機械人形は救済の夢を見る   作:御供のキツネ

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9Sは時として苦労人。



ch-17 子供の作り方?

機械生命体の妹を見つけ出し、後はパスカルの村に戻るだけ。

そうした状況ではあるが、念の為に三人で彼女を守るように囲んで進んでいる。

砂漠地帯では、砂の中から機械生命体が飛び出してくることがあるので何かあった時の為には必要なことだ。

必要なことなのだが、この陣形の本当の意味はそういった警戒よりも、彼女が怯えて動かなくなるのを防ぐことが目的だったりする。

三人が警戒しながらも、怖がらないようにと気を遣っているとふと何かを思いついたように、彼女は言葉を発した。

 

「ねえ、どうしてさばくはデキたの?」

 

「ええっと……降水量の減少のせいで植生が失われて、それに従って土壌が変化して……」

 

「ドジョウってナアニ?」

 

「ああ、土壌っていうのは地面にある土のことだよ」

 

「フウーン。土ってスゴイんダネ!」

 

突然の質問であったが、9Sはそれに対してちゃんと答えることが出来た。

 

「涙を流す神も人もいなくなってしまったから。とか?」

 

「なんで、いなくなってしまっタノ?」

 

「戦争ばかりで、嫌気が差したのかもな」

 

「ナラ、せんそうがナクなればひともかみさまももどってくるノ?」

 

「さて、どうだろう。神も人も、随分と自分勝手だからなぁ……」

 

「じぶんかってだと、おねえサンにおこられるんダヨ!」

 

「だったら神も人も怒られるのか?」

 

「うん!」

 

それに対して7Sは科学的根拠の無い回答をするが、彼女の関心は9Sの回答よりも惹いているように思えた。

子供を相手にするのであれば7Sのような回答の方がわかりやすいのかもしれない。

その回答が正しいのかどうかはさておくとして。

 

そして二人の回答を聞いた後で2Bも口を開いた。

 

「私は夜がなくなって、太陽の光に焼かれ続けているから。だと思う」

 

「ナラ、たいようサンがちきゅうサンをいじめテルの?」

 

「違うよ……太陽の光がないと植物が育たない。だから太陽の光自体は必要。ただ何事もやりすぎは良くないってことだと思う」

 

「ソッカ、たいようサンははりきりすぎちゃったんダネ!」

 

2Bも2Bで科学的根拠はない。ないのだが、そんな遣り取りをする三人を見て9Sが一人でほんわかしていた。

勿論、三人はそれに気づく様子はない。

 

「じゃあ、かぜはどこからふクノ?」

 

「それは気温や気圧の変化が……っていうか、確かに風って何処から吹いてくるんでしょうか。

 哲学的な問いでもありますね……ね、2B?」

 

「私に聞かない。でも、何処から吹いてくるのかって聞かれると、謎だね」

 

「風の発生地点とかにいると、どんな感じなんだろうな」

 

「んー、気になりますね……でも、風の発生地点なんて都合良くいられませんし……」

 

やいのやいのと話し合いを始めた二人を見て、そういう話は後にして周りを警戒して欲しい。そう思う2Bだった。

ただ、何度見てもその姿は同型であるせいか兄弟に見える。

だからだろうか、ふと機械生命体には家族の概念が強くあるが、自分たちアンドロイドはどうだろうか。と考えてしまったのは。

基本的にアンドロイドは家族という概念を持つことはあまりない。ただ、最近は自身の周りではそういう家族として接する人が増えているような気がする。

主に、7Sが関わった人や、その人と関わった別の人にだ。

 

「うん、この話は後でするとして……進まないとな」

 

「あはは……何だか最近、こうして7Sと話してると本来の目的を忘れそうになりますよ」

 

「そうならないように私も気をつけるけど、二人とも注意はしてて」

 

「おにーちゃん、おねーちゃん、はやく行こう?」

 

パスカルの村へと連れて戻るという目的から離れ始めていた二人だが、何とか意識を戻して話を切り上げた。

2Bも苦言を呈するが、それ以上に二人にとって効いたのは機械生命体の妹の言葉だろう。

子供に諭されるって、どういうことなのだろうか、と。

 

「悪い悪い。それじゃさっさと村に戻ろう。

 あんまり砂漠地帯に長居しても機械生命体に襲われるだけだろうしな」

 

