廃墟都市周辺の調査の為に2Bと9Sが来ると聞いた7Sは、砂漠地帯、マンモス団地周辺のマップを作る予定を変更して崩壊したビルの中に旧世界の文献がないか探していた。
何時来るのか、命令を受けた際に聞いておらず、だからと言って連絡を取ってそのことを聞くというのは何処か間抜けな印象を受けてしまい7Sはそれが出来ないでいた。
とはいえ、旧世界の文献を探すことも重要な任務である。だからこそこうしていても司令部としては可笑しなことをしているとは思わないだろう。というのが7Sの考えだ。
そうした考えで動いて、必要なことを確認しないからこそ11Oに困った弟と見られているのだが、本人にそれを知る由はなかった。
「推奨:司令部へ、2B及び9Sの到着予定時刻の確認」
「その内来るから良いんだよ……それよりも旧世界の文献を……」
「推奨:到着時刻の確認による行動予定の再構築。
疑問:7Sは旧世界の文献を見つけた場合の自身の行動を理解しているか」
「うっ……た、確かについつい読み耽ることはあるけど、それはどんな内容なのか確認する必要があるからであって……」
「そうした問題に繋がる可能性のある行動は控えるべき」
「……わかった、わかったよ!ったく……どうしてこうポッドってのは口うるさいんだか……」
文句を言いながらもポッドが11Oへと通信を繋げるのをビルの外へと足を向けながら待つ。
それはすぐに繋がり、11Oが応答する。
『此方11O。どうかしましたか』
「2B及び9Sの廃墟都市到着時刻の確認をお願いします」
『了解しました。
…………後、お姉ちゃんは7Sのそういうちょっと抜けたところ心配だから言うけど……本当はそういうの、最初に確認しないとダメだからね?』
「素に戻るなよ!任務中はちゃんとするって言ったのアンタだろ!」
『……失礼しました。到着時刻は現在より3時間後を予定しています。
到着後はレジスタンスキャンプに向かうことになりますので、念のためにキャンプから離れた位置に着陸しますので迎えに行ってあげてください』
「はぁ……了解しました。7S、任務に戻ります」
『あ、そうだ。ちゃんとメンテナンスとか忘れないようにしないとダメだよ?たまに忘れちゃう子が居るって聞くから……』
「通信切りまーす」
『あ、待って待って!まだ話は終わってないってば!!』
11Oの抗議の言葉を無視して7Sは通信を切る。そして疲れたように肩を落としてからポッドを恨めしげに見上げた。
「こうなるから連絡したくないってものあったのに……!」
「推奨:次回より確認の確実な実行」
「あぁ!本当にそうした方が良いって思ったさ!」
ヨルハ部隊は感情を持つことを禁止されている。ということなど知ったことではないとばかりに自身の感情に素直に吠える7Sだが、それを咎める存在はいない。
精々がその声に反応して逃げていく野生動物くらいのもので、ビルの外をうろうろしているだけの機械生命体は一切反応をしない。
一通り吠えてとりあえずは落ち着いたのか、7Sはそんな機械生命体の内の一体に近寄り、しゃがみ込んでその様子を観察し始めた。
此処の機械生命体はアンドロイドが近づいたとしても襲ってくることはなく、ただ歩き回るだけの存在だ。
攻撃は加えるようなことがあれば反撃もするのだが、何もしなければ無害であり、7Sのようにしゃがみ込んで観察しても何ら問題はない。
だからと言って、それを実行するかどうかは別の話であるが。
「……ポッド、こういった機械生命体についてバンカーから情報は?」
「該当項目なし。無害な機械生命体が存在すると報告するが、無害な機械生命体など存在しないと一蹴された」
「あー……思い出した。確かにそんな風に言われたな……
実際に無害な機械生命体が存在するから報告したってのに、一言で片付けられたっけ……」
「推奨:無害とされる機械生命体の調査」
「そうだな……ハッキングして、少し調べてみるか」
7Sがその機械生命体にハッキングを仕掛け、何か他の敵性反応を持つ物と違うところがないか調べる。
流石特化型と言うべきか、その動きに一切の淀みがない。数秒と掛からずにハッキングを完了させてシステムやプログラムを細かく見ていくと、7Sの手が止まった。
「……ポッド、ハッキング可能範囲の拡大」
「了解。支援開始…………廃墟都市全域をカバー」
「敵性反応がある機械生命体は……こいつらか。こいつらと他の無害な機械生命体をハッキングして……」
現在ハッキングしている機械生命体の他にも数体選び、同時にハッキングを進めていく。手元には幾つものコンソールが展開されているが、7Sはそれを当たり前のように操作し、一つ一つを確実にハッキングしていく。
