないしない。ならこれでやろう」
強化プログラムを使って2Bを強化していた7Sが瓶を取り出して使うかどうかと聞いた。
知り合いから貰った酒が入っていると言うが、どうしてか攻撃力が上昇するらしい。何故酒を飲んで上がるのか、7Sにもわかっていないようだった。
尚、攻撃力というのはアンドロイドの力のリミッターを一時的に引き上げる効果があるもので、使い続けると義体に負荷がかかるので短時間の運用しか想定されていない。現に一度の使用で15秒か30秒の強化しか行うことが出来ない。
最終的には強化プログラムのみということで話がついた。
そして、その機械生命体の前に立った2Bが腰を落として刀を構える。
「9S、ハッキングして防御システムの一部を剥ぎ取るぞ」
「了解。一部なら僕と7Sが組んでやるんですから、やれますね」
言ってから二人で防御システムの機能を停止させにかかる。先ほどと同じように進化するシステムによって全てを停止することは出来なかったが、それでも一部を停止させることに成功する。
これならば強化プログラムを使っている2Bの攻撃が確実に通るだろう。そして上手くいけば一撃で破壊することが出来る。
「2B!今だ!」
「一撃で決めてくださいよ!」
そんな二人の言葉を聞いて、力を溜めるように構えていた刀を一気に振りぬく。
銀色の残光を残しながら振るわれたその一太刀は、謎の機械生命体を両断することこそ出来なかったが深い傷を与えることに成功していた。
そして、それほどの損傷であれば破壊するには充分だったようで、血のような赤い液体を流しながらその機械生命体は倒れた。
警戒しながらも少し観察するが立ち上がる様子もなく、漸く終わったか。と三人が息を吐いてから構えを解く。
それでもコンソールを消さず、刀を納めない辺りに完全に警戒を解いたわけではないことが窺える。
「とりあえず、終わり?」
「だと良いですね……とりあえずあれが何なのか、調べないと……」
「そうだね……この機械生命体を調べて、バンカーに情報を送らないと……」
「それはオレがやっておくよ。戦い続けてた二人は少し休んでな」
言ってから倒れている機械生命体の情報を探ろうとした7Sだったが、異変に気づく。
その機械生命体の傷口から、腕が生えているのだ。
「二人とも構えろ!まだ終わってない!」
7Sの言葉に反応して二人が反射的にそちらを見ると、傷口からもう一人、同じ見た目をした機械生命体が現れているところだった。
二人目の機械生命体。それは倒れている最初の一人を抱きかかえると、三人になど目もくれず咆哮を上げる。
その音を聞いた三人は自身の耳を押さえながら武器を構えるが、尚も大きくなる咆哮は周囲の建物の残骸をも揺るがす。
「くぅ……!二人とも、引こう!これは無理だ!」
「でも、あれを倒さないと……!」
「ダメです2B!周囲の残骸が崩れてきます!!」
大きく揺れ始めた残骸が上から降って来る。それにいち早く気づいた9Sはそう叫ぶと、逃走経路を探す。
すると残骸の一部が崩れたことにって道が開けた場所を発見することが出来た。
「2B!生き残ることを優先しろ!このままじゃ生き埋めになって死ぬだけだ!」
「そう、だね……わかった、二人とも逃げよう」
「はい!こっちです、ついて来てください!」
「殿はオレが務めるから先に行け!」
倒さなければ厄介なことになる。そう思って破壊することを優先しようとした2Bであったが生きることを優先しろと言う7Sの言葉に少しだけ考えて、そして頷いた。
そんな2Bが逃げることに賛成したのを見て9Sが逃げるために先頭を走る。それについて行く2Bの後ろには殿を務めると言った7Sが続く。
このままただ逃げるだけならばそれでも良かったのだが、残念なことに殿を務めるのはあの7Sであり、その手の中にはとある危険物が握られていた。
「逃げるけど、置き土産にこれをくれてやる!有り難く受け取ってくれよな!!」
そう、あのジャッカスから送られた爆弾である。破壊力抜群の範囲控えめということで逃げる際の置き土産には充分だと判断した7Sはそれを機械生命体の前に投げた。
しかしこの爆弾、ジャッカスが間違えて渡した爆弾である。
どういうことかと言うと、破壊力過多で範囲の広い物だった。
結果として爆発は機械生命体二人を巻き込むのは当然として、降って来る瓦礫を粉々にして吹き飛ばし、更には殿を務めていた7Sをも爆風で吹き飛ばしてしまったのだ。
声にならない叫び声をあげて吹き飛ばされた7Sではあったが、そのことに気づいた2Bに抱きかかえられるようにして受け止められたことで事なきを得たがもし岩にでもぶつかっていれば死んでいたかもしれない。
そのことが脳裏に過ぎった7Sは、内心で冷や汗を流しながら2Bへと感謝するのであった。
初登場で全裸とかレベル高い変態さんだなぁ。
正直すまんかった。でもこれがやりたかったんだ。
誤字脱字報告ありがとうございます。非常に助かります。
というか誤字多すぎで笑えない……
思いのままに作って上げてるからね、仕方ないね。
警告:人類は人前で全裸になると犯罪者として処理されていた。今後は衣服を着ての登場を推奨する。