7Sの言葉で最初と同じ陣形を取って再度進み始める。

機械生命体の妹は三人に囲まれた状態を楽しむように進んでいて、もはや怯える様子はなかった。

そうして少し進み、もうすぐ砂漠地帯から廃墟都市への道が見えてくる頃になって、また機械生命体の妹がこんなことを言った。

 

「ねえ、どうしてソラは青いの?」

 

「地球の大気が、太陽の光を散乱させるから空は青く見えるんだよ。地球の大気成分が、青と緑の波長を散乱するとそうなるって言われてるけど……」

 

9Sが多分二人とも何が言うんだろうな。と思い2Bと7Sの二人を見るとまずは2Bが口を開いた。

 

「空が青いのは、きっと天使が絵の具を零してしまったから」

 

「てんしサンが?」

 

「空の上で、青い絵の具を零したから空は青く見えるんだよ」

 

「てんしサン、どじっこサンだね!」

 

「そうだね……でも、そのおかげで青い空が見れるなら、悪くはないと思うよ」

 

その二人を見て9Sは2Bから天使が、などという言葉が出ると思っていなかったのでとても意外だった。

それと同時にやっぱり2Bにも可愛いところがあるな。と一人納得する。

2Bと機械生命体の妹の話が終わってから二人は7Sを見る。釣られて9Sも7Sを見る。

 

「んー……空が青いって認識しているから?」

 

「どういう意味?」

 

「オレ以外の三人が空は青いと言う。でもオレには空が赤く見えている。そう言ったとしても三人は納得しないし、オレも変なことを言っていると思われない為に空は青いと言う。

 はい、これで空は青い。そういうこと」

 

「どういうコトなの?」

 

「空を青いと認識する人数が多いなら、そっちが正しいんだろうな。ってことで常識として空は青い。

 例え空が赤く見えようが緑に見えようが、常識という認識の前では全てが青くなる」

 

「なら僕らが全員、空は赤いと言えば空は赤くなるんですか?」

 

「ならないな。空は青いまま。オレが言ったのはあくまでもそういう捻くれた考え方も出来るんじゃないかってことだからさ。

 ただ、アンドロイドや機械生命体の視覚情報は製造段階で決められてるし、本当はあの空は赤くて、それでも人類の栄えた頃は青かったからオレたちにも青く見えるようにしてるだけ、とかはあるかもしれない」

 

「そう見えるように作られただけ……」

 

「つまり、どういうコトなの?」

 

「空が青いのは、空が青いから。ってこと」

 

「むー……でも、ソラは青いもんネ!青いものは青いってことだネ!」

 

「そうそう、青いものは青いんだから仕方ないな」

 

少し難しいことを言ったかと思えば、機械生命体の妹に合わせてふんわりとしたことを言う。

それが7Sらしいと言えばらしいと思った。それと同時に、確かに自分たちは今の空が青く見えるが、もしかするとあの空の色は青とは違う色になっているのかもしれない。そう考えると7Sの言葉を少し考えてしまう。

だがそうして2Bと9Sが考えようとしてすぐに機械生命体の妹が更なる疑問を口にした。

 

「ねえ、こどもはどうやってうまれルノ?」

 

その疑問を聞いた瞬間、9Sの動きが止まる。

さっきまで全部の疑問に答えて来た分、急に教えなくなるというのも可笑しな話だ。

だからと言って、この疑問に対する答えなんて言えない。わからないわけではないが、言えない。

しかし、それでも何とか答えようとして口を開いてこう言った。

 

「それは……いや、機械生命体もアンドロイドも子供は作ることが出来なくて……」

 

「こどもはどうやってつくルノ?」

 

だが相手は止まらない。作ることが出来ないと言われても、それでもどうやって作るのかが気になって仕方が無いようだった。

もしかするとパスカルの村でも同じような質問を大人にして、答えが帰ってこなかったのかもしれない。だからこそこうして作ることが出来ないと言われても尚、質問を繰り返しているのだろう。

 

「え、えっと……2B、7S……!」

 

「そ、そんな声で言われても、私は助けられない」

 

9Sが困ったような、泣きそうな声で二人に助けを求めるがまず2Bには助けられないと言われてしまった。

 