そして全てのシステム、プログラム、ネットワーク環境などを調べてからコンソールを消してハッキングを終える。
同時に、ポッドが支援を終了しいつも通りに7Sの傍に浮かぶ。
「確認:7Sはどのような情報を得たのか」
「確信が持てないけど、パスカルの話と合わせればこいつらはそういうことなんだろうな……」
「推測:敵性反応のない機械生命体はネットワークから切り離されている」
「そう、でもそうなると何でネットワークから切り離されたら無害になるのか、って疑問が出てくるわけだ」
「提案:更なる調査」
「時間があればやるんだけど、今はないから後回しだ」
「……了解。今後の予定の一つとしてネットワークの繋がりの有無による機械生命体の在り方の調査を追加」
「あぁ、ありがとう。さて、一応二人が到着予定の場所まで移動しておくか」
「此処からであれば一時間は掛からない。余裕を持って行動するのは任務において重要。よってその意見に賛同する」
言葉を交わしてから立ち上がると、7Sの目の前にいた機械生命体がそれを見上げるように動いた。
何となしに7Sがその頭を軽く撫でると機械生命体は首を傾げるような動作をして、またうろうろと歩き始める。それを見送ってから7Sはマップにマークされた到着予定地点へと向けて移動を開始した。
▽
『2B!もうすぐ目標地点に到着しますよ!』
『わかってる』
飛行ユニットで目標地点まで移動をしている道中に現れた飛行型の機械生命体を一掃し終わり、もうすぐ到着するというところで9Sが2Bへと声をかけた。
その声を聞くだけで隠しようのない喜色が見て取れる。
『……9S、随分と嬉しそう』
『え?そうですか?』
『何か良いことでもあったの?』
『えっと……良いことがあるとすれば、2Bや7Sと行動出来ることですね。
前にも言いましたけど、僕たちスキャナーモデルは単独での任務が主ですから誰かと一緒に行動出来るのって本当に嬉しいんですよ』
『そう……でも、私たちは感情を持つことを禁止されている。それを忘れないで』
『はーい。確かに2Bはあんまり感情を出しませんからね……
あ、そうなると7Sを見たらびっくりしちゃうかもしれませんよ?』
『…………7Sは、感情に素直すぎる』
『そうなんですよ、興味のままに思いのままに、すぐにふらふらーっと……って、あれ?2Bって7Sのこと知ってるんですか?』
『以前一緒に行動したことがあるだけだよ。その頃と変わってないなら、って話』
『なるほど……なら大丈夫ですね。7Sはバンカーでは問題児なんて言われてますから、2Bとそりが合わなかったらどうしようかなって思ってたので安心しました。
7Sがどういう人か知っていて、一緒に行動していたなら大丈夫そうですからね』
その言葉には安堵の感情が込められているのが2Bにはわかった。
だが反対に2Bの心情は穏やかとは言いがたいものがある。7Sとは過去に行動を共にしたことがある。関係は良好で、幾度となく助けられ、また助けもした。しかし、そんな7Sと別れることとなった理由を思えばこそだ。
しかもそれは一度だけではなく、何度も何度も繰り返されているからこそ2Bにとって7Sと顔を合わせるのは辛く厳しいものがある。
例え、7Sが自分に変わらず接し続けてくれるとしてもだ。
『よし……そろそろ下降しますよ』
『……了解』
しかし、そんなことは任務には関係がない。今はとにかく自分に与えられた命令を確実にこなさなければならない。
9Sの言葉に従い、ビルの屋上へと下降する。ただそこには待機していると言われていた7Sの姿はなかった。
これもまた問題児と言われてしまう所以なのかもしれないが、2Bは7Sであれば自分と9Sに関しては時間通りに待機していると思っていたので酷い違和感を覚えた。
それでも、7Sと顔を合わせる心の準備が出来ていなかったのでその点に関しては安堵してしまった。
「あれ……7Sが待機してるはずなのに、可笑しいですね……」
「7Sなら仕方ないとも思うけどね」
「あー……反論出来ないですねそれ……」
「とりあえず、レジスタンスキャンプに向かおう。何時来るかわからない7Sを待つよりもその方が良いから」
「そうですね……わかりました。7Sにも通信で伝えておきますね」
既に歩き始めている2Bの後に続きながら9Sが通信を試みる。が、それは前を歩いていた2Bが突然立ち止まったことによって叶わなかった。
「わっ……と、すいません2B!」
突然のことで2Bにぶつかってしまった9Sが謝罪をするが2Bはそれを聞いている様子はない。