「あー……オレもちょっと助けられそうにないな……」

 

「7Sまで!」

 

そして7Sも助けられないと言う。普段であればなんだかんだで助けてくれるのに、流石に7Sもこの話については気恥ずかしかったりするのだろう。そう9Sが思っていると2Bが深刻そうに言った。

 

「私には……子供はコウノトリによって不法投棄されたモノを拾う。なんて残酷な真実を教えることは出来ない」

 

「え?」

 

「コウノトリとか言う人間の子供を作れる謎の生命体が、その子供を捨てるなんて子供に教えるのは酷だよ」

 

「え?」

 

「だから私には助けることは出来ない……9S、弱い私を許して」

 

「え?」

 

2Bは一体何を言っているのだろうか。

コウノトリの不法投棄って、どういうことだ。9Sが疑問符を浮かべているというか、2Bの意外な可愛らしい知識に驚いていると2Bは尚も言葉を続ける。

 

「それにしてもコウノトリって、何だろう……人の子供を作れるなら、この地球で見つけることが出来れば人類がまた繁栄するはずだから、見つけられるなら見つけないといけない」

 

「あ、あのー、2B?」

 

「どうかしたの、9S」

 

「子供って、コウノトリが作ってるんじゃありませんよ?」

 

「……え?」

 

「そうですよね、7S」

 

機械生命体の妹に教えて欲しいと言われている7Sに対して言うと、7Sは彼女をひとまず落ち着かせてから言った。

 

「そうだぞ。何も知らない2Bにはオレから本当のことを教えてやろう」

 

「あ、その子には言えなくても2Bには言えるんだ……」

 

こういうところが、2Bと7Sの距離が近いな、と思う一因なのだがそれを思うのは9Sしかいない。

とりあえずは7Sが答えを言ってくれるならそれで良いかと成り行きを見守ることにした9Sだが、7Sの口から出た言葉は予想外のものだった。

 

「子供はな、キャベツ畑で取れるんだ」

 

「は?」

 

「キャベツ、畑……?」

 

「そう、キャベツ畑。キャベツって言うのは食べ物の名前だから、本当にキャベツ畑で子供が取れてたとは思えない。だから多分、キャベツ畑ってのは人間の子供を作るためのプラントのことだったんだろうな。

 昔は試験管ベイビーなんて言う試験管から生まれた子供もいたって言うから、やっぱりキャベツ畑ってのは人体生成プラントで間違いないだろう。これを子供に話すには、少し残酷かもしれないな」

 

「人体生成プラント……なら、その技術があれば……」

 

「いや、待ってください何を言ってるんですか」

 

真面目な顔をして二人で話していたが、9Sがそれを止めた。

本当のことを教えると言いながらどうしてそこでキャベツ畑の話が出てくるのかと、9Sはそう思った。

何時もは自分の知らないことを知っていて、知識面では頼りになる存在だと思っていたのに何で子供の作り方でそんな子供騙しの回答を本気で信じているように口にしているのかと、問い詰めたかった。

 

「ん、どうした?オレたちは真剣に子供の作り方について話をしてるんだけど」

 

「コウノトリじゃなくて、キャベツ畑……もしかして、キャベツ畑で生成された人間をコウノトリが運んでくる……?」

 

「なるほど、そういうことか……」

 

「そういうことか、じゃないですからね。

 子供はキャベツ畑なんてプラントで作られませんし、コウノトリはその運び屋なんてこともありません」

 

「え……だ、だって、旧世界の文献にはちゃんとそう書いてたぞ!

 小さい女の子が赤ちゃんはどうやって作るの?って母親に質問して、母親が赤ちゃんはキャベツ畑で生まれてくるのよ。って言ってる本があるんだからな!」

 

「それ多分答えにくい質問の誤魔化し方とかですよ」

 

「キャベツ畑は違うけど、コウノトリは当たってるんだね?」

 

「それも違います。コウノトリは子供を運んだり不法投棄しません」

 

「嘘……コウノトリじゃないんだ……」

 

9Sがキャベツ畑もコウノトリも否定すると二人はショックを受けたようだった。

その様子を見て、どうしてこの二人はこんな明らかな嘘を本気で信じて、更にショックなんて受けているんだろう。

そう思いながらも9Sが、二人にはちゃんと教えておかなければならないのだろうか。と考えていると機械生命体の妹がその様子をじっと見つめていた。

 

「こどもってたいへんナンだね」

 

「うん……大変すぎて疲れてくるよ……」

 

子供の作り方を知るのが大変なことなのか、子供のような二人の相手をするのが大変なのか、どちらのことを言っているのかわからないが9Sはため息を零してからそう同意した。

その子供の中には当然彼女も含まれているのだが、本人にその自覚はないようだった。

だが自分の知らないことを知っている7Sや、落ち着いていてクールな印象を受ける2Bがこうして普段とは違う姿を見せてくれるのいうのは9Sとしては悪い気はしなかった。

例えそのせいで酷く疲れるようなことがあっても、だ。

 

「ほら、二人とも早く行きましょう」

 

「む……まだ謎は解明出来てないのに……」

 

「でも、あの子をパスカルの村に連れ戻すのが目的だからそれは後にしよう」

 

「……わかった。でもキャベツ畑で良いはずなのに……」

 

「それを言うならコウノトリが……」

 

「もうっ!二人ともそれは後です!」

 

未だにキャベツ畑だのコウノトリだの言っている二人を急かす9S。

二人は納得いかない様子だったがとりあえずは本来の目的を遂行する気はあるらしく、機械生命体の妹を囲んで歩き始めた。

彼女は彼女で質問に答えてもらったり、二人の遣り取りを楽しそうに聞いていて、今は非常に機嫌が良さそうだった。最初に見たときは怯えていたが、それよりは今の方が断然良い。

そしてその後は機械生命体に襲われることもなく、無事に廃墟都市へと続く道まで辿り着くことが出来た。

 

「ここまでくれば、もうだいジョーブ!ひとりでかえれルヨ!

 あんないしてくれて、ありがトウ。これ、あゲル!」

 

そう言うと彼女はピンク色のリボンを2Bに渡すと軽快な足取りで三人から離れて行く。

そのまま廃墟都市へと進んでいくのかと思うと振り返り、手を振りながらこう言った。

 

「じゃあね、おにーちゃん、おねーちゃん。バイバーイ!」

 

機械生命体だから表情が変化することはない。それでも彼女が満面の笑みを浮かべているであろうことが三人には理解出来た。

 

「なんだかんだ疲れましたけど、これで一安心ですね」

 

「そうだね。此処からなら大丈夫だって言ってたし……後で様子を見に行こう」

 

「それもそうだな。で、これからどうする?」

 

「僕としては普通に村に戻っても良いと思いますけど……」

 

「なら、砂漠のバラを探したい」

 

砂漠のバラと聞いて9Sは疑問符を浮かべているが、7Sは何かに気づいたように頷いていた。

 

「2Bのオペレーターに頼まれたのか」

 

「うん。私にはわからないけど、7Sなら知ってると思って」

 

「ああ、知ってるぞ。此処からそう遠くない場所で見かけたから、行ってみるか」

 

「ありがとう。それじゃ、行こう」

 

次の目標を決めた二人が歩き始めようとするが、そこに9Sが待ったをかける。

9Sとしては二人が言っている砂漠のバラに該当する情報がまったくないので、どのようなものなのか、気になっているのだろう。

 

「あの!砂漠のバラって何ですか?」

 

「私も良く知らない。でもバラって言うくらいだから植物だと思う。

 でも、砂漠でバラなんて咲くのかな……」。

 

「砂漠のバラっていうのは植物じゃなくてある種の化合物が自然現象でバラのような形状の結晶に成長した石のことを言うんだ。砂漠で咲くなら仙人掌だな」

 

「へぇ……石なんですか……」

 

「知らなかった。でも、それで6Oは納得してくれるかな……」

 

「大丈夫だと思うぞ。見た目は本当にバラみたいだからな。まぁ、とりあえずは実物を見るのが早いし、ついて来てくれ」

 

確かに話を聞くよりも実物を見るほうが早いだろう。

7Sの言葉に納得して二人は先を歩く7Sに続く。

そして、その道中で7Sが口を開いた。

 

「砂漠のバラは基本的には水に溶けたミネラルが結晶に成長することで出来るんだけど、これは水が無い地域だと出来ないんだ。だから人類がいた頃は砂漠のバラがある場所はかつて水場だったんじゃないかって言われてたらしい」