「あれは、何……?」
「え?」
2Bはビルの正面辺りにある地上を見ていた。そこには2Bと9Sにとって見覚えのある紅い髪のアンドロイドが、複数の機械生命体と行進している姿があった。
「…………どうみてもあれ7Sですよね」
「その7Sが何故か機械生命体と行進してるように見えるのは私の気のせいかな」
「大丈夫です、2B。僕にも同じ物が見えてますから。
あ、今度は機械生命体が集まって何かし始めましたよ」
「機械生命体の上に機械生命体が乗ってる……?」
「あれは、旧世界において組み体操と呼ばれたもの。その中のピラミッドと予想」
「組み体操もピラミッドもよくわかりませんけど、なんでそれを7Sの指揮の下やってるんでしょうか……」
「はぁ……こういうのは本人に聞くのが一番。行くよ」
ため息をついて考える事を放棄し7Sを問い詰めようと決めた2Bと疑問符を浮かべる9Sはとりあえず7Sが何やらやっている地上へと降りることにした。
9Sは今からビルを降りる間に更に7Sが可笑しなことをしそうだな、と思いながら歩き始めようとした瞬間、2Bが何の迷いもなくビルから飛び降りた。
「なっ……2B!?」
驚きの声を上げる9Sに反応することなく2Bは落下の途中でポッドに掴まり緩やかに下降していた。
「この高さから飛び降りって……あぁ、もう!2Bも無茶する人だったなんて!!」
悪態をつきながらも自身もビルから飛び降り、同じようにポッドに掴まる。確かにこれならば普通にビルを降りるよりも早く、7Sが更に妙な行動を起こす前に7Sのいる場所まで辿り着くことが出来る。
合理的ではあるのかもしれないが、9Sの中で2Bはこういった突拍子も無い行動をするような人だとは思っていなかったので驚きつつ、もしや7Sを含む三人の中で一番普通の考え方が出来るのは自分なのではないか、と少し不安に思ってしまった。
2Bが地上に降り立つ頃には7Sの前でピラミッドを完成さえた機械生命体たちが何処か誇らしげにしていた。
そんな機械生命体たちを見ながら7Sも手元の本に書かれている旧世界の組み体操というものが機械生命体によって再現されていることに満足しているのか、実に楽しそうにしていた。
2Bはそんな7Sに近づいて、心の準備がどうだとかもはやどうでも良くなったのか普通に声をかけた。
「7S……それは何をしているの?」
「これは旧世界において組み体操っていう集団での行動をする際に行われていたもので、これはピラミッドって言うんだってさ。由来は建築物のピラミッドと同じように底辺が広く頂点に向かって収束していくような形状をしているから、ってのが妥当だな。
少し前にそこのビルでこの文献を見つけたんだけど、読んでるうちにどんな感じなのか気になって、この辺りの機械生命体は基本的に襲ってこないし軽く説明して実際にやらせてみてたんだ。
本当なら行進から始まってサボテンとか扇とか色々あるらしいけど、2Bと9Sが来るってことは時間もないし今回は仕方なく行進とピラミッドだけにしたんだけど……って、あれ……なんで2Bが居るわけ?予定の時間は……あ……」
「再三の警告を聞かなかったのは7Sであり、自業自得である」
気分良く話していた7Sであったが、質問をして来たのが2Bであることと、現在の時刻を確認すると動きを止めて冷や汗を流していた。そこに追い討ちをかけるように自身は警告していたというポッドの言葉。
もはや言い逃れようのないほどに7Sが原因であり、流石の問題児というべきかさっそく問題のある行動をしてくれた。
それに対して2Bはこれ見よがしにため息をついて口を開く。
「……7Sが自分の興味のある物に夢中になりやすいのは知ってるけど、作戦行動に支障を来たすようなことは控えて。相変わらずなのには、安心したけど」
「いや!これでも時間に余裕を持って移動してたんだぞ!ただ、その……任務の一環である旧世界の文献集めをだな……」
「言い訳は聞かない。まったく……7S、何度も言うけど私たちは任務を確実にこなす必要があるんだからもう少し自覚のある行動を……」
「2B!いきなり飛び降りるなんて無茶な行動はしないでくださいよ!!」
7Sに対して苦言を呈している2Bであったが、追いついてきた9Sによってそれは遮られることとなった。
心配しているようでもあるが、それ以上に僕怒ってます。とでも言うような空気を醸し出している。
「飛び降りた?何をしてるんだか……」
「7Sが妙なことをしていたから、とりあえずすぐに注意しようとしただけ。元はと言えば7Sが……」