 

「へぇ……それってオアシスがあったっていうことですか?」

 

「そう捉えられてたらしい。って話。実際はどうだか知らないけど、かつて存在したオアシスの忘れ形見。みたいに思うとちょっと幻想的かもしれないな」

 

「オアシスの忘れ形見……それ、6Oに伝えても良いかな」

 

「伝えるのは良いけど、感性が違いすぎると鼻で笑われるかもしれないから気をつけろよ?」

 

「良い。私はそれ、少し気に入ったから。

 消えてしまっても何かを遺せるのは、すごいと思うから」

 

「2Bがそれで良いなら。お、見えてきたな」

 

何かを遺せる。そのことに対して思うことがあるような2Bの様子にこれ以上言うのは野暮だと判断した7Sは、そのことについてはそれ以上言わないことにした。

そして、探していた砂漠のバラがある場所が近づいてきたと言ってその地点を指差す。

 

「あれは、石版でしょうか?」

 

「わからない。旧世界の名残だろうけど……」

 

「あれの近くで見かけた、ってことで良いんですよね?」

 

「そういうこと。誰かに荒らされてなければ……っと、見つけた」

 

7Sがしゃがみ込んで何かを見つけてそう言うと一早く反応したのは2Bだった。

7Sの手元にはバラのような形をした茶色の結晶で、幾つも連なったそれは長い年月を掛けてそうなったということが見て取れた。

それを壊さないように気をつけながら7Sが余計な砂を払ってから場所を2Bに譲る。

 

「これが砂漠のバラ……」

 

「わっ……本当にバラの形をした石だ……」

 

2Bと、後ろから覗き込むようにしていた9Sの口からは感嘆の吐息が漏れた。

当然だ、そこにあるのは見方によってはただの石だが、この地球上で作られた神秘の結晶とも言える物なのだから。

 

「6Oの期待してるのとは違うだろうけど、これが砂漠のバラだからな。

 写真撮って、データを送ってあげると良い」

 

「うん。ポッド」

 

「砂漠のバラの撮影を完了。6Oへ写真データを転送」

 

「これでもう大丈夫。約束はちゃんと果たした」

 

「あの、これって採取したらダメですか?」

 

珍しいからか、はたまたその神秘的な姿に魅了されたからなのか、9Sがそんなことを聞く。

 

「ダメってことはないな。言い方はあれだけど、一番近かったのがこれってだけで他のところにもあるから問題はないぞ」

 

「……それ、6Oにあげたい。かもしれない」

 

「そうですか……なら、2Bがどうぞ」

 

「良いの?」

 

「僕は他のところにあるっていうのを探しますから」

 

「そう……ありがとう」

 

どうやら2Bは写真データだけではなく、実物を6Oに渡したいらしい。

他にもあるということで採取は問題なく、9Sも譲ってくれた。

感謝の言葉を伝えてから2Bが慎重に砂漠のバラを採取して、大切そうにその手で包み込んだ。

 

「それを持ってバンカーに戻るには飛行ユニットがいるから……一度キャンプに戻って部屋に保管だな」

 

「うん。二人とも、キャンプに戻ろう」

 

「わかりました。あ、7Sは今度僕の砂漠のバラを探すの、手伝ってくださいよ?」

 

「わかってる。小さいのから大きいのまで、場所は把握してるから任せとけって」

 

「約束ですからね!」

 

本来であれば機械生命体の脅威の下で調査をするはずの三人だが、周囲には敵性反応がなく和気藹々とした雰囲気となっている。

他のヨルハ部隊が見れば何をしているのかと思うようなことだが、この三人にとってはこれが普通のことだ。

完全に7Sの影響を受けきっている二人と、元凶の7S。アンドロイドらしくはないのだろう。

だがその姿は遠い過去、人類が地球上にいた頃は何処でも見ることが出来た、そんな姿であったことは誰も知らない。




このクエスト本当に好き。
ただ、この作品ではこの二人ってこういう立ち位置というか、キャラというか……
頑張れ、9S。

砂漠のバラってあんまり拾えないんですよね。
なので何となく手元に置いていたら全部デボルとポポルに持っていかれた思い出。

推奨:レジスタンスキャンプへの帰還。

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