「言い訳はしないでください!どうしてこう、7Sも2Bも自由というか、突拍子も無い行動をするんですか!」
「げっ……飛び火した……」
「飛び火も何も僕は7Sにも話をしようとは思ってましたよ。
まったく……それで、先に聞いておきますけど7Sは何をしていたんですか?」
とりあえずは話を聞くことを優先したのか、9Sは未だにピラミッドを作っている機械生命体たちを見て7Sに問いかけた。本来であれば機械生命体を破壊しなければならないはずだが、7Sが奇妙なことをしているのですぐにそうすることも出来ないでいた。
それもどこか誇らしげなその様子に、本当にこれが機械生命体なのかどうか、という疑問も浮かんでいるのだが。
「旧世界の文献にある組み体操ってのを機械生命体たちに話して実行してもらってたんだよ。ただ、良く考えればこのサボテンってのはそれなりの身長が必要というか、膝を曲げて太腿に足をかけるって考えるとこいつらには厳しいのがなぁ……」
「何をやってるんですか……って、え?機械生命体たちに話して?」
「ん?あぁ、説明したら快く協力してくれたぞ?」
「待って。機械生命体と話をしたっていうのは本当なの?」
「出来ないのが大半だけど、こうした無害な奴はある程度会話が成立するからな。まぁ……話せる言葉自体が少ない場合は厳しいけど……
それでも言いたいことは理解してくれるし、場合によっては試行錯誤しながら行動してくれるからな」
「7S!自分が何を言っているのかわかっているの!?」
7Sは平然と機械生命体たちと会話をしたと答えるが、それは有り得ないことだと2Bは声を荒げた。当然、その話を聞いた9Sも驚愕の表情を浮かべている。
機械生命体には心も感情もなく、ただアンドロイドを襲うだけの兵器のようなものでしかない。だというのに7Sの言い方はまるで、機械生命体には心も感情もあるからこそ会話をすることが出来る。また考えて行動することが出来るのだと言っているようだった。
そして何よりも驚くべきは、7Sにとってはそれが当たり前のことであるということが言葉の端々から感じられたことだろうか。
「何も不思議なことはないだろ。創造主が人間かエイリアンか。その違いで心も感情も持たない、なんて言い切れる?」
「こいつらに心があるわけがありません!ずっとそう言われてきたのは7Sだって知ってるはずです!」
「それに、私たちと機械生命体は違う。そうして作られた存在ということは同じでも、全くの別物なんだから」
「やれやれ……なら今はそれで良いさ。けど可能性の一つとして頭の隅にでも留めておけば良いかな。
2Bも9Sもまだまだ頭が固いというか、なんというか……とりあえずオレから言えるのは、色んな物を見て、色んなことを感じて、色んなことを考える。それが重要ってことだけ伝えておこう」
そう言う7Sの言葉はまるで教師が大切な教え子に対して物を教えているような、そんな優しさが込められていた。
内容としては、明らかに他のヨルハ部隊員に聞かれてはならないようなもので、下手をすれば危険な思想として処理をされる可能性がある物であったが。
ただ、この話は既に7Sからホワイトに伝えられている話であり、7Sが処理されることはない。その裏にどのような考えがあるのか、それを知るのは7Sとホワイトのみである。
「あ、これは他の人たちには秘密ね」
しかし次の言葉はそんな表情を浮かべていた名残は微塵もなく、立てた人差し指を口元に持って来て何処か悪戯っぽい表情と共に口にされた。
その仕草に話の内容によって呆然としていた2Bと9Sは徐々に呆れたような表情へと変わり、二人揃ってため息を零す。
「あぁ、はい……そうですね、聞かれると大変なことになりそうですからね……」
「そうだね……でも7S、そういうことがわかってるなら軽々しく口にしない方が良い。何処で誰が聞いているかわからないし、危険を冒すのは推奨されない」
「わかってるよ。こんなこと言えるのは二人くらいなもんだから大目に見て欲しいかな」
不自然なほどの信頼に9Sは首を傾げて7Sを見るが何処か困ったように笑っているのを見て追求はしなかった。9Sの知る7Sはこんな表情をするようなことはなかったのだが、一体どうしてだろうか。
そんな疑問を浮かべながらもとりあえずはその言葉に頷きを返す。
そしてその隣では2Bが7Sの自分たちに寄せる信頼に対して辛そうな表情を浮かべていた。自分が過去に何をしたのか知っていて、7Sはそれでも信頼してくれている。
2Bにとってそれは喜ばしいことであると同時に、胸を締め付けるような辛さを感じてしまう。
「それじゃ、そういうことでよろしく!
あ、君らは解散解散!」
「クミタイソウ タノシイ」
「ピラミッド シタ タイヘン」
「ミンナ ナニカスル タノシイ」
「ボクタチハ ロクニン デ ナニカシタイ」
「クミタイソウ モウイッカイ」
「モウイッカイ モウイッカイ」
「組み体操気に入ったのか……えっと、とりあえずハッキングして……記憶領域に組み体操のデータを入れて……」
何やら言い始めた機械生命体たちをまとめてハッキングし、破壊するためではなく勝手に組み体操が出来るようにと本を読んで作ったデータを記憶領域へと放り込んでいく。
数秒で終わらせて機械生命体たちを見れば全員で集まって話を始めた。
「サボテン?」
「オウギ?」
「キメポーズ?」
「スーパーヒーロー?」
「カッコイイ セイギノ ミカタ」
「クミタイソウ ヨリ タノシソウ」
「あれ?間違えてスーパーヒーロータイムとかいう分のデータも入れた?」
どうやら7Sは違うデータも間違えて入れていたようで、組み体操とは違うことに興味を持っているようだった。
「ヒーロー ヒーロー」
「ヒーロー カッコイイ ヒーロー」
「ヒーロー ニ ナル」
「ミンナ ヒーロー ニ ナル」
「ヒーロー ツヨイ ツヨクナル」
「ミンナ マモル ヒーロー」
そして非常に盛り上がっているようで、そんなことを言いながら何処かへと消えていった。
7Sはそんな機械生命体たちを見送りながら、楽しそうな姿に『間違えたけど良いか。』と考えながら2Bと9Sへと振り返る。
「それじゃ、そろそろレジスタンスキャンプに向かうか!」
「いやちょっと待って7S!良いんですかあれ!?」
「大丈夫、あの子達は無害だから」
「無害どうこうじゃなくて、妙なデータを入れていたように見えたけど……」
「……悪いようにはならないはず。というわけで放っておいても大丈夫大丈夫」
「7Sが相変わらず楽天的で自由過ぎる……!」
「……変わってないことに安心すべきか、変わってなさすぎて安心出来ないと言うべきか……」
「2B、僕たちがしっかりしないとダメそうですよこれ……」
「そうだね……」
「ちょっと二人とも、問題児だってのは自覚あるけどそれは酷いんじゃない?」
7Sの言うことにもはやどうしようもないと判断した2Bと9Sの二人は呆れながらも自分たちがしっかりして任務を遂行しようと結束を固める。
ただそうすると仲間外れというか、その原因である7Sとしては微妙に面白くない。
「さ、2B。行きましょう」
「うん。案内をお願い」
「わかりました、こっちですよ」
「おい!置いていこうとするなよ!」
そしてまさかの7Sを置いていくという行動である。その姿は非常に仲の良い友人同士にも見える。
先に歩き始めた二人は、文句を口にしながらも2Bと9Sが仲良く歩いている姿を見て嬉しそうにしている7Sには気づくことはなかった。
2Bと9S大好きな7Sが二人の為に頑張る話。に今後なるはず。
ただ、7Sの性格上色々と可笑しなことをするのは確定的に明らか。
推奨:2Bと9Sの何気ない遣り取りの観察。